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2012年3月15日 (木)

商法265条の規定による取締役会承認の日と登記原因日付

売買契約の後、商法第265条の規定による取締役会の承認がなされても登記原因日付は売買契約の日とする登記申請は受理される(静岡 昭和43年6月11日第232号局長回答)

もちろん、現在では会社法356条、同265条に読み替えることになるが、要するに、売買契約の日の後に利益相反取引の承認がなされた場合であっても、登記原因は売買契約の日でよろしい、ということである。

これに対し、次の先例を見てみたい。

 農地の売買契約は、農地法第3条第1項の許可書が売買当事者に到達した日に効力を生ずるから、その日を登記原因の日付とすべきである。この場合、登記原因を証する書面が初めから存在しないので、申請書副本を添付すれば足りる。
(昭35.10.6、民事甲第2,498号民事局長事務代理回答)

取締役会も農地法許可書も、いずれも不動産登記令7条5号ハの規定により登記申請書に添付することになるが、上記の違いはどこから来るのであろうか。

不動産登記令
(添付情報)
第七条  登記の申請をする場合には、次に掲げる情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。
五  権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる情報
ハ 登記原因について第三者の許可、同意又は承諾を要するときは、当該第三者が許可し、同意し、又は承諾したことを証する情報

Dsc_0203_2  まず、農地法の許可についてであるが、農地法の許可は実体法上の効力要件であると言われている。つまり、売買契約を締結していたとしても、売買契約の効力発生自体が農地法の許可によって生じるという考え方である。

それに対し、取締役会の承認のない状態で利益相反取引が行われた場合は、「相対的無効」と言われている。この場合は、利益相反取引の行為は無効であるが、第三者に対して、会社は、その者の悪意を証明するのでなければ無効を主張することができない、という意味で「相対的無効」と言われている。

たとえば、X会社の取締役がX会社所有の不動産を買い受けた。Y銀行は、取締役が所有することになった不動産に抵当権を設定した。この場合、X会社は取締役に対して売買契約の無効を主張することができるが、Y銀行に対してはY銀行の悪意を証明するのでなければ無効を主張することはできないということだ。

どうしてこのような複雑な考え方をするかは、取引の安全の見地から、第三者を保護しようということらしい。

さて、以上を理解して再度、静岡 昭和43年6月11日第232号局長回答を見てみよう。この例は、取締役会の承認により効力が発生したのではなく、「相対的無効」から「有効(追認?)」に転化したにすぎない。善意の第三者に対しては、あくまでも売買契約の日付で売買が行われたということになるのだから、そういう趣旨で出された回答であると思われる。

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コメント

農地法は許可がないと効力を生じない。とあるよね。
余談 5条届出しない限り許可必要であり、許可がないから生じていないはずだが、届出前の日で登記できるのはなぜだろうか。

投稿: みうら | 2012年3月15日 (木) 19時28分

はじめまして。
別件の調べ物をしていて、ここにたどり着きました。

みうらさんのコメントにある「届出前の日で登記できる」に該当するパターンが思い浮かびません。
自身でも調べてはみましたが、該当するものが見つからず、司法書士の先生に尋ねても「わからない」との回答でした。

古橋さんはなにか該当する登記をご存知でしょうか?

よろしくお願いします。

投稿: たなか | 2015年11月10日 (火) 10時48分

みうらさん、どうなんですか?

ちなみに、次の先例があります。

市街化区域内にある農地の転用のための権利移転等の登記の申請書の添付書面等【追Ⅴ126】
 市街化区域内の農地について、農地法第5条第1項第3号の規定による届出により、転用のための権利の設定又は移転をする場合の登記の申請書には、届出を証する書面として、知事の届出受理通知書を添付することを要する。
 なお、この場合の登記の申請書に記載すべき登記原因の日付は、届出が効力を生じた日以降の日でなければならない。
(昭44.8.29、民事甲第1,760号民事局第三課長通達、先例集追Ⅴ148頁、登研266号45頁〔解説付〕、月報25巻2号488頁)

投稿: 古橋清二 | 2015年11月10日 (火) 15時33分

ご回答ありがとうます。

やはり、届出前に登記できるという根拠は見つからないですよね。

ということで、許可証は原因日付に影響し、届出前の日付では登記できないという結論で終わらせようと思います。

また、みうらさんの回答を期待しつつ、ときどき覗かせてもらおうと思います。

ありがとうございました。

投稿: たなか | 2015年11月10日 (火) 16時16分

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