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2010年8月20日 (金)

土地購入者が地中埋蔵物の存在により工法変更を余儀なくされた事例で土地の瑕疵担保責任を認定した事例(福岡地裁小倉支部(第一審)平成21年7月14日)

事案
 土地を購入した原告が、土地上にマンションを建築する際に地中の埋蔵物が発見され、コストのかかる別の工法を選択することを余儀なくされた事例で、本件土地には隠れた瑕疵があったとして損害賠償を一部認容した事例。

判断
 本件土地は,北九州市小倉北区内の小倉駅北口の東側海岸近くの河川沿いに位置する平坦な市街地であり,近隣には8階以上の中高層建物が多数建築されている。なお,本件土地は埋立地である。
 被告は,平成16年ころ,本件土地を一般競争入札によって売却することとしたが,その際,本件土地の履歴調査,土壌調査及び地質調査等は実施しなかった。
 被告が作成した本件土地の物件説明書には,本件土地が埋立地であるなど本件土地の履歴や地中の状況等については何らの記載もされていない。被告は,本件売買に当たっても,本件土地の履歴調査,土壌調査及び地質調査等は実施しておらず,原告に対し,本件土地の履歴や地中の状況等について何らの説明も行っていない。
 民法570条にいう瑕疵とは,売買の目的物が,その種類のものとして取引通念上通常有すべき性状(品質)を欠いていることをいうが,売買の目的物は,例えば食品においても生食用と加工用とで取引通念上必要とされる鮮度が異なるように,売買契約において想定されている用途によって瑕疵の有無が異なるものというべきである。
 瑕疵の有無は,売買契約において目的物の用途がどのようなものと想定されているかという点と,売買代金額その他の売買契約の内容に目的物の性状(品質)がどのように反映されているかという点とに照らして判断されるべきものであるということができる。そして,中高層建物の建築用地の売買においては,通常一般人が合理的に選択する工法によっては中高層建物を建築できない程の異物が地中に存在する場合には,価格を含めた売買契約の内容がそのような事態を反映したものとなっていないときは,土地の瑕疵が存するというべきである。
 本件土地は小倉駅北口の東側に位置する平坦な市街地であり,近隣には8階以上の中高層建物が多数建築されていること,本件土地の面積は512.37平方メートルであること,本件土地の建ぺい率は80%,容積率は400%とされていることなどに照らすと,取引通念上,本件土地は,中高層建物が建築されることが客観的に十分予想される土地であるということができる。
 本件売買契約において,中高層建物を建築するために通常一般人が合理的に選択する工法よりもコストのかかる工法が必要であること又はその可能性があることが売買代金額その他の契約内容に反映されているとは認められない。したがって,中高層建物を建築するために通常一般人が合理的に選択する工法よりもコストのかかる工法が必要であったときは,本件土地には瑕疵が存するというべきである。
 売買代金額その他の売買契約の内容において性状(品質)が低いこと又はその可能性があることが反映されていないのはもとより,売買契約締結の経緯によれば,売買契約締結過程を通し目的物の性状(品質)について取引通念上買主が入手すべき資料に照らして,上記瑕疵の存在は判明しなかったものと認められるから,上記瑕疵は隠れたものであると認められる。
 以上によれば,本件土地には,瑕疵があり,かつ,それは隠れたものであるというべきであるから,被告は,瑕疵担保責任に基づき,原告が被った損害を賠償すべき責任がある。

考察
 これは、不動産の転売を業としている不動産業者にとっては怖い先例。たとえば、客観的には住宅地である土地が、以前は廃棄物が処理されていた土地で住宅には不向きである、というような例であれば理解できるが、駅近くの中高層建築物が多数ある地域においては客観的に中高層建物が建築されることが予想されるから、埋蔵物の存在が隠れた瑕疵であった場合には売主の瑕疵担保責任が発生するというのである。考えてみれば、事例は異なるとはいえ、前段と同質の問題と言うこともできる。
 ところで、商業地の不動産を投機目的でファンドが購入・転売している例が見られるが、本件のような事例の場合には、最終の売主に責任追及することになるだろう。そうすると、その損害賠償請求を受けた売主は、その前の売主に、同じ理屈で損害賠償を請求することになるのだろうか。

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