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2010年8月19日 (木)

弁護士のみなし成功報酬特約が消費者契約の違約金を定める条項等に該当するとした例(横浜地裁平成21年7月10日(第一審))

事案
 弁護士である原告が、被告から遺産分割事務の委任を受けた後、解任されたことに関し、被告に対し、未払の着手金の支払を求めるとともに、いわゆるみなし成功報酬特約又は民法130条の規定によるみなし条件成就を主張して、成功報酬の支払を求めた事案。
 なお、報酬契約には次の条項が記載されていた。
「被告が原告の責によらない事由で解任し、または無断で取下、放棄、和解等をなし事件を終了させ、もしくは委任事務の遂行を不能ならしめたときは、委任の目的を達したものとみなし、乙は甲に対し報酬の全額を請求することができる。
        記
   手数料(着手金)500万円(消費税別)
   諸費用(印紙、郵券、謄写、通信、交通費)そのつど
   その他(旅費、日当、宿泊料)そのつど
   報酬 3000万円(消費税別)」

判断
 消費者契約法の適用上、遺産分割調停事件の依頼者である被告が「消費者」に、弁護士である原告が「事業者」に、両者間の本件委任契約が「消費者契約」に、それぞれ該当することは明らか。
 本件特約は、被告が原告をその責めによらない事由によって解任したときは、委任の目的を達したものとみなし、原告が被告に対し報酬の全額を請求することができる旨を定めるものであり、みなし成功報酬特約と呼ばれるものの一種ということができる。これは、直接的には、民法648条3項の特則と理解される条項であり、損害賠償額の予定又は違約金(以下「違約金等」という。)を定めるという形式をとるものではないが、実質的に考えれば、委任者が委任契約を解除した場合の違約金等として機能することは否定し得ないというべきである。
 そして、消費者契約法九条一号の適用上、違約金等の定めに該当するかどうかは、その実質、機能に着目して判断すべきであるから、本件特約は、「消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」に当たるというべきである。
 進んで、違約金等の性質を有する上記3000万円のみなし成功報酬が、消費者契約法9条1号にいう「平均的な損害の額」を超えるかどうかについては、本件において、消費者契約法9条1号が定める「平均的な損害」は存在しないというべきであり、本件特約は、全部無効である。

考察
 本件事案は複雑であり、また、裁判所の判断も詳細になされているため上記の要約では乱暴すぎる。興味ある方は判決文をあたっていただくとして、弁護士との委任契約も、相手方が消費者であれば消費者契約に該当するという当然のところから出発し、違約金について消費者契約法に照らして判断されている。この理屈は、司法書士や他の士業にも共通するものと思われる。もっとも、弁護士以外の士業で、本件のようなみなし成功報酬を定めている例があるのかは不明である。むしろ、みなし成功報酬を定めているのは、感覚的には少ないのではないかと思われる。

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