2012年2月 1日 (水)

相続放棄の熟慮期間の起算点

Dsc_0135 相続が発生した場合、相続人は、相続を承認するか、放棄するか、限定承認するかを3か月以内に選択しなければならないが、この期間は熟慮期間と呼ばれている。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条  相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

ここで、熟慮期間の起算点について、条文では「自己のために相続の開始があったことを知った時」となっているが、その意味について、大決大15.8.3は「相続人カ相続開始ノ原因タル事実ノ発生ヲ知リタル時ノ謂ニ非スシテ其ノ原因事実ノ発生ヲ知リ且之カ為ニ自己カ相続人ト為リタルコトヲ覚知シタル時」をいうと説明している。

この考え方が原則として今でも生きているが、例外として、3か月以内に相続放棄等をしなかった場合でも、それが相続財産・債務が全くないと信じたためであり,かつそう信じたことに相当な理由がある場合には,相続財産・債務の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識できる時から起算することとなる(最判昭和59年4月27日)。

昭和59年判決に該当するケースにしばしば遭遇するが、上記2つの判例を理解したうえで、以前作成していた申述書の記載を見ると、ちょっと恥ずかしくなる。

1 申述人は、被相続人●●●●の相続人である。
2 申述人は、平成●年●月●日、●●簡易裁判所から送達された訴状を受け取り、申述人が被相続人の債務を相続していることを初めて知った。
3 しかし、被相続人の相続財産は債務超過の状態にあるため、申述人は御庁に対し相続放棄の申述をする。

どうだろうか、59年判例が指摘した要件がまるで抜け落ちている。
要件を入れて書き直すと、次のような感じになるのだろうか。

1 申述人は、被相続人●●●●の相続人であり、平成●年●月●日、被相続人の死亡により相続が開始し、自己が相続人になったことを即日知った。
2 しかしながら、申述人は、被相続人とは●●の理由で平成●年頃からほとんど連絡をとっておらず、それに加え、被相続人は財産があればすぐに使ってしまう癖があつたため、申述人が調査するまでもなく相続財産は存在しないと信じていた。また、被相続人死亡後に債権者の督促もなかったため債務も存在しないと信じていた。そのため、申述人は、被相続人の相続に関しては何ら手続をとっていないばかりか、被相続人の相続財産の全部又は一部を処分したことはなく、また、限定承認又は相続の放棄もしていない。
3 ところが、申述人は、平成●年●月中旬、被相続人の最後の住所地宛に、株式会社●●から「相続確認のお知らせ」が届いたことを知るに及び、被相続人が株式会社●●に対し負債を負っていたこと、被相続人の相続財産として当該負債に対する法定相続分を申述人が相続していることを初めて知った。
4 しかしながら、被相続人の相続財産は債務超過の状態にあるため、申述人は御庁に対し相続放棄の申述をする。

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2012年1月31日 (火)

京都方式の不動産決済

実は、明日(31日)は、大阪でちょっと大きな物件の決済があり、朝7時10分の新幹線に乗って大阪に出かける。したがって、今日の記事は、朝8時30分頃に自動的にUPされるようにタイマーをセットしておく。おそらく、この記事がUPされるぐらいの時間に私は大阪に着いているだろう。

さて、その大阪の決済の件だが、僕は、買主の登記代理人として決済に立ち会う。売主側には別の司法書士が立ち会うことになっている。そして、売買による所有権移転の登記申請書には、登記権利者代理人として僕の名前、登記義務者代理人として大阪の司法書士の名前を併記して申請をすることになる。

このように、登記権利者、登記義務者それぞれに別の司法書士が代理人として登場する方式は京都で生まれたと言われ、その由来からか、京都方式と呼ばれている。

今回、私は買主の代理人であるので、売主の書類は全て売主側の司法書士が収集して私に渡してくれることとなる。ただ、1点気になるのは、京都方式に慣れている売主側の司法書士によれば、売主の本人確認は売主側の司法書士がするので僕はしなくていいとのことであった。果たしてそれでいいのだろうか。仮に売主の本人確認に瑕疵があった場合、僕は免責されるのだろうか?

以前、京都会の森木田さんが講師として研修会に来られた際も、「自分の依頼者の本人確認はするが相手方の本人確認はできない」というような趣旨のことを言われていた。しかし、相手方の本人確認をするかどうかは、依頼者と司法書士との間で締結する委任契約の内容によって決まると思うのだが。
「相手方に司法書士がついているから本人確認をする必要はない」ということになるのに何の根拠もないと思うし、相手方に司法書士が就こうが弁護士が就こうが、自分の依頼者を守るためには最低限本人確認をすべきだと思うがいかがだろうか。

「相手方に司法書士が就いていれば本人確認をしない」というのは、単に、依頼者をさておいて、相手方に就いた司法書士との間で勝手に仕事のテリトリーを決めているにすぎないのではないかという疑問が払拭できないのは私だけであろうか。

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2012年1月30日 (月)

気仙沼レポート

27日夜、一関に到着し、28日、29日に気仙沼の法律相談に行ってきた。

Img_7840 28日の午後は本吉唐桑商工会、夕方からは仮設住宅の集会場で行った。29日も仮設住宅の集会場で行う予定だったが、別の行事が入っていたために中止し、気仙沼市内を見て回った。

法律相談として相談を受けた件数は少なかったが、実際に被災した方の話をゆっくり聞くことができた。被災の程度にもよるが、まだ、住宅がどうなるかをはじめ、あまりにも決まっていないことが多すぎて、具体的な法律相談にまで発展しないというのが現状のようだ。

Img_7871 あるお店でコーヒーを飲みながらマスターと話をした。一見、物静かそうなマスターだったが、実は、自宅も1階が流され、住宅ローンの相談に銀行に行ったが特別な措置を講じてくれるわけでもなかった・・・・等々、話をし出すと次から次へと問題が出てくる。

マスターと話をしながら、「そうか、こういうことなんだ。「法律相談」というとどうしても敷居が高い、何かを聞かなければならないと考えてしまう。そうではなくて、とくかく話し相手になること、そうした中で、必要に応じて法律の知識を話してあげ、ヒントをつかんでもらう、という程度がいいのではないか」と考えさせられた。Img_7884 おそらく、近い将来、失業手当の支給が終わってしまったり、土地の買い上げの話が具体的になってきたときに、本当に切羽詰まった相談が出てくるのだろう。そうした時に対応できるようにしておく必要がありそうだ。

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2012年1月27日 (金)

司法書士法改正大綱  法律関係文書の作成

今日は金曜日なので、朝礼は野々垣司法書士が発表。

現在日司連で検討されている司法書士法大綱の中で、「法律関係書類を作成すること」を業務規定に加えることが検討されている。司法書士法の条文を見たことがない方は意外かもしれないが、実は、「法律関係書類を作成すること」という規定は司法書士法には存在しない。

Dsc_0133 現行法の解釈としては、裁判書類作成関係業務や簡裁訴訟代理関係業務、登記申請書の作成等の業務に付随して作成する法律関係文書に限って業務として行うことができると考えられている。もっとも、そういう解釈自体も司法書士業界の独りよがりなのかもしれないが。

仮に、上記のような解釈であるとすると、相続財産が不動産のみである場合の遺産分割協議書の作成はできるが、不動産以外に預金があったりすると、途端にできないということになるのだろうか。また、登記に必要な株主総会議事録の作成はできるが、その議事録の中に、登記には関係ない退職慰労金の議案があると作成できないということになるのだろうか。

現状に合わせた改正が望まれるところである。

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2012年1月26日 (木)

借地上の建物の担保取得と賃貸人の承諾

登記の添付書類ではないが、借地上の建物に抵当権を設定する場合、債権者が賃貸人(地主)の承諾書をもらうことが多いようだ。

そして、その承諾の内容、主に次の2点である。
①抵当権の実行や任意売却により第三者が所有権を取得したときは、その者に引き続き貸与すること
②抵当権が存在する間は、地代滞納等の理由により賃貸借契約を解除しようとする場合はあらかじめ抵当権者に通知すること

①については、賃借権は原則として賃貸人の承諾無くして借地権の譲渡転貸をすることができないからあらかじめ承諾を得ておこうとするものである。なお、あらかじめ承諾をしてくれない場合は、借地借家法20条の「承諾に代わる裁判所の許可」を得ることになるが、一般的には借地権価格の10%程度の承諾料の支払いが必要になるらしい。
②については、抵当権者が知らない間に賃貸借契約が解除されてしまうと、借地権自体が消滅してしまい、材木としての建物を担保にとっているだけになってしまうからだ。

ところで、東京地判平成11年6月29日は、抵当権者が上記のような承諾書を賃貸人から徴求していた場合について、賃貸人は、賃貸借契約の解除事由があったとしても、必ずしも法的義務として抵当権者に通知しなければならないとは言えない、という判断をしている。

判決文をあたってみよう。

「確かに、前記認定のとおり被告が原告に差し入れた本件承諾書には、賃料延滞又はその他の理由により賃貸借契約を解除する場合には事前に原告に通知することを被告が承諾する旨の記載がある。
しかし右承諾書にはそれ以上に、通知をすれば必ず原告が未払賃料の代払をするとか、通知をした後賃料の代払をするに足りる期間を経過してからでなければ解除をすることができないとか、通知を怠った場合には賃貸人の賃借人に対する解除権の行使が制限されるとかというように、右事前通知義務から生じる具体的な効果についての定めは記載されていない。
その上、前記認定のとおり、原告は本件承諾書の徴求により被告から担保権確保の利益を得ておきながら右担保権設定承諾料等の対価を何ら出捐していないばかりか、自己の融資先の資産状況を把握し得る立場にあるのに○○の賃料支払義務の履行状況を掌握する何らの手立ても講じていないのであり(融資担当者に右支払事実を報告させる等実にた易いことである)、原告の得た利益と被告の負担との間には著しい不均衡があるといわざるを得ず、本件承諾書をもって、同被告に根抵当権者たる原告の利益を保護するため積極的に賃借権の保存に協力すべき法的義務が生じたなどとは到底解することはできない。
そうすると、本件承諾書を差入れたことにより被告(賃貸人)が原告(根抵当権者)との間で解除の際には原告に通知する旨の通知義務を負うものとしても、その性質は厳格な法的義務とはいい難く、通知をしなければ賃貸人の賃借人に対する解除権の行使が許されなくなるような法的効果を伴うものとは解されない。」

Dsc_0131 つまり、抵当権者が賃貸人から「解除事由があったときは通知する」という承諾書をもらっていたとしても、抵当権の上にあぐらをかいて債務者たる賃借人が賃料をちゃんと支払っているかどうかの確認も何らしていないなど、賃貸人に義務ばかり課す一方で抵当権者の権利ばかりが守られるような不均衡な承諾書は、法的義務までをも生じさせるものではない、と言っているわけだ。

本判決は、この事例についてのみ判断したものであり、必ずしも普遍的なものではないかもしれないが、ハンをついたように承諾書をもらっておけば抵当権者の権利が守られるというわけではないので注意する必要があるたろう。

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2012年1月25日 (水)

398条の20第1項3号、4号による元本確定

昨日は、根抵当権設定者又は根抵当権者からの元本確定請求について勉強したが、今日は、別の事由で根抵当権が確定する場合について考えてみたい。

(根抵当権の元本の確定事由)
第三百九十八条の二十  次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。
一  根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は第三百七十二条において準用する第三百四条の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る。
二  根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。
三  根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したとき。
四  債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。
2  前項第三号の競売手続の開始若しくは差押え又は同項第四号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。

1項1号については、不動産に差押の登記の登記がされるわけだから、確定したことは登記簿上明らかであるという理由で確定登記は不要とされている。2号についても同様に、確定登記は不要とされている。
3号については、根抵当権者の主観的な問題であるから、確定登記をしなければ確定したことがわからない。4号については、登記簿上で破産手続開始決定があったことがわかる場合とわからない場合とがある。

では、詳しく考えてみよう。
まず、3号。
「根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始」があったことを知るのは、競売の場合は、民事執行法49条2項の催告書を受け取ることによって知ることとなる。

民事執行法
第四十九条  強制競売の開始決定に係る差押えの効力が生じた場合(その開始決定前に強制競売又は競売の開始決定がある場合を除く。)においては、裁判所書記官は、物件明細書の作成までの手続に要する期間を考慮して、配当要求の終期を定めなければならない。
2  裁判所書記官は、配当要求の終期を定めたときは、開始決定がされた旨及び配当要求の終期を公告し、かつ、次に掲げるものに対し、債権(利息その他の附帯の債権を含む。)の存否並びにその原因及び額を配当要求の終期までに執行裁判所に届け出るべき旨を催告しなければならない。
一  第八十七条第一項第三号に掲げる債権者
二  第八十七条第一項第四号に掲げる債権者(抵当証券の所持人にあつては、知れている所持人に限る。)
三  租税その他の公課を所管する官庁又は公署

したがって、同催告書を添付して元本確定登記を申請をすることとなる。

国税徴収法
(質権者等に対する差押えの通知)
第五十五条  次の各号に掲げる財産を差し押さえたときは、税務署長は、当該各号に掲げる者のうち知れている者に対し、その旨その他必要な事項を通知しなければならない。
一  質権、抵当権、先取特権、留置権、賃借権その他の第三者の権利(担保のための仮登記に係る権利を除く。)の目的となつている財産 これらの権利を有する者
二  仮登記がある財産 仮登記の権利者
三  仮差押え又は仮処分がされている財産 仮差押え又は仮処分をした保全執行裁判所又は執行官

Dsc_0130 滞納処分による差押えの場合には、国税徴収法55条による通知により根抵当権者が知ることとなるので、同通知を添付して元本確定登記を申請することとなる。

なお、いずれの場合も根抵当権者の単独申請でよく、その場合、根抵当権者が登記権利者となるらしい。

不動産登記法
(根抵当権の元本の確定の登記)
第九十三条  民法第三百九十八条の十九第二項又は第三百九十八条の二十第一項第三号若しくは第四号の規定により根抵当権の担保すべき元本が確定した場合の登記は、第六十条の規定にかかわらず、当該根抵当権の登記名義人が単独で申請することができる。ただし、同項第三号又は第四号の規定により根抵当権の担保すべき元本が確定した場合における申請は、当該根抵当権又はこれを目的とする権利の取得の登記の申請と併せてしなければならない。

次に、4号の「債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき」であるが、破産法改正により、根抵当権設定社が自然人の場合には、不動産に破産の登記が嘱託登記される。法人の場合は法人登記簿に破産の登記がされるが不動産登記簿には破産の登記がされない。また、実務上は、自然人の破産の場合にも不動産登記簿の破産の登記がされないことが多い。

とすると、自然人の破産で不動産登記簿に破産登記がなされた場合は元本確定登記をする必要はなさそうだが、それ以外の場合には元本確定登記をする必要がありそうだ。したがって、破産決定、官報等を添付して元本確定登記を申請することとなるのだろう。
そして、この場合も、根抵当権者の単独申請でよく、その場合、根抵当権者が登記権利者となるらしい。

さて、ここで注意しなければならないのは、「三号又は第四号の規定により根抵当権の担保すべき元本が確定した場合における申請は、当該根抵当権又はこれを目的とする権利の取得の登記の申請と併せてしなければならない」とされている点だ。典型例としては、根抵当権の代位弁済による移転登記とあわせて申請するような場合でなければすることができないということだ。

しばらく勉強を怠っていたが、たかが元本確定登記、されど元本確定登記、である。いつの間にか複雑なことになっていた。

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2012年1月24日 (火)

根抵当権者の請求による根抵当権の確定

平成15年民法改正前は、根抵当権の確定は、原則として、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により根抵当権の元本を確定する方法がとられていた(根抵当権設定時に、将来の元本確定に備え、根抵当権者から元本確定登記の委任状をもらつていたことも多いようであった)。

ところが、バブルがはじけ、銀行等が不良債権を処理するために、根抵当権で担保されていた債権の売却を容易に行う必要が出てきた。しかしながら、根抵当権設定者が行方不明になったり、根抵当権設定者の代表者が交代しており、以前徴求していた委任状を使用することができないなどの事態が増加していた。

そこで、平成10年、「金融機関等が有する根抵当権により担保される債権の譲渡の円滑化のための臨時措置に関する法律」が制定され、整理回収機構(RCC)やサービサー等に債権を売却する前提として、根抵当権の元本確定方法として、根抵当権の担保すべき元本を新たに発生させる意思を有しない旨を債務者に書面で通知したときには、根抵当権は確定するものとし、しかも、根抵当権者が単独で元本確定の登記申請をすることができることとした。

そして、平成15年には、上記の方法を民法に取り込む改正が行われ、上記の法律は廃止されるに至った。

それでは、改正された条文を見てみよう。

(根抵当権の元本の確定請求)
第三百九十八条の十九  根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から二週間を経過することによって確定する。
2  根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する。
3  前二項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない。

つまり、元本確定期日が定められている場合を除き、根抵当権設定者は設定の時から3年を経過すれば元本確定請求をすることができるし、根抵当権者はいつでも確定請求をすることができる。

ところで、根抵当権設定者が3年経過により確定請求をすることができるのは、根抵当権という権利に長期間拘束されることから離脱できる仕組みとして理解できるが、根抵当権者がいつでも確定請求できるとした理由はどこにあるのか。根抵当権設定者が、根抵当権で担保される元金の中身が決まらないという不安定さから早期に解放されるのだから根抵当権設定者の利益にこそなれ不利益にはならない、という形式的な論理から来ているようであるが、そのような理由付けは形式的で、個人的には疑問を呈せざるを得ない。

まあ、それはそれとして、とにもかくにも、根抵当権者はいつでも元本確定を請求することができ、その請求の時に確定するということになる。通常は内容証明郵便によることになるが、相手方の行方がわからない場合は公示送達によることになる。

(公示による意思表示)
第九十八条  意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。
2  前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して行う。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。
3  公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。
4  公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。
5  裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。

そして、この場合は、根抵当権者は、単独で元本確定の登記を申請することができる。

不動産登記法
(根抵当権の元本の確定の登記)
第九十三条  民法第三百九十八条の十九第二項又は第三百九十八条の二十第一項第三号若しくは第四号の規定により根抵当権の担保すべき元本が確定した場合の登記は、第六十条の規定にかかわらず、当該根抵当権の登記名義人が単独で申請することができる。ただし、同項第三号又は第四号の規定により根抵当権の担保すべき元本が確定した場合における申請は、当該根抵当権又はこれを目的とする権利の取得の登記の申請と併せてしなければならない。

Dsc_0129 ところで、根抵当権設定者が確定請求した場合の登記申請は共同申請で、

登記の目的 ○番根抵当権元本確定
原   因 平成○年○月○日確定請求(意思表示の到達した日)
権 利 者 根抵当権設定者
義 務 者 根抵当権者

となる。根抵当権者が確定請求した場合の登記申請は単独申請で、

登記の目的 ○番根抵当権元本確定
原   因 平成○年○月○日根抵当権者の確定請求(意思表示の到達した日)
根抵当権者 ○○銀行
根抵当権設定者(登記義務者) ○○
義 務 者 根抵当権者

となる(新不動産登記書式解説 テイハン)。

このように、誰が確定請求したかによって、登記権利者と登記義務者が逆転するということになるらしい。誰が登記権利者、誰が登記義務者になるかは形式的に利益を得る者、不利益を被る者で定まるという原則が崩れてしまったのか、はたまた、原則どおりなのか、よくわからない。(それとも、根抵当権者の確定請求の場合には、あくまでも単独申請という概念なのか?)

参考条文
(根抵当権の元本の確定事由)
第三百九十八条の二十  次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。
一  根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は第三百七十二条において準用する第三百四条の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る。
二  根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。
三  根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したとき。
四  債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。
2  前項第三号の競売手続の開始若しくは差押え又は同項第四号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。

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2012年1月23日 (月)

抵当権と滞納処分との優先関係

Dsc_0128 租税債権は、原則として私債権に優先して聴取できるように優先権が認められている(国税徴収法8条、地方税法14条)。

(国税優先の原則)
第八条  国税は、納税者の総財産について、この章に別段の定がある場合を除き、すべての公課その他の債権に先だつて徴収する。

ちなみに、「公課」とは「滞納処分の例により徴収することができる債権のうち国税(その滞納処分費を含む。以下同じ。)及び地方税以外のものをいう。」(国税徴収法2条5号)

しかし、担保権の優先順位の観点から、抵当権と租税債権の優劣関係については、抵当権者が担保権設定者(納税者)の租税の存在が明らかになる時期を基準として、その時期以前に設定されたものは租税債権に優先するという原則を採用している。

その「租税の存在が明らかになる時期」とは、具体的には、①租税の法定納期限等、②その財産を納税者が譲り受けた時期とされている。

そのいずれかの時期の前に設定したか抵当権は租税債権に優先する(国税徴収法16条等)。なお、①については設定契約の日はなく、設定登記の日による。なぜなら、その登記がないと、抵当権を第三者たる租税債権者に対抗できないからである。

ところで、法定納期限とは、原則として本来租税を納付すべき期限として定められている法定納期限をいう(国税徴収法2条10号)。例として、確定申告は翌年3月15日が法定納期限である。

では、融資をしようとする者は、抵当権を設定する際に滞納税金の存在を確認しなければならないが、通常は、納税証明を提出させることにより確認がされている。

なお、抵当権の被担保債権額を増額する登記がされている場合は、登記により増加した部分の被担保債権額については登記の時に新たな抵当権が設定されたものとみなして優劣関係を判定する。

ところで、滞納処分に遅れて抵当権が設定されている場合、滞納処分により公売がなされると抵当権は無効となってしまう。したがって、そのような場合には、抵当権者が滞納税金を代納して差押の登記を抹消することも考慮する必要がある。滞納処分の登記のある物件を担保に融資するのは異例であり、ちょっと怪しい(?)債権の場合が多いかもしれないが、代納することにより抵当権がすばらしい地位に躍り出ることだってあり得るのだ。

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2012年1月20日 (金)

請求異議の訴(野々垣バージョン)

Dsc_0127 今日の朝礼は、野々垣司法書士が取り扱った請求異議訴訟に関して、請求異議の訴の制度の概要の説明があった。

(請求異議の訴え)
第三十五条  債務名義(第二十二条第二号、第三号の二又は第四号に掲げる債務名義で確定前のものを除く。以下この項において同じ。)に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができる。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、同様とする。
2  確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る。
3  第三十三条第二項及び前条第二項の規定は、第一項の訴えについて準用する。

1項については、債務名義として22条に規定されているもののうち、裁判官が内容を判断していないものについては請求異議の訴えができると解釈すればよい。したがって、公正証書、支払督促がそれに該当する。なぜなら、公正証書は公証人が作成するもの、支払督促は書記官が作成するものだからである。

なお、既に強制執行に着手されている場合は、請求異議訴訟とあわせて強制執行停止の申し立てもあわせてすることになるが、執行停止するためには原則として担保の提供が必要となる。担保の額は請求されている額の4分の1程度と考えておけばいいが、事案によって高くなったり低くなったりする。野々垣司法書士が扱ったケースは、疎明がしっかりできていたのか、8分の1の担保で執行停止が発令された。

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2012年1月19日 (木)

公売により所有権を取得した者からの建物明渡請求

競売により建物を競落し、所有権を取得した者は不動産の引渡命令の申立をすることができる。

民事執行法  (引渡命令)
第八十三条  執行裁判所は、代金を納付した買受人の申立てにより、債務者又は不動産の占有者に対し、不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができる。ただし、 事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては、この限りでない。
2 買受人は、代金を納付した日から六月(買受けの時に民法第三百九十五条第一項に規定する抵当建物使用者が占有していた建物の買受人にあつては、九月)を経過したときは、前項の申立てをすることができない。

ちなみに、1項の「買受人に対抗することができる権原により占有」とは、以前勉強した民法395条1項の借家人を含むと考えていいだろう。そのために、2項では、「(買受けの時に民法第三百九十五条第一項に規定する抵当建物使用者が占有していた建物の買受人にあつては、九月)」と申立期間を3か月伸長している。

Dsc_0126 さて、競売の場合は、このように、簡易に不動産の引渡を命令する制度が設けられており、競売手続きの信頼性を高めているわけだ。以前、この手続きをやったことがあるが、まず、執行裁判所に不動産引渡命令の申立をして、命令が出たら、執行官ら執行の申立をするという流れであったと記憶している。

先日、競売ではなく、公売(注)により所有権を取得した方から、元所有者が居座り続けているのでどうしたらいいかという相談があった。そこで、いろいろ調べてみたが、公売の場合には、競売の不動産引渡命令に相当する手続きが用意されていないようだ。そうすると、まず、明け渡しについての債務名義を得なければならないことになり、訴訟等を提起する必要がでてくるわけだ。

もっとも、今回のケースは相手方と話ができたので、一定の猶予期間を与えたうえで明け渡す旨の即決和解を申し立てることにした。これは、物権的請求権であるから申立書は至って簡素だ。①申立人は所有権を有している。②相手方が権限なく占有している。③よって・・・。そして、和解条項案を添付する。

注)公売(こうばい)とは、滞納税庁が、国税徴収法に基づき、滞納税金の回収のために差し押さえた財産(不動産または動産)を換価するための手続きのこと。民間が行う競売に対し、官公庁が滞納税金の回収のために行うものを公売という。(出典 ウィキペディア)

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