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2012年1月24日 (火)

根抵当権者の請求による根抵当権の確定

平成15年民法改正前は、根抵当権の確定は、原則として、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により根抵当権の元本を確定する方法がとられていた(根抵当権設定時に、将来の元本確定に備え、根抵当権者から元本確定登記の委任状をもらつていたことも多いようであった)。

ところが、バブルがはじけ、銀行等が不良債権を処理するために、根抵当権で担保されていた債権の売却を容易に行う必要が出てきた。しかしながら、根抵当権設定者が行方不明になったり、根抵当権設定者の代表者が交代しており、以前徴求していた委任状を使用することができないなどの事態が増加していた。

そこで、平成10年、「金融機関等が有する根抵当権により担保される債権の譲渡の円滑化のための臨時措置に関する法律」が制定され、整理回収機構(RCC)やサービサー等に債権を売却する前提として、根抵当権の元本確定方法として、根抵当権の担保すべき元本を新たに発生させる意思を有しない旨を債務者に書面で通知したときには、根抵当権は確定するものとし、しかも、根抵当権者が単独で元本確定の登記申請をすることができることとした。

そして、平成15年には、上記の方法を民法に取り込む改正が行われ、上記の法律は廃止されるに至った。

それでは、改正された条文を見てみよう。

(根抵当権の元本の確定請求)
第三百九十八条の十九  根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から二週間を経過することによって確定する。
2  根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する。
3  前二項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない。

つまり、元本確定期日が定められている場合を除き、根抵当権設定者は設定の時から3年を経過すれば元本確定請求をすることができるし、根抵当権者はいつでも確定請求をすることができる。

ところで、根抵当権設定者が3年経過により確定請求をすることができるのは、根抵当権という権利に長期間拘束されることから離脱できる仕組みとして理解できるが、根抵当権者がいつでも確定請求できるとした理由はどこにあるのか。根抵当権設定者が、根抵当権で担保される元金の中身が決まらないという不安定さから早期に解放されるのだから根抵当権設定者の利益にこそなれ不利益にはならない、という形式的な論理から来ているようであるが、そのような理由付けは形式的で、個人的には疑問を呈せざるを得ない。

まあ、それはそれとして、とにもかくにも、根抵当権者はいつでも元本確定を請求することができ、その請求の時に確定するということになる。通常は内容証明郵便によることになるが、相手方の行方がわからない場合は公示送達によることになる。

(公示による意思表示)
第九十八条  意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。
2  前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して行う。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。
3  公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。
4  公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。
5  裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。

そして、この場合は、根抵当権者は、単独で元本確定の登記を申請することができる。

不動産登記法
(根抵当権の元本の確定の登記)
第九十三条  民法第三百九十八条の十九第二項又は第三百九十八条の二十第一項第三号若しくは第四号の規定により根抵当権の担保すべき元本が確定した場合の登記は、第六十条の規定にかかわらず、当該根抵当権の登記名義人が単独で申請することができる。ただし、同項第三号又は第四号の規定により根抵当権の担保すべき元本が確定した場合における申請は、当該根抵当権又はこれを目的とする権利の取得の登記の申請と併せてしなければならない。

Dsc_0129 ところで、根抵当権設定者が確定請求した場合の登記申請は共同申請で、

登記の目的 ○番根抵当権元本確定
原   因 平成○年○月○日確定請求(意思表示の到達した日)
権 利 者 根抵当権設定者
義 務 者 根抵当権者

となる。根抵当権者が確定請求した場合の登記申請は単独申請で、

登記の目的 ○番根抵当権元本確定
原   因 平成○年○月○日根抵当権者の確定請求(意思表示の到達した日)
根抵当権者 ○○銀行
根抵当権設定者(登記義務者) ○○
義 務 者 根抵当権者

となる(新不動産登記書式解説 テイハン)。

このように、誰が確定請求したかによって、登記権利者と登記義務者が逆転するということになるらしい。誰が登記権利者、誰が登記義務者になるかは形式的に利益を得る者、不利益を被る者で定まるという原則が崩れてしまったのか、はたまた、原則どおりなのか、よくわからない。(それとも、根抵当権者の確定請求の場合には、あくまでも単独申請という概念なのか?)

参考条文
(根抵当権の元本の確定事由)
第三百九十八条の二十  次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。
一  根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は第三百七十二条において準用する第三百四条の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る。
二  根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。
三  根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したとき。
四  債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。
2  前項第三号の競売手続の開始若しくは差押え又は同項第四号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。

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