改正利息制限法 講義録 10
次に、みなし利息の特則に入ります。
まず、今回の改正でみなし利息について改正された理由は2つ考えられます。
まず、第1点は、現在の利息制限法では、契約締結費用および債務弁済費用をみなし利息から除外している一方で、出資法では利息制限法のような除外規定が存在していません。そのため、利息制限法と出資法では、みなし利息の範囲が異なってしまっています。しかし、今回の改正では、出資法上の罰則利率と利息制限法上の上限利率が一致ないし接近することとなったため、両者におけるみなし利息の範囲を調整する必要があったからである、と考えられます。
2点目は、一般の方同志の金銭消費貸借とは異なって、営業的金銭消費貸借の場合には、契約締結費用や保証料など、様々な費用がやり取りされます。また、反復して貸付が行われたりするため、個人間の貸付と異なって、カードが発行されたりしております。したがって、営業的金銭消費貸借の場合には、特則を設けてみなし利息の範囲を定める必要があったからである。と考えられます。
まず、営業的金銭消費貸借ではない場合、どのように規定されているか見てみたいと思いますが、3条では、「債権者の受ける元本以外の金銭は契約締結費用および債務弁済費用を除き「いかなる名義をもってするかを問わず」みなし利息としています。
これに対し、営業的金銭消費貸借の特則では、この例外として、「債務者に交付されたカードの再発行の手数料その他の債務者の要請により債権者が行う事務の費用として政令で定めるものはみなし利息としない」ということにしております。
ここで、「債権者の受ける元本以外の金銭」とされていますが、これは、債権者が債務者から直接受け取るものをいうと考えられます。したがって、債権者が受け取ってそこで完結する完結する場合であっても、債権者が受け取って、その金額の全部または一部を第三者に交付することを予定している場合であっても、いずれも該当すると考えられます。
逆に言えば、債権者が債務者から直接受け取らないもの、たとえば、指定口座へ振込弁済する場合の金融機関の振込手数料等などは、「債権者が受け取る」には該当しないと考えられます。ただし、脱法的な場合は司法判断に委ねられるということになります。
「利息とみなされない費用」として政令で定める費用は、次の3つが定められています。
まず、「金銭の貸付けおよび弁済に用いるため債務者に交付されたカードの再発行の手数料」です。次に、「貸金業法の規定により営業的金銭消費貸借に関して債務者に交付された書面の再発行および当該書面の交付に代えて電磁的方法により債務者に提供された事項の再提供の手数料」です。そして、3つ目は、「口座振替の方法による弁済において、債務者が弁済期に弁済できなかった場合に行う再度の口座振替手続に要する費用」です。
これらは、いずれも、営業的金銭消費貸借に特有のものです。また、利息のように元本の使用の対価的性質を有しないものであることから、みなし利息から除外されています。
次に、今度は逆に、営業的金銭消費貸借においては、契約の締結および債務の弁済の費用であっても、次の3つについてはみなし利息から除外するものとされました。
一つ目は、「公租公課の支払いに充てられるべきもの」です。二つ目は、「強制執行の費用、担保権の実行としての競売の手続の費用その他公の機関が行う手続に関してその機関に支払うべきもの」、3つ目は、「債務者が金銭の受領または弁済のために利用する現金自動支払機その他の機械の利用料のうち、受領または弁済額が1万円以下の場合は105円以下、1万円を超える場合は210円以下(いずれも消費税額等相当額を含む)の範囲内のもの」です。
「公租公課の支払いに充てられるべきもの」の具体例としては、契約書に貼付する印紙代、不動産担保設定登記に要する登録免許税等が考えられます。なお、登記に要する司法書士費用は、その実態が金銭を目的とする貸付けに関し「債権者が受ける」ものである場合には、みなし利息と考えられる余地もあります。
「強制執行の費用、担保権の実行としての競売の手続の費用その他公の機関が行う手続に関してその機関に支払うべきもの」とは、強制執行申立手数料、不動産担保権実行申立手数料、執行官費用、公正証書作成費用等が考えられます。
このような申立てに関する弁護士費用、司法書士費用等は、その実態が金銭を目的とする貸付けに関し「債権者が受ける」ものである場合には、みなし利息と考えられる余地もあります。
「現金自動支払機その他の機械の利用料」ですが、ここで、「現金自動支払機その他の機械」とは債権者の自社現金自動支払機その他の機械、提携の他社現金自動支払機その他の機械を含むと考えられています。
もっとも、貸金業者が自ら設置する現金自動支払機については、利用者の利便性もさることながら、有人店舗において貸金業者の従業員が行う事務を現金自動支払機が代わって処理することにより、店舗設置費用や人件費等の軽減に寄与している、換言すれば、現金自動支払機の利用料の実質は、貸金業者が本来負担すべき店舗設置費用や人件費等の代替費用であるということができるわけです。
加えていえば、貸金業者が設置する現金自動支払機には、新規の金銭消費貸借契約を締結する機能も備わっており、新規顧客の開拓のためにも設置されているものであると思います。
このように、貸金業者が自ら設置する現金自動支払機を利用した場合の費用については貸金業者が本来負担すべき営業上の経費であると考えられますが、これをみなし利息から除外して利用者に負担させるという点について疑問を感じております。
たとえば、最高裁昭和46年6月10日判決(判時638号70頁)では、債権者が実際に費用として支出しなかったものは利息とみなされると判示しているところです。
自社の現金自動支払機の利用に係るものについては、実際に費用として支出した金額を客観的に把握することは極めて困難であると思われますが、現金自動支払機の実際の利用料が高額となる場合には、利用料を抑制する機能がある一方と思われますが、実際の費用が、1万円以下の場合は105円以下、1万円を超える場合は210円以下となる場合には、実費と利用料との差額が貸金業者の利益となることから、先ほどの最高裁判決の趣旨との関係がさらに議論される必要があると思われます。
さて、ここまでの、みなし利息の話を1回聞いても、なかなか正確に理解できないのではないかと思います。そこで、非営業的金銭消費貸借と営業的金銭消費貸借におけるみなし利息について、わかりやすい図にしてみました。
まず、非営業的金銭消費貸借について、利息以外に債権者に支払われる金額のうち、契約締結費用と債務弁済費用を除くものは全てみなし利息になるということです。一方で、営業的金銭消費貸借においては、契約締結費用や債務弁済費用であっても一部の金額がみなし利息になりますし、契約締結費用や債務弁済費用以外の金額についてもみなし利息とならない部分があるということになります。
これをちゃんと覚えるためには、非営業的金銭消費貸借のみなし利息の規定がまずあって、その特則として、営業的金銭消費貸借のみなし利息が定められているという覚え方ではなくて、非営業的金銭消費貸借と、営業的金銭消費貸借では、みなし利息の定め方が全く違う、と考えていただいた方がわかりやすいのではないかと思います。
つまるところ、営業的金銭消費貸借でみなし利息とならないのは、公租公課、強制執行費用、機械利用料、カード再発行手数料、書類再発行手数料、再度の引落費用だけである、と考えていただいた方がわかりやすいのではないかと思います。
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