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2007年6月

2007年6月30日 (土)

中間省略登記(?)の通達 3

(続き)不動産取引の現場においては、「第三者指定契約」の内容が極めて重要であることは言うまでもない。特に、諾約者が不動産業者であり、受益者が一般消費者である場合には、その重要性は顕著である。

 しかしながら、「第三者のためにする契約」により、要約者から受益者に所有権移転登記を申請する場面においては、「第三者指定契約」の内容そのものは所有権移転に関しては直接関係のない契約であり、登記原因証明情報に記載する必要はないと考えられる。
 ところで、別紙1では、甲、乙及び丙のいずれも押印をしているが、登記原因証明情報としてこの三者の押印が必要になるであろうか。

 一般に、登記原因証明情報には、登記権利者の押印は求められていないから、受益者である丙の押印は必要とはされていない。もっとも、丙は甲乙間の「第三者のためにする契約」の当事者ではなく、その契約内容を熟知していないこともあり得ることから、丙の押印を求めることが望ましいとの考え方もある(登記研究708号149頁参照)。また、登記義務者については押印が必要とされていることから、甲の押印が必要となる。
 さて、乙の押印が必要か否かであるが、乙は登記申請の当事者ではないことから、本来は押印をする必要がないが、乙は売買代金支払義務を負担する一方で所有権を取得することがなく、重大な利害関係を負っているとも言えるから、真正を担保するためにも押印が必要とする考え方がある(登記研究708号149頁参照)。しかし、私見としては、これを求める法的根拠が乏しいのではないかと考える。登記原因証明情報の機能をどのように位置づけるかによって、見解が分かれてくるものと考えられる(続く)。

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2007年6月27日 (水)

中間省略登記(?)の通達 2

 (続き)まず、「第三者のためにする契約」についておさらいをしておきたい。
 「第三者のためにする契約」は、民法にその規定がある。民法537条は、「契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。」と規定している。

 別紙1の例で言えば、土地の売主甲と買主乙が売買契約を締結し、その効果として、乙が甲に対し売買代金を支払う義務を負い、甲は直接丙に対し土地を引き渡す債務負うという「第三者のためにする契約」であり、その場合、丙の権利は、丙が甲に対してその契約の利益を享受する意思を表示したときに発生するというものである。この場合の甲を要約者、乙を諾約者、丙を受益者と呼ばれている。
 このような「第三者のためにする契約」は、他の典型契約である売買契約や贈与契約などと対立する概念ではなく、当該契約の法律効果の一部を第三者に帰属させるというところに特色があり、別紙1の例で言えば、売買契約の一類型であるにすぎない。

 第三者は必ずしも契約締結の当時に現存する必要はない(最判昭和37.6.26民集16巻7号1397頁)。したがって、甲と乙とが第三者のためにする契約を締結したうえで、乙が最終所有者となる第三者を捜すという手順でもかまわないということになる。

 「第三者のためにする契約」の当事者は、あくまでも要約者と諾約者である。受益者は契約の当事者ではない。そのことにより、次のような問題点が考えられる。まず、契約の当事者ではない第三者には、契約解除権や取消権がないということである。たとえば、第三者に対し完全な所有権の移転を約していたにもかかわらず、抵当権や第三者の権利が付着していたために目的を達することができなかったとしても、受益者において契約を解除することができないということである。次の問題点として、この「第三者のためにする契約」とは別に、諾約者と受益者との間における「第三者指定契約」(と、勝手に名前をつけたが・・・)の内容が十分に研究されなければならないということである(続く)。

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中間省略登記(?)の通達

以下は、本年1月(だったかな?)に出された通達である。また、これに関するその後の通達もでているので、少しこの問題について考えてみたい。

 この通達は、いわゆる「中間省略登記」についての通達と言われているが、照会文書を見ても、何ら中間を省略した登記ではない。

 別紙1は第三者のためにする契約と言われる方式であり、別紙2は買主の地位の譲渡と言われる方式である。よく読むと、それぞれ、売買契約に伴う所有権移転という物権変動は1個しか観念することができない。

 いわゆる中間省略登記とは、物権変動が複数存在し、それが連続している場合に、ひとつの登記申請により、最初の物権変動の義務者が登記申請上の義務者として、最後の物権変動の権利者が登記申請上の権利者として登記を行うこと(僕の勝手な定義)であり、実体関係を反映していないものとして問題視される。

 登記の実務としては、判決書の記載等により結果的に中間省略登記となるものはいいとしても、共同申請で中間省略登記を行うことは、実体関係に符合しないものとして問題視される。ときどき、「平成17年3月施行の改正不動産登記法により中間省略登記ができなくなった」と言われるが、実は、中間省略登記は、理論的には昔からできなかった。ただ、申請を受け付けた法務局で判別することができないので、事実上、中間省略登記ができていたにすぎない。

 平成17年3月施行の改正不動産登記法で、登記申請には、原則として登記原因証明情報を添付しなければならないこととなり、司法書士の職責として、虚偽の登記原因証明情報を作成することが許されないとの観点から(登記原因証明情報を作成することが司法書士の職務であるかどうかという小さな議論もあるがここでは触れない)、法施行を機に、共同申請により中間省略登記をする司法書士がいなくなったというのが実態である(なかには、一手に引き受けている司法書士もいるとの噂もあるが・・・)。

 なお、暴論ではあるが、であるならば、即決和解を利用すれば中間省略登記が堂々とできてしまうということにもなろうが、マニアックな展開になりそうなのでやめておく(続く)。

___________________________

第三者のためにする売買契約の売主から当該第三者への直接の所有権の移転の登記の申請又は買主の地位を譲渡した場合における売主から買主の地位の譲受人への直接の所有権の移転の登記の申請の可否について(回答)

本月21日付け照会のあった標記の件については,いずれも貴見のとおりと考えます。

【法務省への照会文書】

第三者のためにする売買契約の売主から当該第三者への直接の所有権の移転の登記の申請又は買主の地位を譲渡した場合における売主から買主の地位の譲受人への直接の所有権の移転の登記の申請の可否について(照会)

甲を登記義務者,丙を登記権利者とし,別紙1又は別紙2の登記原因証明情報を提供して行われた甲から丙への所有権の移転の登記の申請は,他に却下事由が存在しない限り,いずれも受理されるものと考えて差し支えないか,照会します。

別紙1(第三者のためにする契約)

登記原因証明情報

1 登記原因証明情報の要項
(1)登記の目的 所有権移転
(2)登記の原因 平成18年11月1日売買
(3)当事者
   権利者 A市B町1丁目2番3号
       (丙) 丙野太郎
   義務者 C市D町2丁目3番4号
       (甲) 甲山一郎
   2(1)の売買契約の買主
       E市F町3丁目4番5号
       (乙) 乙川花子
(4)不動産の表示
所在 X市Y町Z丁目
地番 7番9
地目 宅地
地積 123.45平方メートル

2 登記の原因となる事実又は法律行為
(1)甲は,乙との間で,平成18年10月1日,その所有する上記不動産(以下「本件不動産」という。)を売り渡す旨の契約を締結し,甲は,同日,売買代金全額を乙から受領した。
(2) (1)の売買契約には,「甲は,本件不動産の所有権を乙の指定する者に対し乙の指定を条件として直接移転することとする。乙から甲への売買代金の支払いが完了した後も,その指定があるまでは,本件不動産の所有権は,甲に留保される。」旨の所有権の移転先及び移転時期に関する特約が付されている。
(3)所有権の移転先の指定
平成18年11月1日,乙は,本件不動産の所有権の移転先として丙を指定した。
(4)受益の意思表示
平成18年11月1日,丙は甲に対し,本件不動産の所有権の移転を受ける旨の意思表示をした。

平成18年11月5日 ○○法務局●●出張所御中

上記登記原因のとおり相違ありません。

権利者 A市B町1丁目2番3号
(丙) 丙野太郎 印
義務者 C市D町2丁目3番4号
(甲) 甲山一郎 印
2(1)の売買契約の買主 E市F町3丁目4番5号
(乙) 乙川花子 印

別紙2 (買主の地位の譲渡)

登記原因証明情報

1 登記原因証明情報の要項
(1)登記の目的 所有権移転
(2)登記の原因 平成18年11月1日売買
(3)当事者
   権利者 A市B町1丁目2番3号
       (丙) 丙野太郎
   義務者 C市D町2丁目3番4号
       (甲) 甲山一郎
   買主の地位の譲渡人
       E市F町3丁目4番5号
       (乙) 乙川花子
(4)不動産の表示
所在 X市Y町Z丁目
地番 7番9
地目 宅地
地積 123.45平方メートル

2 登記の原因となる事実又は法律行為
(1)甲は,乙に対し,平成18年10月1日,その所有する上記不動産(以下「本件不動産」という。)を売り渡す旨の契約を締結した。
(2) (1)の売買契約には,「乙から甲への売買代金の支払いが完了した時に本件不動産の所有権が乙に移転する。」旨の所有権の移転時期に関する特約が付されている。
(3)地位の譲渡契約
乙は,丙との間で,平成18年10月11日,(1)の売買契約における買主としての地位を丙に売買により譲渡する旨を約し,甲は,これを承諾した。
(4)代金の支払い
平成18年11月1日,丙は,甲に対し,(1)の売買代金全額を支払い,甲はこれを受領した。

平成18年11月5日 ○○法務局●●出張所御中

上記登記原因のとおり相違ありません。

権利者 A市B町1丁目2番3号
(丙) 丙野太郎 印
義務者 C市D町2丁目3番4号
(甲) 甲山一郎 印
買主の地位の譲渡人 E市F町3丁目4番5号
(乙) 乙川花子 印

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2007年6月25日 (月)

債務整理分野修得研修プログラム

表題のプログラムは、日司連の中央研修所が昨年度に初めて企画した、初心者向けの債務整理に関する研修である。昨年度は、横浜と神戸に別れて研修を行ったが、本年度は、各単位会で行うことができるように準備が進められている。

私の役割は、民事再生について教材・解説を整備すること。昨年、同部分を担当した東京のNさんを引継ぎ、より充実した教材・解説にすべく、ようやく脱稿した。

とりあえず、やれやれ。

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2007年6月24日 (日)

実質的に新年度入り

日司連総会も終わり、実質的に新年度入りした。

静岡県司法書士会副会長の任期も5月の総会で終了し、新たな気持ちで新しい年度の活動を開始したいと思う。

新年度の公職としては、県司法書士会では多重債務問題対策委員会委員長、商業登記関係の委員(正式な名称は未だ不明)などのようだ。また、日司連でどのような組織が作られるかわからないが、今までの消費者問題対策委員としての役割を継続して行っていくつもりだ。

大きなテーマとしては、静岡県(司法書士会ではなく行政としての静岡県)の多重債務対策会議にいかに関わっていくかということがある。全国的には先進的な取り組みがなされているところもあるが、静岡県はまだこれからである。新しい視点で取り組む方策を密かに練っているのである。追って、少しずつ紹介していきたい。

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「実務のための新貸金業法」

久々にブログに書き込みをします。

懸案でありました新貸金業法の解説書「実務のための新貸金業法」が民事法研究会から発刊されました。7月初旬には店頭に並ぶものと思われます。

この本は、日司連消費者問題対策本部のワーキングチームで分担して執筆したものです。私の担当は改正利息制限法です。ほとんど文献等の資料がなく、締め切り直前に随分と書き直しました。ご意見を寄せてください。

まだ民事法研究会のホームページにもでていませんので、カバーをお見せすることができませんが、いずれ、ご紹介したいと思います。

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