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2010年8月

2010年8月30日 (月)

執行証書があるけど仮差押

 執行証書(公正証書で、強制執行認諾約款が付されているもの)があれば、仮差押ではなく本差押さえができる。これが教科書で教えていること。しかし、今回は、執行証書がありながら、あえて仮差押を申し立てることにした。
 なぜか。無剰余取消しを防ぐため。ちょっと説明を省略しすぎてわかりにくいかな?

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2010年8月21日 (土)

交通事故に基づく物損損害賠償請求(佐瀬淳司司法書士)メモ

被保険者・・・事故
       ↓
       保険会社に事故報告
       ↓
       損害調査部(サービスセンター)
           ・・・アジャスター、保険会社の社員
       自動車が修理工場に入ったとの連絡入る
             ↓
            立会・写真、見積取寄
            損害額が大きい場合、
            整合性がない場合は立会いを行う
       被保険者から事故の状況を聞いて、過失割合の交渉

1.709条の要件事実
 原告の被侵害利益の存在・・・通常は所有権侵害または利用権侵害
               東京地裁で、全損・評価損の場合は所有者に
               被侵害利益の存在を認定した例あり(利用者
               ではなく)
 被告の加害行為
 故意または過失
 損害の発生及び額
 因果関係・・・・・・・・・・非接触で過剰回避の場合 因果関係が問題となる

2.損害賠償請求額の算定
 損害額*(1-過失相殺率)+司法書士費用
 ※司法書士費用は過失相殺率を乗じた損害額の10パーセント程度が通常
  ただし、判決の場合にしか認められない

3.個別損害の主な項目

 修理費が認められる場合
  車両の時価額>修理代の場合に、必要かつ相当な金額
  ※問題となる事例 過剰修理・・・板金修理できる場合に交換、
                  部分損傷につき全塗装
                  ただし、バイクは板金なし、部品交換
           便乗修理・・・ついでに修理
                  事故側と反対側に損傷がする場合はガードレールに
                  あたっていないか注意
                  バイクは以前転んでいることがあるので
                  便乗修理になることがある
           改造車・・・・福祉車両、冷凍車は認められる
                  デコトラ、違法改造・・金メッキバンパー事件
                              ↓
                  因果関係認めたうえで5割過失相殺

 ※見積書
  ・未修理の場合、見積もりの内容どおりの修理で直るかどうかわからないので、
   依頼者に、その内容でいいかどうか確認する必要がある。
  ・見積もりだけとった場合には見積もり料を請求されることがある  
  ・ボンネットタイプ
  ・代車期間の妥当性の判断
  ・タクシー会社の見積もり
   社内の修理工場→部品代・工賃に消費税は発生しない
  ・一般的なボルト止めの部品・・バンパー、フェンダー、フード
                 ドア、トランク
  ・メーカーによる部品名称の違いがある場合がある

 評価損
  ・技術上の評価損
  ・取引上の評価損(事故歴自体に起因する交換価値の減少)
   判例はさまざま
   初年度登録から1年以内であれば認めている
   (国産で3年ぐらい、輸入車で5年ぐらいが限度という論文あり)
   高級車は認められやすい
   損傷・修理の部位及び程度
   自動車公正競争規約で表示義務がある部位は認められやすいか?
  ・修理費の○パーセントという考え方で定めることが多い
  ・立証書類・・・財団法人日本自動車否定協会の評価査定書、
          デーラーの作成する事故減価査定書
          車検証
          見積書
          写真等、
  ・保険会社は、100:0、登録から3か月以内でないと評価損は出ないと
   言うが、それは無視してよい。

 代車代
  ・代車の必要性
   必要性を要求する説が有力。通勤、通学等は必要と考える。
   レジャーは認められないことが多い。
   代替車両がある場合には必要性はない。
  ・期間の相当性
   相当な修理期間または買替期間が原則
   (工賃-塗装費用)÷レバーレート+塗装日数+部品待ち日数+作業場待ち日数
     ※レバーレート→工賃の単価
  ・保険会社は100:0の場合しか出さない。全損の場合は2週間から20日程度。
   東京地裁H13.12.26判決・・・加害者の真摯な努力が必要
  ・車種の相当性

 休車損害
  ・遊休車がある場合には認めないケースが多い
  ・人件費 車に乗っていた運転手の経費を乗せるかどうか、いろいろなケース

 買替差額 時価相当額と売却代金の差額
  ・時価・・・レッドブック
   全損の場合は買換諸経費を含めた全損害額と解すべき・・・東京地裁15.8.4判決
   名古屋地裁15.2.28は微妙な判断
  ・レッドブックに記載のない車(7年以上前の車)
   プレミアがついているのであれば・・・鑑定書、中古車雑誌
   プレミアがついていない場合は新車価格の10パーセント
  ・タクシー等の改造車・・・減価償却後の金額でもよいという判例あり

4.過失相殺率
 別冊判例タイムス(現在は平成16年版が最新)

5.任意保険概略

 損害賠償請求権の直接請求権
  被害者が保険会社に直接損害賠償を請求する権利
  例 加害者と保険会社を共同被告とするようなケースなどが考えられる

 弁護士等費用特約
  あまり使われていないが使い勝手がいいはず
  被害者が、加害者が話し合いをしない等の場合でも使える
  被保険者の範囲が広い
  約款により異なる

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静岡県司法書士会裁判事務研修会「詐欺的金融商品被害について」(白井晶子弁護士)メモ

1 未公開株被害

 「秋には上場します!」等の電話勧誘、パンフレット、技術を掲載した新聞記事等で勧誘。
  結局上場せずに、購入者が騒ぎ出した頃に販売会社と連絡がとれなくなり、被害が一気に顕在化する。発行会社に連絡をとっても、発行会社は「関係ない」という対応。

違法性の所在 価値を偽る商品の販売。
損害回復の方法  詐欺→当初から上場するつもりはなかったとの立証を要する。そこで、価値を偽る社会的妥当性のない不法行為で訴えているのが実情。
金商法違反→業法違反だからといって私法上の効果まで直接的に影響を及ぼすものではない。価格が適正ではないということを直接立証するのは困難であるので、ひとつの事情として金商法違反を持ち出すこともある。

訴訟についての注意点
会社だけではなく、取締役、従業員も被告とする。民法上の共同不法行為という構成でいいのではないか。役員等として名義を貸していることもあるので、被告はなるべくたくさん並べたほうがいい。ただし、取締役、従業員の住所は、登記申請書を閲覧したり、携帯電話の番号で契約者を23条照会するなどして調べることがある。日本商品先物取引協会に照会することもある。相手方の会社に当事者照会することもある。刑事事件になっている場合には刑事記録の文書送付嘱託を使うことも。
送達がうまくいかない場合は休日送達、付郵便、公示送達等になることも多いが、実は、ここが大きなハードルになることが多い。裁判自体はそれほど大変できない。
裁判に勝手も回収できないこともあるので、その点、依頼者に伝えておくこと。ただし、徹底的にやっていれば、噂が広がって、別の事件1がすんなり1解決する必要がある。

先物の事件などは、本人尋問をやるまでは、依頼者に対し、どのようにだまされたのか説明はしない。説明をしてしまうと、尋問が整然と行われることとなり、裁判所に「仕組みをわかっているじゃないか」という印象を与えてしまう。

会社とは連絡がとれなくなった場合に「高額で買い取ってあげる」という劇場型の二次被害も発生している。→単位が足らないので不足の数を買わされるという被害。
「よく話を聴いて、おきしいと思ったらやめなさい」→こういう指導はだめ。よく話を聞いたらだまされてしまう。悪徳商法と断定して、話を聴かないように、電話もガチャ切りするように指導すること。被害者は欲が深いわけではなく、どちらかというとお人よしが多いのでは。

2 先物取引被害
 国内公設先物取引被害は減少傾向。この原因は、業者の取引高自体が減少しているため。
平成23年1月、商品先物取引法施行予定。これにより、不招請勧誘は禁止となる。ただし、具体的には政令で定められることになる。→業界としては壊滅的な打撃を受けることになろう。
先物取引自体は違法ではないので、取締役や従業員を被告にする例は少なかったが、今後、業社自体が破綻する恐れがあるので、今後は、取締役、従業員等も被告として入れることを検討すべき。
先物取引の仕組み 小額の証拠金を担保として預けて、その何倍もの取引を行うことができる。国内公設の場合は取引の取次を受ける受託者(善管注意義務あり)。公設でない場合(ロコロンドン等)は取次ぎではなく相手方そのものであるから商法そのものが詐欺的。

先物取引被害者も欲ぼけではない。最初は少額で設けさせておいて、追加の証拠金(追証)を出させ、今やめたらかなりの損をすることになる、という具合に、抜けられないようにしていく。
取引についての確認書や同意書が多数取られている場合もある。しかし、それがあっても損害賠償請求はできるのであきらめない。取引終了後に当事者間で和解合意がなされていると、和解の効力の問題となるので、まだ和解していないのなら、当事者間で和解しないように指導すること。全体として、一連一体の不法行為として考える。時効は取引終了時からであるが、不法行為を認識したときからという判例もある。
日本商品先物協会の仲裁斡旋は業者の論理が強いのでお勧めできない。できれば、裁判の方がいい。

業者から取引の資料を出させて、分析ソフトを使って取引を分析する。そうすると、追証を出させておいて、それで商品を買ったりしていることがある。

3 海外商品先物取引
海先法。参入規制がないので違法業者、行政処分が多い。行政処分を受けていない業者は返金してくることもある。なぜなら、さっさと支払うものは支払って、他の顧客を開拓したほうがいいからであると思われる。

4 CFD取引
 取引所を通さない業者との相対取引である。だいたいは、取引所のレートを参考にして業者が価格を一方的に定める。相対取引であるにもかかわらず、証拠金、手数料を徴求し、あたかも取次委託と誤認させる。取引が公認されているものではなく、実質的には賭博であり、かつ、違法性が阻却されない。

5 海外先物オプション取引
 法規制なし。
海外先物のポジションを売買する権利の取引(何だかよくわからない)。難解なもの。

6 各種ファンド商法
出資法違反、。適合性原則違反、説明義務違反、断定的判断の提供等をあわせて主張すること。

7 注意点
 本人が気がついていない問題点がたくさん出てくることがある。そもそも、先物取引業者は悪徳業者だという認識が必要。

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2010年8月20日 (金)

不動産登記規則92条の解釈

不動産登記規則92条とは、次の条文である。

(行政区画の変更等)
第92条  行政区画又はその名称の変更があった場合には、登記記録に記録した行政区画又はその名称について変更の登記があったものとみなす。字又はその名称に変更があったときも、同様とする。
2  登記官は、前項の場合には、速やかに、表題部に記録した行政区画若しくは字又はこれらの名称を変更しなければならない。

 素直に読めば、1項は、表題部、甲区、乙区全ての読替規定であり、2項は、表題部について登記官が職権で変更登記をする規定であるように見える。

 ところが、この92条が「表示に関する登記」の節に置かれているので話をややこしくしている。すなわち、92条は表題登記に関する規定であり、甲区、乙区には適用されないという解釈が、どうも通説になっているようだ。では、なぜ、甲区について、行政区画等の変更による所有権登記名義人住所変更登記等をせずに抵当権設定等の登記をすることができるかであるが、これは、行政区画等は「公知の事実」だから、ということらしい。

 これに対し、旧不動産登記法では、規則92条1項と同様の規定が総則に置かれていたために、甲区、乙区についても読替える趣旨の規定になっていた。

 旧法時代は、このようなみなし規定が存在していたために、明確な法律上の根拠があって所有権登記名義人住所変更登記等をする必要はなかったが、新法では、「公知の事実」という、やや曖昧な解釈で所有権登記名義人住所変更登記等を不要とするということだ。

何か釈然としない。後付の理由のように見えるのは僕だけだろうか。そもそも、規則92条を「表示に関する登記」の節に置いたのが間違いではないのか? 仮に間違いではないにしても、条文を素直に読めば、何ら解釈の変更をする必要はなかったのではなかろうか? 

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土地購入者が地中埋蔵物の存在により工法変更を余儀なくされた事例で土地の瑕疵担保責任を認定した事例(福岡地裁小倉支部(第一審)平成21年7月14日)

事案
 土地を購入した原告が、土地上にマンションを建築する際に地中の埋蔵物が発見され、コストのかかる別の工法を選択することを余儀なくされた事例で、本件土地には隠れた瑕疵があったとして損害賠償を一部認容した事例。

判断
 本件土地は,北九州市小倉北区内の小倉駅北口の東側海岸近くの河川沿いに位置する平坦な市街地であり,近隣には8階以上の中高層建物が多数建築されている。なお,本件土地は埋立地である。
 被告は,平成16年ころ,本件土地を一般競争入札によって売却することとしたが,その際,本件土地の履歴調査,土壌調査及び地質調査等は実施しなかった。
 被告が作成した本件土地の物件説明書には,本件土地が埋立地であるなど本件土地の履歴や地中の状況等については何らの記載もされていない。被告は,本件売買に当たっても,本件土地の履歴調査,土壌調査及び地質調査等は実施しておらず,原告に対し,本件土地の履歴や地中の状況等について何らの説明も行っていない。
 民法570条にいう瑕疵とは,売買の目的物が,その種類のものとして取引通念上通常有すべき性状(品質)を欠いていることをいうが,売買の目的物は,例えば食品においても生食用と加工用とで取引通念上必要とされる鮮度が異なるように,売買契約において想定されている用途によって瑕疵の有無が異なるものというべきである。
 瑕疵の有無は,売買契約において目的物の用途がどのようなものと想定されているかという点と,売買代金額その他の売買契約の内容に目的物の性状(品質)がどのように反映されているかという点とに照らして判断されるべきものであるということができる。そして,中高層建物の建築用地の売買においては,通常一般人が合理的に選択する工法によっては中高層建物を建築できない程の異物が地中に存在する場合には,価格を含めた売買契約の内容がそのような事態を反映したものとなっていないときは,土地の瑕疵が存するというべきである。
 本件土地は小倉駅北口の東側に位置する平坦な市街地であり,近隣には8階以上の中高層建物が多数建築されていること,本件土地の面積は512.37平方メートルであること,本件土地の建ぺい率は80%,容積率は400%とされていることなどに照らすと,取引通念上,本件土地は,中高層建物が建築されることが客観的に十分予想される土地であるということができる。
 本件売買契約において,中高層建物を建築するために通常一般人が合理的に選択する工法よりもコストのかかる工法が必要であること又はその可能性があることが売買代金額その他の契約内容に反映されているとは認められない。したがって,中高層建物を建築するために通常一般人が合理的に選択する工法よりもコストのかかる工法が必要であったときは,本件土地には瑕疵が存するというべきである。
 売買代金額その他の売買契約の内容において性状(品質)が低いこと又はその可能性があることが反映されていないのはもとより,売買契約締結の経緯によれば,売買契約締結過程を通し目的物の性状(品質)について取引通念上買主が入手すべき資料に照らして,上記瑕疵の存在は判明しなかったものと認められるから,上記瑕疵は隠れたものであると認められる。
 以上によれば,本件土地には,瑕疵があり,かつ,それは隠れたものであるというべきであるから,被告は,瑕疵担保責任に基づき,原告が被った損害を賠償すべき責任がある。

考察
 これは、不動産の転売を業としている不動産業者にとっては怖い先例。たとえば、客観的には住宅地である土地が、以前は廃棄物が処理されていた土地で住宅には不向きである、というような例であれば理解できるが、駅近くの中高層建築物が多数ある地域においては客観的に中高層建物が建築されることが予想されるから、埋蔵物の存在が隠れた瑕疵であった場合には売主の瑕疵担保責任が発生するというのである。考えてみれば、事例は異なるとはいえ、前段と同質の問題と言うこともできる。
 ところで、商業地の不動産を投機目的でファンドが購入・転売している例が見られるが、本件のような事例の場合には、最終の売主に責任追及することになるだろう。そうすると、その損害賠償請求を受けた売主は、その前の売主に、同じ理屈で損害賠償を請求することになるのだろうか。

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2010年8月19日 (木)

弁護士のみなし成功報酬特約が消費者契約の違約金を定める条項等に該当するとした例(横浜地裁平成21年7月10日(第一審))

事案
 弁護士である原告が、被告から遺産分割事務の委任を受けた後、解任されたことに関し、被告に対し、未払の着手金の支払を求めるとともに、いわゆるみなし成功報酬特約又は民法130条の規定によるみなし条件成就を主張して、成功報酬の支払を求めた事案。
 なお、報酬契約には次の条項が記載されていた。
「被告が原告の責によらない事由で解任し、または無断で取下、放棄、和解等をなし事件を終了させ、もしくは委任事務の遂行を不能ならしめたときは、委任の目的を達したものとみなし、乙は甲に対し報酬の全額を請求することができる。
        記
   手数料(着手金)500万円(消費税別)
   諸費用(印紙、郵券、謄写、通信、交通費)そのつど
   その他(旅費、日当、宿泊料)そのつど
   報酬 3000万円(消費税別)」

判断
 消費者契約法の適用上、遺産分割調停事件の依頼者である被告が「消費者」に、弁護士である原告が「事業者」に、両者間の本件委任契約が「消費者契約」に、それぞれ該当することは明らか。
 本件特約は、被告が原告をその責めによらない事由によって解任したときは、委任の目的を達したものとみなし、原告が被告に対し報酬の全額を請求することができる旨を定めるものであり、みなし成功報酬特約と呼ばれるものの一種ということができる。これは、直接的には、民法648条3項の特則と理解される条項であり、損害賠償額の予定又は違約金(以下「違約金等」という。)を定めるという形式をとるものではないが、実質的に考えれば、委任者が委任契約を解除した場合の違約金等として機能することは否定し得ないというべきである。
 そして、消費者契約法九条一号の適用上、違約金等の定めに該当するかどうかは、その実質、機能に着目して判断すべきであるから、本件特約は、「消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」に当たるというべきである。
 進んで、違約金等の性質を有する上記3000万円のみなし成功報酬が、消費者契約法9条1号にいう「平均的な損害の額」を超えるかどうかについては、本件において、消費者契約法9条1号が定める「平均的な損害」は存在しないというべきであり、本件特約は、全部無効である。

考察
 本件事案は複雑であり、また、裁判所の判断も詳細になされているため上記の要約では乱暴すぎる。興味ある方は判決文をあたっていただくとして、弁護士との委任契約も、相手方が消費者であれば消費者契約に該当するという当然のところから出発し、違約金について消費者契約法に照らして判断されている。この理屈は、司法書士や他の士業にも共通するものと思われる。もっとも、弁護士以外の士業で、本件のようなみなし成功報酬を定めている例があるのかは不明である。むしろ、みなし成功報酬を定めているのは、感覚的には少ないのではないかと思われる。

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2010年8月18日 (水)

退職従業員の競業避止義務はどの程度まで認められるか(最高裁平成22年3月25日)

要旨
 上告人らは被上告人の従業員であったが、退職後、上告人らの競業行為により損害を被ったとして、被上告人が損害賠償を請求した事案の上告審。上告人は、被上告人の営業秘密を用いたり、不当な方法で営業はしておらず、社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法なものということはできないとした例。

事実
(1)被上告人は,産業用ロボットや金属工作機械部分品の製造等を業とする従業員10名程度の株式会社であり,上告人●は主に営業を担当し,上告人■は主に製作等の現場作業を担当していた。なお,被上告人と上告人●らとの間で退職後の競業避止義務に関する特約等は定められていない。
(2)上告人●らは,平成18年4月ころ,被上告人を退職して共同で工作機械部品製作等に係る被上告人と同種の事業を営むことを計画し,資金の準備等を整えて,上告人■が同年5月31日に,上告人●が同年6月1日に被上告人を退職した。上告人●らは,いわゆる休眠会社であった上告人会社を事業の主体とし,上告人●が同月5日付けで上告人会社の代表取締役に就任したが,その登記等の手続は同年12月から翌年1月にかけてされている。
(3)上告人●は,被上告人勤務時に営業を担当していた4社に退職のあいさつをし,そのうち2社に対して,退職後に被上告人と同種の事業を営むので受注を希望する旨を伝えた。そして,上告人会社は,そのうち1社から,平成18年6月以降,仕事を受注するようになり,また,同年10月ころからは,本件取引先のうち他の3社からも継続的に仕事を受注するようになった(以下,本件取引先から受注したことを「本件競業行為」という。)。
 本件取引先に対する売上高は,上告人会社の売上高の8割ないし9割程度を占めている。
(4)被上告人はもともと積極的な営業活動を展開しておらず,特に遠方のものからの受注には消極的な面があった。そして,上告人●らが退職した後は,それまでに本件取引先以外の取引先から受注した仕事をこなすのに忙しく,従前のように本件取引先に営業に出向くことはできなくなり,受注額は減少した。本件取引先に対する売上高は,従前,被上告人の売上高の3割程度を占めていたが,上告人●らの退職後,従前の5分の1程度に減少した。
(5)上告人●らは,本件競業行為をしていることを被上告人代表者に告げておらず,同代表者は,平成19年1月になって,これを知るに至った。

判断
上告人●は,退職のあいさつの際などに本件取引先の一部に対して独立後の受注希望を伝える程度のことはしているものの,本件取引先の営業担当であったことに基づく人的関係等を利用することを超えて,被上告人の営業秘密に係る情報を用いたり,被上告人の信用をおとしめたりするなどの不当な方法で営業活動を行ったことは認められない。
また,本件取引先のうち3社との取引は退職から5か月ほど経過した後に始まったものであるし,退職直後から取引が始まった会社については,前記のとおり被上告人が営業に消極的な面もあったものであり,被上告人と本件取引先との自由な取引が本件競業行為によって阻害されたという事情はうかがわれず,上告人らにおいて,上告人●らの退職直後に被上告人の営業が弱体化した状況を殊更利用したともいい難い。さらに,代表取締役就任等の登記手続の時期が遅くなったことをもって,隠ぺい工作ということは困難であるばかりでなく,退職者は競業行為を行うことについて元の勤務先に開示する義務を当然に負うものではないから,上告人●らが本件競業行為を被上告人側に告げなかったからといって,本件競業行為を違法と評価すべき事由ということはできない。上告人らが,他に不正な手段を講じたとまで評価し得るような事情があるともうかがわれない。
 以上の諸事情を総合すれば,本件競業行為は,社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法なものということはできず,被上告人に対する不法行為に当たらないというべきである。なお,前記事実関係等の下では,上告人らに信義則上の競業避止義務違反があるともいえない。

考察
 退職後の競業避止については、会社から相談を受ける場合もあるし、退職者から相談を受けることもある。本件では、まず、在職中の労働契約の内容として退職後の競業避止の約定がなかったものと思われる。そうすると、退職後の営業活動が不法行為に該当するのはどのような場合か、ということになるが、従前の会社の営業機密を利用したり従前の会社の信用をおとしめる行為などは709条の「故意・過失」を構成する可能性がある。もっとも、それによって従前の会社が損害を受け、その因果関係がなければ不法行為による損害賠償を請求することはできないが、本件では、従前の会社が営業に積極的ではなかったため、従前の会社の業績の低下との因果関係が明らかとなっていない。そうすると、不法行為のいずれの要件も満たさないことになる。
次に、本判決は「信義則上の競業避止義務違反があるともいえない」としているが、「信義則上の競業避止義務」はどのような場合に生じるのか。これについては、種々の事例を検討していくしかないものと思われる。
 このような事態を避けるためには、会社としては、雇用契約などに退職後の競業避止について明確に規定しておくべきであろうが、社会通念上許容される限度もあろう。また、退職者としては、自由に営業活動をするためにはどのように行動すればいいのか、個別のケースごとに検討する必要があると思われる。

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2010年8月17日 (火)

「二段の推定」の典型例 所有権保存登記抹消登記手続等請求事件(高知地裁(第一審)平成21年2月10日)

事案
 原告は、全財産を相続する旨の遺産分割協議が成立したとして,被告が作成したとする証明書を提出。これに対し,被告は,本件証明書に署名したことはなく,印影も被告の実印とは異なる旨主張し,本件証明書は司法書士が勝手に作成したものであると主張。

事実認定
本件証明書の署名の文字が被告の字であることは被告自身が認めるところである。
本件証明書の作成日と同日に取得された印鑑登録証明書についても,被告が取得した上で送付したものであることは被告自身が認めるところである。
本件証明書に押印された印鑑の印影と前記印鑑登録証明書の印影とを比較対照すれば,両者は同一のものであると認めるのが相当である。
本件証明書の被告の署名部分の文字は被告の字であること,及び,被告の実印が捺印されていることに照らせば,本件証明書は,被告自身が作成したものにほかならないというべきである。
被告は,本件証明書は司法書士が勝手に作成したものであると主張するけれども,<中略>被告自身が司法書士の事務所へ本件証明書を持参したこと,その際,司法書士が本件証明書の内容に間違いがないか被告に確認したところ,被告は間違いないと答えたことが認められ,他方で,関係各証拠を精査するも,本件証明書を司法書士が被告に無断で作成したことを認めるに足りる証拠はない。

判断
本件証明書は被告が署名押印して作成したものであり,真正に成立したものであると認められる。

考察
 「二段の推定」の典型例であるが、「二段の推定」だけに頼らず、本件証明書の成立過程についてもキチンと事実認定している。遺産分割等の書類の成立について、後日になって「勝手に作成された」と相談に来る例は少なくない。そこには、親族間の様々な重いが積み重なっているのであろうが、ほとんどのケースは「二段の推定」が働き、覆すことは困難であると思われる。

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2010年8月16日 (月)

定期建物賃貸借における「借地借家法38条2項所定の書面の交付」の立証方法(最高裁平成22年7月16日)

事案
 被上告人が、上告人との定期建物賃貸借の期間満了により建物明渡等を求めたのに対し、上告人が借地借家法38条2項所定の書面の交付及び説明がなく定期建物賃貸借に当たらないと主張。裁判所は、賃貸借の締結に先立ち説明書面の交付があったことにつき主張立証をしていないに等しく、単に、公正証書に説明書面の交付があったことを確認する旨の条項、上告人が公正証書の内容を承認していることのみから、借地借家法38条2項所定の書面の交付があったと認定することはではきないと判示。

判断
 本件公正証書には,説明書面の交付があったことを確認する旨の条項があり,上告人において本件公正証書の内容を承認した旨の記載もある。しかし,記録によれば,現実に説明書面の交付があったことをうかがわせる証拠は,本件公正証書以外,何ら提出されていないし,被上告人は,本件賃貸借の締結に先立ち説明書面の交付があったことについて,具体的な主張をせず,単に,上告人において,本件賃貸借の締結時に,本件賃貸借が定期建物賃貸借であり,契約の更新がなく,期間の満了により終了することにつき説明を受け,また本件公正証書作成時にも,公証人から本件公正証書を読み聞かされ,本件公正証書を閲覧することによって,上記と同様の説明を受けているから,法38条2項所定の説明義務は履行されたといえる旨の主張をするにとどまる。
 これらの事情に照らすと、被上告人は,本件賃貸借の締結に先立ち説明書面の交付があったことにつき主張立証をしていないに等しく,それにもかかわらず,単に,本件公正証書に上記条項があり,上告人において本件公正証書の内容を承認していることのみから,法38条2項において賃貸借契約の締結に先立ち契約書とは別に交付するものとされている説明書面の交付があったとした原審の認定は,経験則又は採証法則に反するものといわざるを得ない。

参照条文
借地借家法
(定期建物賃貸借)
第三十八条  期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
2  前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

考察
 本判決は、書面交付の立証方法に関し、公正証書に書面交付の確認条項がありその公正証書の内容を承認していることだけでは説明書面の交付があったと認定することはできないという趣旨であると思われるが、では、仮に、書面の交付があったことが立証された場合に、「説明」について、どのような事実をもって「説明」があったと認定するのか興味がある。俗っぽく言えば、単に書面の内容を読み上げれば「説明」したことになるのか、または、書面に記載された事項の意味を噛み砕いて説明しなければ「説明」とは言えないのか。これは、借家人の属性(個人なのか、法人なのか等)によっても異なるのではないかと思われる。

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