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2012年2月 6日 (月)

根抵当権の抵当権への流用の可否

抵当権で担保されるのは元本及び最後の2年分の利息・損害金のみである。

(抵当権の被担保債権の範囲)
第三百七十五条  抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。
2  前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。

それに対し、根抵当権は極度額を限度として元本はもとより、利息・損害金についても2年分という制限にとらわれずに担保される。

(根抵当権の被担保債権の範囲)
第三百九十八条の三  根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。

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本来、根抵当権は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるもの等を担保するために設けられている担保物権であり、確定債権のみを担保するものではない。
ところが、抵当権と根抵当権とは、担保される範囲に上記のような違いがあるため、確定債権しかなく、今後も新たな債権が発生する見込みがないような場合であっても根抵当権を設定する例がみられる。果たして、これが有効かどうか、である。

この点について、盛岡地判平成元年9月28日は、「特定債権のみを担保する目的で根抵当権の設定登記をした場合には、根抵当権設定登記をもって抵当権設定登記に流用することは許されない」と判示しているので、その中身を見てみた。

「以上の事実によれば、控訴人は右二口の債権について履行遅滞を重ねており、通常の債権者であれば更に新たな貸付けをすることは差し控えるであろう状態になっていたし、また、右根抵当権設定契約当時における未払い元利金及び遅延損害金の合計は一六〇〇万円にも達しており、また生ずべき遅延損害金は年額二五〇万円余りであることからして、被控訴人○○としても、従来有していた二口の債権のみを念頭において極度額を定めたものと解され、したがって同人が控訴人に対して新たな貸付を行うことは予定されていなかったものと認められるところ、原審における被控訴人○○本人尋問(第一回)の結果中、今後も控訴人に対して金を貸す予定はあったとする部分は、具体的な交渉がもたれたことについての証拠がないことに照らし、にわかに採用できないし、他に控訴人に対して新たな貸付を行うことが予定されていたことを窺わせる証拠は存しない。したがって、本件根抵当権設定契約は、前記二口の債権のみを担保する目的でなされたものということになるから、根抵当権設定契約ではなく、通常の抵当権の設定契約と解するほかない。」
そのために、登記された根抵当権は無効なものだと言っているのである。

このように、根抵当権設定時に、今後新規融資をする予定は全くないのに根抵当権を設定したような場合はこの判例の射程範囲に入るおそれがある。したがって、個人間の貸借などで、返済が遅れ遅れになっているような場合に根抵当権を利用すると、ややもすると無効となってしまうこともあるので注意が必要ということになろう。

なお、私の地元の金融機関では、住宅ローンについて根抵当権を設定する銀行があるが、住宅ローンの返済がすすんでいれば次にリフォームローンを貸し出すことも考えられるから、ストレートにこの判例があてはまるとは思えない。

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