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2010年8月16日 (月)

定期建物賃貸借における「借地借家法38条2項所定の書面の交付」の立証方法(最高裁平成22年7月16日)

事案
 被上告人が、上告人との定期建物賃貸借の期間満了により建物明渡等を求めたのに対し、上告人が借地借家法38条2項所定の書面の交付及び説明がなく定期建物賃貸借に当たらないと主張。裁判所は、賃貸借の締結に先立ち説明書面の交付があったことにつき主張立証をしていないに等しく、単に、公正証書に説明書面の交付があったことを確認する旨の条項、上告人が公正証書の内容を承認していることのみから、借地借家法38条2項所定の書面の交付があったと認定することはではきないと判示。

判断
 本件公正証書には,説明書面の交付があったことを確認する旨の条項があり,上告人において本件公正証書の内容を承認した旨の記載もある。しかし,記録によれば,現実に説明書面の交付があったことをうかがわせる証拠は,本件公正証書以外,何ら提出されていないし,被上告人は,本件賃貸借の締結に先立ち説明書面の交付があったことについて,具体的な主張をせず,単に,上告人において,本件賃貸借の締結時に,本件賃貸借が定期建物賃貸借であり,契約の更新がなく,期間の満了により終了することにつき説明を受け,また本件公正証書作成時にも,公証人から本件公正証書を読み聞かされ,本件公正証書を閲覧することによって,上記と同様の説明を受けているから,法38条2項所定の説明義務は履行されたといえる旨の主張をするにとどまる。
 これらの事情に照らすと、被上告人は,本件賃貸借の締結に先立ち説明書面の交付があったことにつき主張立証をしていないに等しく,それにもかかわらず,単に,本件公正証書に上記条項があり,上告人において本件公正証書の内容を承認していることのみから,法38条2項において賃貸借契約の締結に先立ち契約書とは別に交付するものとされている説明書面の交付があったとした原審の認定は,経験則又は採証法則に反するものといわざるを得ない。

参照条文
借地借家法
(定期建物賃貸借)
第三十八条  期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
2  前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

考察
 本判決は、書面交付の立証方法に関し、公正証書に書面交付の確認条項がありその公正証書の内容を承認していることだけでは説明書面の交付があったと認定することはできないという趣旨であると思われるが、では、仮に、書面の交付があったことが立証された場合に、「説明」について、どのような事実をもって「説明」があったと認定するのか興味がある。俗っぽく言えば、単に書面の内容を読み上げれば「説明」したことになるのか、または、書面に記載された事項の意味を噛み砕いて説明しなければ「説明」とは言えないのか。これは、借家人の属性(個人なのか、法人なのか等)によっても異なるのではないかと思われる。

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