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2012年2月21日 (火)

預金や現金はどのように相続されるか

Dsc_0175 銀行などの預貯金は口座名義人の相続の発生により凍結され、一定の手続きを行わないと預金の解約ができない。

ところで、最判平成16年4月20日は、預貯金などの金銭債権は、相続開始と同時に当然に分割され、各相続人に法定相続分に応じて帰属すると判示している。したがって、遺産分割を待つまでもなく法定相続分に応じた払戻し請求をすることが法的には可能である。これは、民法899条の規定からも当然の結論である。

第八百九十九条  各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。

 しかし、銀行実務では、今でも、相続人全員の同意書や遺産分割協議書の提出がなければ相続人1人からの払戻請求には応じていないのが実情だ。銀行が相続紛争に巻き込まれたくないと考えるのは仕方ないかもしれないが、最高裁判例が出ているのであるから判例にしたがった取扱いをする方が紛争に巻き込まれる可能性は低いと考えるのだが。

しかし、これには例外がある。最判平成22.10.8は次のように判示している。

「郵便貯金法は,定額郵便貯金につき,一定の据置期間を定め,分割払戻しをしないとの条件で一定の金額を一時に預入するものと定め(7条1項3号),預入金額も一定の金額に限定している(同条2項,郵便貯金規則83条の11)。同法が定額郵便貯金を上記のような制限の下に預け入れられる貯金として定める趣旨は,多数の預金者を対象とした大量の事務処理を迅速かつ画一的に処理する必要上,預入金額を一定額に限定し,貯金の管理を容易にして,定額郵便貯金に係る事務の定型化,簡素化を図ることにある。ところが,定額郵便貯金債権が相続により分割されると解すると,それに応じた利子を含めた債権額の計算が必要になる事態を生じかねず,定額郵便貯金に係る事務の定型化,簡素化を図るという趣旨に反する。他方,同債権が相続により分割されると解したとしても,同債権には上記条件が付されている以上,共同相続人は共同して全額の払戻しを求めざるを得ず,単独でこれを行使する余地はないのであるから,そのように解する意義は乏しい。これらの点にかんがみれば,同法は同債権の分割を許容するものではなく,同債権は,その預金者が死亡したからといって,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。そうであれば,同債権の最終的な帰属は,遺産分割の手続において決せられるべきことになるのであるから,遺産分割の前提問題として,民事訴訟の手続において,同債権が遺産に属するか否かを決する必要性も認められるというべきである。
そうすると,共同相続人間において,定額郵便貯金債権が現に被相続人の遺産に属することの確認を求める訴えについては,その帰属に争いがある限り,確認の利益があるというべきである。」

ところで、相続財産のうち、現金も相続開始と同時に法定相続分で分割されるのであろうか。

これについては、最判平成4年4月10日は、相続人の一人が相続財産たる現金を相続人名義で預金していたケースで、「現金は、被相続人の死亡により他の動産、不動産とともに相続人らの共有財産となるから、遺産分割をせずに法定相続分に応じた金員の引き渡しを求めることはできない」という趣旨の判断をした。

預貯金のような債権は相続と同時に分割され、現金は分割されないという根拠は、債権と動産の違いということだろうが、実質的な面でみればやや形式にこだわった判断ではなかろうか。

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コメント

供託金は金銭債権なので相続人に当然に分割されるが、遺産分割の対象とすることも可能なので、遺産分割の対象としない旨の相続人全員の書面を供託規則により提出する必要がある。
その旨の書面の提出があれば供託所は各相続人の払い渡しに応ずることができる。という判例が出た。名古屋高裁判決。
ということで、預金に関しても同様のことが言えるのである。
なので銀行の拒絶は正当になったのである。
名古屋高裁23.5.27判決 23行コ11 最高裁ホームページ掲載あり。
名古屋地裁23.1.13判決 23行ウ58 地裁は否定。

投稿: みうら | 2012年2月21日 (火) 19時45分

いろいろと情報ありがとうございます。ご紹介頂いた判例を読ませていただきました。しかし、ちょっとみうらさんの解釈とは違うような感じがします。
23年名古屋高裁判決の対象となった供託金還付請求権の対象である配当金は、相続開始後に発生したものですから相続財産ではないことは明らかです(家裁の実務として相続人全員の同意があれば遺産分割の対象にするという慣行があるにすぎません)。
したがって、配当金還付請求権は観念的には相続人の共有財産になるのかもしれませが、法定相続分に応じた分割債権と化します(相続財産として分割債権となったわけではありません)。
この判例では、還付請求の際の添付書類で経法定相続分が判明するから、還付請求に応じなさい、という趣旨だと思います。(「加えて,本件添付書類によれば,本件配当金等債権が上記遺産分割審判の対象とされていなかったことも確認できる。」と言っているにすぎません)。

最判平成16年4月20日は相続財産の事例であり、今回の判例は相続財産の対象ではない果実の事例ですから事案が異なります。もっとも、分割債権の請求に応じなさいという趣旨は共通します。

ですから、「銀行の拒絶は正当になった」というわけではないと思います。
私の読み方がちがうのでしょうか? 教えて下さい。

投稿: 古橋清二 | 2012年2月21日 (火) 20時32分

生保会社が相続人が受取人の場合は、常に均等。と約款で規定していることが多い。理由として寄与分などで変動があったときに後から問題が起きないためだと説明する。
しかし、相続人代表者を決めて請求しないと実際には払われない。
金銭債権も遺産分割の対象としないこともでき・することもできるので、後から問題が起きないように、遺産分割の対象としないという書面が必要だと小生は思います。
寄与分や特別受益で変動することもあるので、その場合でも、法定相続分で払っても免責になるというのでしょうか。
それが心配ですよね。

投稿: みうら | 2012年2月22日 (水) 19時56分

生命保険って微妙ですね。受取人欄の記載方法によって随分結果がかわってしまいますね。

判例では、受取人に「相続人」って書いてあった場合は保険金は相続財産とはならず、相続人の固有の財産になると言っていますね(最判昭和40.2.2、最判昭和48.6.29など)。

そして、その場合、保険金請求権の割合は法定相続分の割合になるって言っています(最判平成6.7.18)。

なんだかよくわかりませんね。もっと勉強しなきゃ。

投稿: 古橋清二 | 2012年2月22日 (水) 20時22分

再度金融法務事情1.1号を確認したら津地方法務局伊勢支局長の氏名が丙川梅彦という仮名になっている。そんなことする必要があるだろうか。
昭和10年代の東京市防衛局長の氏名が塗り消されていた事例があるが、今確認することは困難なので塗り消す意味もあるだろうが。。

1審判決は他の相続人を被告とする供託金払い渡し請求権確認判決が必要だとしていいる。が、控訴審はそこまで必要ないとしたのである。

投稿: みうら | 2012年2月23日 (木) 19時04分

金融商事判例24.1.1号に供託金払い渡しに関する名古屋高裁23.5.27判決 23行コ11の解説が掲載されています。

投稿: みうら | 2012年2月23日 (木) 19時05分

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