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2012年2月

2012年2月29日 (水)

生命保険金は遺産となるか

被相続人が自己を被保険者として生命保険に加入していた場合、その生命保険金が相続財産となるのか否かは、保険金受取人としてどのような指定をしていたかによる。
 そして、生命保険金が相続財産となる場合には遺産分割の対象となるが、生命保険金が相続財産にならない場合には遺産分割の対象とする必要はない。

●受取人が被相続人自身の場合
 この場合は、生命保険金が一旦被相続人に帰属すると考えられるで、相続財産として遺産分割の対象になる。
●受取人が「相続人」と指定されていた場合
 被相続人が死亡したときの相続人となるべき者を受取人にしたと考えられるから、生命保険金は相続財産ではなく、相続人固有の財産となる。そして、相続人が法定相続分の割合にしたがって保険金請求権を有することとなる。
●受取人が相続人の中の特定の者と指定されていた場合
 この場合も生命保険金は相続財産にはならず、指定された受取人の固有の財産になる。

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 さて、生命保険金が相続財産にならない場合において、生命保険金は遺留分減殺の対象になるかという問題がある。つまり、生命保険金の掛金である保険料を、実質的には被相続人が支払ってきたのであれば、被相続人が受取人に対し財産を無償で贈与したのと同一視できるため、遺留分減殺の対象にすることができるという見解があるのだ。
 しかし、そのように考えると、一方で生命保険金が相続財産を構成しない場合であっても、遺留分減殺の場面では相続財産的な扱いをするということになってしまう。
 この点について、最高裁は、平成14年、生命保険金が相続財産にならない場合には遺留分減殺の対象にもならないと判断し、この議論に決着がついた。

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2012年2月28日 (火)

融資実行前の抵当権設定契約は有効か

登記実務において、抵当権設定登記では「受付番号の連絡」という慣行がある。これは、抵当権設定登記の申請を法務局が受理した際の受付番号を抵当権者である金融機関に電話等で連絡する慣行である。この受付番号の連絡はいくつかの意義を有すると考えられるが、その中のひとつとして、金融機関が、抵当権設定登記の申請が受け付けられたことを確認して、はじめて融資を実行するということがある。

そうすると、その場合は、抵当権設定登記を申請した段階、もっと言ってしまえば、抵当権設定契約が成立した段階では、実際には融資は実行されていなかったというのが実態であった、ということになる。

金銭消費貸借契約は要物契約である。

(消費貸借)
第五百八十七条  消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

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したがって、未だ金銭消費貸借契約が成立していない時点で、「年月日金銭消費貸借同日設定」を原因として抵当権設定登記がなされた場合、抵当権の附従性から、抵当権が無効となってしまうのではないかという疑問が生じる。

しかし、最判昭和33.5.9は、将来発生する債権や条件付債権のために抵当権を設定しても無効とは言えないと述べている(「この点について事実と登記の間に不一致が存するわけであるが、かかる場合でも当事者が真実その設定した抵当権を登記する意思で登記手続を終えた以上、この登記を以て当然に無効のものと解すべきものではなく、抵当権設定者は抵当権者に対し該登記が事実に吻合しないことを理由として、その抹消を請求することはできないものと云わねばならない」)から、そういう意味では附従性が緩和されていると考えてよいだろう。また、そうでなければ、金融実務がひっくり返ってしまうことになる。

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2012年2月27日 (月)

抵当権者A,BをA,B,Cと更正する登記の登記権利者はCであり、登記義務者はA,Bと不動産の所有者である

Dsc_0184 静岡地方法務局昭和59年7月11日登記部門回答の先例である。

「抵当権者A,BをA,B,Cと更正する登記の登記権利者はCであり、登記義務者はA,Bと不動産の所有者である。」

まず、どのような場合に更正登記をすることができるかを確認しておきたい。更正登記は、更正の前後を通じて登記としての同一性がある場合に限り認められる。

その趣旨は次の最高裁判例の示すとおりである。
平成11(オ)773 所有権移転登記抹消登記手続請求事件 平成12年01月27日
「更正登記は、錯誤又は遺漏のため登記と実体関係の間に原始的な不一致がある場合に、その不一致を解消させるべく既存登記の内容の一部を訂正補充する目的をもってされる登記であり、更正の前後を通じて登記としての同一性がある場合に限り認められるもの」

さて、本問の場合、登記の形式上、登記権利者であるCと登記義務者であるA,Bが申請人であることに問題はなさそうだが、不動産の所有者が登記義務者となるかどうかについて意見がわかれるかもしれない。
しかしながら、不動産の所有者は抵当権者をA,Bとする当初の登記では、Cに対する登記義務を果たしていないので、更正の登記の際に登記義務者となることは明らかであろう。

なお、同趣旨の先例として次のものがある。
 甲から乙への売買による所有権移転登記を乙、丙共有名義への移転登記に更正する場合の登記義務者は、甲及び乙である。
(昭40.8.26、民事甲第2,429号民事局長回答・先例集追Ⅳ491頁、登研215号54頁、月報20巻10号137頁)

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2012年2月24日 (金)

民法改正を考える ~債権者代位権~(野々垣バージョン)

Dsc_0183 債権者代位権は、本来型と転用型に分けられるが、転用型は判例法理から導かれるものであって、明文の根拠規定が存在しない。

・本来型の債権者代位権→強制執行を前提とする代位権の行使
・転用型の債権者代位権→登記請求権を満足するために債務者の登記請求権を代位行使するようなケース

そこで、これらを投合して、債権者代位権の一般的要件を規定すべきという議論がある。
その場合、次の2つの考え方があると言われている。
①債務者の被代位権利が行使されることによって債務者が利益を享受し、その利益によって被保全債権が保全されることを要するものとする
②被代位権利が行使されないことによって債権者の被保全債権が現実に妨げられており、債権者代位権の行使の他に適切な手段がないことを要する

いずれの考え方で進めるべきかということだが、古橋の私見としては、債権者代位権は債権者のためにあるというところに着目すれば、②の考え方が適当ではないかと思われる。

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2012年2月23日 (木)

新聞の販売と特定商取引法

Dsc_0181 2月21日付京都新聞によると、「京都市北区の新聞販売店「読売新聞北野YC」の店主らが違法な購読契約をしたとされる事件で、京都府警生活経済課と北署などは20日、特定商取引法違反(威迫・困惑)の疑いで、元訪問販売員山?順一容疑者(39)=兵庫県三田市=を新たに逮捕した。逮捕者は計4人になった。
 北署によると、同法違反(不備書面の交付)容疑で逮捕された同販売店主高橋早人容疑者(52)は「学生は購読解約が多く、クーリングオフを知られたくなかった」と供述しているという。
 読売新聞大阪本社広報宣伝部は「取引関係にある販売店の代表らが逮捕されたことを重く受け止める。販売店には法令順守と従業員教育の徹底を求めていく」としている。 」ということだ。

私の地元浜松では、こうした新聞の購読契約の勧誘はまったくと言っていいほどなく、一度契約をしたらずっとそのままという状況である。しかし、思い起こしてみれば、東京で学生をしていた頃は、頻繁に新聞購読の勧誘が来ていたものだ。

さて、こうした新聞勧誘も特定商取引法の訪問販売に該当するので、訪問販売の定義を確認しておきたい。特定商取引に関する法律2条に定義があるが、長いので要約すると、販売業者又は役務提供者が購入者等に対して、営業所等以外の場所において、除外されていない商品・役務又は指定権利について、申込みを受け、又は契約を締結して行う取引。ただし、26条の適用除外規定に該当するものは除く。

したがって、商品については、「除外されていない商品」以外のものは原則として訪問販売規制の対象となる。新聞については、「株式会社以外の者が発行する新聞紙の販売」が除外されている、例えば、政党新聞とか宗教団体の新聞がこれに当たると言われている。そして、訪問販売にあたる場合はクーリング・オフをすることができるということだが、クーリング・オフ期間の8日間というのは、法定書面を受領してから8日間ということなので、法定書面が交付されていなければいつまででもクーリング・オフすることができるというわけだ。

新聞購読の勧誘も大変な時代になったものだ。

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2012年2月22日 (水)

相続財産の果実について債権者不確知を原因として供託できるか

昨日の朝礼では、「預金や現金はどのように相続されるか」という話をしたが、ブログで「みうらさん」から、名古屋高裁23.5.27判決があるよ、ということを教えていただいた。この判決をどのように解釈するかは議論のあるところかもしれないが、別の意味で、この判決の興味深いところを見つけた。

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本件は、相続開始後に発生した配当金を「債権者不確知」により供託された件について、供託金還付請求権の対象である配当金については、被控訴人である国は、「本件配当金等請求権がその発生当初から相続人らが相続分に応じて確定的に分割取得していたのであれば,債権者不確知を供託原因とする本件供託には供託原因がないことになり,被供託者は還付請求権を有し得ない旨主張」した。

な、な、なんと、自ら供託を受け入れておきながら、「供託原因がなかった」という仮定で主張を展開したのだ。それに対し、裁判所は「供託原因が存在しないにもかかわらず供託が受理されたような場合に,被供託者が,供託の効力を否定して債務者に債務の履行を請求する代わりに,供託の効力を前提として供託金還付請求権の行使を選択することもできると解すべき」と判断した。つまり、裁判所も、供託原因がなかったということを暗に認めたということ。

一方で、法務省のホームページでは、供託の書式として「賃貸人が死亡し、その相続人の氏名、住所が不明のため債権者を確知することができない」ということを原因として供託する書式を掲載している。この賃料も、相続財産から発生した果実であるから、相続財産たる賃貸建物がどのように遺産分割されようが、果実自体は相続人の法定相続分で分割されているわけで、本来であれば債権者不確知という事態はない筈だ。したがって、通常であれば債権者不確知という供託原因は存在しないということになる。

もっとも、(確か、債権の二重譲渡があった場合に債務者が供託する場合の先例だと思ったが)供託の申請人に、そこまでの調査を尽くして、なおかつ法的判断もしなさいというのは酷だから、上記のような供託も受け入れることになるのだろう。

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2012年2月21日 (火)

預金や現金はどのように相続されるか

Dsc_0175 銀行などの預貯金は口座名義人の相続の発生により凍結され、一定の手続きを行わないと預金の解約ができない。

ところで、最判平成16年4月20日は、預貯金などの金銭債権は、相続開始と同時に当然に分割され、各相続人に法定相続分に応じて帰属すると判示している。したがって、遺産分割を待つまでもなく法定相続分に応じた払戻し請求をすることが法的には可能である。これは、民法899条の規定からも当然の結論である。

第八百九十九条  各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。

 しかし、銀行実務では、今でも、相続人全員の同意書や遺産分割協議書の提出がなければ相続人1人からの払戻請求には応じていないのが実情だ。銀行が相続紛争に巻き込まれたくないと考えるのは仕方ないかもしれないが、最高裁判例が出ているのであるから判例にしたがった取扱いをする方が紛争に巻き込まれる可能性は低いと考えるのだが。

しかし、これには例外がある。最判平成22.10.8は次のように判示している。

「郵便貯金法は,定額郵便貯金につき,一定の据置期間を定め,分割払戻しをしないとの条件で一定の金額を一時に預入するものと定め(7条1項3号),預入金額も一定の金額に限定している(同条2項,郵便貯金規則83条の11)。同法が定額郵便貯金を上記のような制限の下に預け入れられる貯金として定める趣旨は,多数の預金者を対象とした大量の事務処理を迅速かつ画一的に処理する必要上,預入金額を一定額に限定し,貯金の管理を容易にして,定額郵便貯金に係る事務の定型化,簡素化を図ることにある。ところが,定額郵便貯金債権が相続により分割されると解すると,それに応じた利子を含めた債権額の計算が必要になる事態を生じかねず,定額郵便貯金に係る事務の定型化,簡素化を図るという趣旨に反する。他方,同債権が相続により分割されると解したとしても,同債権には上記条件が付されている以上,共同相続人は共同して全額の払戻しを求めざるを得ず,単独でこれを行使する余地はないのであるから,そのように解する意義は乏しい。これらの点にかんがみれば,同法は同債権の分割を許容するものではなく,同債権は,その預金者が死亡したからといって,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。そうであれば,同債権の最終的な帰属は,遺産分割の手続において決せられるべきことになるのであるから,遺産分割の前提問題として,民事訴訟の手続において,同債権が遺産に属するか否かを決する必要性も認められるというべきである。
そうすると,共同相続人間において,定額郵便貯金債権が現に被相続人の遺産に属することの確認を求める訴えについては,その帰属に争いがある限り,確認の利益があるというべきである。」

ところで、相続財産のうち、現金も相続開始と同時に法定相続分で分割されるのであろうか。

これについては、最判平成4年4月10日は、相続人の一人が相続財産たる現金を相続人名義で預金していたケースで、「現金は、被相続人の死亡により他の動産、不動産とともに相続人らの共有財産となるから、遺産分割をせずに法定相続分に応じた金員の引き渡しを求めることはできない」という趣旨の判断をした。

預貯金のような債権は相続と同時に分割され、現金は分割されないという根拠は、債権と動産の違いということだろうが、実質的な面でみればやや形式にこだわった判断ではなかろうか。

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2012年2月20日 (月)

遺言者の死亡前に相続させる推定相続人が死亡した場合の遺言の効力

Dsc_0174 (受遺者の死亡による遺贈の失効)
第九百九十四条  遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。

このように、遺言者の死亡前に受遺者が死亡した場合は、原則として遺言の効力は生じないとされている。そして、その場合には、受遺者が受けるべきであった遺産は相続の対象になるとされている。

(遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属)
第九百九十五条  遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

このような考え方は、「相続させる」旨の遺言のついても同様に考えられてきた。たとえば、昭和62年6月30日法務省民事局回答は、「相続させる」という遺言の文言であっても、このような遺言は遺贈についての994条1項と同様に考えて、推定相続人が先に死亡した場合は遺言の効力を否定して当該財産は相続の対象として扱うこととされていた。

また、下級審判例も、本件と同様のケースにおいて、代襲相続人に特定財産を相続させる旨の記載がない限り、遺言の該当部分は無効であるということを前提に判断をしていた(札幌高決昭61・3・17、東京地判平6・7・13、東京地判10・7・17、東京高判平11・5・18等)。

ところが、東京高裁平成18年6月29日判決は、「相続させる」旨の遺言で推定相続人が先に死亡した場合には、代襲相続人が遺言により相続する旨の判断を示したため、実務が混乱していた。

しかしながら、最高裁平成23年2月22日判決は、「「相続させる」旨の遺言は,当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはないと解するのが相当である。」と判示し、この問題に決着がついた。

「相続させる」旨の遺言を作成する場合には、推定相続人が先に死亡することも想定して、その場合の定めもしておく方が賢明だ。

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2012年2月17日 (金)

出会いサイトの判例紹介と司法書士法改正(野々垣バージョン)

Dsc_0173 さいたま地裁越谷支部平成23年8月8日判決は出会いサイトの被害について損害賠償を認めたもの。出会いサイトの被害はメールが残っていないケースが多く、被害回復が困難な場合が多いが、同判決は、PIO-NETに蓄積されていた被害情報を証拠として認定し、勝訴判決を得たもの。

そこで、司法書士として注目したのは、このケースは、弁護士法23条の2で定める照会を利用してPIO-NETの情報を収集したということ。実は、司法書士法には弁護士法23条の2に相当する規定がない。

弁護士法
(報告の請求)
第二十三条の二 弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

現在、司法書士法改正が議論されているが、こういった点も含めて検討して欲しい。

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2012年2月16日 (木)

電子記録債権は根抵当権で担保されるか

電子記録債権は、電子記録債権法(平成19年法律第102号)により、事業者の資金調達の円滑化等を図るために創設された新しい類型の金銭債権である。電子記録債権法は平成20年12月1日に施行されているが、本年5月から運用を開始すると言われている。

Dsc_0169 これまで、売掛債権の譲渡・質入れについては、譲渡等の対象である債権の存在やそれが誰に帰属しているのかの確認に手間とコストを要する上、二重譲渡リスク等の問題があった。また、手形の譲渡・質入れについては、紙媒体である手形に内在する保管コストや紛失リスク等の問題があった。
 電子記録債権制度は、これら手形や指名債権のデメリットを解消し、事業者の資金調達の円滑化等を図ろうとするものだ。

では、手形について、デメリットがどのように改善されるか見てみよう。

・ 電子データの送受信等により電子記録債権が発生・譲渡できるので、手形の作成・交付コストことがなくなる。
・ 手形用紙の保管コストは不要となる。
・ 手形の紛失・盗難のリスクについては、電子記録債権は電子債権記録機関の記録原簿による管理がなされるので、手形の紛失・盗難リスクはない。
・ 電子記録債権を分割して譲渡できる(手形の譲渡にはそのような機能はない)。

電子記録債権の発生、譲渡、支払は次のようなイメージで行われる

①電子記録債権の発生
 債権者と債務者の双方が電子債権記録機関に「発生記録」の請求をし、これにより電子債権記録機関が記録原簿に「発生記録」を行うことで電子記録債権が発生する。
②電子記録債権の譲渡 
 譲渡人と譲受人の双方が電子債権記録機関に「譲渡記録」の請求をし、これにより電子債権記録機関が記録原簿に「譲渡記録」を行うことで電子記録債権を譲渡できる。
③電子記録債権の消滅 
 金融機関を利用して債務者口座から債権者口座に払込みによる支払が行われた場合、電子記録債権は消滅し、電子債権記録機関は金融機関から通知を受けることにより遅滞なく「支払等記録」をする。

さて、問題は、このような電子記録債権は、金融機関の根抵当権で担保されるか、ということである。前提として、根抵当権の債権の範囲は「銀行取引 手形債権 小切手債権」であったとする。そもそも、ここでいう「手形債権 小切手債権」といのは回り手形、回り小切手を意味することは昨日勉強した。したがって、言ってみれば、回り電子記録債権が根抵当権で担保されるか、という問題である。

結論としては、根抵当権者と債務者との間の取引から発生したものではない回り手形・回り小切手を担保するためには、債権の範囲にわざわざ「手形債権 小切手債権」を記載しなければならないのであるから、そのままでは回り電子記録債権を担保することはできないと考えられる。そうすると、回り電子記録債権を根抵当権で担保するためには、回り電子記録債権を根抵当権で担保すべき債権の範囲とすることができるという民法改正と、根抵当権の債権の範囲に「電子記録債権」を加えるという根抵当権変更登記が必要になると思われるが、いかがだろうか。

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2012年2月15日 (水)

手形債権、小切手債権の意味

Dsc_0150 金融機関の設定する根抵当権は、債権の範囲として「手形債権・小切手債権」が定められているが、これはどういう意味なのか考えてみたい。

(根抵当権)
第三百九十八条の二  抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。
2  前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。
3  特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権又は手形上若しくは小切手上の請求権は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。

この条文からわかるように、根抵当権の債権の範囲は、①債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるもの、②債務者との一定の種類の取引によって生ずるもの、③特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権、④手形上若しくは小切手上の請求権、を目的として設定することができる。

この中で、債務者との「取引」に基づかない債権として、④手形上若しくは小切手上の請求権が規定されているが、これは、どういう意味か。

これについて、「手形上もしくは小切手上の債権」とは、いわゆる回り手形・回り小切手に関する債権であると言われている。つまり、債務者が振り出した手形又は小切手が裏書によって流通した結果、根抵当権者が当該手形又は小切手を取得した場合に取得する手形上・小切手上の請求権である。

根抵当権者が金融機関の場合、手形割引によって取得した手形により、金融機関が手形上の請求権を取得することは十分ありうる。しかし、事業会社が根抵当権者の場合、債務者が振りだした手形が回り手形として根抵当権者の元に回ってくることがどのくらいあるのだろうか。

そう考えてみると、事業会社が根抵当権者の場合には、債権の範囲として「手形債権、小切手債権」を登記する実益は乏しいのではないかとも思われる。もっとも、「手形債権、小切手債権」を登記しても余分に登録免許税を払うわけではないので、万が一、回り手形が回ってきた際のことを考えれば登記する実益が全くないとはいえない。

おそらく、事業会社もそういうことを悩んだ末に「手形債権、小切手債権」を登記しているのだろう。

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2012年2月14日 (火)

催告書に記載すべき計算書類に関する事項

Dsc_0148 会社の合併等の場合、債権者異議申述手続きを行うが、原則として、官報に掲載するほか、知れている債権者には個別に催告書を送付する必要がある。その場合、催告書に記載すべき事項は法定されている。

(債権者の異議)
第七百九十九条
1 略
2 前項の規定により存続株式会社等の債権者が異議を述べることができる場合には、存続株式会社等は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第四号の期間は、一箇月を下ることができない。
一  吸収合併等をする旨
二  消滅会社等の商号及び住所
三  存続株式会社等及び消滅会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
四  債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

この3号で、「存続株式会社等及び消滅会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの」を記載しなければならないが、「法務省令で定めるもの」とは会社法施行規則199条のことである。

実は、ここで新たな発見をした(条文をよく見れば「発見」などと言うのはおこがましいが)。

僕は、これまで、株式会社で決算公告をしていない場合は、決算公告付の合併公告を官報に掲載し、その官報の掲載頁を確認して、催告書に掲載日及び掲載頁を記載していた。したがって、官報発行日にならないと掲載頁がわからないため、催告書は官報催告日に完成させていた。

ところが、199条7号は「前各号に掲げる場合以外の場合 会社計算規則第六編第二章 の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容」と規定している。「千問の道標」によると、この規定は決算公告を怠っている場合をも想定した規定であるということだ。
そうすると、合併公告よりも前に催告書を発送するのであれば、催告書に貸借対照表の要旨を掲載すればいいということになる。

もっとも、催告書に貸借対照表を掲載したくないという顧客もあるかもしれないので、199条7号を利用するのは顧客に確認した方がいいだろう。

(計算書類に関する事項)
第百九十九条  法第七百九十九条第二項第三号 に規定する法務省令で定めるものは、同項の規定による公告の日又は同項の規定による催告の日のいずれか早い日における次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
一  最終事業年度に係る貸借対照表又はその要旨につき公告対象会社(法第七百九十九条第二項第三号 の株式会社をいう。以下この条において同じ。)が法第四百四十条第一項 又は第二項 の規定により公告をしている場合 次に掲げるもの
イ 官報で公告をしているときは、当該官報の日付及び当該公告が掲載されている頁
ロ 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙で公告をしているときは、当該日刊新聞紙の名称、日付及び当該公告が掲載されている頁
ハ 電子公告により公告をしているときは、法第九百十一条第三項第二十九号 イに掲げる事項
二  最終事業年度に係る貸借対照表につき公告対象会社が法第四百四十条第三項 に規定する措置を執っている場合 法第九百十一条第三項第二十七号 に掲げる事項
三  公告対象会社が法第四百四十条第四項 に規定する株式会社である場合において、当該株式会社が金融商品取引法第二十四条第一項 の規定により最終事業年度に係る有価証券報告書を提出しているとき その旨
四  公告対象会社が会社法 の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第二十八条 の規定により法第四百四十条 の規定が適用されないものである場合 その旨
五  公告対象会社につき最終事業年度がない場合 その旨
六  公告対象会社が清算株式会社である場合 その旨
七  前各号に掲げる場合以外の場合 会社計算規則第六編第二章 の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容

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2012年2月13日 (月)

押し買い 法規制へ

Dsc_0147 訪問販売については法規制がなされているが、昨今、訪問買い取りについてのトラブルが急増している。

訪問買い取りのトラブルは主に貴金属の買い取りに多く見られるようであるが、次のような問題点が指摘されている。
○ 勧誘の目的や事業者の氏名、買い取る商品等について、訪問買取業者からきちんと告げられないまま勧誘を受ける。
○ 領収書や契約書面等が交付されないため、買取価格の算定根拠が不明である。
○ 消費者が勧誘を断っても退去せずに勧誘を続ける、勧誘が長時間にわたるなど売渡者(消費者)が迷惑と感じるような勧誘を行う、威迫して勧誘を行う、あるいは、認知症等の高齢者への勧誘を行う。
○ 訪問買取業者の勧誘の際のトークの内容について、真実であるかどうか疑義がある。
○ 訪問買取業者から売渡者に対し領収書や契約書が渡されない場合、契約後に訪問買取業者と連絡を取りたくても連絡が取れない。
○ 消費者が訪問買取業者に解約を申し出たところ、「すでに溶かしてしまった」、「すでに転売してしまった」、「買取契約時に渡した書面に解約不可と明記している」などとして、解約に応じてくれない。

消費者庁に設置された「貴金属等の訪問買取りに関する研究会」の中間報告書を見ると、法規制は次のような内容になると思われる。
○ 法的措置の対象商品は、貴金属などの指定商品とする。
○ 事業者名・勧誘目的等の明示義務を課す。
○ 訪問買取業者に対し、再勧誘を行うこと及び迷惑勧誘を行うことを禁止する。
○ 訪問買取業者に対し、消費者に、連絡先、買取商品名、買取価格など必要な事項を記載した契約書面を交付することを義務付ける。
○ 消費者が契約を締結するかどうかを判断する際に、訪問買取業者が不実を告げる、又は買取価格に関することなど契約における重要な事項を告げないといったことを禁止する。
○ 訪問買取業者が売渡者(消費者)に対し威迫・困惑を伴うような勧誘を行うことを禁止する。
○ 高齢者などの判断力の不足に便乗して契約を締結させてしまうといったことの禁止。
○ 買取(売渡)契約後、当該契約について、クーリング・オフ制度を設ける。

これらの法規制は、「特定商取引に関する法律」に設けられると考えられる。ちなみに、同法で規制されている取引は、現在は、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引の6つ。

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2012年2月10日 (金)

司法書士法改正 ~司法書士の名称変更~(野々垣バージョン)

Dsc_0146 司法書士という名称を司法士、法務士に変更しようという案が出ている。理由はいくつかあるらしいが、「書」というイメージを払拭したい、行政書士と紛らわしい、などというのが主な理由らしい。

古橋の意見
今朝、なぜか朝食を食べながら思いついた。現在、認定を取得した司法書士は俗に「認定司法書士」などと呼んでいるが、「認定を取得した司法書士は「司法士」とか「法務士」と名乗ることができる」ということにしてはどうか。つまり、司法書士という名称は変えない、認定司法書士は司法書士であることに違いはないが、「司法士」とか「法務士」などと名乗ってもいいということ。これなら反対は少ないと思うが。

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2012年2月 9日 (木)

株式数と資本金の関係

Dsc_0145 たとえば、会社設立の場合、1株の発行価額5万円、20株発行、資本金100万円などと、発行価額×株数=資本金という式が成り立つケースが大半である。

ところが、公式はもろくも崩れる。たとえば、この会社がその後、新株式を発行する場合に、新たに株主となる人には1株5万円で買って貰いたいが資本金に入れるのはその半額、発行する新株式は10株とする。この募集株式発行が完了した暁には、発行済み30株、資本金125万円ということになり、30株に5万円を乗じても125万円にはならなくなる。

つまり、発行済みの株式の数と資本金の額は何の関係性がない。したがって、資本金の増減と関係なく株式の数を変更することができるし(株式の併合、消却、分割)、株式の数とは関係なく資本金を増加したり減少したりすることができる。

現在、株式は無額面であるが、以前はほとんどの会社で額面株式が採用されていたため、額面×株数=資本金という式が成り立たないと何か気持ち悪いと感じる人も多かった。そのため、最低資本金制度をクリアするために配当可能利益を資本金に組み入れる時など、そのタイミングとあわせて株式分割をして額面×株数=資本金という式を「意地でも維持する」というケースもあった。

株式は、種類株式でなければ1個1個の権利内容に差がないわけだから、会社法務の世界では、実はもそれがいくらで発行されたかということはあまり意味がない。その株主が何%の割合を所有しているかが大事なのである。

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2012年2月 8日 (水)

新しい登記情報提供サービス

2月20日から、新しい登記情報提供サービスが運用されるらしい。新しいサービスは、ひとつのIDを複数のパソコンから使えない、パスワードに90日の利用期間が設けられるため、パスワードを変更しなければならないなど、ちょっと面倒なことになるらしい。

また、これまでの「表示」が「保存」+「ダウンロード」という手順に分かれるため、手順が増えるような気がする。

法律の世界では、改正は法改正が必要な社会的事実を背景に行われるが、今回の登記情報提供サービスの変更はどのようなニーズにもとづいて変更されるのだろうか。使い勝手が悪くなるのであれば、変更した理由を明らかにして欲しいものである。

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2012年2月 7日 (火)

商業登記申請に許可書・認可書を添付する場合

官庁の許可を要する事項の登記を申請する場合には、申請書に官庁の許可書又はその認証がある謄本を添付しなければならない(商業登記法19条)。

ただし、この場合の「官庁の許可を要する事項」とは、許可又は認可が登記すべき事項の効力要件である場合を言うとされる。したがって、営業認可のように当該許可又は認可が登記事項の効力発生要件ではない場合にはその添付を要しないとされている。

 非訟事件手続法第150条ノ2(商業登記法第19条)により登記申請書に添付すべき許可又は認可を証する書面は、当該許可又は認可が登記すべき事項の効力要件である場合に限り添付することを要する。(大正5.4.19、民第440号回答を変更)
(昭26.8.21、民事甲第1,717号民事局長通達・先例集下2415頁、登研45号25頁)

では、効力発生要件である許可又は認可にはどのようなものがあるか。

 銀行が、その営業の全部譲渡及びこれを条件とする解散の決議をした場合には、当該銀行については、大蔵大臣の認可を受けてその営業の全部を譲渡したときから銀行法の適用がなくなり、当該解散の決議は、大蔵大臣の認可を受けなくても、営業の全部を譲渡したときに効力を生じることとなるので、この場合の解散の登記の申請書に、営業の全部譲渡についての大蔵大臣の認可書又はその認証がある謄本及び営業の全部譲渡をした旨の公告をしたことを証する書面が添付されているときは、これを受理することができる。
(平10.6.2、民四第1055号民事局第四課長通知)

この先例は、営業の全部譲渡については認可が効力要件だが、これを条件とする解散自体は、既に銀行法の適用がなくなっているので認可は不要ということを確認したものだろう。

Dsc_0144 学校教育法
第四条  次の各号に掲げる学校の設置廃止、設置者の変更その他政令で定める事項(次条において「設置廃止等」という。)は、それぞれ当該各号に定める者の認可を受けなければならない。

なるほど、この条文を読むと、学校の設置は認可を必要とするため、いかに構造改革特区で株式会社が学校の経営を行う場合であっても、認可がなければ学校の経営を目的とした株式会社を設立することはできないということになる。営業許可ではないわけだ。(平16.6.18民商1765)

銀行法
(営業の免許)
第四条  銀行業は、内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ、営むことができない。

銀行業を営むことを目的とする株式会社の設立登記の申請には、主務大臣の免許を証する書面の添付を要しない。
(昭31.11.15、民事甲第2,633号)

免許は銀行設立の効力要件ではなく、営業開始の要件のようだ。

債権管理回収業に関する特別措置法
(営業の許可)
第三条  債権管理回収業は、法務大臣の許可を受けた株式会社でなければ、営むことができない。

これも営業開始の要件のように読める。したがって、許可を受けなくても「債権管理回収業」を目的に定めることができる?

こういう整理でいいのだろうか。よくわからん。

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2012年2月 6日 (月)

根抵当権の抵当権への流用の可否

抵当権で担保されるのは元本及び最後の2年分の利息・損害金のみである。

(抵当権の被担保債権の範囲)
第三百七十五条  抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。
2  前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。

それに対し、根抵当権は極度額を限度として元本はもとより、利息・損害金についても2年分という制限にとらわれずに担保される。

(根抵当権の被担保債権の範囲)
第三百九十八条の三  根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。

Dsc_0143

本来、根抵当権は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるもの等を担保するために設けられている担保物権であり、確定債権のみを担保するものではない。
ところが、抵当権と根抵当権とは、担保される範囲に上記のような違いがあるため、確定債権しかなく、今後も新たな債権が発生する見込みがないような場合であっても根抵当権を設定する例がみられる。果たして、これが有効かどうか、である。

この点について、盛岡地判平成元年9月28日は、「特定債権のみを担保する目的で根抵当権の設定登記をした場合には、根抵当権設定登記をもって抵当権設定登記に流用することは許されない」と判示しているので、その中身を見てみた。

「以上の事実によれば、控訴人は右二口の債権について履行遅滞を重ねており、通常の債権者であれば更に新たな貸付けをすることは差し控えるであろう状態になっていたし、また、右根抵当権設定契約当時における未払い元利金及び遅延損害金の合計は一六〇〇万円にも達しており、また生ずべき遅延損害金は年額二五〇万円余りであることからして、被控訴人○○としても、従来有していた二口の債権のみを念頭において極度額を定めたものと解され、したがって同人が控訴人に対して新たな貸付を行うことは予定されていなかったものと認められるところ、原審における被控訴人○○本人尋問(第一回)の結果中、今後も控訴人に対して金を貸す予定はあったとする部分は、具体的な交渉がもたれたことについての証拠がないことに照らし、にわかに採用できないし、他に控訴人に対して新たな貸付を行うことが予定されていたことを窺わせる証拠は存しない。したがって、本件根抵当権設定契約は、前記二口の債権のみを担保する目的でなされたものということになるから、根抵当権設定契約ではなく、通常の抵当権の設定契約と解するほかない。」
そのために、登記された根抵当権は無効なものだと言っているのである。

このように、根抵当権設定時に、今後新規融資をする予定は全くないのに根抵当権を設定したような場合はこの判例の射程範囲に入るおそれがある。したがって、個人間の貸借などで、返済が遅れ遅れになっているような場合に根抵当権を利用すると、ややもすると無効となってしまうこともあるので注意が必要ということになろう。

なお、私の地元の金融機関では、住宅ローンについて根抵当権を設定する銀行があるが、住宅ローンの返済がすすんでいれば次にリフォームローンを貸し出すことも考えられるから、ストレートにこの判例があてはまるとは思えない。

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2012年2月 3日 (金)

司法書士法改正大綱 ~相談業務~(野々垣バージョン)

Dsc_0137 今日は野々垣司法書士からの発表。

現在、司法書士法では、相談業務として、裁判書類作成関係業務(5号相談)と簡裁訴訟代理関係業務としての相談(5号相談)の2種類が規定されている。そして、5号相談は書類作成に収束する相談、7号相談は紛争解決に向けての法律相談と言われている。

司法書士の簡裁訴訟代理関係業務は、民事に関する紛争であって裁判所法33条1項1号(140万円)以下の事案についてに限定される。したがって、机上の理論としては、紛争の価額が140万円を超えているかどうかによって相談の態度を変えなければいけないこととなる。しかし、現実的にはそれは無理だ。

たとえば、賃料不払いによる建物明渡の相談があった場合、賃料不払い額が140万円を超えていれば賃料支払いを催告して賃貸借契約を解除するという5号相談、解除ができたら建物明渡請求(建物の価額が200万円であればその2分の1が経済的利益)という7号相談となる。しかし、ひとつの相談の中で5号相談と7号相談とが混在しているわけだ。したがって、相談の態度を切換えるということは現実的には不可能である。

こういうとこるがどのように整理されていくのか興味があるところだ。

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2012年2月 2日 (木)

特例民法法人が公益法人等へ移行する場合の登記の申請について

Dsc_0136 特例民法法人から公益法人等へ移行する場合に、平成24年4月1日(日)に登記の受付けを希望する法人は、次のとおり申請することができることになるようだ。ちなみに、すでに愛媛県のホームページでは次のように広報されている。

1 移行登記手続きに係る留意事項

(1)登記の申請に当たっては、平成24年4月1日(日曜)に開所される登記所に申請書(紙媒体)を提出してもらうことになります。ただし、これよりも以前に原則としてオンラインによる登記事項の提出の手続きが必要です。

※オンラインによる登記事項の提出手続きは、紙媒体で提出される登記申請にかかる登記事項を申請者において電子化してあらかじめ提出いただき、法務局においてデータの事前審査を行うためのものであり、オンライン申請そのものではありません。今回の手続に関して不明な点については、必ず、事前に下記の照会先に確認してください。

(2)また、オンラインによる登記事項の提出の手続きを行うにあたっては、事前準備として「申請用総合ソフト等」をダウンロードする必要があります。詳細については、法務省HP内の「オンラインによる登記事項提出手続の流れ」に沿って手続きを進めてください。

(3)オンラインによる登記事項の提出の手続は、インターネットを利用することができる環境にあることが前提となりますので、この環境にないなどの事情がある場合は、事前に下記の照会先に相談してください。

つまり、4月1日の紙申請での受付になる。オンライン申請はだめ。ただし、事前チェックのために事前にオンライン申請と同様の方法で登記事項を提出する(司法書士が代理人となった場合にもこれが必要かどうかは不明)。

それ以外の詳細は不明。あまり小出しにしないで欲しいところです。

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2012年2月 1日 (水)

相続放棄の熟慮期間の起算点

Dsc_0135 相続が発生した場合、相続人は、相続を承認するか、放棄するか、限定承認するかを3か月以内に選択しなければならないが、この期間は熟慮期間と呼ばれている。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条  相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

ここで、熟慮期間の起算点について、条文では「自己のために相続の開始があったことを知った時」となっているが、その意味について、大決大15.8.3は「相続人カ相続開始ノ原因タル事実ノ発生ヲ知リタル時ノ謂ニ非スシテ其ノ原因事実ノ発生ヲ知リ且之カ為ニ自己カ相続人ト為リタルコトヲ覚知シタル時」をいうと説明している。

この考え方が原則として今でも生きているが、例外として、3か月以内に相続放棄等をしなかった場合でも、それが相続財産・債務が全くないと信じたためであり,かつそう信じたことに相当な理由がある場合には,相続財産・債務の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識できる時から起算することとなる(最判昭和59年4月27日)。

昭和59年判決に該当するケースにしばしば遭遇するが、上記2つの判例を理解したうえで、以前作成していた申述書の記載を見ると、ちょっと恥ずかしくなる。

1 申述人は、被相続人●●●●の相続人である。
2 申述人は、平成●年●月●日、●●簡易裁判所から送達された訴状を受け取り、申述人が被相続人の債務を相続していることを初めて知った。
3 しかし、被相続人の相続財産は債務超過の状態にあるため、申述人は御庁に対し相続放棄の申述をする。

どうだろうか、59年判例が指摘した要件がまるで抜け落ちている。
要件を入れて書き直すと、次のような感じになるのだろうか。

1 申述人は、被相続人●●●●の相続人であり、平成●年●月●日、被相続人の死亡により相続が開始し、自己が相続人になったことを即日知った。
2 しかしながら、申述人は、被相続人とは●●の理由で平成●年頃からほとんど連絡をとっておらず、それに加え、被相続人は財産があればすぐに使ってしまう癖があつたため、申述人が調査するまでもなく相続財産は存在しないと信じていた。また、被相続人死亡後に債権者の督促もなかったため債務も存在しないと信じていた。そのため、申述人は、被相続人の相続に関しては何ら手続をとっていないばかりか、被相続人の相続財産の全部又は一部を処分したことはなく、また、限定承認又は相続の放棄もしていない。
3 ところが、申述人は、平成●年●月中旬、被相続人の最後の住所地宛に、株式会社●●から「相続確認のお知らせ」が届いたことを知るに及び、被相続人が株式会社●●に対し負債を負っていたこと、被相続人の相続財産として当該負債に対する法定相続分を申述人が相続していることを初めて知った。
4 しかしながら、被相続人の相続財産は債務超過の状態にあるため、申述人は御庁に対し相続放棄の申述をする。

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