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2006年10月

2006年10月31日 (火)

監査役の取締役会議事録署名義務

会計監査権限のみを有する監査役が取締役会に出席した場合には、その出席が監査役としてである以上、当該監査役は議事録に署名等を行う義務がある(「新・会社法千問の道標」366頁 商事法務)

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2006年10月30日 (月)

民事執行モデル記録

Kif_1272 民事執行事件について、どのような書式で申立てがされ、裁判所でどのような記録が作成されるか、時系列で書式を示したもの。上巻は不動産関係事件の記録、下巻は船舶・自動車・債権関係の記録がまとめられている。

民事執行は、書籍を読んでいるだけではなかなか頭に入らない。「生きた民事執行」として、一度、本書を見てみるとよい。  法曹会

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2006年10月29日 (日)

「憲法9条を世界遺産に」・・おもしろい発想だ

31751833 「憲法9条を世界遺産に」を読んだ。

僕は小さい時から日本が戦力を保持することには反対だ。「じゃあ、他の国から攻められたらどうするんだ」と言われれば、「死ぬしかないじゃないか」と考えている。

日本が、ごまかしごまかし自衛隊を作り、海外に派兵するようになり、ついに、ごまかしきれない世界有数の軍事力を持つに至った。

憲法学者や、憲法を学ぶ学生は、憲法9条についていろいろな解釈をしてこれらの歪んだ事実を、合憲だ、違憲だなどと種々の評価をしているが、憲法9条が軍事力を保持してはならないということを規定しているということは、条文を読めば小学生でも理解できる筈だ。

たしかに、日本国憲法はアメリカから押しつけられた憲法であり、「自前の憲法を持つべきだ」という論調もわかる。しかし、「この国に二度と軍事力を持たせてはいけない」というアメリカの願いと、「もう戦争などいいかげんにしてくれ」という日本国民の思いが一致して奇跡的に憲法9条ができた、という太田の力説は説得力がある。

ところで、当時、日本の国民は、、「もう戦争などいいかげんにしてくれ」と本当に思っていたのか? これを知るためにはまだまだ勉強しなければならない。しかし、特攻隊で散っていった方々たちの遺した手紙などをよくよく読むと、死は覚悟していても、平和主義者であったり、ロマンチストであったりする。そして、戦友と、草むらに寝そべって、星空を見ながら涙をこらえて遠い家族のことを語り合っていたのである。しかし、そうした本当の感情を抑えて「お国のために」と家族に伝えているのである。

「憲法9条を世界遺産に」

大変いいと思う。そして、些末な議論をしているよりも分かりやすく明快だ。憲法9条を世界遺産にするにはどうすればいいんだろう。署名活動かなにか、あるのだろうか?

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代表取締役の死亡

取締役2名の非取締役会設置会社において、代表取締役として定められている1人が死亡したとしても、残りの取締役が当然に代表権を有することになるわけではない(「新・会社法千問の道標」309頁 商事法務)

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2006年10月28日 (土)

訴額算定に関する書記官事務の研究

Kif_1273 民事訴訟の訴額算定について書かれた書籍。訴額算定についてコンパクトにまとめた数少ない書籍のひとつ。  法曹会

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2006年10月27日 (金)

補欠役員の就任承諾の時期

補欠役員の就任承諾は、補欠役員として選任された時点でも、補欠の対象となる役員が欠けた後でもよい(「新・会社法千問の道標」303頁 商事法務)

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2006年10月26日 (木)

約束手形金請求訴訟における要件事実とその立証

Kif_1269 手形金請求訴訟における基本的な事項の主張立証責任の問題について解説されている。手形・小切手訴訟については他にも多くの書籍がだされているが、本書は、約束手形について簡潔に解説している。  法曹会

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2006年10月25日 (水)

取締役選任決議の任期起算点

株主総会の決議で、取締役の選任決議の効力発生時期を遅らせるとしたとしても、任期の起算点については選任決議の日と解すべきである(「新・会社法千問の道標」286頁 商事法務)

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2006年10月24日 (火)

簡易裁判所における新しい様式による民事判決書について

Kif_1268 判決書のモデルを解説している。判決書は、全体を通じて、主文が導かれる論理的過程を明瞭に読みとることができる。逆に言えば、判決書を読み慣れることにより、具体的な事件において要件事実がどのように押さえられているかを知ることができる。

法曹会の本は、価格は安いが価値は高い。   法曹会

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2006年10月23日 (月)

募集株式発行時の定款添付の要否

株主割り当てによる募集株式発行について、決定機関を取締役会又は取締役が決定した書面を添付する場合は、定款の添付を要する。株主総会を決定機関とした場合には定款の添付を要しない 登記研究702 58頁

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2006年10月22日 (日)

民事訴訟第一審手続の解説

Kif_1267 「新しい民事訴訟の実務」(法曹会)とならんで、民事訴訟の具体的事例にもとづいて、時系列で具体的に訴訟を解説した入門書。これも、教材としての価値が高い。  法曹会

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ミニバー

Img_842802_14989653_0_1 そして、これがミニバーです。
ちょっと遊んでみました。

Img_842802_14989802_1

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2006年10月21日 (土)

司法書士会会員研修会

今日のテーマは「オンライン申請制度の問題点と司法書士」、講師は、元日司連執行部の齋木賢二さん。

不動産登記のオンライン申請の現状と問題点について、わかりやすく、丁寧な解説がなされた。特に、登記識別情報に関して問題点や検討状況などが説明された。

しかし、最後に、ふと疑問がわき上がった。それは、不動産登記のオンライン化に翻弄され、やれ、オンラインだ、半ラインだ、登記識別情報だ、本人確認情報だ、登記原因証明情報だ・・・などと司法書士内部で騒いでいる間に、大事なものを忘れてはいないか、ということだ。

その、大事なものとはなにか、それは、不動産取引において、司法書士が一体何の役割を担おうとしているのか、一体何になろうとしているのかというビジョンである。

ビジョンなしに、技術的な問題ばかりに血眼になっているのではないかと疑問が湧いてきたのである。

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割当決議の省略

少数の株主に対する割当てによって募集株式を発行する場合、申込者と引受人が事前に確定しているときは、募集事項を決定する際に既に判明している申込人による申込があったことを条件として当該申込人に対して株式を割り当てるとの条件付決議をすることで割当株式決定の決議を省略できる 登記研究702 56頁

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2006年10月20日 (金)

新しい民事訴訟の実務

Kif_1258 平成10年の改正民事訴訟法を前提として、①賃貸借契約の解除に基づく建物明渡等請求事件、②建物の建築工事の請負契約に基づく工事代金請求事件、③交通事故による損害賠償請求事件の3つの事例について、時系列にしたがって、具体的に訴訟事件を解説している。

民事訴訟の入門書的位置づけで、教材としても使用価値が高い。   法曹会

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会議室の手前は・・・・

Img_842802_14989302_1_1 会議室の手前は、ある程度くつろげるスペース(昼食などに使っている)と、図書スペースです。
本棚は特注で、たくさん入る優れ物です。

Img_842802_14989653_0

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2006年10月19日 (木)

支店所在地への本店移転登記申請書

管轄外への本店移転登記で、移転先に支店登記があるときは、申請書の本店は旧本店を記載し、その下に現地の支店を記載する 登記情報537 85頁

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2006年10月18日 (水)

不正競争争訟の上手な対処法

Kif_1260 不正競争防止法に関する数少ない書籍のひとつ。

この本自体は平成7年に出版されたものであるが、会社法の施行にともない、類似商号制度が廃止されたため、今後、不正競争防止法の観点から紛争を考えなければならないこともあるだろう。

当事務所では、実際に、こうした相談が持ち込まれることはあまりないが、知識としては必要であろう。  民事法研究会

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3階に行きましょう

Img_842802_14988306_2_1 3階は、ミニバー(と、勝手に呼んでいる)、図書スペース、会議室です。
まず、会議室から行きましょう。
会議室は、6畳ほどの広さのものが二つですが、実は、真ん中の壁を取り払って広い会議室にすることができる優れものです。
8~10人程度の会議まで大丈夫でしょう。

Img_842802_14989302_1

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2006年10月17日 (火)

第三者の承諾書 その3

不動産登記において利益相反行為に該当する場合の添付書面として、取締役会決議があったものとみなされた場合の会社法規則にもとづいて作成された議事録を添付する場合は、議事録の作成に係る職務を行った取締役の印鑑証明書を添付すれば足りる 登記研究701 215頁

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2006年10月16日 (月)

不動産訴訟の実務

Kif_1256 不動産関係の訴訟について、非常に詳しく解説してある。

編者のひとりである藤田耕三先生は、広島高裁の長官を最後に退任され、現在は弁護士として活躍されている。

藤田先生とは、日本司法書士会連合会の司法書士倫理策定委員会でご一緒させていただいた。この本は、藤田先生から謹呈されてもので、僕の宝物のひとつである。  新日本法規出版

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事務室はこんな感じ

Img_842802_14984894_3_2 事務室はこんな感じです。Img_842802_14988306_1 Img_842802_14988306_2

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第18回中央新人研修

Img_842802_14989802_1_2 もう10年近くなるだろうか。今年も司法書士中央新人研修で「本人訴訟と司法書士の役割」の講義だ。
今回の会場はパシフィコ横浜。昨日の雪で、横浜の街は雪景色だった。
外の清々しい寒さとは正反対に、研修会場は約900名の司法書士の卵で熱気が満ち満ちていた。

僕に与えられた役割は、「司法書士の卵たちが裁判手続に取り組むモチベーションを高める」というところにあると勝手に理解している。所詮、90分という短い時間ではあまり実務的な部分に突っ込むこともできないので、90分通して精神論を語ろうと決め込んでいるのだ。

自己紹介から始まり、僕がどうして裁判事務に取り組むようになったか、日々、どういうことに心がけているのかといった話から、「武士は喰わねど高楊枝」、「職業選択の自由の例外として業務の独占が認められいる。君たちはその責任を果たす必要がある」など、レジメと関係なく話はあっちこっちに飛ぶ。

本当にこんな話でいいのだろうかといつも思うが、まあ、毎年講師として呼ばれているのでいいんだろう。ところが、気がついたら、今回の7日間の中央新人研修で、僕以外の講師は学者や弁護士ばかりだった。つまり、司法書士として講師を務めるのは僕だけになっていたのだ。

という具合で、いきおい僕も熱が入る。そして、90分間ハイテンションで喋り続けるので、これが結構疲れるのだ。講義終了後、大勢の卵が控室まで僕に会いに来てくれた。そこで、輝いた卵の顔を見ると、疲れも吹き飛ぶわけだ。

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2006年10月15日 (日)

第三者の承諾書 その2

不動産登記において利益相反行為に該当する場合の添付書面としては、取締役会決議があったものとみなされた場合には、会社法規則にもとづいて作成された議事録を添付してもよい 登記研究701 214頁

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方広寺 講演録

Img_315086_4694756_0_1  ネクタイ姿の人を相手に講義するのは慣れているが、今日は少々趣が違った。袈裟姿の方行寺住職100名以上に「最近のサラ金・ヤミ金問題」の講義だ。お寺の住職も、檀家からいろいろな相談を受けることがあるらしく、借金の相談などもあるという。そうした際の参考になれば・・・ということらしい。

講義は、サラ金三悪、つまり、高金利、過剰融資、取り立ての問題に始まり、金利問題にからめてヤミ金や振り込め詐欺の問題にも触れ、任意整理、破産、再生など債務整理手続きの解説に入る。そして、エピソードなどを交えて事例を紹介し、サラ金利用者は被害者であるとしか言いようがない実態、被害者たちは解決方法として自殺までも選択枝としているという事実を指摘していく。
そして、最後は、借金の問題は命にかかわっている問題であること、借金の問題は絶対解決できることを再確認し、講義を終えた。
質問も出て、講義は盛況のうちに終えた。

Img_842802_14989802_1_4 ところで、プロフェッション(Profession)という言葉を知っているだろうか。ヨーロッパで、聖職者・医師・弁護士の三大職種を指して用いられた言葉であり、学識に裏づけられ、それ自身一定の基礎理論をもった特殊な技能を、特殊な教育または訓練によって習得し、それに基づいて、不特定多数の市民の中から任意に呈示された個々の依頼者の具体的要求に応じて、具体的奉仕活動をおこない、社会全体の利益のために尽くす職業であると言われる(定義は石村善助都立大法学部教授)。

今や、さまざまな職業でプロフェッション論が語られ、司法書士もプロフェッションたらんと様々な議論がされている。
住職さんを聖職者と呼んでいいのかどうかわからないが、ヨーロッパにおける定義からすれば、我が国におけるプロフェッションとして掲げることができるだろう。そうしたプロフェッションに対して講義をするというのも感慨深いものである。

        第12回住職・副住職研修会

                              平成17年6月10日

        「サラ金・ヤミ金問題の現状」

                        講師 司法書士 古橋清二

皆さん、こんにちは。只今ご紹介いただきました古橋清二です。よろしくお願いします。

ご紹介の中で、「司法書士の仕事以外で、色々なご相談をうけている」とありましたが、実は相談を受けているのは全部司法書士の仕事です。といいますのは、おそらく皆さんは司法書士といいますと、不動産の登記ですとか、建物の登記、会社の登記。皆さん方でいいますと、宗教法人の登記、こういうことをやるのが司法書士だと思われていると思います。一般世間でもそう思われていると思います。実は、司法書士のもう一つの大きな仕事は裁判関係の仕事があります。これはあまり知られていないのですが、知られていないのは当然でして、司法書士の誰でもが裁判手続きをやっているかというとそうではありません。浜松市に約70名の司法書士がいます。この中で裁判関係をやっているのは10~15人くらいで、非常に少ないということもありまして、テレビドラマなどで法律問題といいますと、当然弁護士ということになると思うのですが、なかなかその知名度が低いんです。しかし、実際仕事として色々ご相談にのって裁判を行っているという現状があります。

私の事務所では、今日お話するようなサラ金、ヤミ金のご相談を、年間で400~500人くらいの方の相談を受けていて、1日平均2人くらいの新たな相談があるというような状況で、事務所はいつもパニック状態です。

自己紹介をさせていただきますが、平成2年に司法書士の登録を致しまして、今こういう形で裁判手続きをやるということは全然考えていませんでした。開業しまして最初ひとりぼっちで始めたわけですが、当然暇で、事務所でいつも「仕事がないなあ」と言っていたわけですが、ある時、近くの弁護士事務所の弁護士さんが、ある方(弁護士さんへの依頼者)が、「サラ金にお金を返しに行くので一緒についていって欲しい」と。「付いて行って欲しいというのはどういうことか」と言うと、この方の家を担保に入れちゃったんですね。担保に入れたということは、お金を返済するからそれと引き替えに担保を抹消する書類を預かって、それを確認して欲しいということで話があったんです。別にそれ自身はなにも難しい話でなくて、「わかりました」とついて行ったわけです。ところが、その2日後くらいに、この方は女性の方だったんですが、突然事務所を訪れまして、「どうしたの?」と言うと、「実はまだ色々借金があるんだ」と、こういうことを話し始めて、「それは弁護士さんに相談したらどうなの」と言うと、「弁護士さんも色々忙しくてなかなか取り合ってくれないので相談に乗って欲しい」と言うのです。

これが私の借金の問題との出逢いといえば出逢いですね。司法書士の試験というのがありまして、色々な法律を勉強して試験を受けるわけですけれども、その中で民法とか色々あるわけです。お金の貸し借りの中で、「利息制限法」といって利息の上限を定めた法律があります。これが金額によって違うわけです。何十万といったお金の貸し借りでは、「利息は年18%が上限です。それ以上は無効です」というふうになっているわけです。

私は試験勉強を受けてきたのでその知識しかないわけです。ところが実際その方のお話を聞いたり、現状をみていると、利息が40%と書いてあったり、38%と書いてあったりという契約書や書類がボロボロ出てくるわけです。しかもそれがその辺の町金融とか個人でやっているような所でなくて、テレビでコマーシャルをやっているような大きな会社がそういう契約をしている。これは一体どういうことか。全然そこでは理解できなかったわけです。そこで色々勉強するということになったわけです。今でこそ本屋さんに行くと色々破産関係の本だとか、債務整理の本だとかあるわけですが、当時、まだ平成の初め頃、平成2年頃はまだそういうような本もほとんどないという状況です。ちょうどバブルも終わりかけの頃で、自分で法律を色々紐解いて調べてみると、いろんなことがわかってきたわけです。

いろんな歴史的な沿革があるわけですけど、先程言いました「利息制限法」。これはいってみれば利息の憲法、絶対守らなければいけない憲法です。ところがもう1つ法律がありまして、「出資法」という法律があります。当時は出資法という法律で利息が年40.004%となっていました。004とか細かい数字が出てきますが、それは日歩計算で100円借りたら1日何分の利息が付くかということで、365日借りたらそういうような数字になるわけです。当時は、40.004%が上限とわかってきたわけです。そうすると、ダブルスタンダードになっていまして、利息制限法と出資法の利息はどういう関係があるかと言いますと、40.004%を越えるような利息で貸し付けをしたら捕まると、そういう利息ですね。ところが利息制限法の18%という利息は、これを越えて貸し付けしても無効であるだけで、なにも刑事的な罰はないということです。ですからいわゆるサラ金というところは18%から40.004%の間で商売をしている。つまり、捕まらない金利である。無効であるけれども利息をもらって、借りた本人が異議を唱えなければそのままになってしまうということです。

今回の研修会のテーマは「騙し」というテーマらしいですけど、まさに僕が日々仕事をしているのは、ああいったテレビでコマーシャルをやっている業者であっても、これはもうだましだと考えているわけです。そういった白でもない、黒でもない灰色の部分でまさに商売をしている、そういったことがわかってきたわけです。

今日の資料で、「サラ金問題とは何か」と書いてあるわけですが、まず第1番目の問題は金利の問題です。現在では出資法で先ほどの40.004%というのが下がって29.2%ということになっています。これはなぜ下がったかといいますと、きっかけがありまして、5年ほど前、いわゆる商工ローンというのがありまして、『日栄』、今は会社の名前を変えてしまいましたが、日栄という中小の事業者に貸し付けをする業者があるわけで、この業者が取り立てをするわけですけど、その業者が「腎臓を売れ」だとか「目ん玉を売って金にしろ」だとかこういうことをいって脅かして金を払わせた。こういうことが社会問題になりました。それがきっかけで金利の問題がクローズアップされて29.2%まで下げようということになったわけですね。これは段階的に出資法の金利というのは下がっているわけで、昭和50年代は109.5%だったんですね。それが段階的に54.75%になってようやく29.2%まで下がったとこういうことになっているわけです。

今は非常に低金利の時代で、サラ金各社は銀行から借り入れをして、貸し付けをするわけですが、借り入れの利息は、2%、3%で、それをこういった高金利で貸し付けるというような商売が非常に繁盛しているということです。今日の静岡新聞の朝刊にもアメリカの『フォーブス』という雑誌が金持ちの名前を出しているわけですが、日本の金持ち何人かを出したらしいんです。その順位の中にやっぱりサラ金の社長、オーナー数人が入っていますよね。これはちょっと異常な世界という気がします。

例えばドイツ。私は行ったことが無いんで聞いた話ですが、ドイツでは貸し付けの時に10数%金利を取ると、これはもう逮捕される。もっといえば、お金を払わないからと、電話でガンガン取り立てをすると、これはもう「テレフォンテロ」ということで非常に問題になるということらしいです。ところが日本では借りた者の弱みと、貸した者の強みで、こういった金利だとか、ひどい取り立てだとか、こういう現状があるわけです。

ちなみにそこに「日賦貸金業者」というのがありますが、これは特例がありまして、日賦貸金業者というのは例えば、スナックだとかそういう事業をやっている方に貸し付けをすると、ほとんど毎日のように取りに行く。週に5回くらい集金に行く。こういう業者で、そういう手間がかかるから出資法でも特例として、54.75%という金利を取っていいと、捕まらない範囲であるということになっていますが、こんな金利も通常考えられない。皆さんではちょっと考えられない利息になるわけです。そういった金利の問題があるということです。

実はこの金利の問題、今、見直しの時期に入っていまして、多分、来年あたりはこれをどうするのか。当然私たちはもっと下げろ、18%まで下げろという運動をしているわけです。業界の方は上げろ、規制緩和だからこれを撤廃しろというふうに言っているわけです。

それで、今日はヤミ金の話もしますが、ちょうど5年ほど前に金利が40%から29.2%に下がったのとタイミングを同じくしてヤミ金というのができたわけです。古典的なヤミ金というのは、例えば当初3万円くらい貸し付けして、1週間ごとに3万5000円位返させる。金利もなにもへったくれもなくて、滅茶苦茶な貸し借り。これはもう貸し借りと言えないくらいのことなんですが、これを利息で計算すると、3000%とか5000%とか途方もない利息になるわけです。業界側の言い分としては、金利を下げたから、食えなくなった金融業者がヤミ金に走ったという言い方をして、出資法の金利を上げろ。あるいは、規制緩和だから撤廃しろという主張をしているわけです。別にヤミ金融をやって捕まっている連中が元々金融業をやっていたかというとそうではなくて、暴力団と繋がっていたり、あるいはその辺の若い連中、22~3歳の連中がやっているわけで、僕らはそれは関係ないと主張しているわけです。金利は出資法、利息制限法でそういった規制があるということです。

次のサラ金の問題として、そこに「過剰融資」と書いてあるんですが、お金を貸す、融資をするといった場合、当然その人の返済能力がどうかとか、担保がどうかとか、事業をやっているのなら事業計画がどうなのか、そういうことを考えてお金を貸すということが通常であろうかと思います。けれどもサラ金の場合はそんな事は全く考えていません。全く収入のない主婦であっても平気でいきなり50万円くらいポーンと貸します。じゃあ、返済が危ないんじゃないかということですけれども、サラ金の方はおそらくその主婦から返してもらおうなんてことは全く考えていません。ご主人の給料、あるいは実家のお父さん、お母さん。場合によっては、返せないのであれば他のサラ金から借りてきて返してくれということです。ですから、返済能力がなくてもどんどん、どんどん貸し付ける。最後に誰が「ババ」を掴むのか、こういう話になります。「ババ」というのは、破産したり、夜逃げとか、そういうことですけれども、そこまではどんどん、どんどん貸し込む。その方の返済能力をいちいち考えるよりも、無差別に貸した方が利益が出るということのようです。

ここに書いてありませんが、もう一つの問題というのは過酷な取り立てです。私は平成2年に司法書士になりましたので、あまり昔のことは知らないんですが、昭和50年代は、いわゆる「サラ金地獄」という時代があったようですね。サラ金地獄というのは、サラ金が地獄に堕ちたわけではなくて、サラ金によって市民が地獄に堕とされた。例えば玄関のドアに、「金返せ」だの、そういった張り紙をベタベタ張るだとか、拡声器で「こいつは泥棒です」とか近所にわめいて、嫌がって観念するのを待って金を払わせるだとか、そういうことが横行していたようですね。そこで自殺者、あるいは夜逃げというのが大量に出た。そういうことがあったようです。その反省から昭和59年に、貸金業を規制する法律ができて、具体的にこういう取り立てをしてはいけないということが定められたわけです。

その「貸金業規制法」をみますと、非常に面白くて本当に具体的に書いてあるんですね。

l                大声を出して取り立てしてはいけない

l                張り紙をしてはいけない

l                職場まで電話して取り立てしてはいけない

だとか、法律にしては非常に具体的に書いてある。何故そんなに具体的に書いてあるかというと、それはそういうことをやって来たからです。そういうことをやって来て非常に困ったからそういうことを具体的に規制している。だから現実にそういう時代があったということですね。

では「今はどうなんだ」ということなんですけれども、確かにサラ金については、表面的にはそういったような取り立てはしていないと思います。ただ非常に陰湿といいますか、そういったサラ金から職場まで電話が来たらもうそれだけで嫌ですね。それが1日に2回も3回も来たら、それだけで「一体お前、何やってるんだ」という話になりますね。こういう形でサラ金というのは人の心理を読んで、こういったことをしたら嫌がるだろうということをやってくるわけですね。

話は飛ぶんですが、銀行が非常に不良債権を抱えて経営が苦しい。そういう時に、「銀行はサラ金の経営を見習え」というようなことを言われたわけですけれども、これは非常におかしなことで、サラ金のやっていることを直視してないと僕は思っておりました。こういった高金利の問題、過剰融資の問題、そういった取り立てがあるものですから、取り立てが怖いからまた借りる。借りに行くとジャブジャブ融資すると、その金利が高い。で、返せなくなる。するとまた取り立てをうける。そういったことがぐるぐる回ってしまうわけですね。

どのくらいこういったサラ金を利用している人がいるかというと、おそらく皆さんの想像をはるかに超えているんではないかと思います。『武富士』が業界で最大手のサラ金ですが、お客さんの数、口座数ですけれども300万件近いですね。300万人近い人が利用しているわけです。後はある程度有名な『アコム』ですとか『アイフル』、そういったところでも2百数十万人お客さんを抱えている。もちろん一人で何カ所からも借りていることも当然あるわけですけれども、だからものすごい数ですね。表面上では、サラ金の問題というのは、昔からの社会問題ですから、マスコミもあまり目新しくないんで取り上げないんですが、これは非常に大きな社会問題だというふうに思います。

もちろんこういう話をすると、「そんな高金利で借りなければいいじゃないか」という話ですとか、「借りたら返すのは当たり前でしょう」とかいう話が出るわけですが、それは当然の話なんですが、ただ問題はそれほどシンプルではないというふうに考えるわけです。

具体的に少しイメージして頂きたいんですけど、普通のサラリーマンの家庭で、ご主人が20万円とか25万円くらいの手取りを得て、奥さんがパートに出て月に5~6万円の収入を得ている。それで、子供が小学校、中学校に通っている。普通の標準的な家庭ですね。そこで家賃を月6~7万円。あるいは住宅ローンを払って、もちろん食費、電気、水道、ガス、学校の校納金だとか、そういうものも払わなきゃあいけない。そうするとおそらくそんなに余裕はない。いっぱい、いっぱいなんですね。月に1万円くらい貯金ができるかどうか。車のローンなんかがあったらますますそうですね。そういうのが標準的な家庭だと思うんです。こういう中で何かの事情があって、あるいは子供が病気をしてお母さんがパートを休まなきゃあいけない。そうすると収入が月に数万円減るわけですね。減ってどうするかというと、今までは、皆が健康で毎日学校へ行って、毎日働きに行って、そういう前提で成り立っている家庭が崩れていく。崩れるからしょうがないから、最初は月々1万円ずつ積み立ててあったお金を少しずつ取り崩して生活したり、あるいは生命保険を解約して、解約金で生活をしたりするわけですけど、いよいよ足りなくなる。

おそらく昔であれば実家の援助を求めたり、ご近所でお味噌を借りたりとかあったんでしょうけれども、今はそういう世の中ではないものですから、何とかしなきゃあと。特に家庭で旦那さんが威張っている。俺が働いて給料をやっているんだから、それで月々やり繰りをするのが女房の勤めだということを言っているんですね。家庭のお金がどうなっているのか、本当に無関心な旦那さんがいるんですね。そうすると奥さんは「お金が足りない」なんていうと怒られるものですから一人で悩む。一人で悩んで、ボーッとテレビを見ているとサラ金のコマーシャルが朝から晩まで流れている。それから新聞の広告やチラシに簡単に借り入れできそうな、非常にさわやかな広告が入っているんですね。「じゃあちょっと10万円くらい借りてみましょうか」と、こういう気持ちになる。これはしょうがないことですね。そこで恐る恐る電話をしたり、お店に行ってみる。サラ金のお店も非常に今や爽やかでありまして、まあ銀行とまではいわないですけども、小じんまりした事務所のような形で女性なんかが応対していて爽やかな事務所ですね。で、「お幾ら御利用ですか?」ということで、とりあえず10万円ぐらい借りてきちゃう訳ですね。で、「案外簡単に借りられたな」ってことで段々抵抗感が無くなってくるんです。

大体10万円ぐらい借りると月々の返済が8千円とか1万円ぐらいですね。それを一生懸命返済します。で、先程のように生活費ぎりぎりの中で、月々1万円返していくことになる訳です。ですので、これはなかなか大変なことで、食費を削ったりして返していく。そうするとそれを2~3ヶ月続けていくと、必ずサラ金というのは連絡してくるんですね。「非常に真面目に返してくれてますから、枠が上がりました。是非お店に来て下さい。契約を書き換えます」という事でお店に呼ばれるわけですね。最初は、「いやいや、結構」なんて言っているんだけれども、段々「自分はそんな信用があるのかな」と錯覚を起こしまして行っちゃう訳ですね。で、行っちゃって、「残金は8万円ですよ」と。「30万円まで枠を上げましょう」という事で20万円ぐらい借りてきちゃう訳ですね。で、そういった借りたお金というのはどうするかというと別に貯金なんかしている人はまずいませんよね。何に使ったかというと別に何に使ったかという記憶もない。「今まで2~3ヶ月我慢して生活してきたから少し家族と食事に行きましょう」とか、せいぜいその程度の話で、あっという間にもう無くなってしまう。こういう風なことになることが多いようです。今度30万円借りますと毎月の返済が1万8千円ぐらいになってきますからまたまた大変な事になる。

サラ金の貸し付けというのは、まあ50万円まで無担保です。「50万円までですよ」と法律はなっています。現実はもっと貸してますけどね。で、50万円まで枠が上がると「後は返済するだけですよ」という話になってきますので50万円まで借りて月々2万3千円ぐらい返さなければいけないという状況になって、とても無理なんで、今度は他のサラ金に行ってまた10万円借りてくる。そうするとまた簡単に借りれたという話になる訳ですね。この繰り返しなんですね。特に先程言ったような旦那さんが威張っているような家庭はバレたらまずいんで、1日でも遅れたら電話が直ぐに掛かってきますから一生懸命返す。サラ金にとってはこんな良い客はない訳ですね。旦那さんにもご相談出来ずに借金がどんどん増えていってしまう。

サラ金から借りてる場合、毎月返すのは借金の総額の5%ぐらいですね。だからこれが何件も重なって200万円。サラ金の借金が200万円になってしまったら月々10万円ぐらい返していくんです。先程の家庭ではとても無理なんです。どこかから借りてこないととても返済はできない。そのような形で借金が増えてくるということです。

もちろんその中にはパチンコをやっている方とかそういう人もいる訳ですけれども、案外そういう人は少ない訳で、やはり僕は「日本人は真面目だなあ」と思うんですけれども、ほとんど生活費だとか医療費だとかそういうことで借りる人が多いんじゃないかとこういう風に思っております。

では、今の奥さんが一体その200万円なり300万円なり膨れてしまった借金を何に使ったかということなんですけれども、聞いても何にということはない訳ですよね。もちろん最初に子供が病気になったので医療費だとか生活費が足らなくて10万円借りた。それでまた枠が増えたので少し食事に行ったという事はあるかもしれません。ただ後はもうひたすら返済なんですね。返済するために借りる。こういうことで一体奥さんが何を責められることをしたのかという風に思う訳です。そういう風な誰でも陥り易い問題なんですね。また、そういうところに付け込む連中、悪い連中がいろいろおります。

例えば「紹介屋」なんていうのがいますね。皆さんは見ないと思いますけれども低俗な雑誌がありますよね。雑誌なんかに、「借金を一本化します」とか、「審査なしで直ぐ融資します」だとか、ほとんど東京の業者なんですけど、そういった広告、ちっちゃい広告があります。いっぱい出ている訳です。で、いよいよ困ってその雑誌を見て電話とかしてね、「借り入れをしたい」という申し込みをすると一応向こうでは審査らしきことをするんですね。「今、何件で幾らぐらいあるんですか?」「収入はどれ位ですか?」こういう事を聞くようです。ただ実際に審査なんかしてないですね。最初から貸すつもりはない。で、「一応審査をしますから審査が終わったらまたご連絡します」ということで連絡をしてくる。或いは連絡させると、「残念ながら今回は無理です。ただ、うちの方でコンピュータを操作してやりますから、近くの浜松駅前のニコニコクレジットというのがあるからそこに行って50万円借りてきなさい」と。で、「コンピュータ操作しておく」だとか、或いは「あそこは店長を知ってるから店長にお願いしてあげる」ということで「行って来なさい」と。その代わりにそういうような形で紹介するものですから、「借りたお金は6割うちに払って下さいね」というような形。これがいわゆる「紹介屋」。これはあくまで違法ですけど、そういう業者も東京にいっぱいあります。

とにかく明日の返済に困っている訳で少しでも10万円でも必要なわけですよね。で、藁をも縋る思いでそういう雑誌を見て電話して、結局もう何も思考能力が無くなった状態でニコニコクレジットに借りに行くんですね。で、50万円を借りて30万円を紹介屋に払って手元に20万円残って「ああ、良かった」というような話になる。こういうのを騙しのテクニック。テクニックと言いますか、普通の状態であれば「そんなバカな」って話なんですけれども、やっぱり返済でその追い込められている人は簡単に引っ掛かってしまう訳です。

それとか「換金屋」なんていうのもありますね。大体勧誘する手口というのは先程言ったのと同じですね。雑誌なんかに広告出して、そうするとまたその審査をして、「ああ、今回無理です」と、こういう話をするんですけども、「あなたクレジットカード持っていませんか」という訳ですよ。で、或いは、「そのクレジットならまだ使えますよ。浜松でしたら駅前に、『山田電器』ってとこがあるから、そこに行ってソニーのビデオカメラ『VS何とか』というのがあるからそれを2台クレジットで買いなさい。そうしたらウチのほうで買いとってあげますよ」というようなことを言う訳ですね。で言われたように行ってそのクレジットを書いて申し込みをすると通っちゃった。それでビデオ2台40万円ぐらいで買って、それで東京に送ると1台7万円ぐらいで買い取ってくれて「ああ、良かった。お金が入った」と。ところが40万円のクレジットをこれから払っていかなきゃいけない訳ですね。そういった商品の末路がどうなっていくのか僕はよく分かりませんけれども、そういったことでクレジットの債務を抱えてしまうというようなことで、これはある意味、お互いに騙して騙されてというか、もちろんその東京の業者はそういう形で騙している訳ですけど、利用しているクレジットで買い物をした本人も実は騙しているんですね。何を騙しているかというとそのクレジットで買った商品というのはあくまでもクレジット会社のものなんですね。クレジットを支払いきるまではその人のものを売ってしまったということなんで、これは後々いろいろ問題になってくる訳です。その東京の業者はそんなことお構いないのでとにかくそのソニーのビデオ1台7万円で手に入ったと、こうなる訳ですね。

それから、「システム金融」なんていうのが一時期ありまして、それこそ5年ぐらい前に盛んにあったんです。「システム」というのは、今でいう「ヤミ金」と一緒なんです。特に資金繰りに困ったような事業者にいちいちFAXを送ってくるんですね。「融資しますよ」と。「手形か小切手を送ってくれればすぐ融資しますよ」なんてことでFAXを送ってくる。金利もメチャメチャな金利ですよね。それこそ何百%という金利で融資をする。商売人にとっては、手形とか小切手とか不渡りになるというのはもう致命的なんですね。もう商売ができない、銀行取引ができないということになりますから、一旦手形を出して、一応お金がある程度入った。それでなんとか事業が進められるけれども、「さあ、返済期日が近づいてきた」ということになると、それを落とせないと、お金を当座預金に入れないと不渡りになってしまう。「不渡りになってしまうと事業ができなくなりますよ」ということになるものですから一生懸命金策を考える訳ですよね。で、その時に別の業者からまた勧誘がくる。「融資しますよ」と。「あっ、そうか。金利は高いけれど、これで借りればなんとか明日手形を落とせる」という事でまた申し込みをする。で、これがあっという間に2~3ヶ月そういうことをやっていると、もうそういった業者は50社ぐらいから借りてるということになる訳ですね。

実は「システム金融」という「システム」というのはそういった業者で繋がっているんですね。当然、「あそこのAという業者が融資した。これの支払い期日はいつだ」というのが分かっていて、「じゃあ、そろそろいいだろう」ということで次の融資の勧誘をするといった「システム」なんですね。そういう非常に大問題が起こってきてそれが少し鳴りを潜めてきたかなと思ったら今度はヤミ金です。やり方は全く一緒ですね。ただ対象が違う。システム金融はご商売をやっていた方なんだけれども、今度はもう市民、市民ですよ。市民に対して同じような、金額的には小口なんですけれども、契約書も何もないですよ。電話で、「じゃあ、3万円融資しましょう。1週間に1回返済してもらいます。3万5千円です」とこういう訳の分からないことを言う。で、「1日遅れたんであんた違約金10万円だ」とかね。なんの計算もないんですね。やっている連中がメチャクチャな連中なんで、言っている事がメチャクチャで、僕らも電話で喧嘩をするんですけれど、もうメチャクチャな訳です。そういうような連中は、どこからそういった「困っているよ」という情報を得るかということなんですけども、大抵ブラックリストのようです。

ブラックリストというのは、「返済が滞る」、或いは「破産をした」とか、「債務整理をした」とか、こういうのが信用情報ですね。銀行だとかクレジット会社とかサラ金で信用情報をコンピュータをみんなで使ってそこに登録するんです。こういう情報がどこかから洩れてリストになって売られている。売られてそういう業者が勧誘してくる。これも同じように1週間3万円返さなければいけないという時に、また他の業者から電話が掛かって来るのでどんどん借りる。しかもこれは借りる時にいろんなことを言わされる訳ですね。勤務先の会社名、電話番号、お父さん、お母さんの電話番号。或いはその兄弟の勤務先の電話番号、そういったことを全部言わされる訳です。だから1日でも遅れると職場にジャンジャン電話が入る。それこそ物の言い方なんていうのはもうサラ金の比じゃない。「今から行って身の安全は分からんぞ」とかね。僕なんかはそういった対応をしているものだから、うちの事務所に5人前ぐらいピザが届いたりね。まあ、それはもちろん丁重にお断りする訳で、うちの事務員は、「先生、気が利いてる」なんて言っているんだけども、そうじゃなくてそれは勝手に向こうが送ってきたもので…。

それとか、私は「古橋」という名前なんで、これは浜松地方に多い名前ですよね。「古橋清二」なんてありきたりの名前ですね。私は自分の自宅というのは電話帳とか104に載せてないんです。ところが舞阪に古橋清二さんという方がいらっしゃって、そこに嫌がらせの電話がガンガン入る。そこからどうもおかしいということで、うちの事務所に電話が掛かって来て「お宅じゃないの」とかいう話で「多分そうでしょ、申し訳ない」と。そうしたらやっぱり血筋は争えないというか「一緒に戦いましょう」なんてことを言っていたけれども、そのような嫌がらせは、僕らは別にいいんですが、ただ借りている本人は参っちゃいますよね。ほんとに会社のほうでも、「こいつ何やっているんだ」ということで「クビだ」ということになってしまう訳ですよね。

それで、「架空請求」なんていうのはいっぱいありますけれど、あれも訳分からないですよね。何の身に覚えもない、それこそ何か「アダルトサイト、インターネットの料金が滞納しているんで、それが30万円なっています」みたいなハガキが来て、「そういえば、あの時ちょっと見たかな」という覚えがあると、「まあ、30万円ぐらいだったら払えるかな」ということで払ってしまう。或いは問い合わせしてくるんですね。「どういうことですか」と問い合わせすると、もう向こうでこちらの電話番号分かりますから、それでもうジャンジャン先程のヤミ金と同じような取立てが入る。こういうことになる。だから架空請求なんていうのは、あんなのデタラメなので「身に覚えのない物に対しては電話をしない」という対策しかないんです。「振込詐欺」なんていうのも全く一緒ですね。一緒というか恐らくやっている連中は同じような連中だと思うんですよ。ただ手を変え、品を変えやってくる。恐らく向こうはゲーム感覚ですね。「今度はどうやって騙してやろうか」という事だと思うんです。「交通事故で云々」とかね。「妊娠させちゃった」とか、「今度何でやろうか」というようなことで考えているんじゃないかと。で、これが何でこういう商売が…商売じゃないね、こういうことが横行するのかというと、やっぱり2つ問題があって、一つは携帯電話。携帯電話のプリペイドはコンビニエンスストアなんかで携帯3千円分の通話だとかということで買えますよね。あれが、今は携帯会社によっては「身分をちゃんと明らかにしないと売りません」だとかというところもあるんですけれども、あんなの簡単に買えてしまう。大体こういうことをやっている連中は携帯電話ですね。携帯電話だから何処にいるか分からない。電話番号は分かるけれども、捕まえようがないということが一つの問題。

それから後は口座。銀行の口座が売買されている。最近は法律ができて、銀行の口座を売買することについても罰則ができましたけれども、銀行の口座、通帳をいっぱい持っている訳ですよね。いろんな名義の通帳を利用して足の付かないような形でそういったことをやるというようなことが横行をしている。本当に「日本はどうしちゃったのかな」という風に思う訳です。

それで、僕がある時、ヤミ金の奴と電話で話をしていて向こうに諦めさせたんですね。「もう止めろよ、こんなこと」という話もしたんですけれども、そいつはせせら笑ってましてね。「幾ら先生が頑張ったってこういう問題は無くならないんだ」と。「こんなお金の貸し借りの問題なんて江戸時代からあるんだよ」という訳ですね。「ああ、なるほどな」と思いましたね。昔は勿論知りませんけれども「借金払えなかったら娘で払う」だとかそういう事があったようですから、「ああ、そうかそうか」と思ったんです。確かに「お金の問題というのは昔からあって、今後も多分あるんだろうな」とこういう風に思った訳です。

次に、「サラ金は国民の心理的抵抗を払拭してしまった」という事ですけれども、昔であれば恐らく昭和40年代、或いは50年代もそうだったかもしれないけれども、こういった高利貸し、いわゆる高利貸しがどこか裏筋の通りにあるとか、人目を避けてお金を借りる、質屋みたいなものだったと思うですけれども、今では若い人に言われるんです。「『アコム』って銀行じゃないんですか」と言うんですよね。「そんな馬鹿な」という話をするんだけれども、銀行とサラ金の区別が付かないような状態。コマーシャルを流して「『アコム』っていったらあの娘が可愛いな」っていうとか、そういうような感じになっちゃっている訳ですね。昔は裏筋にあったのが、藤枝の駅前なんかサラ金しかないんですもんね。そういうような形で人目に付くような形、藤枝の方がいたら申し訳ないんですけれども、もう本当に心理的抵抗感をなくすような作戦で商売をしているということですね。

次にその「資金調達の多様化が更に追い風」ということがあるんです。お金を貸すわけですから、その融資するお金を何とか調達しなければいけないということになる訳で、これはまず元凶は銀行なんですよね。銀行は「私達はそういうことはしません」ということを言いながら、言いながらというかそういう顔をしながら、サラ金にジャブジャブ融資しているんですね。で、非常に銀行にとってサラ金は良い顧客な訳です。ついでに言うと「正にサラ金というのは日本の構造そのものだなあ」と思うんです。銀行がどんどん融資するでしょ。サラ金の役員の構成というのはいろいろ調べれば「どういう人かな」って分かるんですが、勿論創業者もありますけれども天下りが半分ぐらい入っていますね。昔でいう大蔵省、今でいう金融庁。大体こういったサラ金というのは監督官庁が今でいう金融庁です。そこから天下っている。或いはその金融庁だから税務署とかもあるんですけれども、そこから天下っているのが役員に入っているということです。

では「株主は誰なんだ」という風に見ると、もちろん創業者等もいっぱい持っていますけれど、金融機関だとか生命保険会社、損保会社なんていうのがいっぱい持っている。正にこれは「日本の古典的な社会構造そのものだな」という風に思う訳です。

銀行がジャブジャブ貸す訳ですけれども、平成4・5年だと思うんですが、初めてサラ金が上場したんですね。『プロミス』かどこかだったと思います。株式を上場した。そうすると市場から資金をガサッと集める訳です。株式を発行して集めることができるということになる。株主に対してはチョロっと配当しとけばいいものですから、市場からガサッと金を集める。それから相次いでサラ金が上場するようになった。

当時サラ金が上場するか、しないかという時に、僕も違う浜松のある事業をやっている会社の上場のプロジェクトに顔を出していまして、そこに証券会社の上場を担当している職員が来ていたんですね。で、食事をした時に、「何であんなサラ金を上場するんだ」という風に言ったら、やはり景気が悪いものですから、証券取引所としても手数料収入が下がっている。手数料収入というのは、上場している会社が証券取引所に年間幾らか払うらしいですね。その収入が減っている。多分取引料とかそういうことで決まってくるんじゃないかと思いますけれども、そこで新しい会社をどんどん上場させていかないと立ちいかない。それで、今景気がいいのはサラ金だという訳で、それでサラ金の上場に踏み切ったという事らしいんです。それからもう相次いでサラ金の上場をして、市場からガサッとお金を持っていく。それで高利で貸し付けをするということになっちゃった訳ですね。こういう問題は大きく捉えると色々な問題があるんですけれども、とにかくそういった問題も見ながら個々の相談者に対応していかなければならないとこういうことになる訳です。

まずその金利の問題ですね。僕らが相談に応じる時に、分かり易く言うと今日の資料の後ろのほうに「計算書1、計算書2」と書いてあるページがあります。左上に「利息制限法の引直計算例」こう書いてあります。「計算書1は業者計算」。「計算書2は利息制限法引直し」と書いてあります。左のページの計算書1を見ますと、平成14年11月に30万円借りて月々返済した。また途中で借りて返済して、繰り返しているわけです。それで「利率」というのが真ん中にあります。これは29.2%。これがサラ金の金利です。これで計算をしているわけです。そうしますと一番右の「残元金」というのがありますが、元金がいくら減ったかということが書いてあります。ズーッといって平成17年の4月28日時点で約23万円ぐらい残っていますよ、とこうなるんですね。ところが右のページへいきますと、計算書に、これは取引日、借入日、返済額等は左のページと全く同じです。それを利率、18%でもう一度計算をして見ますと、残元金が14万円チョット。まさに半分ぐらいになります。本来は法律上払わなければいけないのはこっちなんですね。ところがずっと騙され騙されして、今23万円ぐらい残っていますよというふうなことです。

それで、僕らに相談があって依頼を受けるとサラ金に必ず開示請求します。「何時、幾ら貸して、何時、幾ら返済したのかというのをよこせ」と。大体こういった借り入れしている人はほとんどとってないですね。家族に内緒とかでそういった伝票とか契約書をどんどん捨てちゃって、だからそんな細かいことぜんぜん分からない。「借りたのは5年前かな?10年前かな?」と言っているくらいなんで全然皆目見当がつかない。そういうことで業者から資料を取り寄せるわけです。それは法律でこういった問題があるものだから、業者は資料の開示に協力しければいけないということになっておりますので、業者は渋々開示をします。なかなか開示しない業者もあります。捨てちゃったとかいろんなことを言って。それで計算を全部やり直すわけです。計算をやり直してみると、僕らの経験から言うと、サラ金と取引をして、6~7年取引をすると、仮にいまサラ金から「まだ50万円ありますよ」と言われてても、こういった計算をやり直すと大体0円なんです。いまサラ金の借り入れというのはカードで、機械でお金を借りる、返済する、いつでもできる、こういうような形になっていますので、最初50万円借りて毎月ズーッと真面目に返済だけしてきましたという人はほとんどいないわけで、50万円借りてて、2万3千円くらい返しに行きます。お金入れると、「今、お金入れたんで今日は八千円借りられますよ」と、そこでまた八千円借りてくる。そういうことで残高としてズーッと50万円に張り付いている。毎月毎月張り付いている。こういう取引をしている人がほとんどなんですね。それでもそういう取引であっても、大体6~7年取引をするとサラ金の借金が0円になります。サラ金と取引をして2~3年、ちょうどここにある例が2年半くらいのもの。そのくらい取引をしていると半分くらいになると見当はつきますね。そういった計算をしてみて実際、残高が残るという事になりますと、そこから交渉に入るわけです。

交渉というのは具体的にどういう内容の交渉かというと利息0円の残金分割払い。こういう交渉に入る。大体それで整理をしています。6~7年以上取引しているとどうなのか。10年くらい取引しているとどうなのか。これは払い過ぎなんです。「払い過ぎなので返せ」という交渉をします。あるいは裁判を起こして返してもらう。こういうことは日常茶飯事でやっています。だから変な話、借金に困って相談に来て、しょぼくれちゃって顔色も悪いわけですけれども、そこで、「あなた、お金一杯返ってくるよ」という話をすると、狐につままれたような顔をして、その人が家に帰って、今日相談に行ったら「お金が返ってくるよ」と言われたと言ったら、「お前、騙されてるんだろう」ということを言われたなんて事があるわけですが、実際そういうことが一杯あるわけです。

 具体的事例というのがありますが、こんなような感じになるわけですね。具体的事例で、事例1 任意整理(1)とありますが、そこで表が二つありまして、上の表です。受任時の債務状況、事務所に来た時にどうなっていたか。約定残高。「約定」というのはサラ金の契約。20何%契約の残高がトータルで315万円くらいありましたということですね。右の備考に契約の日付が書いてあります。実際調査を入れまして、計算をし直してみたところ、残高としては本当は204万円だった。これを利息無しの分割払いということで交渉をして月7万円の支払いになる。これならいけるということですので、これで和解交渉を進めていった。そういうような経緯ですね。

 右のページ、任意整理(2)というのがありますけれども、これは僕も印象深い事件でしたが内容を少し変えてあります。この方はどういう方かというと65歳の男性です。10年以上前に友人の保証人になったんですね。その時は会社にお勤めをしておりました。会社を退職して、退職金で保証人になって借金を払った。ただそれでは足りずサラ金にも手を出してしまったということなんです。いよいよサラ金の借金がどんどん増えて、もちろん退職してしまったので収入も少なかったんでしょうね。サラ金に何社か借りて家族に家を追い出されたんです。追い出されたのは平成15年12月。追い出されて行く所がないものですから、いわゆるホームレスになってあっちこっち寝泊りして、冬ですよね。寒い中そういう生活をした。いよいよそういう生活を三ヶ月くらいしていたらしいんですけれども、お金も無くなって自殺を考えたんですね。遠州灘の浜に行きまして、多分冷たかったろうと思いますけれども、水の中にジャブジャブ入って行ったというんですよ。それが昼間なのか夜なのか聞き忘れたんですけれども、若いカップルが砂浜に遊びに来ていたらしいんです。カップルの男が男性に気が付いて、ジャブジャブとその男性が海の中に入っていくものですから、「おじさん、何やってんだ」ということで海の中から救い出されたらしいんですね。で、「おじさん、何やってんだ」と言ったら、「いや、僕はお金が無いし、死ぬしかないんだ。死なしてくれ」というふうに言ったわけですけども、「おじさん、とにかく今日は落ち着きなさい」と。で、『バーデン・バーデン』という寝泊りできるお風呂屋さんがあるんですね。

「そこに連れてってあげるから、今日はそこに泊まんなよ」と男が言ったわけです。「だけども僕はそんなとこへ行くお金も無いんだ」と言ったら、その男が、「おじさん、そのくらいは俺が出してやるから」ということで、おじさんはそこで救われて、『バーデン・バーデン』に行ったらしいんです。結局、おじさんは市に保護されたらしいんです。おじさんは僕の事務所に来て、本当に涙を流しながら話をするんですね。行方不明の状態であったわけですから、今のところサラ金からの取立ても無いわけですよね。保護されて、生活保護をもらうようになって、ある市営のアパートに細々と暮らすようになった。そこで借金を何とかしなきゃいけないということを思い出して私の事務所に相談に来たんですね。そういう状態なものですから資料が何も無いんです。ここでいうA、B、Cという会社から借りてたというわけです。だからこちらもしょうがないから手探りの状況で債権の調査、内容の調査に入ったわけですね。ところが調査をしたら、この表にもありますけれども、全部払い過ぎなんですね。トータルでは65万円ということです。結局このおじさんは法的にいうと借金なんか無かったんですね。むしろ払い過ぎというか、そういう状態の中で追い込まれて家族にも見捨てられて、砂浜にカップルがいなかったら多分死んでたでしょうね。だから借金の問題というのは、単にお金をどうやって返すのか、返済ができるのかできないのか、破産するのかどうするのかという問題に止まらない、本当に命が懸かっている。先ほどおじさんは自殺を考えたと言いましたけれども、大体僕のとこへ相談に来る方はみんな考えてますね。実際水の中へ入る、入らないは別として、払うか、破産するか、夜逃げするか、死ぬかという選択肢で悩んでいる。選択肢の中に自殺するという選択肢がほとんど入っている。そういう問題なんですね。

それで思い出すんですけれども、こういう事例もあったんです。もうこれは多分6~7年前になると思います。僕は新聞を見て知っていた事件なんですけども、浜松市内で母子家庭で、お母さんと幼稚園くらいの子供がいて、心中を図ったんですね。まず最初子供の首を絞めて殺してしまって、自分も死のうと思ったけれども死に切れなくて警察に捕まったんです。そしてしばらくして、その方の妹さんという方から相談があったんです。どういう相談かというと、実はこういう事件がありました。あれは実は姉です。ところがこれは皮肉なことに、お母さんが借金があってそういうことをしたらしいんですね。たかだか百万円チョットの借金らしいんですね。借金は実は残っているんだ。皮肉にも子供が亡くなったから、どこかからお金が出たらしいんです。どういうお金か知りませんけれども、保険なんですかね。それでお姉さんの借金を整理して欲しいということで相談に来たんですね。僕は前に新聞で見た事件を思い出して、複雑な思いがあったわけですけれども、お母さんは岐阜の方の刑務所に入った。いくらお姉さんから言われても、ご本人の借金の整理というのは勝手にやるわけにはいかないので、その岐阜の刑務所に何回も手紙を出して、「妹さんからそういう話がありました。本当にそういうことでよろしいでしょうか。よろしければ委任状を書いてください」ということで手紙を何回もやり取りした。まあ、はっきりいってへたくそな字で委任状を書いてきましてね。ほとんど漢字も使えないような形で、「よろしくおねがいします」というような形で書いてきました。その借金の整理というのはそれほど難しい話ではないので、それはそれでやったんです。本当にたかだか百万円のお金で、彼女は一生、子供の人生までも棒に振ってしまったということなんですね。本当にお金というのは、サラ金・ヤミ金の借金の問題というのは無くならないんだという話がありましたけど、根が深い問題だなというふうに思っているわけです。

 次に事例(3)というので、破産があります。破産は年間、全国で20万件くらい出てますね。ほとんどが個人です。法人が破産するというのは全体の5%くらいだと思います。ほとんどが個人で、しかもその9割方はこういったサラ金で破産をする。やはり破産というと一般の方から見るとどうなのか、いろんな意味でね。そういう思いがあろうかと思いますけれども、破産というのは法律が用意した、最終的な、究極的な立ち直りの方法なんですね。だからさっき言ったように百万円とか二百万円の借金で人生を終わりにするぐらいのことを考えるんだったら、もう破産してもう一回やり直したほうがいいという話はよくするんです。破産についてもかなり間違ったイメージで捉える方がいらっしゃるんですけれども、はっきりいって生活上の不便というのは全く無いです。よく「戸籍にのっちゃうからいやだ」と言う風な方もいるんですけど、そういうことも無いわけです。選挙権が無くなるようなこともないし、まあ、そういう人はあまり選挙に行かないかもしれないけれども、ほとんど財産を持ってないですね。財産を持ってないと手続きとしても簡単に終わる。そもそも破産手続きというのは別に困った人を救済する制度ではないわけです。どういうことかというと、債権者が一杯いるので、それを早い者勝ちで取ったら世の中が目茶目茶になるものだから、もう払えないよという状態だったら公平に債権者を扱いましょう、そこで財産をお金に換えて按分しましょうという制度なわけです。だけども実際にはそれが反射的に債務者の救済に役立っているということなんですけれども、ほとんど財産が無い人ばかりですから、破産手続きもわりと簡単に終わっちゃうんですね。時間でいうと6~7ヶ月といっても裁判所に一回程度行くだけということで終わる。ただそういうことをとらえて簡単に破産するなんていうのはどうかというような意見もあるわけです。先程言いましたようにほとんどの方はやはり生活費とかで困っていたりするという実態がありますし、それを何とかしなきゃいけないということで、いろいろ悩みながら最終的にこの破産の手続きに辿り着くとこういうことになるものですから、簡単に「いいや、こんな借金、破産すりゃ」とこう考えて借金をしていたわけではない。別に弁護するわけではないんですが、実態として何百人の方とお話をしていると、やはりそんな簡単には皆さん考えていない。やはり皆さん真面目に考えている。それで、最終的に破産に至っている。こういう事情があります。これはなかなか理解してくださいといっても、一回で理解はできないと思いますけれども、現実に直面をして見るとそういう方が多いですね。

 そこにいろいろ書いてありますが、要は先ほど言いましたブラックリストに載るので、当面お金を借りたり、クレジットカードを作ったりすることができなくなるということが唯一のデメリットであるわけで、生活していくのにはなんら問題は無いということです。

 あと、「民事再生」というのがあるんですね。これは破産とはちょっと違って、借金の総額の五分の一程度、計画を立てて払っていくということで、その計画を裁判所で認めてもらえば、その通り払えばそれ以上の借金は払わなくていい。一口で言うとそういう制度なんですね。この手続きを使う最も多いケースというのが、住宅ローンを抱えている方なんです。住宅ローンを抱えている方については、その住宅ローンの特則というのがありますが、それを利用すると、住宅ローンはそのまま払っていきます。それ以外の借金は五分の一ぐらいにカットして、計画を立てて払っていく。こういうようなことができるんです。そうするとサラ金ばかり困るんじゃないのかということになるんですが、全然困らないわけです。と言いますのは、この制度ができたのは4年ぐらい前なんですけれども、それまではこういう方は破産するしかなかったんですね。破産すると住宅ローンは家を担保にとってます。バブルで下がっちゃったから、実際今の住宅の価値が例えば二千万円であって、担保が二千五百万円ついている。担保というのは優先的な権利がありますから、その住宅を競売にかけてそこから取れるということになります。そうすると何もおつりが出ないですね。そうすると担保を取ってないサラ金というのは何もありません。ゼロですよ、ということになるんですね。サラ金にとってはそれよりもよっぽど良い。五分の一でも払ってくれるということですね。だから債権者にとってもある意味メリットがあるし、この手続きを利用する人は非常に大きいメリットがある。

そもそもこの手続きは、民事再生というのは会社の手続きから始まったんです。その頃大きいデパートで『そごう』ですとか、そういうところが民事再生をしちゃったんです。当時の法務大臣か誰かがちょっと言ったらしいんですね。会社は確かにそういうような制度がある。ただ個人が一生働いて家も持てないなんていうのは、これはおかしくはないかと。その鶴の一声かどうかは分かりませんけれども、こういった個人向けの民事再生の手続きをきちっと見直しをして、利用し易くしたということです。だからこれは住宅を持っていようが、持っていまいがこの手続きを使えますので、例えば住宅が無ければ借金が500万円あったら、100万円払うという計画を立てていくわけですけれども、住宅が無い方でこれを利用するケースというのもありまして、敢えてこれを利用するというケースというのが若い方、まだ二十代前半とか、こういう方達がお金の使い方とか借り方を知らないまま世の中に出てきて、滅茶苦茶な使い方をしちゃったという人は一杯いるわけです。そういう人達に今後、長い人生の中で計画的に自分の収入でやり繰りするということはやってもらわなきゃいけないので、よくお話をして、場合によったらお父さん、お母さんに来てもらいます。

 A、B、C、Dと書いてありますけれども、100万円くらいを3年間くらいで払っていくことになりますが、支払い先は各社に毎月払うわけです。普通の方はお仕事もあったりして、そんなことはなかなかできないですね。私の事務所の場合には、その方の専用の口座を作って毎月お金を持ってくるか送るようにしなさい、ということでやっているわけですけれども、そういう癖をつけて3年間で終わりだから貯金をしてみようという話をして若い方は敢えてそういう手続きをとることもあります。だからいろんな手続きのバリエーションがあるんですね。

先程言いました架空請求、ヤミ金融ですね。この対策としては一切取り合わない。やっている連中というのはゲーム感覚でやっていますし、会社でやっているわけではないですから、個人で適当にやっている連中なんで、いわゆる債権とかの管理なんてしてないですね。普通の会社であればいくら貸して、いくら返済して、いくら残っているからこれをどうするんだ。今期処理しようかということをきちっと管理しているわけですけれども、そんなことは全くやっていない連中ですから、とにかく無視する。もし借りてしまって返済しなければいけないということで、取立てがガンガン入ってくるような状況でも全部無視する。まず、携帯電話の番号を変える。それから口座。たとえば静銀の通帳とかを持っていたとしますとそこを全部解約する。なぜ解約するかというと、「押し貸し」といいまして、勝手に振り込んでくるんですね。勝手に振り込んできて、「通帳を見てみろ」、「この金を貸したからこの金を返せ」ということをやるわけです。なんで通帳の番号を知っているかというと、情報が全部横に繋がっている。携帯電話の番号も分かっている。だから口座も解約する。それで会社にガンガン取立てが入る。本人に連絡がつかなくなるから会社にどんどん電話が入るようになって、場合によったら、上司から「困った、困った」と私に電話が来るわけですね。で、「首にした」と言ってくださいと言うわけです。これは嘘なんです。嘘なんだけれども、向こうは違法な連中だからまともに対応する必要はない。それでもガンガン嫌がらせはありますけれども、債権の管理はしていない連中ですから、長くて一週間耐えれば終わる。要するに向こうも金にならないことをやっていてもしょうがないということであきらめるわけです。だから一切払わない。もし例えば3万円借りたと。まだ一回も払っていませんよ。でも一切払わない。もともと「ヤミ金規制法」というのができたんですけれども、そんな超高金利のお金の貸し借りは無効ということにしたんですね。それは解釈上今までもそうだったんですが、もともとこんなのは詐欺ですよね。だからまともに3万円借りたから3万円返す。そんなことをやる必要はないということです。

これも面白い事件がありまして、お金を借りてる人が毎週振り込みますよね。相手が誰だか分からん。携帯電話を使って、偽の名前を使ってるから誰だか分からんということなんですけれども、この口座を差し押さえてしまうんです。そういうことをやったんですね。一遍に30件くらい裁判所にもっていきまして、その頃はまだそういうやり方というのはなかったものですから、面白いように差し押さえができました。そうすると業者から泣きの電話が入ってくるわけです。口座から下ろせなくなる、お金が下ろせなくなる。「お金を払うから差し押さえは止めてくれ」ということを言ってくるので、「入金があったら止めてやる」と言い返すわけです。どっちがヤミ金なのかよく分からないような状況になってくるんです。それもヤミ金30件くらい借りている方がいきなり来たものですから「ちょっと、これでやってみよう」と試しで裁判所へ持っていったんですね。それでたしか金曜日の4時50分くらいに書類を持っていったんです。そしたら裁判所の職員が、「今日、僕もう帰りたいんです」と言うものですから、

「お前ら、土・日に人が死ぬぞ」と脅かしてやらせたんです。あれで土・日にガンガン取立てをやられたら本当に月曜日生きているのかなという感じがしました。かといって裁判所に金曜日に受け付けてもらったからといったって、それですぐ差し押さえができるわけじゃないんだけれども、とにかく受付したという印をもらいまして、ヤミ金にバンバン、ファックスで送りつけて、そうしたらもう月曜日から「返します、返します」という電話ばかりありました。最初はなかなか上手くいったんですけれども、最近は向こうも学習をしておりまして、お金が入ったらすぐ出しちゃうんです。だから振り込め詐欺などもそうですよね。大体そんなの裁判手続きをしてもたぶん空振りになるんでしょうね。裁判所の職員の方もいろんな知恵を出してくれまして、あくまでも裁判所は中立なんですよね。だけども事情を理解してくれて、相手がどこの誰だか分からないから、調べてみたらこういうようなやり方ができそうだからと色々調べてくれまして、なかなか記憶に残った事例です。

もう少し具体的な話をしたいと思いますけれども、「相続放棄」というのも非常に多くて、これは16年3月に、ここに死亡診断書、死体検案書というのがあるんですけれども、自宅の納屋でロープで首を吊ってぶら下がっているのを家人が発見し、警察に連絡した。まあ、こう書いてある。首吊り自殺です。事務所でこの方の相談を受けていたわけじゃないんですけれども、この方の相続人からお話がありまして、住宅ローンを始め色々借金があったと。で、「私たち相続人なんですけれどどうしたらいいんでしょうか」こういうことですから、「これは相続放棄をしてください」ということで、3ヶ月以内にすればいいものですから、裁判所に申し出をするわけですけれども、相続放棄をすれば借金については免れることはできますよというようなお話で解決したというような事件もあります。

本当にいろんな事件があって、面白いというと怒られるんですけれども、『武富士』という会社がありますね。今からお話しする方は、お父さんが会社員をやっていたんですが、昭和56年か57年くらいに独立したんですね。機械の仕事を始めたんです。ところが収入が苦しいということで、息子さんは当時、浜松のある会社にお勤めになっていましたけれども、息子さんに頼んで50万くらい調達してくれと頼んだ。息子さんとしては親父が頼む話だし何とかしてやりたいと思ってサラ金から借りたということを言わずに『武富士』から借りてお父さんに渡した。ところがお父さんが機械を買うとかそういう話は嘘で、資金繰りだけだったんです。しかも色々借金があったみたいです。それでお父さんが昭和58年くらいに破産をしたんです。破産をしたんだけれども、普通は司法書士に相談に来て、通知を出すだけで取り立ては止まりますので問題はないんですが、当時はそういう規制もなかったし、なおかつ町の金融業者、高利貸しはなかなかそういう規制では一筋縄ではいかないところがありますので、破産をしても取り立てにきていたらしいです。そこでも一家離散で、お父さんも息子さんも散り散りになってしまった。その息子さんは浜松の魚屋さんにお勤めしたり、流れ流れて建設会社に行って、「実は私はこういう過去があるんです」と社長にお話して、「名前を変えて勤めればいいじゃないか」ということで仕事をしていたらしいんです。ところが3年前くらいに保険か何かの関係でどうしても自分の名前を出さなきゃいけないということで、そしたら即、『武富士』から手紙が来るようになりました。『武富士』には1年くらいしか返していなかったわけですね、それで一家バラバラになっちゃって全然返していない。そういう中で元金の25万円くらい残っているわけですね。「利息が300万円くらい付いていて、どうするんですか」こういう手紙が来た。どこの会社に勤めているかということも『武富士』は探し出したみたいで、いきなり電話がかかってきた。こういうことだったんです。で、青ざめますよね。昔のいやな思い出が甦って来る。「チョットここじゃ困るから浜松の店に行ってくれ」電話は東京から来たらしいんですけれども、浜松の『武富士』に行った。そこから電話をよこせということですね。お店へ行っちゃったら終わりなんですけれども、向こうの意のままなんです。東京と電話をして、「今日1万円でも入れれば大幅にまけてやるから」ということを言われて、スッタモンダして千円かいくらかそこでお店の人に払ったらしいんですね。で、

「今後どうやって返済するのかということを毎週東京へ電話をよこせ。電話がなかったら会社へ電話するからな」ということで、渋々毎週電話をして6回くらい払ったらしいんです。

ところがこれはよくよく考えると時効だったんです。サラ金の借金は5年で時効になります。とっくに5年以上経っているわけです。時効というのは変な制度で、5年経ったら時効が完璧に成立するのではなくて、5年経っていても、たとえば一部お金を払ってしまったら、お金を払ったということは、支払い義務があるということを認めたことになる。それとかお金を払わないまでも、「確かに借りているので何とか払います」と言った瞬間に時効はブッ飛んじゃうんですね。無くなっちゃうんです。だから今日千円でも払えということはそういうことなんです。これも騙しですよね。少しでも払えば利息を大幅にまけてやるとか、そういうことを言っておきながら、千円を払わせておいて時効を飛ばしておいて…こういうやり方です。で、事務所に相談に来た。これはやり方としては非常に汚いやり方です。その『武富士』から電話が掛かって来た状況だとか、何故千円を払ったとか、その後毎週電話をしなければいけなかった事情だとか、その辺を細かく聞きまして、そして裁判を起こして、最初は向こうと交渉した時には、『武富士』の社員が非常に強がったことを言っていましたけれども、一回の裁判で終わりということになりました。まあ、実際に昔に遡って計算すると確かに元金が20何万円残っているんですよ。裁判も長期化するのも困るものですから、一応10万円くらいで和解しましょうということで終わりにしました。何故10万円くらいで和解しましょうということになったかというと、やはりこの方も借金が払い過ぎのものが一杯あって、それをかなり取り返したものですから、お金に余裕があったから、別に裁判を長々やらなくても和解で終わるのであればそれでいいんじゃないということで終わらせたわけで、そういうこともありました。

一人ひとり思い出していくと、一人ひとりドラマがあるなあ、というふうに思うんですけれども、こういう方もいらっしゃいました。ご夫婦で二人とも障害者なんですね。奥さんが障害者の1級、ご主人が2級。この方がサラ金の借金の整理をしている時にお母さんが亡くなって、若干の死亡簡易保険が出たものですから、それを使って借金の整理をしたんです。そのことよりもこの方の非常に印象に残っているのは、全部終わりまして、「じゃあ、これで元気でやってね」ということで送り出したわけですが、外で私の事務所を拝んでいるわけですよ。あれは非常に印象深い事件でしたね。

要は最後に二つだけ覚えておいてほしいのは、まず借金の問題というのは命が懸かっている問題だということ。これが一つ。それと借金の問題は絶対に解決できるんだ。百パーセント解決できるというのが二つ。解決というのはいろんな解決があります。破産して解決ということもあるでしょう。法的に百パーセント解決できるということです。精神的にいろんな負い目を追ったりすることは、それは払拭できない部分はあるかもしれませんけれども、絶対解決できる。この二つは絶対に覚えておいてほしいと思います。非常に雑駁なお話で恐縮でしたが、お時間ですのでこれで終わりにいたします。ご静聴ありがとうございました。

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2006年10月14日 (土)

登記研究

Kif_1252 いわずと知れた、不動産登記関係者必読の書。

写真は、昭和26年の創刊号。登記研究に関しては、創刊号から55年間に発行された各号をすべて持っている。ちょっとした自慢!  テイハン

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事務室に入ると・・・・

Img_842802_14984894_3_1 事務室に入ってすぐ左側が簡易な打ち合わせスペースです。日中はメチャメチャ明るい空間になりますが、逆光のため、写真では暗く見えます。
したがって、夜にも撮影してみました。
壁に掛かっている絵は、新築のお祝いに超有名楽器メーカーからいただいたものです。ありがとうございました。

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2006年10月13日 (金)

第三者の承諾書

不動産登記において利益相反行為に該当する場合の添付書面としては、取締役会決議があったものとみなされた場合には、取締役全員の同意書、監査役が異議を述べなかったことを証する書面の添付を要する 登記研究701 213頁

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資格の王国

Img_842802_22400750_0 大原簿記学校提供のローカル番組、「資格の王国」が放映された。

そして、あっという間に終わった。実際の放映時間は2~3分?

Img_842802_22400750_1 キャプチャーした画像をお楽しみください(別に楽しい絵でもないか)

ネクタイのドラエモンに気がついた?

Img_842802_22400750_2

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事務室に入りましょう

Img_842802_14984894_0 事務室は2階になります。1階の入口を入ると左側にエレベーターがありますが、今日は階段で行きましょう。
階段は、コンクリート打ちっ放しでモダンな感じになっています。2階まで上がると、事務室の入り口が見えてみます。
さあどうぞ、お入りください。

Img_842802_14984894_1 Img_842802_14984894_2 Img_842802_14984894_3

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2006年10月12日 (木)

判例貸金業規制法と救済の実務

_015 平成12年改正の利息制限法、出資法、貸金業規制法の解説から、任意整理、特定調停、破産、再生等の各手続きの解説をしている。僕も「上手な破産・免責手続の進め方」として約30ページ執筆している。   全国クレジット・サラ金問題対策協議会

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FM HIに出演!

Img_842802_14989802_1_1 21日、午前9時40分頃から、静岡のミニFM局、FM Hi!http://www.fmhi.co.jp/の「人にぞっこん」コーナーに、約15分間出演した。
 テーマは、10月1日に開設した「司法書士総合相談センターしずおか」である。

 生放送なので、約20分前にスタジオ入りし、簡単な打ち合わせのあと、いきなり生放送がスタート。DJのnavigater TJこと富田順子さんhttp://blog.goo.ne.jp/j-tentenと掛け合いで、司法書士の業務内容から相談センターの紹介まで、駆け足でしゃべりまくった。
朝の番組なので、暗くならないように、若干テンポよく喋ったのがよかったようだ。

最後に、相談センターの予約電話の番号の話題になったときに、富田さんが「じゃあ、この電話番号を家の電話帳に書いておいたらいいですね」と言うので、突然、「そうですね。便器にでも貼っておいてください。毎日見ますから」と発言してしまった。スタジオは爆笑だったが、どうしてそんなことを生放送で突然言ってしまったのか、自分でも理解できない。どうせなら、「悩み事はサッサと水に流しましょう」とでも付け加えておけばよかった。

 放送終了後、富田さんも、ディレクターも「いやー、非常にわかりやすかった。声もいいし、すばらしい出来でした」とお褒めの言葉をいただいた。

 ミニFMなので、浜松ではこの放送を聴くことができない。そこで、収録したテープをいただいて事務所に帰り、事務所のみんなに聴いてもらったが、「先生は、どうしてもこういうネタで落とさないと気が済まないんですね」と大顰蹙(ひんしゅく)。反省することしきり。

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事務所に入っていきましょう

Img_842802_22400750_1_1

それでは、事務所に入りましょう。

Img_842802_14984404_1

1階が駐車場になっており、駐車は6台まで可能です。

Img_842802_14984404_2

事務所への入口にもサインが出ています。

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2006年10月11日 (水)

個人再生手続の運用モデル

_014 個人再生の施行にあたり、最高裁が呈示したマニュアル。当時は、原稿を書くにしても、実務にしても、参考にさせていただいた。現在、各地の裁判所では、この運用モデルを改良しながら個人再生事件を行っていると思われる。  商事法務研究会

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中央合同ビルご来場のみなさまへ

下記の文章は、今日の現場見学会で、来場者に分けていただいた僕の文章です。


中央合同ビル見学会ご来場のみなさまへ

                                     中央合同ビル施主
 中央合同ビルの完成現場見学会にお越しいただきましてありがとうございます。おかげさまで、機能的にも、デザイン的にも期待をはるかに超える建物が完成しました。
 このたび、常盤工業様で完成見学会を行っていただくことになり、施主として、新築をご検討されているみなさまに少しでもアドバイスをすることができればと考え、この中央合同ビルの建築について私が考えたこと、経験したことを綴ってみたいと思います、
 みなさまの建築計画にお役に立てることができれば幸いに存じます。

Img_842802_14983845_0 1.味方になってくれる設計士を探そう

 「味方になってくれる設計士」という表現に疑問を持たれる方も多いと思います。設計士と施主とは、設計監理請負契約により、施主が設計士に一定の報酬を支払って設計士が施主の要望にしたがって設計監理をするという関係にありますから、もともと「味方」である筈です。
 ところが、現実にはそのような関係にないことも少なくないようです。
 私は、約10年前、木造の住宅を新築しましたが、その際には設計士とたった一度も会っていません。私と建築会社とが打ち合わせた内容により設計士が図面を起こし、建築確認申請を行ったようです。
 実際の建築工事は、施主が建築会社に建築を発注するというかたちになりますが、施主は所詮建築に関しては素人です。したがって、建築に関して専門家を味方につける必要があるのです。
 設計士の仕事は、設計と監理です。しかし、住宅の建築に関しては、多くの場合、設計士は建築会社の指示にしたがって図面を作成するだけで、建築を監理することは行われないようです。
 ちなみに、「監理」というのは、建築が設計どおりに行われているかをチェックすること、設計と異なっていればやり直しを指示するなどして是正することなどを言います。
 一部の心無い建築会社により発生する住宅の欠陥は、もちろん、建築会社にも非があるわけですが、設計士が監理を怠っているという現実があるからだと思っています。
 そこで、建築会社に従属せず、設計士の責任も十分に認識した、独立した立場の設計士が必要となるわけです。そして、施主と、設計士、建築会社の三者が一定の緊張感をもってコラボレートすることにより、初めて満足いく建築ができるものと考えています。
 ちなみに、そうした、設計・監理を十分に行っていただける設計士の報酬は、図面だけを作成する設計士と比較すれば決して安くありません。しかし、長期にわたって使用する住宅ですから、そこで満足いく生活が約束されるのであれば、決して高いものではないと思います。


2.要望をはっきりさせよう

 言うまでもありませんが、建物を建築するためには莫大な資金が必要です。そうした大きな買い物をするわけですから、自分の要望をはっきりさせておく必要があるでしょう。
 私の場合、初めてアーキムーンの内山さんとお会いしたときに、私の要望を箇条書きにしたペーパーをお渡ししています。
 たとえば、住宅部分については次のようなメモを渡しています。
・対面式キッチンにしたい
・風呂は5階に。開放的に、スペースは広く、ロケーションをうまく利用したい
・脱衣所は広くして、そこで、夜景を見ながらリラックスできるスペースを
・キッチン、リビングは5階に、寝室・個室は4階に
・5階は、キッチン+小さめのリビング、ダイニング、客用のリビング(応接)、風呂、脱衣所、トイレ
・4階は、子供用個室(8畳程度でクローゼット付)2室、夫婦用寝室、納戸(棚を作って欲しい)、トイレ、玄関

 また、事務所部分は次のようなメモをお渡ししています。

・事務所は土足で・事務所職員は10人ぐらいまでを想定しておく
・3階はOAの配線ができるようにする
・2階の会議スペースもLAN配線が必要
・3階に玄関、事務室・2階にトイレ、湯沸場、図書スペース、会議スペース
・トイレは男女別
・図書・資料スペースは部屋にせず、会議スペースへの動線からわざと見えるような位置関係にする

 もちろん、私の出した要望はこれだけではありません。もっとたくさんの細かな要望を出しています。
 完成現場を見学されて、どうだったでしょうか。事務所部分の2階と3階が入れ替わっているだけで、見事に私の要望が満たされていることをおわかりいただけたと思います。
 最終的に、私の出した要望の9割方は満たされました。残り1割は、土地の狭さなどから、物理的に断念さぜるを得なかったものがほとんどです。
 このように、自分の要望を文字にしてみることで、自分のイメージも固まりますし、設計士の知識と経験により、それが具体化されていくわけです。

3.建築会社を選ぶ

 設計が決まりましたら、次は建築会社の選定です。
 今回の建築会社の選定は、アーキムーンの内山さんのアドバイスにより、入札の結果を見て、候補を絞り込んだうえで、より品質の高い仕事をされている常盤工業さんに決定しました。
 ちなみに、内山さんのお話では、5000万円を超えるような建物は絶対に入札をした方がいいということでした。
 最終的な決め手は、ある方の言葉でした。
「常盤工業さんは、そこそこの規模の会社になっているにもかかわらず、社長さんが現場を見て回る。そして、職人が所定の場所以外でタバコを吸っていようものなら、『こら、そんな所でタバコを吸うな』と叱りつける」
 そうした職人気質で真面目な体質であればお任せしてみたいと思ったのです。
 私の場合、仕事柄、いくつかの建築会社を知っていますが、仕事上強いつながりのある建築会社に発注することは最初から考えていませんでした。なぜなら、仕事上のつながりが、建築に関する甘えや妥協につながって、クレームも言えないような関係になっては困るからです。
 もちろん、仕事上強いつながりのある建築会社だからこそいい仕事をしていただけることも考えられますから、一概に私の考え方が正しいとは思いません。
 いずれにしても、設計士のアドバイスを受けたり、建築会社の過去の施工例を見させていただくなどして、慎重に選定する必要があると思います。「知り合い」だからと言って、安直に決めるべきではないと思います。
 いくら設計士の能力が高くても、その設計が現実に建築に反映されなければ全く意味はないのです。

4.打ち合わせも重要

 こうして建築が始まりました。そして、毎週、私と、設計士、建築会社の三者で定例打ち合わせをすることになりました。そこには、いつも、電気工事業者、設備工事業者、そして、必要に応じていろいろな業者さんが参加されました。
 私は幸いなことに自営業ですので、この打ち合わせ(毎回2~3時間)にほとんど出席することができました。そして、打ち合わせの結果は、現場監督さんが議事録を作成し、次回定例会で前回の議事録を確認するというかたちで進められました。
 定例打ち合わせでは、細部についてまで詳細に議論がされました。おもしろいことに、設計士や監督さんが「どうしようか」と迷っていると、意外にも経験豊富な電気工事業者からいいアイデアが出たりすることもありました。
 私は建築の素人ですので、実際に理解できるのは床やクロスなど、目に見えるところだけです。構造部分などは正直言ってわかりません。しかし、構造部分に関しても、その部屋はどのような使い勝手になるのか、どのような電気器具を使うのかという私の要望にしたがって修正が加えられていきました。
 また、目に見える部分に関しても、ドアの取っ手や蛇口、コンセントのパネルに至るまでひとつひとつ説明を受け、何を取り付けるか選択していきました。もちろん、その際には、機能やデザインなどについて設計士さんからアドバイスを受けながら打ち合わせが進められました。
 前にも書きましたように、10年ほど前に住宅を建てた時には、こんなに細かな打ち合わせはありませんでした。現場が完成してから、「ああ、こういう蛇口にしたのか」「この部屋には鍵をつけたのか」といったことが初めてわかったのです。また、「建築業者に言っておいた筈なのに忘れられている」というようなことも多々ありました。
 それに比べて、常盤工業さんの仕事は、細かく、丁寧で、説明もわかりやすく、大変満足しています。


 以上、今回の建築にあたって感じたことを簡単に書いてみました。これは、設計士さんや常盤工業さんに頼まれて書いたものではありません。完成現場見学会をされるということですので、是非とも私の独り言をお聞きいただき、差し出がましいようですが、皆様のご参考になれば幸いに存じます。

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2006年10月10日 (火)

事業年度の期間

計算規則91条2項により、決算期変更後、最初の事業年度は1年6か月まで伸張することができる(「新・会社法千問の道標」282頁 商事法務)

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MY OFFICE完成

Img_842802_11691037_0_1 ついに、MY OFFICEが完成した。
今日は、建築業者に頼まれて1日限りの「完成現場見学会」だった。

設計したアーキムーン http://archimoon.jp/ の内山淳平氏は、例の「ビフォーアフター」にも出演した巧。

「デザイナーズビル」と称した見学会に、約40組の見学があったそうだ。

事務所は10月8日に引っ越しを行い、11日より「司法書士法人 中央合同事務所」として稼働する予定。

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2006年10月 9日 (月)

浜名湖ガーデンパーク

Kif_1292 浜名湖ガーデンパークhttp://www.pref.shizuoka.jp/hg-park/に行ってきた。2年前に開催された「花の博覧会」跡地を公園として整備したもの。今の時期、暑くもなく、空気も澄んでいて、とても気持ちよかった。

○○浜名湖ガーデンパーク○○

Kif_1293湖畔の美しい自然と、開放感あふれる景観の中に新しく誕生した「浜名湖ガーデンパーク」。〈西側エリア〉〈街のエリア〉〈里のエリア〉の3つのゾーンからなり、小さなお子さんからお年寄りまで、だれもが気軽に楽しめる緑ゆたかな都市公園です。浜名湖ガーデンパークはボランティアをはじめ、学校や企業など、みんなの力で公園を育てていく、いままでにない新しいスタイルが魅力です。みんなの知恵や夢・アイデアが、あちこちに、いろいろなカタチとなっKif_1290て花開く公園です。

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新クレジット・サラ金事件処理マニュアル

_013 第一東京弁護士会消費者問題対策委員会がまとめたマニュアル。マニュアルといっても300ページ以上あるが、内容は平易であり、読みやすい。 新日本法規出版

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クレサラ問題との出会い

10月22日、23日の2日間にわたり、京都市において、日本司法書士会連合会主催で消費者被害救済実務セミナーが開催される。全国の司法書士を対象に、多重債務問題を中心として、その対処法について研修・研究が行われる。

この消費者被害救済実務セミナーは、昨年まで行われていたクレサラシンポジウムを引き継いだものだが、クレサラシンポジウムには深い思い入れがある。

クレサラシンポジウムは日本司法書士会連合会の主催で行われていたが、それは、確かここ4年ぐらいのことで、その前は全国青年司法書士協議会で8回ぐらい開催されていた。だから、通算で12~13年になると思う。

第1回のクレサラシンポジウムは、名古屋市内の社務所の会議室のようなところで行われた。僕が呼び掛け人になり、50人ぐらいが集まった。当時、クレサラ問題に関して司法書士間の情報交換は、個々の話題としては出ることがあっても、会議としてなされることはほとんどなかった。もっとも、この出席人数からわかるように、当時、クレサラ問題に取り組んでいる司法書士の人数も少なく、情報も少なく、情報に飢えていたという側面もある。そこで、全国の情報を交換しようという企画だった。

それは、台本も、進行の次第もないシンポジウムだった。ただ、「クレサラ問題について議論しよう」という呼びかけで、約50人が集まったのだ。しかし、まるでシナリオがあったかのように、あっと言う間に2日間のシンポジウムが終わった。結局、集まった司法書士の問題認識はある程度のところで一致していた。だから、1つの話題にふれればそれに関して議論がすぐに盛り上がっていった。

当時クレサラ問題に取り組んでいる司法書士は、ある意味「変わり者」だった。「弁護士法違反ではないのか」「どうして金を返さない奴の味方をするのか」などと、地元の司法書士の理解を得られないこともあったと思う。そうした鬱積した状況の中で集まったものだから、「全国にはこんなに同士がいたのか」「こんなに猛者がいるのか、司法書士も捨てたもんじゃないな」などと感動し、議論も盛り上がったのかもしれない。そして、大満足して地元に帰っていったと思う。ある意味、新撰組の決起集会のような会議だった。

私の、出版社から出した本としては1冊目の「クレジットサラ金被害者救済の実務」は、実は、第1回クレサラシンポジウムの開催日に合わせて発行した。初出荷がクレサラシンポジウムが行われた社務所の会議室というわけだ。司法書士が、その後、クレサラ問題に少しずつ積極的に取り組みだし、今や、当然のように行っている債務整理であるが、今思えば、その起点はこの日に会ったのかもしれない。

平成元年の司法書士試験に合格し、翌2年に司法書士登録した僕であるが、裁判業務はある程度やりたいという気持ちはあったが、まさか今のように数多くやることになるとは考えていなかった。そして、現在の裁判業務の多くはクレサラの債務整理であるが、当時は「クレサラ」なんて言葉も知らなかった。

もっとも、その頃は、司法書士で「クレサラ」という言葉を知っていた(問題の本質も含めてという意味で)のは、ほんの一握りではなかったたろうか。

僕のクレサラ問題との出会いは、そんな開業したての間もない頃だった。

僕は、その頃、4坪ほどの事務所を借りていた。東側に窓があり、夏は朝から太陽の光が降り込んで、朝事務所に行くとメチャクチャ暑かった。
事務員も雇っていなかった僕は、ガンガンに冷房をかけて事務所で本を読んだり調べごとをしていることが多かった。

今考えてみると、なんとか生活できるだけの報酬を得られる事件もあったので、実にのんびりした生活だった。

ある日、例によって事務所でポツンとしていると、近所の弁護士さんから電話があった。
「今度、借入金を返済する人がいるから、担保の抹消をしてくれませんか」

弁護士さんもいっしょに行くので、僕もいっしょについていって、抹消書類の確認をして欲しいということだった。

数日後、弁護士さんと、債務者と私の3人は、1階から細い階段を2階まで上り、しばらくの間座って待たされた。

何やら怪しい事務所だった。事務所の中には黒板の予定表があり、ところどころに「裁判所」と書いてあった。「いったい、裁判所に何の用事があるんだろう」僕はそう思いながら、債権者が現金を確認するのを待った。そして、担保の抹消書類をその場で預かることができ、事務所に一旦帰ってから抹消登記の申請をした。

それはそれで、どうということなく終わった。

弁護士さんと債務者とで、金融会社に担保抹消の書類をもらいに行った数日後、僕は、いつものとおり、4坪ほどの事務所でポツンとしていた。すると、突然、あの債務者がお姉さんと一緒に事務所を訪れてきたのだ。

「どうしましたか」「登記はあの日に申請しましたが、まだ終わっていないのですが」と声をかけたところ、債務者の口から出てきた言葉は意外だった。

「まだ借金があるんです・・・・」

「この前返済した以外も借金があったのね。じゃあ、弁護士さんにそのことを話した方がいいんじゃないの?」と聞いたところ、「あの弁護士さんは、あれで最後だって。忙しくて手が回らないらしいの」ということだった。

さて、困った。まだ借金があるって言ってるし、どうも払うお金もないみたいだ。お金がないからこうして事務所に来たんだろうな。借りたお金は返さなければならないし、さて、どう対応したものか・・・。

「まあ、とにかく話を聞かせてよ」ということにしたが、頭の中は「どうすりゃいいんだ」という言葉が響き渡っていた。ともかく、書面に当たるのが鉄則だから、「まず、持っている書類があったら見せてください」ということになった。

実は、その債務者はほとんど目が見えない。お姉さんの腕を掴んで歩くほどだ。労災でほとんど失明したらしい。だから、書類はお姉さんが持っていた。

この前行った金融会社以外の伝票など、書類は数種類あった。地元の個人から借りたと思われる契約書みたいなものもあった。そして、とどめは、裁判所から届いている電話加入権の差押命令だった。

「なんだコリャ。いったい何をどうしたらいいんだ」
正直、そう思った。だけど、決して逃げようということは考えもしなかった。とにかく、物事を整理してみないとどうすべきなのかはっきりしないが、最終的には何らかの裁判手続きになるという直感はあった。

実は、僕は、裁判手続についてはちょっとだけ自信があったのだ。

ここで、ちょっと脱線して、「実は、僕は、裁判手続についてはちょっとだけ自信があったのだ。」という理由についてお話ししておきたい(少し前置きは長くなりそうだが)。

僕は、会社に勤めながら司法書士試験に合格した。会社でも法律関係の仕事が中心で、まずまずおもしろかったし、既に結婚して子供もいたので、受験のために会社を辞めるということはあり得ない選択だった。

僕の父も司法書士をしているが、登記専門である。受験時代、父に、「仕事を継ぐから受験期間養ってくれ」という意味のことを1回だけ言ったことがあるが、「受かるかどうかもわからないのに、そんなことできるか」と一蹴され、それ以来、僕は女房子供を養いつつ絶対に勤めながら合格するんだ、と心に決めていたのだ。

だから、試験に合格しても、僕には全く実務経験がないわけだ。「父が司法書士だから」という理由だけで、ある程度実務をわかっているだろうという見方をされることもあったが、本当に、頭でっかちのズブの素人だったのである。

ちなみに、会社で法律関係の仕事をしていたと言っても、会社法分野や契約関係が多かったので、登記や裁判の実務をしていたわけではなかった。

司法書士試験の結果発表の翌日、僕は、上司に「退職します」と告げた。それまで、試験勉強をしていることなど全く話していなかったし、残業もし、そつなく仕事をしていたので、きっと驚いたことだと思う。

それでも、お世話になった会社なので、12月の株主総会の実務も行い、引継をして、翌年1月末で退職した。退職の数日前、社長が、秘書や僕ら総務の数人をホテルの昼食に誘ってくれた。秘書(と言っても男性で、ある程度年も行っている)の方が、帰り際に「古橋さん、今日の食事は古橋さんのためですよ」と耳打ちしてくれた。嬉しかった。

1月31日、会社の最後の出勤日は有給休暇をもらった。僕は、その日から始まる関東ブロック新人研修会に参加するため、新幹線浜松駅のプラットホームに立っていたのだ。「本当にこれでよかったのか」とも考えたが、「もう引き返すわけには行かない」という気持ちの方が強かった。関東ブロック新人研修会は小田原で行われたが、珍しく大雪だった。

研修は5日間ぐらいだったと思う。登記手続、裁判手続など、バランスよくカリキュラムが組まれていた。講師陣は、司法書士が裁判事件をやることは決して多くはないが、今後は裁判事件に積極的に取り組んで欲しいという意味のことを言っていた。僕はまんまとその話に熱くなった。

研修会場では、司法書士業務用パソコンや書籍などの展示・販売も行われていた。パソコンの販売員だったと思うが、セールストークも交え、「研修では裁判事務、裁判事務って言っていますが、現実には登記をどれだけやるかですからね」という意味のことを小声で僕に言った。その場では「ふ~ん」と答えたが、研修最後に主催者に提出するアンケートには、「そんなことを言う業者は研修の趣旨に合わない。締め出すべきである」と、生意気なことを書いて提出した。

さて、研修の中で一番ショックを受けたのは「司法書士の歴史」と題する講義であった。

 関東ブロック新人研修の「司法書士の歴史」は、第1講が群馬の澤浦司法書士、第2講は当時静岡大学、その後九州大学に移られた大出先生だった。

司法書士に合格すれば、これからは一定のステータスを持って仕事ができ、お金も稼げると考えていた僕に対し、これらの講義は僕の妄想を見事に打ち砕くものだった。

司法書士の歴史は、明治5年、太政官無号達によって制定された「司法職務定制」にはじまる。第10章「証書人代書人代言人職制」第42条に「代書人」の規定があり、それが司法書士の前身であるといわれている。当時、代書人は、文字の読み書きもできない庶民に代わって書類を書くという、まさに代書から始まったのだという。なお、代言人とは現在の「弁護士」であり、証書人とは現在の「公証人」の前身であるといわれている。

このように、同じルーツで始まった代書人と代言人であったが、代言人が日の当たる存在であったとすれば、代書人は、日陰、ともすると、三百代言などと呼ばれて虐げられ、取り締まられた歴史そのものだったと言うのだ。

大正8年の司法代書人法制定により、代書人の名称は「司法代書人」となり、昭和10年の司法書士法制定により名称は「司法書士」となった。

一方、代言人は弁護士として自治を獲得した。代書人は、完全な自治を獲得することはできず、常に誰かの監督に服するという歴史を歩んだ。そして、今でも法務局に監督されているのだ。

そうした歴史の中で、弁護士会と監督官庁との狭間にありながら、先陣の凄まじいまでの熱意と行動力で、司法書士は少しずつではあるが自治を得ていった。

僕は、司法書士が、そんな厳しい歴史を歩んできたことも知らずに、ステータスだのなんだのと浮ついたことを考えていたわけだ。

僕もこれから司法書士で飯を食っていく以上、そうした先輩方の苦労を無にすることなく、司法書士がさらに専門性の高い職能として進化していくことに少しでも貢献したいと考えた。

でも、まだ試験に合格したばかりの僕に何ができるのか。できるとすれば、現場に生きる司法書士として、持ち込まれる事件を誠実にこなしていくことぐらいしかないのではないか、と考えた。関東ブロック新人研修会の最大のテーマは、裁判事務もちゃんとやりましょう、ということだった。だから、裁判事務に対する心構えは、まず、そこで固まったと言っていいだろう。

前回、「代書人」という名称を書いたが、今では「代書人」という職業はない。でも、お年の方の中には、僕のことを「代書屋さん」とか「古橋代書」とか呼ぶ方もたまにいる。また、「代書料はいくらですか」なんて言われることもある。

驚いたのは、隣の県である愛知県のちょっと山間部(それでも市である)の司法書士事務所に電話したときに、「はい、○○代書です」と電話に出たことだ。「代書」という言葉が脈々と受け継がれているんだな、と思った。

司法書士の中には、「代書」と呼ばれることに嫌悪感を持つ人もいるようだ。法的判断を伴う仕事をしているのに、単に言われたことを書いているタイプライターのように呼ばれ、何か、蔑称のように感じるからだろうか。

僕は、自分から僕のことを「代書人」と言うことはないが、「代書」と呼ばれても、それが明らかに蔑称としてでなければ特に気にならない。なぜかと言えば、僕は、「代書人」のイメージを伴淳三郎として描いており、案外そのイメージが嫌いではないからだ。

たぶん、伴淳三郎が代書人か司法書士の役でドラマをやったことがあると思うが、そのイメージが強く残っているいるのだと思う。眼鏡を少し下にズラして、「たかが代書のくせに何をいってやがる」と息巻く権力者に、下から見上げるようにして「できねえものはできねえんだ」と自分の信念を曲げない一徹なイメージがあるのだ。別に立派な職業ではないかもしれないが、法というモラルを拠り所に生きているんだ、ゼニカネで動く世界じゃないんだ、というような頑固さのイメージがあるのだ。

話はかなり脱線したが、とにかく、関東ブロックの新人研修が終わり僕は岐路についた。

前にも話したように、僕の父も司法書士である。だから、父の事務所にそのまま入ってしまえば僕にとってもいろいろな意味で楽だったかもしれない。でも、僕は敢えて父とは別の場所で、別の事務所を構えることにした。別に父と仲が悪いということではなく、僕は僕の力で自分の城を築きたかったのだ。

ところが、僕が研修から帰ると、僕のいない間に僕の当面の身の処し方が決まっていた、というか決められてしまっていた。僕は、父と仕事のつきあいのある弁護士さんの事務所に丁稚に行くことになっていたのだ。

父は登記しかやらない司法書士であるにもかかわらず、「これからの司法書士は裁判事務だ」と、どこかで聞いたようなことを言って、3カ月の期間限定で僕を法律事務所に行かせるように仕向けたのだ。 

僕が丁稚にいった法律事務所は、元裁判官のU弁護士の事務所だった。3カ月という期間限定で、研修ということだったので、給料は月5万円。もっとも、僕は鍛えてもらうだけで満足で、給料なんていらなかったが。

最初の1週間ぐらいは、ほぼ1日中、朝から晩まで法律事務所に行ったが、U弁護士も裁判所などに出かけることが多かったので、以後は午後2~3時頃で終わり、司法書士の開業の準備をしたりするようになった。

法律事務所で僕がやったことは、ほとんど起案だった。まず、U弁護士から、資料がいくつか渡され、「それで訴状をつくってください」という具合だ。司法書士試験に受かったとはいえ、訴状の起案能力があるわけではない。関東ブロック新人研修に行ったからって、訴訟関係の書面を少し勉強した程度で、まったく作り方がわからない。そこで、いろいろな書式集を参考にして、見よう見まねで作る毎日だった。

一応、要件事実(法律関係の発生、変更、消滅などの変動を生じさせるために必要とされる法律上の要件に合致する事実とでもいうところか)も確認しながらの作業であったが、生の紛争はそんなシンプルなものではなく、複雑なものであった。

ひとつの事案について、2~3日かけて書面を起案する。「先生、できました」とU弁護士に提出すると、翌日ぐらいに真っ赤に添削されて悲惨な状態に変わり果てた書面が返ってくる。その繰り返しだ。

僕は、どうしても、書面の内容、訴状で言えば「請求の趣旨」「請求の原因」から考え始めてしまうのだが、それ以外の部分、たとえば、管轄裁判所がどこなのか、事件名はどのように付けるか、訴訟物の価格はどのように計算するかなども非常に大事なことであることを教えられた。

事案の内容はさまざまであったと思うが、別にサラ金関係のものはなかったと思う。唯一あったとすれば、免責申立書の作成であった。

免責申立書の作成については、「免責の申立書を作ってください」と破産事件の記録を渡されたが、まず、どうしていいのかわからなかった。「免責」という言葉自体は知っていたが、破産手続きの全体の流れのアウトラインも知らなかった僕は、破産法にザッと目を通すことから始めなければならなかった。

免責申立書はB5の用紙1枚の簡単なものであるということがわかったのは、丸一日かけて調べてからだった。

こうして、短期間ではあったが起案に明け暮れる日々が続いた。

しかし、この短期間で、僕の起案能力が伸びたかというと、決してそんなことはなかったと思う。むしろ、それとは違うところに大きな収穫があった。 

僕が法律事務所で丁稚をしたことで得た最大の収穫は、浜松の裁判所の物理的な構造がわかったことだ。「な~んだ」と思うかもしれないが、これって実は重要なのだ。

浜松の裁判所は、ひとつの建物に、簡易裁判所、地方裁判所、家庭裁判所が同居している。しかも、たとえば地裁でも、訴状等を受け付ける訟廷受付、書記官室、破産係、執行係、執行官室、会計など多くの窓口がある。

何回か、裁判所に書類を持って行ったり、U弁護士が担当する事件の裁判を傍聴したりするうち、どの窓口ではどんな事件を扱っているのかということが何となくわかってきた。

民事訴訟法は略して民訴(みんそ)などとも言われるが、「眠素」(みんそ)と言われるほど条文はおもしろくもなんともない。だから、司法書士試験の受験生の間でも、刑法、民事執行法と並んで嫌われている法律じゃないかと思う。なぜおもしろくないかと言えば、民事訴訟法は手続を定めた法律であり、訴訟等の具体的なイメージなしで民事訴訟法を勉強するのは苦痛以外の何者でもないからだと思う。

ところが、実際に裁判所に足を運んでみたり、訴訟関係書類を作ってみる(起案だけではなく、提出部数をそろえて、必要により印紙や郵券を準備することを含む)と、「ああ、こういう流れになっているから民事訴訟法は必然的にこう定めているんだ」とわかることが多々ある。

僕は、ウチの事務所で研修する研修生には、いつもこう言う。「民訴は体で覚えろ」と。やりもしないのに講釈を言っているから進歩がないわけだ。やってみれば、民訴は体に馴染んでくるわけだ。

こうして、裁判所の物理的な構造や、実務的な民事訴訟手続感覚がある程度わかったということが、この短い丁稚の期間の最大の収穫であった。なぜお化けが恐いかと言えば、相手の正体がわからないからだ。裁判事務も同じだ。相手(裁判所)のことがわかれば、別に恐いことはないわけだ。

僕は、こうして裁判所に対する抵抗感がなくなった。しかし、登記実務も全くやったことがなかった僕は、逆に、法務局に対する抵抗感はなかなか払拭することができなかった。

僕が、第2話で、裁判事務にちょっとだけ自信があったという理由はここにあるのだ。

担保抹消を依頼された方から、「他の借金で困っている」と相談を受けたところまで話をして脱線してしまった。話を本題に戻そう。

まず、その方(以下、Hさんと言うことにしよう)からお話を聞いていて、おかしなことに気がついた。それは、Hさんが借りているお金の利率だ。Hさんは、お金を借りる際、年利40パーセント前後の率で利息の契約をしていたのだ。

僕は、司法書士試験受験の時、まあいろいろな法律を勉強しなければならなかったが、その中に利息制限法という法律があった。これは、金銭の貸借に関する利息・損害金の上限等を定めている法律である。

利息制限法の定める上限利率を紹介すると、当時の法律では、次のようにされていた。



第1条 金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは、その超過部分につき無効とする。
   元本が十万円未満の場合          年二割
   元本が十万円以上百万円未満の場合     年一割八分
   元本が百万円以上の場合          年一割五分

第4条  金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第一条第一項に規定する率の二倍を超えるときは、その超過部分につき無効とする。



なお、現在では、第4条の「二倍」が「一・四六倍」に変更されたため、損害金については次の率が上限となる。

   元本が十万円未満の場合          年29.2%
   元本が十万円以上百万円未満の場合     年26.28%
   元本が百万円以上の場合          年21.9%

いずれにしても、Hさんの年40%という利率は、当時の利息制限法の上限利率を超えているわけだ。どうして40%という利率がまかりとおるのか。

僕は、それまでもサラ金の広告などを見て、書かれている利率が利息制限法を超えているなあ、と何気なく思ったことはあったが、現実の相談を突きつけられて、まず、ここから紐解かなければならなくなったわけだ。

平成2年当時、まだ、こうしたサラ金問題に関する書籍などはほとんど書店に並んでおらず、利率の問題という「いろは」の「い」から調べなければならなくなった。 

こうして僕は。サラ金関係の法律を「いろは」の「い」から調べる必要性に迫られたわけだが、利息制限法と出資法との関係は案外すぐにわかった。そして、これらの法律をつなぐ糊みたいな条文である貸金業規制法43条も、細かな理解はともかく、なるほど、そういう仕組みになっているのかと、次第にわかってきた。

しかし、出資法を見ていて、どうしてもわからないことがあった。それは、電話担保金融の特則である。

当時、出資法の上限利率は年40.004%とされていたが、特例として、日賦貸金業者は109.5%、電話担保金融は54.75%とされていたのだ。日賦貸金業者については、集金に手間がかかるなどの理由はわからなくもないが(だからと言って、こんな馬鹿げた金利が容認されること自体異常だが)、電話担保金融の特例はなぜ設けられたのかわからない。無担保無保証で貸付をするサラ金は40.004%が上限で、電話加入権を担保に取るのに54.75%の金利が容認されることがわからない。

なぜそこに興味を持ったかというと、Hさんの借入先のひとつに「マルフク」という電話担保金融があったからだ。

そこでわかったことは、「電話加入権質に関する臨時特例法」という変な法律の存在だ。
その中で、「電話加入権を目的とする質権を取得することができる者は、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫、信用金庫、信用協同組合及び政令で定めるその他の金融機関並びに信用保証協会及び事業協同組合に限る」(第2条)とされている。だから、マルフクの場合、債権者である株式会社マルフクではなく、「マルフク事業協同組合」が電話加入権を担保に取っているのだ。

では、事業協同組合で担保をとっていると何がいいことがあるかと言えば、「質権者が電話加入権を目的とする質権の実行をする場合においては、裁判所は、質権者の申立てにより、質権者に当該電話加入権の換価をさせることができる。ただし、質権者が第二条本文に規定する者以外の者である場合は、この限りでない。」(第11条第1項)とされているのだ。

一般的には、差押の手続きは「民事執行法」で規定され、裁判所で競売が行われるのに、電話加入権について、こんな変な法律を作って、裁判所が換価命令を出すことによって、実質的には債権者が自分で換価してしまうことを許しているのだ。

おまけに、「質権者は、前項の規定による換価をする場合においては、当該電話加入権について鑑定人の評価を経ることを要しない。ただし、裁判所の特別の指示がある場合は、この限りでない。」(第11条第2項)とされる。これでは、やりたい放題ではないのか?

こりゃ、何かがおかしい。何か別の力が働いているとしか思われなかった。

NTTの本社に「これ、なんでこうなってるの?」と問い合わせまでしてみたが、どうも変人扱いされたみたいだ。

当時、「マルフク」という看板はいたるところにあった。由美かおるや水原弘のキンチョー(だっけ)や、大塚昌子(だっけ)のボンカレー、大村昆のオロナミンCの看板よりもはるかに多いことに以前から気がついていた。「一体何の会社だろう」と思っていたが、サラ金だとは知らなかった。
なお、今、マルフクという会社自体は残っているが、ほとんどの貸金業務はCFJというサラ金に譲渡してしまっている。

さて、マルフクの差し押さえをどうするか。これが問題であった。

 

さて、マルフクの差し押さえをどうするかだ。

話を聞くと、マルフクからの借り入れについては、実は、Hさんが借りたものではないということだった。労災で目が不自由になってしまったHさんは、それが原因で友人が離れていってしまい、そんな寂しさの中で知り合った男に頼まれ、実印などを渡してしまったというのだ。

だから、借り入れにしても、電話を担保に入れる契約(質権設定契約)についても、Hさんの意思で行ったものではないという。

電話加入権の差し押さえは質権にもとづく担保権の実行であるから、担保権設定の契約成立を否認することができれば、担保を解除することができる。

もし、今、この相談を受けたとしたら、僕はどのように考えるだろうか。
おそらく、担保設定契約を否認することは難しいと考えるだろう。なぜなら、民事訴訟法では、Hさんの実印が書面に押されている以上、その印影はHさんの意思によって押されたものと推定され、その文書はHさんの意思によって作成されたと推定されてしまうからだ。このような推定は「二段の推定」と呼ばれている。Hさん所有の印鑑が押されている以上、その文書は、何らかの形でHさんの意思にもとづいて作成されたものではないかということだ。「印鑑は飛ばない」わけだ。

もちろん、「推定」にすぎないから、それを覆すだけの事実を立証することができれば推定は覆る。これが「推定」と「みなす」の違いだ。

しかし、僕は、当時、そんなことは全く思いも及ばなかった。とにかく、Hさんの意思による借り入れではない。Hさんの意思による担保設定契約ではないのだ。そういう意味では「乱暴」というか、「若気のいたり」だったかもしれない。

まず、執行裁判所に対し「執行異議」(だったと思った)を申し立てた。そして、簡易裁判所に対し、債務不存在と電話加入権の質権抹消請求の訴状を提出した。Hさんの名前を使った名義冒用だという理由だ。

当時のことであるので、もちろん本人訴訟である。目の不自由なHさんのために、そのお姉さんを補佐人に申請しておいた。結果は、あえなく勝訴。相手方の欠席判決だった。

しかし、これも今考えればちょっと恐ろしい。もし僕が相手方の代理人だったら、「二段の推定」を主張し、Hさんにつきまとっていた男の代理権を持ち出して争ったことだろう。そうなると、原告としては非常に歩が悪い裁判になってしまう。なにしろ「つきまとっていた」わけだから、原告本人かその男の尋問をすれば、代理権を立証されてしまう可能性が高いと思われるからだ。

そういう意味ではラッキーだったかもしれない。この裁判で負けていたら、僕のその後の生き方は変わっていたかもしれない(ちょっと大袈裟かな?)。




次の問題は、Hさんが地元の個人金融から借りている件だ。
個人金融といっても、どうも貸金業登録はしていないようであった。しかし、利息を計算してみると、利息制限法を超過していることは明らかだった。しかし、まだ借りてから数回しか返済していなかったので、利息制限法で計算しても、20万円ぐらい債務がある状態であった。

この20万円はお姉さんが用意するという話だった。

さて、どうするか。

お姉さんとHさんとで利息制限法を主張しても、相手は、不動産業の看板も出している個人金融だ。素人の主張が通るような相手ではない。

もちろん、旧司法書士法の時代だ。僕には代理権はない。

迷った。

個人金融業者に対する僕が思いついた、当時のつたない知識にもとづいた対策は供託だった。供託をしてしまえば、弁済義務を履行したことになる。

しかし、問題は、供託をするためには、一旦は弁済の提供をして受領が拒否されなければならない。

そこで僕は考えた。僕は、Hさんとお姉さんの3人で、その個人金融のところへ返済に行くことにした。利息制限法による計算書も作ってお姉さんに持たせた。「これで支払います」とお姉さんに言ってもらって、お金を渡してもらった。

もし、「おまえ、司法書士のくせに何しに来た」などと言われたら、「もしも受領しなければ供託をするので、供託の代理人として受領拒否の事実を確認に来た」と言うつもりだった。内心ドキドキしていた。

金融業者は怒りまくっていた。「恩を忘れたのか」「登録すりゃあ、ちゃんと利息はとれるんだ」

そんな罵声を浴びながら3人で帰った。意外にあっさりと解決した。
Hさんは他にも何件か借金があったと思う。でも、理由はわからないが、どうやって解決したのか今では記憶がない。


その後、しばらくして、最大の問題が起こった。

Hさんが家出をした。また、例の男のところに行ってしまったらしい。
お姉さんの最大の心配事は、また不動産を担保に入れられて、どこかからお金を借りられてしまうのではないかということだ。

その不動産とは、Hさんと初めて合って担保の抹消をした、あの自宅の不動産のことだ。この自宅は、相続でHさんとお姉さんの共有になっていた。これは、Hさんの家庭では唯一と言っていい財産だ。

お姉さんは、「何とか家を守りたい。あの子(Hさん)も、もう少し時間がたてば自分が何をしているのかきっとわかる筈」と嘆く。

僕は、咄嗟にHさんの共有持分に対する仮差押を思いついた。お姉さんはこれまで、Hさんのためにさんざんお金を立て替えている。この求償権を被保全権利として仮差押ができないだろうかと考えた。

しかし、これとて、今にして思えば利益相反行為である。それまでHさんのために仕事をしてきたにもかかわらず、今度はHさんの債権者の依頼によってHさんの不動産を仮差し押さえしようとするのであるから。

ところが、当時は、そんなことおかまいなしだった。そういう教育もされていなかったし、そうした法律上の問題も思いつかなかった。「Hさんの不動産を仮差押えするにしても、それはお姉さんの意を汲んでHさんの財産を守るためだ」。それしか頭になかった。

さて、お姉さんの依頼により、Hさんの不動産の共有持分を仮差押えすることになったわけだが、新人の僕は仮差押えの手続きをやったことがなかった。むろん、仮差押えには「被保全権利の存在」と「保全の必要性」が必要なことぐらいは当然に知っていたが、実務としてやったことはなかった。

しかし、裁判事件を受任している人ならわかると思うが、訴状を書くのも仮差押申立書を書くのも、はたまた支払督促申立書、内容証明郵便に至るまで、実は、文書の「骨」はいっしょなのである。「骨」というのは(前にも書いた)要件事実のことであるが、要件事実を知っていれば、こうした裁判関係書類を書くことはそれほど苦労することではないと思う。だから、仮差押の申立書を作成するのに特に苦労したという印象は残っていない。

仮差押えのような保全処分の事件では、申立書に、「被保全権利の存在」と「保全の必要性」を疎明する資料の一部として本人の報告書(陳述書のようなもの)を添付する扱いが広く行われている。

この報告書の作り方も一律ではなく、聞き取りをしてパソコンで報告書を作って本人に署名してもらうパターンと、聞き取り後、こちらである程度の原稿を作って、それを参照してもらって、全文を本人の自筆で作成してもらうパータンがある。

僕の場合、最近は、ほとんど前者の方法で行うが、当時の僕は、「すべて本人の自筆の方が迫力ある文書として裁判官の心証形成に有利に働くのではないか」と考えていた。

だから、僕は、お姉さんに電話をして、「いいですか。仮差押えの申立書には報告書というものを添付するのが慣例になっています。今から、報告書に書いて欲しい内容をお話しします。ゆっくり言いますから、どこかにメモをしてください。そして、あと○時間ぐらいで僕は帰りますから、その途中でご自宅にお寄りします。それまでに、レポート用紙か便箋に清書しておいてください」と伝え、「報告書、私はHの姉です。私が今回の申し立てに至った経緯は・・・・・」とゆっくり話し始めた。

電話の向こうでは、お姉さんが僕の言葉を復唱し、お姉さんの旦那さんがそれを何かに書き取るという作業が続いた。「この字でいいのか」などと旦那さんが確認しながら、三人の共同作業は続いた。

「それじゃあ、あとで寄りますから」僕はそう言って電話を切り、別の仕事を終えてHさんの自宅に向買った。僕は地図を頼りにHさんの自宅に到着した。

こじんまりとした木造の家だった。周りはもう暗くなっており、その家の中で起きている出来事とはまるで無関係のように静まり返っていた。

そして、玄関の戸をガラガラッと開けたとき、僕の目の前には驚愕すべき光景が広がっていた。

僕が仮差押えの申立に必要な報告書を預かるため、Hさんの自宅に伺い、玄関を開けたときの光景は今でも忘れない。そこには、中型の冷蔵庫でも入りそうな大きなダンボール箱が横たわっていた。そして、そこに、「報告書、私はHの姉です。私が今回の申し立てに至った経緯は・・・・・」と、つい数時間前、僕が話したことが黒いマジックで、大きな字で書かれていたのだ。

「こんなものしかなかったもんですから・・・」お姉さんの旦那さんは、照れ笑いをしながら言った。お姉さんもその隣でほほえんでいた。

これは独りよがりであるが、お姉さんたちの僕に対する期待の大きさが、その大きなダンボールの映像として、僕の旨に突き刺さった。
「そうなんだ。この人たちは、僕に、こんなに期待しているんだ。今、頼りにできるのは僕しかいないんだ」そう思うと、僕の胸は熱くなった。

僕は、ここのところ、毎年、新人研修の講師として呼ばれるが、「みなさんが裁判事務を避けていたら、困った人はいったい誰に相談すればいいんでしょう。それは国民に対する裏切り行為ですよ」と、きつく言う。その時は、いつもこのダーンボールのことを思い出しているのだ。

仮差押さえは首尾よく完了した。数ヶ月後、Hさんは自宅に帰ってきた。そして、お姉さんと二人で事務所を訪れた。Hさんは「目がさめた。もうあんなことはしない」と言った。お姉さんは涙を流していた。

自宅には仮差押の登記がされていたが、二人の希望で、当分、仮差押の登記はそのままにしておくことになった。

こうして一連の事件は終了した。

後日談であるが、それから約10年後、事務所にHさんとお姉さんが訪れた。そろそろ仮差押えの登記を抹消して欲しいという話だった。Hさんは、あの事件後、マッサージの資格をとり、今はあんまさんをしていると言った。お姉さんは「私は結婚して苗字が変わったんですよ」と微笑んだ。そうか、あの時の旦那さんとは、当時は入籍していなかったんだ、と思った。

僕にとってあの事件は10年前に終わっていたが、Hさんたちにとっては、10年後に仮差押え登記を抹消して、ようやく事件が終わったんだ。

こうして、新人司法書士である僕に依頼したHさんの事件は終わった。訴訟事件としていくつかの手続きを行ったが、いずれも金額としては極めて低額な事件であった。しかし、これらの事件は、僕に対し様々なインパクトを与えてくれた。

そのひとつは、利息制限法を超える利息が世の中でまかりとおっていることに対する驚きである。それまで、サラ金とは全く無関係に生きてきて、利息と言えば利息制限法しか知らなかった僕にとって、これは衝撃だった。あまりに社会を知らなさすぎた。

そして、次のインパクトは、世の中には、Hさんのように、必ずしも合理的ではない行動をとる人たちが厳然として存在するということだ。この思いは、その後、債務整理事件をある程度受任するようになって、ますます強く感じるようになっていった。

人が多重債務に陥る原因はまさに十人十色である。しかし、一定程度の割合で次のような特調がある。

まず、慢性的な生活費不足である。日本人の中流意識はいったいどこから来るのだろうか。会社に勤め、アパート代や住宅ローンを支払い、車のローンを支払いながら家族を養い、毎月の貯金はせいぜい5000円という生活の、どこが中流なのか。
50歳をすぎて、同じ会社に10年以上も勤めながら、給料は手取り15万円なんて人はざらにいる。新卒大学生の初任給よりも少なく、それで家族を養なわなければないない状況のどこが中流なのか。

次に、学歴の低さである。相談者のほとんどは中卒である。それ故、収入が高く、安定した職業に巡り会う機会が少ない。

また、利息ということについて理解できない人たちがたくさんいる。とにかく、毎月いくらを支払えばいいのか、それだけを気にしている。多重債務者は、利率の高低よりも、毎月いくら支払えばいいのかということを重要視する。利息について、競争原理は働いていない。

そして、こうした人たちが一定程度存在していることは間違いない事実である。低所得者層などと一口ではくくることができないが、そうした層が間違いなくある。

僕は、それまで、そうした層の人たちとはほとんど無縁の生活をしていた。高校は進学校、大学もそこそこの大学を出て、地元優良企業に就職。司法書士試験に合格し、開業した。そして、初めて、こうした人たちの生活に向き合うこうになったのだ。

でも、本当にそれまでそうした人たちと無縁であったかと言えば、よくよく考えてみると、そうでもないことに気がついた。

小学校の頃を思い出した。クラスに40人程度の生徒がいた。クラスの中には、勉強ができるやつ、勉強はできないが足が速いやつもいた。小学生とは思えないほど絵のうまい奴もいた。校区に裁判所があったので、今考えてみれば裁判官の子供だった奴もいた。校区に拘置所もあり、そうした子供を預かる施設もあったので、そういう子供たちもいた。女の子の家に遊びに行ったとき、生まれて初めてヨーグルトを食べされられ「まずい」と思いながら「この家は金持ちだなあ」と思った子もいた。学校を休んでばかりいるので、帰りがけに、毎日のように給食のパンを持っていってやった奴もいた。

こうして考えてみると、それぞれの家庭はいろいろな事情を抱えていたかもしれない。でも、クラスのみんなで支え合い、お互いを助け合って卒業していった。

そうしたクラスが、まさに社会の縮図であったとすれば、先ほどの一定の層の人たちも、この社会でいっしょに生きている仲間であるはずである。では、そうした人たちがもっと知識を得て、金利の感覚を研ぎ澄まし、賢く生きようとしないからその人たちが悪いのだろうか。

そういうことはないであろう。勉強しない奴が悪い、金利のことがわからない奴が悪い、そういう奴は自己防衛ができなくてもやむを得ないという考え方があったとしたら、それはファッショというべきだ。

そうした一定の層の人たちが厳然として存在するということを前提にして考えなければ、この世の中は成り立たないのである。だから、そうしたことを前提に僕のできることをするというのは当然のことであると考えたのである。

 Hさんの事件も終わり、新人司法書士であった僕の事務所は再び静寂を取り戻した。おかげで、勉強する時間だけはたっぷりあった。

その頃から、大先輩であり、全国でも、裁判事件を取り扱う有名司法書士として活躍していた清水市のSさんが、新人である僕に、よく声をかけてくれた。毎日のように電話で話をするうち、それぞれ抱えている裁判事件について、その書面をファックスでやりとりしてお互いに勉強しよう、とまで言ってくれた。そして、実際に、裁判書類をやりとりして、相互の意見を交換するようになった。

Sさんは、若い司法書士の兄貴分みたいな存在で、お酒もいっしょに飲む機会が多かった。しかし、Sさんは、いつも腰が痛い、腰が痛い、と言っていた。あっちこっちの病院や整体などに通っていたようだ。

そんなある日、Sさんから僕の自宅に電話あった。

「古ちゃん、俺、入院するよ」
「え?」
「ガンだよ、ガン。もう歩けないってさ」

僕は愕然とした。
「そんなこと言われても・・・・」
僕は言葉が続かなかった。

僕は、すぐに他の先輩司法書士何人かに電話して、「Sさんからこんな電話があったんだけど・・・」と相談した。すると、みんな、「そうなんだよね」とSさんの病気のことを知っており、皆一様に心配していた。「なんだ、結構、あっちこっちに電話してるんだ」と、少し救われた気持ちになった。

そんな時、「サラ金の借金で困っています。破産をしたいんだけど・・・」という相談が来た。債務整理事件はHさんの事件以来であり、しかも、破産事件は初めてだった。もちろん、破産について勉強したこともないし、今のように実務本やノウハウ本はない。

僕は対処方法がわからず、「とにかく、お持ちになっている契約書などを全部見させていただけますか?」ともっともらしいことを言って取り敢えずお引き取り願い、後日、僕から連絡することにした。

さて、どうしようか、本当に破産できるのだろうか。何から手をつければいいんだろうか。僕は途方に暮れた。

頼りのSさんは入院中である。Sさんに聞くわけにもいかない。

 それまで、裁判関係ではファックスのやりとりという方法でかわいがっていただいたS司法書士が入院してしまい、一方で、僕は破産をしたいという相談を受けて、途方に暮れていた。

 もっとも、それ程忙しくなかった僕がSさんを見舞いに行くのにそれ程日数はかからなかった。Sさんの入院している病院へは高速道路を使って1時間ぐらいだった。

 「ガンだよ、ガン」僕はその言葉を思い出しながら病室のそっとドアを開けると、無精髭を伸ばしたSさんが、「誰?」というような顔をしてこちらを向き、僕だと気がつくと、「おぅ」と声をかけてくれた。

 Sさんは、「腰に腫瘍ができて、神経を圧迫している」「今検査をしているんで、腫瘍が悪性か良性かがわかる」「悪性だとちょっとやばい」というような話をしていた。別に落ち込んでいるという様子でもなく、いつもの話のテンポだった。

 僕は、破産の依頼についてどうしたらいいものか聞いてみようと思ったが、なにぶん、見舞いに来ているわけで、Sさんに負担をかけてもいけないと思った。たしか、負債総額と手取収入程度を話して意見を聞く程度だったが、Sさんの「結構収入あるなあ」という回答をもらっただけで、それ以上のことは入院しているSさんに聞くことはできなかった。

 実際のところ、相談者は運送会社に勤め、手取りで50万円近くの収入があった。負債は300万円ぐらいだったと思う。

 結局、僕は依頼を断った。Sさんの「結構収入があるなあ」という言葉を僕なりに都合よく解釈し、「今の状態は支払不能ではないんじゃないの?」と言って依頼を断った。でも、本当は、自分の手におえないんじゃないかという、自信のなさから出た行動だった。

 僕は、しばらく落ち込んだ。本当に僕にできなかったのだろうか。僕がどうしようか悩んでいる間、相談者はどういう気持ちで僕の回答を待っていたのだろうか。あの相談者は今頃どうしているんだろうか・・・。

 Sさんの腫瘍は良性だった。手術して腫瘍を除去すると言うが、その手術も、ちょっと間違えば神経を傷つけてしまうという。しかし、Sさんはそんないくつもの苦難を乗り越え、手術も成功し、退院した。奇跡的だった。奇跡と言うより、Sさんの執念と言った方がいいかもしれないが。

 若い司法書士の有志で、さっそく、Sさんの退院祝いが行われた。お座敷の宴席というのがいかにもSさんらしい退院祝いだった。

Sさんが退院して間もなく、静岡市で静岡県青年司法書士会の役員会が行われた。僕も消費者問題対策委員として参加していた。

 役員会では年間の事業計画や、各担当の事業執行について話し合いが行われていたが、どちらかというと和やかな雰囲気で話し合いが行われていた。消費者問題については、委員長から「多重債務の問題に対処するため、クレサラ110番を行いたいが、まだまだ会員の資質向上が必要である。破産法の勉強からはじめ、じっくり準備したい」という趣旨の発言がなされ、議場はおおむねその方向に動いていた。

 その時、前触れもなくS司法書士が役員会に顔を出した。そして、しばらくその議論を聞いていたS司法書士が突然発言をした。
「何をのんびりしたことを言っているのか。君たちが勉強をしている間に人が死ぬぞ!」

 議場は、それまでの和やかな空気から一変して張りつめたものとなった。
 S司法書士は、実際に受任している事件について、依頼者である女性がどのような立場に立たされているか、Sさんの事務所にたどり着くまでにどのような人生を送ったか、前は海、後ろは山、その間に挟まれた東海道線の線路の上で、一人で何を考えていたかなど、驚くべき話を訥々と話し始めた。

 役員会は、Sさんの話に圧倒され、何も決まることなく散会した。

 Sさんは僕に言った。「古ちゃん、青司協が何もやれないのなら個人でやろう」

 数日後、僕を含め、数人の有志がSさんの事務所に集まった。Sさんはコピー機をフル稼働して、集まった司法書士に資料を配布し、丸1日、サラ金問題の本質、破産手続の概要などについて講義した。充実した1日だった。

 Sさんは、程なくして、研修会の趣旨を綴った「破産手続に関する研修会のご案内」と題する文書を起案し、僕に送ってくれた。僕は、研修会場を予約し、県内の会員全員にその案内を発送した。

 平日の夜7時から、呼びかけ人は司法書士会でもなく、青司協でもない。Sさん個人という研修会に、県内から約80人の司法書士が集まった。

 まだ体調が万全ではないSさんだったが、2時間の講義はそれを微塵も感じさせないすばらしいものだった。Sさんは、「安易な債務者責任論から脱却せよ」と何度も繰り返した。借りたお金は返すというのが契約の常識である。しかし、サラ金問題というのはそんなに簡単に割り切れるものではない。金利や取り立ての問題。官僚や大手金融機関の役員が天下っているサラ金。そこに融資をする銀行・生保・損保。そこでターゲットにされる社会的弱者の存在。これで契約は対等か。借りた者は、自分の命を絶って生命保険で返済することまでをも考えなければならない。それでも、本当に返済できない者だけが悪いのか。

会場は静まり返ってSさんの話に耳を傾けた。Sさんの講義は本質を突いたものだった。

研修会の司会を務めた僕は、最後にこう言って研修会を閉会した。
「2カ月後、電話相談として、クレサラ110番をやります。大勢の方に参加していただきたいと思います」 

 病み上がりにもかかわらず熱い講義をしたSさんにつられ、クレサラ110番開催を宣言した僕は、次の準備に入った。

まず、個別の論点についての研修が必要であった。また、電話相談の模擬演習もする必要があった。クレサラにほとんど取り組んだことがない会員ばかりであり、僕とて若干やったことがある程度という状態だったので、いろいろなところから資料を取り寄せながら研修カリキュラムを作った。

 ちょうどその頃、ある雑誌で、ある地方の青年司法書士会がクレサラ110番を実施したという記事を目にした。執筆者は、主催者の言葉として、「電話相談のうち、具体的対処が必要と思われる相談は弁護士を紹介した。電話口の向こうから聞こえる債務者の叫びに胸が詰まる思いだった」という趣旨のことが書かれていた。

 僕はこの記事を読んで「何を言っているんだ」という思いと同時に情けなさを感じた。

 「具体的対処が必要と思われる相談は弁護士会を紹介した」? 何を言っているか。なぜ自分たちで対応しようとしないのか。そんな110番だったらやらない方がましではないか。しかも、こんな記事を書くぐらいだから、主催者はこの結果に満足しているに違いない。

「債務者の叫びに胸が詰まる思いだった」? そういう感受性も大事かもしれないが、あまりにも一般的・傍観者的な感想ではないか。法律家であれば、違法な金利が跋扈している問題認識や、そうした営業をしている貸金業者を法的にどのように評価するのかなど、もう少し突っ込んだ分析が必要ではないか。

 僕は、この記事をみんなの前で批判した。僕たちが行う110番は、こうした110番ではない。僕たちの110番は、僕たちの手による現実の救済を目的としている、そのことを徹底的に意思統一した。

 Sさんの講演に約80名の司法書士が集まったものの、その後、研修会を重ねるにつれ、40名、30名と参加人数は減少していった。

 でも、僕はそれでもかまわないと思った。「僕もクレサラに関わっている」というポーズだけの司法書士はいらない。110番の趣旨に本当に賛同してくれる人だけが残ればいい。たとえそれが10人であろうともかまわない。僕はそう考えて研修を続けた。

 そして、こうした僕たちの動きに対し、NHKが関心を示した。

僕たちのクレサラ110番の準備に興味を示したNHKは、Sさんや僕に対して取材を始めた。今やNHKの看板女性アナウンサーになっている彼女は、サラ金の問題については全く知識がなかったようで、僕たちの説明の一つ一つの説明に驚きを示した。

 Sさんの依頼者である男性の家にも行って、サラ金の取り立ての電話にもテープを回した。彼女は、僕たちの事前の説明によってかなりの恐怖心を持ったようで、取材現場で電話が「リーン」と1回鳴っただけで、2メートルぐらい飛び上がって逃げた(ように見えた)。

 こうして、NHKの取材も入って、僕たちの110番の準備もますます熱が入った。しかし、それと同時に、研修を重ねる度に参加人数は少しずつ減っていった。

 そして、いよいよ110番の前日を迎えた。僕たちは、夕方静岡に結集し、最後の研修として、どこから手にいれたか忘れたが、全国クレジットサラ金問題対策協議会の事務局長である木村達也弁護士のビデオを見ることにした。

「本当に大丈夫なのか」、「僕たちにどれだけのことができるのか」、研修会場は、どちらかというと不安の空気が支配していた。

と、その時、遅れてSさんが到着した。そして、瞬時にその空気を察して言葉を発した。

「腹をくくれ」

 僕たちはハッとした。最初の研修から始まって、20人程度まで人は減ってしまったが、僕たちは十分な準備をした。このサラ金問題に正面から取り組むんだという思いだけでここまで来た。もう前に進むしかないのだ。

 翌日、110番は午前10時からの電話による相談であったが、9時すぎからテレビの取材が数社駆けつけてきた。もちろん、NHKも来た。

 夕方5時まで、相談は23件だった。中には、家族数人が自殺に追い込まれたという緊迫した相談もあった。

 今、こうした110番を行うと、1日あたり50件以上の相談が寄せられるが、初めての試みで23件の相談を受けることができ、とりあえずホッとした。

こうして、僕たちの初めてのクレサラ110番は終了した。

当時の司法書士のクレサラに対する事件処理は、かなり厳しいものがあった。なぜなら、当時はクレサラに取り組む司法書士はほとんどおらず、クレサラ業者も司法書士がクレサラに取り組むことに違和感を持っていたからだと思われる。

 問題は、相談を受けて受任した後、どうやってクレサラ業者の取り立て行為を止めるかであった。当時の貸金業規制法、大蔵省通達は、「弁護士が受任した旨の通知、または裁判手続きをとった旨の通知を受けた場合には正当な理由なく取り立てをしてはならない」とされていた。

 つまり、弁護士の受任通知がクレサラ業者に到達すれば取り立て行為は禁止されるが、司法書士の受任通知では取り立て禁止効は発動しないのである。

 これに対し、「この通達に司法書士が入っていないのはおかしい」と主張する司法書士も少なからずいた。しかし、僕はそれはおかしいと思っていた。なぜなら、この通達が発出された背景として、昭和50年代の、いわゆる「サラ金地獄」の時代に、債務者の縦になって活動したのは弁護士であり、司法書士が、皆無とは言わないが、対応していなかったという事実がある。だから、「司法書士」が入っていないのは当然のことだからだ。

 また、弁護士が受任通知を出せば本人に対する取り立てが制限される理由は、弁護士は本人の代理人として交渉が可能であり、債権者は弁護士を相手に交渉をすることができるからだ。

 しかし、当時は裁判書類作成権限しか持たない司法書士の受任通知で取り立てが禁止されることになれば、債権者にとっては交渉窓口も閉ざされてしまうことになってしまう。

 いずれにしても、当時、司法書士としてどのように取立行為を止めるかということが問題であったが、僕たちは、大蔵省通達に「裁判手続きをとった旨の通知」という規定があることを見逃さなかった。そこで、相談を受けたら、なるべく急いで破産等の裁判手続を申し立てるというスタイルを作っていった。そして、申立をしたあとに、裁判所で付けられた事件番号等を併記して、「裁判手続をとった旨の通知」を送るようになったのだ。

 また、こうした申立は、書類は司法書士が作るにしても、本人申立であることには変わりはないので、本人名の通知書に司法書士が書類作成者として氏名を並記するというスタイルを確立していった。

当時は、相談を受け、そこで方針を協議し、破産の申立が必要だとということなれば必要書類を指示して、早急に破産申立の準備に入る。添付書類を持ってきたら半日ほど面談をして、翌日には破産の申立をする。そこまで、相談を受けてから早ければ2日で申立が完了する。そして、債務者名で、債権者に対し破産申立をした事実を通知し、その書面に、書類を作成した司法書士として今後の手続きに協力して欲しい旨司法書士が奥書しておく。

 そうした、きわめてハードな作業を繰り返し、とにかく裁判所に事件を係属させて取立行為を止めるわけだ。もちろん、費用などいただけないことも慣れっこになってしまう。

 そして、そうした通知を債権者に郵送すると、たとえば10社の債権者に通知すると、翌日には、ほぼ10社から事務所に電話がかかってくる。電話の内容はと言えば「司法書士でもこういう業務をするんですね」なんて嫌味をいうのはまだかわいい。

「いったい何の資格でこんなことをやってるんだ」「非弁(弁護士法違反)じゃないか」

 ほとんどこの手の電話だ。
 だいたい、この手の電話に対する対応は、性格によって2通りに分かれるようだ。
 一つ目は、「司法書士の業務は司法書士法2条で定められており、そこに裁判所に提出する書類の作成が司法書士の業務のひとつとして定められており・・・・・」と、淡々と説明するタイプ。
 二つ目は、「非弁とは聞き捨てならん。人を犯罪者呼ばわりするのなら、骨になるまで闘うぞ(コノヤロー)」と臨戦態勢に入るタイプ。

 もちろん僕は前者だが、いずれにしても、当時はそうした凄まじい攻防を1日中やっていなけれぱならなかった。

 それは、ある意味、非常に辛いものがあった。相談を受けて厳しい時間の中で申立まで行うのが辛いということではなく、非弁の誹りを受けながらこうした仕事を続けるということ自体、非弁で懲戒になることは決してないと確信していても、嫌なものである。

 サラ金業者が「非弁」をネタに攻撃してきた事件は、僕を含め、いくつも記憶に残っているが、あまりにシリアスすぎてここに書くことはできない。

 しかし、そうした事よりも、まさに被害者としか言いようのない目の前の人たち、それも、業として裁判書類作成をしている者に助けを求めてくる人たちに手をさしのべること、そして、書類作成という限定的な方法ではあるが身を挺してサラ金業者に対峙するということの方が大切なことだったのだ。

 その時代を通ってきた僕たちは、それなりに法を研究し、対処法を自ら考え、ひとつひとつ乗り越えてきたという意味においては幸せなのかもしれない。また、その時代をくぐり抜けてきた仲間を見ると、一様に打たれ強く、精神的にタフである。

 今のように様々なマニュアルが用意された中でクレサラをやるのが法律家として必ずしも幸せとは思えないのである。

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2006年10月 8日 (日)

取締役の各別の任期の定め

定款により取締役ごとに異なる任期を定めることができる(「新・会社法千問の道標」285頁 商事法務)

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電話機リース被害110番

7日、静岡県青年司法書士協議会主催により開催された電話機リース110番。16件の相談が寄せられた。

その合間、静岡県青年司法書士協議会の会員相手に、11月の日司連消費者被害救済実務セミナーで担当している「おまとめローンの問題点と登記代理概念の再考」について小寺さんとともに発表。また、同じく担当している「日掛け保証料問題」について、榛葉さんとともに発表。

さすがに、2つのテーマにかかわって、両方について発表するとなると非常につかれる。

おまとめローンの問題を契機に検討している登記代理概念の再考については問題点の提起であり、結論は見いだせない。これからの議論を期待したい。

日掛け保証料の問題は、少しずつ成果が見え始めており、これからの進捗を期待したいところだ。

Kif_1253 というわけで、いつものように打ち上げ。

十数年ぶりに、静岡の居酒屋「亀」で気勢をあげた。

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2006年10月 7日 (土)

高金利・悪質金融とのたたかい方

_011 2004年に熱海で開催されたクレサラ商工ローン実務研究会での発表を書籍にしたもの。内容としては、貸金業規制法・出資法の2003年改正の概要、最高裁平成16年2月20日判決(SFCG)の解説、過払訴訟の最先端など盛りだくさん。

僕も、改正司法書士法と司法書士の代理権の範囲について発表している。  全国クレジット・サラ金問題対策協議会

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2006年10月 6日 (金)

最新過払い金返還請求の実務

_012_1 2003年に千葉で開催されたクレサラ・商工ローン実務研究会で発表された内容を本にしたもの。過払い金返還請求訴訟に関する最新情報を交換している。  全国クレジット・サラ金問題対策協議会

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2006年10月 5日 (木)

判例貸金業規制法

_009 消費者法の大家、長尾治助先生がまとめたもの。

貸金業規制法については、とくに近年、重要な判例が出されているが、ちょっとそこまでは追いついていない。最近の判例については全国クレジット・サラ金問題対策協議会の書籍等を参考にしたい。

しかしながら、本書は、43条のみならず、広く貸金業規制法の判例を取り上げており、さらに、金銭貸付の適正化など、いくつかのテーマについて論文形式で提言をしている。  法律文化社

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2006年10月 4日 (水)

取締役が破産した場合

「破産して復権していない者」は取締役の欠格事由ではないが、破産手続開始決定を受けた場合、取締役は委任関係の終了を原因として退任する(「新・会社法千問の道標」280頁 商事法務)

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2006年10月 3日 (火)

決定的瞬間!

_041_2 

当事務所駐車場における、職員どおしの接触。

「駐車場内におけるトラブルについて、当事務所は責任を負いません」

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ヤミ金融被害救済の実務

_008 日本司法書士会連合会消費者問題対策推進委員会編。

ヤミ金融に対する対策をに特化して書かれた数少ない書籍。ヤミ金融の口座仮差押の書式など、クレサラ問題の先鋭司法書士ならではの、出色の著。

私も「短期業者被害への対応」として20ページ以上にわたって執筆している。すでに絶版か?  民事法研究会

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2006年10月 2日 (月)

おさるは好きですか?

大分に着いて直後、大分の司法書士の方に「おさるは好きですか?」と聞かれた。

「いやあ、好きとか、きらいとか、そういう問題でもないと思いますが・・・・」

と答えたが、程なくしてこの質問の意味がわかった。

_055 写真は、大分県高崎山のおさるさん。野生の猿が約800匹放し飼いになっている。これが、本当にかわいい。ペットにしたいくらいだ。

浜松に帰ってから、猿をペットとして飼うことができるか、インターネットで真剣に調べた。その結果、可能であることはわかったが、ペットで飼うということは、猿にとっては相当なストレスになるようだ。やっぱりかわいそうだからやめることにする。

_051

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別府の海地獄

_046 9月30日。なんと、大分県司法書士会の研修会に”日帰り”で行ってきた。午後1時から3時まで、2時間、ベラベラしゃべりまくってきた。

写真は「海地獄」。なかなかの迫力だ。_050

また、「地獄プリン」なるものもあった。

きっと、わき出してくる蒸気の熱を使って作ったプリンなんだろう。_049これが、けっこうおいしかった。

 

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「置くことができる」旨の定款の定め

「当会社は会計参与を置くことができる」との定款を定めは無効である(「新・会社法千問の道標」271頁 商事法務)

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2006年10月 1日 (日)

任意整理・過払訴訟の実務

_007 芝豊司法書士、宮内豊文司法書士の共著によるもの。

任意整理については、日本司法書士会連合会消費者問題対策推進委員会編の「クレサラヤミ金事件処理の手引」と重複する部分がある。

過払いについては、若干の新しい論点を加えているが、入門書的位置づけでいいだろう。過払いについては、日々、新しい論点が次々と出ているので、こうした論点をどうやって共有していくかが問題である。 民事法研究会

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