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2012年2月 1日 (水)

相続放棄の熟慮期間の起算点

Dsc_0135 相続が発生した場合、相続人は、相続を承認するか、放棄するか、限定承認するかを3か月以内に選択しなければならないが、この期間は熟慮期間と呼ばれている。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条  相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

ここで、熟慮期間の起算点について、条文では「自己のために相続の開始があったことを知った時」となっているが、その意味について、大決大15.8.3は「相続人カ相続開始ノ原因タル事実ノ発生ヲ知リタル時ノ謂ニ非スシテ其ノ原因事実ノ発生ヲ知リ且之カ為ニ自己カ相続人ト為リタルコトヲ覚知シタル時」をいうと説明している。

この考え方が原則として今でも生きているが、例外として、3か月以内に相続放棄等をしなかった場合でも、それが相続財産・債務が全くないと信じたためであり,かつそう信じたことに相当な理由がある場合には,相続財産・債務の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識できる時から起算することとなる(最判昭和59年4月27日)。

昭和59年判決に該当するケースにしばしば遭遇するが、上記2つの判例を理解したうえで、以前作成していた申述書の記載を見ると、ちょっと恥ずかしくなる。

1 申述人は、被相続人●●●●の相続人である。
2 申述人は、平成●年●月●日、●●簡易裁判所から送達された訴状を受け取り、申述人が被相続人の債務を相続していることを初めて知った。
3 しかし、被相続人の相続財産は債務超過の状態にあるため、申述人は御庁に対し相続放棄の申述をする。

どうだろうか、59年判例が指摘した要件がまるで抜け落ちている。
要件を入れて書き直すと、次のような感じになるのだろうか。

1 申述人は、被相続人●●●●の相続人であり、平成●年●月●日、被相続人の死亡により相続が開始し、自己が相続人になったことを即日知った。
2 しかしながら、申述人は、被相続人とは●●の理由で平成●年頃からほとんど連絡をとっておらず、それに加え、被相続人は財産があればすぐに使ってしまう癖があつたため、申述人が調査するまでもなく相続財産は存在しないと信じていた。また、被相続人死亡後に債権者の督促もなかったため債務も存在しないと信じていた。そのため、申述人は、被相続人の相続に関しては何ら手続をとっていないばかりか、被相続人の相続財産の全部又は一部を処分したことはなく、また、限定承認又は相続の放棄もしていない。
3 ところが、申述人は、平成●年●月中旬、被相続人の最後の住所地宛に、株式会社●●から「相続確認のお知らせ」が届いたことを知るに及び、被相続人が株式会社●●に対し負債を負っていたこと、被相続人の相続財産として当該負債に対する法定相続分を申述人が相続していることを初めて知った。
4 しかしながら、被相続人の相続財産は債務超過の状態にあるため、申述人は御庁に対し相続放棄の申述をする。

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コメント

うちは、念のために放棄する。という賃借人の相続人には、敷金など相当額をお悔やみとして送金していたね。

投稿: みうら | 2012年2月 2日 (木) 21時45分

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