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2012年1月

2012年1月31日 (火)

京都方式の不動産決済

実は、明日(31日)は、大阪でちょっと大きな物件の決済があり、朝7時10分の新幹線に乗って大阪に出かける。したがって、今日の記事は、朝8時30分頃に自動的にUPされるようにタイマーをセットしておく。おそらく、この記事がUPされるぐらいの時間に私は大阪に着いているだろう。

さて、その大阪の決済の件だが、僕は、買主の登記代理人として決済に立ち会う。売主側には別の司法書士が立ち会うことになっている。そして、売買による所有権移転の登記申請書には、登記権利者代理人として僕の名前、登記義務者代理人として大阪の司法書士の名前を併記して申請をすることになる。

このように、登記権利者、登記義務者それぞれに別の司法書士が代理人として登場する方式は京都で生まれたと言われ、その由来からか、京都方式と呼ばれている。

今回、私は買主の代理人であるので、売主の書類は全て売主側の司法書士が収集して私に渡してくれることとなる。ただ、1点気になるのは、京都方式に慣れている売主側の司法書士によれば、売主の本人確認は売主側の司法書士がするので僕はしなくていいとのことであった。果たしてそれでいいのだろうか。仮に売主の本人確認に瑕疵があった場合、僕は免責されるのだろうか?

以前、京都会の森木田さんが講師として研修会に来られた際も、「自分の依頼者の本人確認はするが相手方の本人確認はできない」というような趣旨のことを言われていた。しかし、相手方の本人確認をするかどうかは、依頼者と司法書士との間で締結する委任契約の内容によって決まると思うのだが。
「相手方に司法書士がついているから本人確認をする必要はない」ということになるのに何の根拠もないと思うし、相手方に司法書士が就こうが弁護士が就こうが、自分の依頼者を守るためには最低限本人確認をすべきだと思うがいかがだろうか。

「相手方に司法書士が就いていれば本人確認をしない」というのは、単に、依頼者をさておいて、相手方に就いた司法書士との間で勝手に仕事のテリトリーを決めているにすぎないのではないかという疑問が払拭できないのは私だけであろうか。

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2012年1月30日 (月)

気仙沼レポート

27日夜、一関に到着し、28日、29日に気仙沼の法律相談に行ってきた。

Img_7840 28日の午後は本吉唐桑商工会、夕方からは仮設住宅の集会場で行った。29日も仮設住宅の集会場で行う予定だったが、別の行事が入っていたために中止し、気仙沼市内を見て回った。

法律相談として相談を受けた件数は少なかったが、実際に被災した方の話をゆっくり聞くことができた。被災の程度にもよるが、まだ、住宅がどうなるかをはじめ、あまりにも決まっていないことが多すぎて、具体的な法律相談にまで発展しないというのが現状のようだ。

Img_7871 あるお店でコーヒーを飲みながらマスターと話をした。一見、物静かそうなマスターだったが、実は、自宅も1階が流され、住宅ローンの相談に銀行に行ったが特別な措置を講じてくれるわけでもなかった・・・・等々、話をし出すと次から次へと問題が出てくる。

マスターと話をしながら、「そうか、こういうことなんだ。「法律相談」というとどうしても敷居が高い、何かを聞かなければならないと考えてしまう。そうではなくて、とくかく話し相手になること、そうした中で、必要に応じて法律の知識を話してあげ、ヒントをつかんでもらう、という程度がいいのではないか」と考えさせられた。Img_7884 おそらく、近い将来、失業手当の支給が終わってしまったり、土地の買い上げの話が具体的になってきたときに、本当に切羽詰まった相談が出てくるのだろう。そうした時に対応できるようにしておく必要がありそうだ。

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2012年1月27日 (金)

司法書士法改正大綱  法律関係文書の作成

今日は金曜日なので、朝礼は野々垣司法書士が発表。

現在日司連で検討されている司法書士法大綱の中で、「法律関係書類を作成すること」を業務規定に加えることが検討されている。司法書士法の条文を見たことがない方は意外かもしれないが、実は、「法律関係書類を作成すること」という規定は司法書士法には存在しない。

Dsc_0133 現行法の解釈としては、裁判書類作成関係業務や簡裁訴訟代理関係業務、登記申請書の作成等の業務に付随して作成する法律関係文書に限って業務として行うことができると考えられている。もっとも、そういう解釈自体も司法書士業界の独りよがりなのかもしれないが。

仮に、上記のような解釈であるとすると、相続財産が不動産のみである場合の遺産分割協議書の作成はできるが、不動産以外に預金があったりすると、途端にできないということになるのだろうか。また、登記に必要な株主総会議事録の作成はできるが、その議事録の中に、登記には関係ない退職慰労金の議案があると作成できないということになるのだろうか。

現状に合わせた改正が望まれるところである。

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2012年1月26日 (木)

借地上の建物の担保取得と賃貸人の承諾

登記の添付書類ではないが、借地上の建物に抵当権を設定する場合、債権者が賃貸人(地主)の承諾書をもらうことが多いようだ。

そして、その承諾の内容、主に次の2点である。
①抵当権の実行や任意売却により第三者が所有権を取得したときは、その者に引き続き貸与すること
②抵当権が存在する間は、地代滞納等の理由により賃貸借契約を解除しようとする場合はあらかじめ抵当権者に通知すること

①については、賃借権は原則として賃貸人の承諾無くして借地権の譲渡転貸をすることができないからあらかじめ承諾を得ておこうとするものである。なお、あらかじめ承諾をしてくれない場合は、借地借家法20条の「承諾に代わる裁判所の許可」を得ることになるが、一般的には借地権価格の10%程度の承諾料の支払いが必要になるらしい。
②については、抵当権者が知らない間に賃貸借契約が解除されてしまうと、借地権自体が消滅してしまい、材木としての建物を担保にとっているだけになってしまうからだ。

ところで、東京地判平成11年6月29日は、抵当権者が上記のような承諾書を賃貸人から徴求していた場合について、賃貸人は、賃貸借契約の解除事由があったとしても、必ずしも法的義務として抵当権者に通知しなければならないとは言えない、という判断をしている。

判決文をあたってみよう。

「確かに、前記認定のとおり被告が原告に差し入れた本件承諾書には、賃料延滞又はその他の理由により賃貸借契約を解除する場合には事前に原告に通知することを被告が承諾する旨の記載がある。
しかし右承諾書にはそれ以上に、通知をすれば必ず原告が未払賃料の代払をするとか、通知をした後賃料の代払をするに足りる期間を経過してからでなければ解除をすることができないとか、通知を怠った場合には賃貸人の賃借人に対する解除権の行使が制限されるとかというように、右事前通知義務から生じる具体的な効果についての定めは記載されていない。
その上、前記認定のとおり、原告は本件承諾書の徴求により被告から担保権確保の利益を得ておきながら右担保権設定承諾料等の対価を何ら出捐していないばかりか、自己の融資先の資産状況を把握し得る立場にあるのに○○の賃料支払義務の履行状況を掌握する何らの手立ても講じていないのであり(融資担当者に右支払事実を報告させる等実にた易いことである)、原告の得た利益と被告の負担との間には著しい不均衡があるといわざるを得ず、本件承諾書をもって、同被告に根抵当権者たる原告の利益を保護するため積極的に賃借権の保存に協力すべき法的義務が生じたなどとは到底解することはできない。
そうすると、本件承諾書を差入れたことにより被告(賃貸人)が原告(根抵当権者)との間で解除の際には原告に通知する旨の通知義務を負うものとしても、その性質は厳格な法的義務とはいい難く、通知をしなければ賃貸人の賃借人に対する解除権の行使が許されなくなるような法的効果を伴うものとは解されない。」

Dsc_0131 つまり、抵当権者が賃貸人から「解除事由があったときは通知する」という承諾書をもらっていたとしても、抵当権の上にあぐらをかいて債務者たる賃借人が賃料をちゃんと支払っているかどうかの確認も何らしていないなど、賃貸人に義務ばかり課す一方で抵当権者の権利ばかりが守られるような不均衡な承諾書は、法的義務までをも生じさせるものではない、と言っているわけだ。

本判決は、この事例についてのみ判断したものであり、必ずしも普遍的なものではないかもしれないが、ハンをついたように承諾書をもらっておけば抵当権者の権利が守られるというわけではないので注意する必要があるたろう。

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2012年1月25日 (水)

398条の20第1項3号、4号による元本確定

昨日は、根抵当権設定者又は根抵当権者からの元本確定請求について勉強したが、今日は、別の事由で根抵当権が確定する場合について考えてみたい。

(根抵当権の元本の確定事由)
第三百九十八条の二十  次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。
一  根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は第三百七十二条において準用する第三百四条の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る。
二  根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。
三  根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したとき。
四  債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。
2  前項第三号の競売手続の開始若しくは差押え又は同項第四号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。

1項1号については、不動産に差押の登記の登記がされるわけだから、確定したことは登記簿上明らかであるという理由で確定登記は不要とされている。2号についても同様に、確定登記は不要とされている。
3号については、根抵当権者の主観的な問題であるから、確定登記をしなければ確定したことがわからない。4号については、登記簿上で破産手続開始決定があったことがわかる場合とわからない場合とがある。

では、詳しく考えてみよう。
まず、3号。
「根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始」があったことを知るのは、競売の場合は、民事執行法49条2項の催告書を受け取ることによって知ることとなる。

民事執行法
第四十九条  強制競売の開始決定に係る差押えの効力が生じた場合(その開始決定前に強制競売又は競売の開始決定がある場合を除く。)においては、裁判所書記官は、物件明細書の作成までの手続に要する期間を考慮して、配当要求の終期を定めなければならない。
2  裁判所書記官は、配当要求の終期を定めたときは、開始決定がされた旨及び配当要求の終期を公告し、かつ、次に掲げるものに対し、債権(利息その他の附帯の債権を含む。)の存否並びにその原因及び額を配当要求の終期までに執行裁判所に届け出るべき旨を催告しなければならない。
一  第八十七条第一項第三号に掲げる債権者
二  第八十七条第一項第四号に掲げる債権者(抵当証券の所持人にあつては、知れている所持人に限る。)
三  租税その他の公課を所管する官庁又は公署

したがって、同催告書を添付して元本確定登記を申請をすることとなる。

国税徴収法
(質権者等に対する差押えの通知)
第五十五条  次の各号に掲げる財産を差し押さえたときは、税務署長は、当該各号に掲げる者のうち知れている者に対し、その旨その他必要な事項を通知しなければならない。
一  質権、抵当権、先取特権、留置権、賃借権その他の第三者の権利(担保のための仮登記に係る権利を除く。)の目的となつている財産 これらの権利を有する者
二  仮登記がある財産 仮登記の権利者
三  仮差押え又は仮処分がされている財産 仮差押え又は仮処分をした保全執行裁判所又は執行官

Dsc_0130 滞納処分による差押えの場合には、国税徴収法55条による通知により根抵当権者が知ることとなるので、同通知を添付して元本確定登記を申請することとなる。

なお、いずれの場合も根抵当権者の単独申請でよく、その場合、根抵当権者が登記権利者となるらしい。

不動産登記法
(根抵当権の元本の確定の登記)
第九十三条  民法第三百九十八条の十九第二項又は第三百九十八条の二十第一項第三号若しくは第四号の規定により根抵当権の担保すべき元本が確定した場合の登記は、第六十条の規定にかかわらず、当該根抵当権の登記名義人が単独で申請することができる。ただし、同項第三号又は第四号の規定により根抵当権の担保すべき元本が確定した場合における申請は、当該根抵当権又はこれを目的とする権利の取得の登記の申請と併せてしなければならない。

次に、4号の「債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき」であるが、破産法改正により、根抵当権設定社が自然人の場合には、不動産に破産の登記が嘱託登記される。法人の場合は法人登記簿に破産の登記がされるが不動産登記簿には破産の登記がされない。また、実務上は、自然人の破産の場合にも不動産登記簿の破産の登記がされないことが多い。

とすると、自然人の破産で不動産登記簿に破産登記がなされた場合は元本確定登記をする必要はなさそうだが、それ以外の場合には元本確定登記をする必要がありそうだ。したがって、破産決定、官報等を添付して元本確定登記を申請することとなるのだろう。
そして、この場合も、根抵当権者の単独申請でよく、その場合、根抵当権者が登記権利者となるらしい。

さて、ここで注意しなければならないのは、「三号又は第四号の規定により根抵当権の担保すべき元本が確定した場合における申請は、当該根抵当権又はこれを目的とする権利の取得の登記の申請と併せてしなければならない」とされている点だ。典型例としては、根抵当権の代位弁済による移転登記とあわせて申請するような場合でなければすることができないということだ。

しばらく勉強を怠っていたが、たかが元本確定登記、されど元本確定登記、である。いつの間にか複雑なことになっていた。

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2012年1月24日 (火)

根抵当権者の請求による根抵当権の確定

平成15年民法改正前は、根抵当権の確定は、原則として、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により根抵当権の元本を確定する方法がとられていた(根抵当権設定時に、将来の元本確定に備え、根抵当権者から元本確定登記の委任状をもらつていたことも多いようであった)。

ところが、バブルがはじけ、銀行等が不良債権を処理するために、根抵当権で担保されていた債権の売却を容易に行う必要が出てきた。しかしながら、根抵当権設定者が行方不明になったり、根抵当権設定者の代表者が交代しており、以前徴求していた委任状を使用することができないなどの事態が増加していた。

そこで、平成10年、「金融機関等が有する根抵当権により担保される債権の譲渡の円滑化のための臨時措置に関する法律」が制定され、整理回収機構(RCC)やサービサー等に債権を売却する前提として、根抵当権の元本確定方法として、根抵当権の担保すべき元本を新たに発生させる意思を有しない旨を債務者に書面で通知したときには、根抵当権は確定するものとし、しかも、根抵当権者が単独で元本確定の登記申請をすることができることとした。

そして、平成15年には、上記の方法を民法に取り込む改正が行われ、上記の法律は廃止されるに至った。

それでは、改正された条文を見てみよう。

(根抵当権の元本の確定請求)
第三百九十八条の十九  根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から二週間を経過することによって確定する。
2  根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する。
3  前二項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない。

つまり、元本確定期日が定められている場合を除き、根抵当権設定者は設定の時から3年を経過すれば元本確定請求をすることができるし、根抵当権者はいつでも確定請求をすることができる。

ところで、根抵当権設定者が3年経過により確定請求をすることができるのは、根抵当権という権利に長期間拘束されることから離脱できる仕組みとして理解できるが、根抵当権者がいつでも確定請求できるとした理由はどこにあるのか。根抵当権設定者が、根抵当権で担保される元金の中身が決まらないという不安定さから早期に解放されるのだから根抵当権設定者の利益にこそなれ不利益にはならない、という形式的な論理から来ているようであるが、そのような理由付けは形式的で、個人的には疑問を呈せざるを得ない。

まあ、それはそれとして、とにもかくにも、根抵当権者はいつでも元本確定を請求することができ、その請求の時に確定するということになる。通常は内容証明郵便によることになるが、相手方の行方がわからない場合は公示送達によることになる。

(公示による意思表示)
第九十八条  意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。
2  前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して行う。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。
3  公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。
4  公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。
5  裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。

そして、この場合は、根抵当権者は、単独で元本確定の登記を申請することができる。

不動産登記法
(根抵当権の元本の確定の登記)
第九十三条  民法第三百九十八条の十九第二項又は第三百九十八条の二十第一項第三号若しくは第四号の規定により根抵当権の担保すべき元本が確定した場合の登記は、第六十条の規定にかかわらず、当該根抵当権の登記名義人が単独で申請することができる。ただし、同項第三号又は第四号の規定により根抵当権の担保すべき元本が確定した場合における申請は、当該根抵当権又はこれを目的とする権利の取得の登記の申請と併せてしなければならない。

Dsc_0129 ところで、根抵当権設定者が確定請求した場合の登記申請は共同申請で、

登記の目的 ○番根抵当権元本確定
原   因 平成○年○月○日確定請求(意思表示の到達した日)
権 利 者 根抵当権設定者
義 務 者 根抵当権者

となる。根抵当権者が確定請求した場合の登記申請は単独申請で、

登記の目的 ○番根抵当権元本確定
原   因 平成○年○月○日根抵当権者の確定請求(意思表示の到達した日)
根抵当権者 ○○銀行
根抵当権設定者(登記義務者) ○○
義 務 者 根抵当権者

となる(新不動産登記書式解説 テイハン)。

このように、誰が確定請求したかによって、登記権利者と登記義務者が逆転するということになるらしい。誰が登記権利者、誰が登記義務者になるかは形式的に利益を得る者、不利益を被る者で定まるという原則が崩れてしまったのか、はたまた、原則どおりなのか、よくわからない。(それとも、根抵当権者の確定請求の場合には、あくまでも単独申請という概念なのか?)

参考条文
(根抵当権の元本の確定事由)
第三百九十八条の二十  次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。
一  根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は第三百七十二条において準用する第三百四条の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る。
二  根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。
三  根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したとき。
四  債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。
2  前項第三号の競売手続の開始若しくは差押え又は同項第四号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。

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2012年1月23日 (月)

抵当権と滞納処分との優先関係

Dsc_0128 租税債権は、原則として私債権に優先して聴取できるように優先権が認められている(国税徴収法8条、地方税法14条)。

(国税優先の原則)
第八条  国税は、納税者の総財産について、この章に別段の定がある場合を除き、すべての公課その他の債権に先だつて徴収する。

ちなみに、「公課」とは「滞納処分の例により徴収することができる債権のうち国税(その滞納処分費を含む。以下同じ。)及び地方税以外のものをいう。」(国税徴収法2条5号)

しかし、担保権の優先順位の観点から、抵当権と租税債権の優劣関係については、抵当権者が担保権設定者(納税者)の租税の存在が明らかになる時期を基準として、その時期以前に設定されたものは租税債権に優先するという原則を採用している。

その「租税の存在が明らかになる時期」とは、具体的には、①租税の法定納期限等、②その財産を納税者が譲り受けた時期とされている。

そのいずれかの時期の前に設定したか抵当権は租税債権に優先する(国税徴収法16条等)。なお、①については設定契約の日はなく、設定登記の日による。なぜなら、その登記がないと、抵当権を第三者たる租税債権者に対抗できないからである。

ところで、法定納期限とは、原則として本来租税を納付すべき期限として定められている法定納期限をいう(国税徴収法2条10号)。例として、確定申告は翌年3月15日が法定納期限である。

では、融資をしようとする者は、抵当権を設定する際に滞納税金の存在を確認しなければならないが、通常は、納税証明を提出させることにより確認がされている。

なお、抵当権の被担保債権額を増額する登記がされている場合は、登記により増加した部分の被担保債権額については登記の時に新たな抵当権が設定されたものとみなして優劣関係を判定する。

ところで、滞納処分に遅れて抵当権が設定されている場合、滞納処分により公売がなされると抵当権は無効となってしまう。したがって、そのような場合には、抵当権者が滞納税金を代納して差押の登記を抹消することも考慮する必要がある。滞納処分の登記のある物件を担保に融資するのは異例であり、ちょっと怪しい(?)債権の場合が多いかもしれないが、代納することにより抵当権がすばらしい地位に躍り出ることだってあり得るのだ。

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2012年1月20日 (金)

請求異議の訴(野々垣バージョン)

Dsc_0127 今日の朝礼は、野々垣司法書士が取り扱った請求異議訴訟に関して、請求異議の訴の制度の概要の説明があった。

(請求異議の訴え)
第三十五条  債務名義(第二十二条第二号、第三号の二又は第四号に掲げる債務名義で確定前のものを除く。以下この項において同じ。)に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができる。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、同様とする。
2  確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る。
3  第三十三条第二項及び前条第二項の規定は、第一項の訴えについて準用する。

1項については、債務名義として22条に規定されているもののうち、裁判官が内容を判断していないものについては請求異議の訴えができると解釈すればよい。したがって、公正証書、支払督促がそれに該当する。なぜなら、公正証書は公証人が作成するもの、支払督促は書記官が作成するものだからである。

なお、既に強制執行に着手されている場合は、請求異議訴訟とあわせて強制執行停止の申し立てもあわせてすることになるが、執行停止するためには原則として担保の提供が必要となる。担保の額は請求されている額の4分の1程度と考えておけばいいが、事案によって高くなったり低くなったりする。野々垣司法書士が扱ったケースは、疎明がしっかりできていたのか、8分の1の担保で執行停止が発令された。

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2012年1月19日 (木)

公売により所有権を取得した者からの建物明渡請求

競売により建物を競落し、所有権を取得した者は不動産の引渡命令の申立をすることができる。

民事執行法  (引渡命令)
第八十三条  執行裁判所は、代金を納付した買受人の申立てにより、債務者又は不動産の占有者に対し、不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができる。ただし、 事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては、この限りでない。
2 買受人は、代金を納付した日から六月(買受けの時に民法第三百九十五条第一項に規定する抵当建物使用者が占有していた建物の買受人にあつては、九月)を経過したときは、前項の申立てをすることができない。

ちなみに、1項の「買受人に対抗することができる権原により占有」とは、以前勉強した民法395条1項の借家人を含むと考えていいだろう。そのために、2項では、「(買受けの時に民法第三百九十五条第一項に規定する抵当建物使用者が占有していた建物の買受人にあつては、九月)」と申立期間を3か月伸長している。

Dsc_0126 さて、競売の場合は、このように、簡易に不動産の引渡を命令する制度が設けられており、競売手続きの信頼性を高めているわけだ。以前、この手続きをやったことがあるが、まず、執行裁判所に不動産引渡命令の申立をして、命令が出たら、執行官ら執行の申立をするという流れであったと記憶している。

先日、競売ではなく、公売(注)により所有権を取得した方から、元所有者が居座り続けているのでどうしたらいいかという相談があった。そこで、いろいろ調べてみたが、公売の場合には、競売の不動産引渡命令に相当する手続きが用意されていないようだ。そうすると、まず、明け渡しについての債務名義を得なければならないことになり、訴訟等を提起する必要がでてくるわけだ。

もっとも、今回のケースは相手方と話ができたので、一定の猶予期間を与えたうえで明け渡す旨の即決和解を申し立てることにした。これは、物権的請求権であるから申立書は至って簡素だ。①申立人は所有権を有している。②相手方が権限なく占有している。③よって・・・。そして、和解条項案を添付する。

注)公売(こうばい)とは、滞納税庁が、国税徴収法に基づき、滞納税金の回収のために差し押さえた財産(不動産または動産)を換価するための手続きのこと。民間が行う競売に対し、官公庁が滞納税金の回収のために行うものを公売という。(出典 ウィキペディア)

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2012年1月18日 (水)

完全勝訴判決(被告事件)の解説

本日の朝礼は、当事務所が被告代理人を受任し、昨日、被告完全勝訴(原告の請求が棄却された)について解説した。
生の事件であるのでブログで詳細を解説したり、板書を掲載することはできないが、要約すると、原告が、請負契約を消費者契約法にもとづいて取消し、支払済みの請負代金の返還を求めた事件もの。

原告は弁護士さんをつけて提訴してきたが、100万弱と、弁護士さんとしては請求金額が低いためか、正直申し上げて明らかに聴取と事実確認が足らない。被告が消費者契約法の取り消しについて抗弁を提出すると、今度は、被告の業界の特別法を持ち出してきて、その中の行政法規に違反するからと、不法行為による損害賠償請求を選択的請求として追加してきた。

本来なら、請負契約にもとづいた被告の債務が正しく履行されたかという基本的なところで争っていくのがこの事件の筋だったと思われるが、その点について原告代理人は何ら主張しない。裁判の途中でも、被告から「債務不履行という主張はしないのか」と確認したが、それはしないとのこと。

しかし、原告本人は、尋問のなかで、「自分の思ったとおりの結果が出なかったので提訴することにした」と言っている。つまり、原告の主訴は債務不履行であったのだ。原告代理人の弁護士さんが、本人の主訴を正しく受け止めていれば、仮に原告が負けたとしても本人の納得度は違うと思うのだが。そこに踏み込まず特別法だけで争うという選択は誤りではなかったのか。

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2012年1月17日 (火)

抵当権者の同意により賃貸借に対抗力を与える制度 ~同意の登記~

Dsc_0125 前回、抵当権と借地権・借家権の優劣は、原則どおり、対抗要件具備の時間的前後により定まることを学習した。しかしながら、民法387条は次のように定める。

(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力)
第三百八十七条  登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。
2  抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。

つまり、借地権・借家権が抵当権者に対抗できない場合であっても、抵当権者が借地権・借家権を存続させるのが妥当であると判断した場合には、借地権・借家権が抵当権に対抗できることとしても何ら問題ないわけだ。

では、どのようなに場合は抵当権者はそのような判断をするのであろうか。一口で言うと、借地権・借家権を存続させておいた方が抵当権者の被担保債権回収に都合がいい場合ということだろう。

これまで経験した中では、人気飲食店が店舗として建物を賃借する際に、建物所有者に対する融資について抵当権を有していた金融機関が同意の登記をしたことがある。金融機関としては、債務者が債務の支払を怠った段階で人気飲食店の支払う賃料を差し押さえすることができるから、建物所有者よりも人気飲食店の信用度を高く評価したということであろう。
また、そのような場合であれば、競売になったとしても収益物件としての価値が認められるのかもしれない。

ちなみに、登記申請書は次のような振り合いになる。

登記の目的  ○番賃借権の○番根抵当権に優先する同意
原   因  平成○年○月○日同意
権 利 者  賃借権者
義 務 者  根抵当権者

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2012年1月13日 (金)

今日は朝礼の勉強会はありませんでした

ここのところ掲載している話題は、朝礼の際に所員の勉強のために5分程度で豆知識として説明している内容です。

しかし、今日は、外で9時に約束があったため、豆勉強会はできませんでした。

また、来週月曜日も朝から外出予定のため豆勉強会はできませんが、野々垣司法書士が代打で、現在進行形のサイト詐欺との闘いについて解説してくれるそうです。

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2012年1月12日 (木)

抵当権と借地権・借家権の優劣

Dsc_0123 抵当権と借地権・借家権の優劣は、原則どおり、対抗要件具備の時間的前後により定まる。ただし、抵当権の対抗要件が登記だけであるのに対し、借地権・借家権については登記だけではなく、借地権の場合は借地借家法10条により建物の登記、借家権は借地借家法31条により建物の引渡しを受けることも対抗要件として認めている。

すでに借地権・借家権の対抗要件を備えた目的物に抵当権設定登記がなされたという場合には、買受人は借地権・借家権の負担のついた所有権を取得するということになる。
逆に、すでに抵当権設定の登記のある目的物に、後に借地権・借家権の対抗要件を具備した場合には、抵当権が優先し、借地人・借家人は買受人に自己の借地権を主張し得ない。

では、1番抵当権と2番抵当権の中間に借地権・借家権の対抗要件を備えた場合で、2番抵当権者の申立により競売が行われた場合はどうなるか。
この競売により1番抵当権も消滅するのであるから、1番抵当権に対抗できない借地権・借家権は消滅する。

なお、このように抵当権に対抗できない借地権・借家権が消滅する場合、即座に退去を命じるのは酷であるため、建物明渡猶予制度が設けられている。

ここまで理解して次の条文を読むと理解しやすい。

(抵当建物使用者の引渡しの猶予)
第三百九十五条  抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
一  競売手続の開始前から使用又は収益をする者
二  強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者
2  前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。

2項は、建物利用者が建物を利用することにより不当利得を生ずることとなるため賃料相当額の支払をさせようとするものであるが、その支払をしない場合は保護に値しないことを規定している。

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2012年1月11日 (水)

民法371条の意味 真夏の果実

Dsc_0122 民法371条
抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。

果実には天然果実と法定果実があるが、ここでいう果実というのはその両方の意味を含む。
では、370条の射程範囲が果実にも及ぶのかという問題について、371条で原則として、果実には抵当権が及ばないと規定している。

そもそも、抵当権というのは、抵当権の目的である土地などを、設定者に使用・収益させつつ、債権を担保する物権である。
にもかかわらず、賃料などの果実を得た瞬間、それを抵当権者に取り上げられてしまえば、抵当権を設定した意味がないこととなる。
このように、自分の土地を自由に使いつつ、金を借りることができるというのが、抵当権のうまみなわけだから、裏をかえせば、371条は、原則として果実には抵当権の効力が及ばないと規定しているわけだ。

しかし、債務不履行があった場合は別で、債務不履行があった場合、抵当権者は、抵当権を実行して、債権の回収をすることができる。
もちろん、抵当権の目的物である土地などを差押えて、競売にかけることができるが、いきなり差押えて、競売にかけるのではなく、賃料を少しずつ債権の弁済にあてていくという方法もとることができることとなる。

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2012年1月10日 (火)

本人確認記録の修正

犯罪収益移転防止法の改正により司法書士の本人確認義務が明確化され、静岡県司法書士会の会則により、司法書士用に本人確認記録の作成・保管が義務化されて数年が経過した。

もともと犯罪収益移転防止法の脱法的な資金洗浄をチェックするために施行されたものであるので、それまで司法書士が行ってきた本人確認とはやや趣旨が異なる。しかしながら、どうせ記録に残るように本人確認をするのであれば、もう少し、私たちの業務に役立つように記録を残したいと考え、事務所内の本人確認記録を修正することとした。

修正点としては次の3点。

①署名は本人がしたか。面前で署名したか。
②押印は本人がしたか。面前で押印したか。
③同席者はいたか。どんな話をしたか。

司法書士は不動産の取引等に立ち会うことが多いので、いつ、裁判の証人として呼び出されるかわからない。たとえば、3年前に立ち会った不動産取引で、印鑑は本人が押したかどうかなどということは、よほどの印象がない限り覚えていることはないだろう。

Dsc_0118 しかし、裁判の当事者としては、印鑑を本人が押したかどうかは極めて大きな関心がある筈だ。最判昭和39年5月12日の「二段の推定」があるからだ。司法書士が法律家であると言うならば、証人に引っ張られたら何を聞かれるかということも念頭に置いて仕事をしなければならないだろう。

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2012年1月 6日 (金)

名義が異なる建物の合体と旧建物に登記していた抵当権の帰趨(参考 民法244、255)

Dsc_0111_2  「建物の合体」と「建物の合併」とは言葉は似ているが、その意味は全く異なる(土地家屋調査士であれば当然の知識として知っている筈だが、司法書士の場合、知らない人も多い)。

建物の合体とは、数戸の建物が、増築等の工事により構造上一個の建物となること。建物が合体して一個の建物となった場合には、合体後の建物についての建物の表題登記及び合体前の建物についての建物の表題部の登記の抹消を申請することとなる。

これに対し、建物の合併とは、建物の現状には何らの変更も加えることなく、登記上の数個の建物を一個の建物にする登記で所有者の意思に基づいて申請することができる。
ただし、合併しようとする建物が、主たる建物と附属建物の関係にないときや、双方の建物の所有者が違う場合には、合併は認めらない。
また、実体上の所有者が同一であっても、所有権の登記がある建物と所有権の登記のない建物は合併することができないし、所有権以外に権利の登記のない建物と、抵当権等の権利の登記のある建物も合併できない。


以上により、建物の合体がどういうものか理解できたところで、最高裁平成6年1月25日を見てみよう。

判旨は、互いに主従の関係にない甲乙2棟の建物がその間の隔壁を除去する等の工事により1棟の丙建物となった場合、甲建物又は乙建物を目的として設定されていた抵当権は、丙建物のうちの甲建物又は乙建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続する、というものである。

これは、互いに主従の関係にない甲、乙二棟の建物が、その間の隔壁を除去する等の工事により一棟の丙建物となった場合においても、これをもって、甲建物あるいは乙建物を目的として設定されていた抵当権が消滅することはなく、右抵当権は、丙建物のうちの甲建物又は乙建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続すると解するのが相当である。けだし、右のような場合、甲建物又は乙建物の価値は、丙建物の価値の一部として存続しているものとみるべきであるから、不動産の価値を把握することを内容とする抵当権は、当然に消滅するものではなく、丙建物の価値の一部として存続している甲建物又は乙建物の価値に相当する各建物の価格の割合に応じた持分の上に存続するものと考えるべきだからである。

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2012年1月 5日 (木)

抵当権の効力はどこまで及ぶか(付可物の範囲はどこまでか)

Dsc_0110 民法370条は、抵当権の効力の及ぶ範囲として「抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産に付加して一体となっている物に及ぶ」と規定しているが、現実にどのような状態であれば「不動産に付加して一体となっている物」となっているかの判断は難しい。
これについては、民法242条の「不動産の付合」の規定「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。」がどのように適用されるかが問題となる。
 
事例1
東京地裁昭和55年1月28日判決
Yが公正証書にもとづき甲の所有物として乙の建物に設置した空調機64台を差し押さえたところ、乙の建物に根抵当権を設定していたX信用金庫が、空調機は建物に付合しているので甲の所有物ではなく、乙の所有であると認定。

事例2
熊本地裁昭和54年8月7日判決
エレベーターの工事業者Xが、建物工事業者にエレベーターを工事・納品(但し代金納付ので所有権を留保)したところ、建物工事業者は倒産。Xが建物発注者Yにエレベーターの返還を請求したところ、本件エレベーター一式が取引上もはや独立性を失つているとの点を認めるに足りる証拠はないとして請求を認容。

裁判所はどういう点を見て判断したか。

事例1について
冷暖器は、本件ビルの四階から一一階までの各階の壁面に八個ずつ取り付けられた冷暖器設備で、縦四〇・七センチメートル、横一〇六・七センチメートル、奥行四八センチメートルの大きさで、八〇キログラムから八七キログラムの重量のものであること、本件ビルの右各階は、右冷暖器を埋め込むことができるように設計され、右各階の壁面には右冷暖器の大きさに合わせた穴が空けられており、右冷暖器はその箇所にボルトで固着する方法で据付けられ、かつ、ビルの内部と外部とを遮断する壁の役割をも果している。

事例2について
エレベーター一式を建物から取り外すには,乗場ユニツトを建物の壁面に固定させているアンカー・ボルト(ナツト)を取り外した上、すき間を埋めたモルタルのみを取り壊し建物のコンクリート壁面は取り壊さずに、乗場ユニツトを取り外し、制御盤、巻上機、調速機、ガイド・レール、電線を通すダクトを建物壁面に固定させているアンカー・ボルト(ナツト)を取り外して、右制御盤等を取り外し、更に、本体かごを分解してこれを昇降路及び建物から搬出することなどによつて、これが可能であつて、四、五日程度でこの取外しが終了できること、右のごとく取り外される本件エレベーター一式は、機能を何ら損うことなく、ほかの建物の昇降機として利用し得るものであり、本件エレベーター一式を取り外される建物も、建物のコンクリート壁に埋め込まれたアンカー・ボルト及び昇降路の空間などが残るのみであり、建物自体が取り壊されることはない。

そうすると、事例1は取り外すことによって建物の壁がなくなる、事例2は建物自体が取り壊されることはないということが大きく違うように見えるが、実際の判決内容を見ると、もっと細かく事実認定がされているので、それほど単純ではないようだ。

現実に、そこまで考えながら担保取得しているのか疑問であるが、いざ紛争ということになると、事例により判断が分かれるので重要な問題だ。

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