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2012年4月 4日 (水)

便宜上特別受益証明を利用して遺産分割した場合の特別受益証明書の効力

 当事務所ではほとんど利用したことがないが、遺産分割協議書を作成せずに共同相続人中の1人あるいは一部の者の所有名義に相続登記するために、他の相続人から特別受益証明書を提出させているケースをまま見かけることがある。
 また、相続の相談を受けていると、言われるままに特別受益証明書を記載して提出したが、実際には、特別受益は受けていないという相談を受けることもある。

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 これらのように、便宜上、特別受益証明書を作成した場合、実際には特別受益を受けていないときは、当該書面の効力はどうなるのだろうか。つまり、特別受益証明書の意味が過去の客観的事実の証明にすぎないという解釈をすると、その内容が虚偽であるのだから当然に相続分を失なうということはなく、分割請求ができることになる。一方、特別受益証明書を作成した趣旨が、相続分の事実上の放棄であったり、相続分を取得しないという分割協議であるということになると、特別受益という事実の有無かかわらず無効とはいえず、改めて遺産の分割請求をすることはできないことになる。

 判例は肯定した例の方が否定した例より多い。しかも、否定した例は、特別受益証明書を作成した経緯が、周囲の者の圧力があったとか、他の者が偽造したものであった、他からの侵害から守るために通謀的に行われたなど、民法の一般原則から見ても無効であったり取り消しうるようなケースが多い。
 そうすると、そのような無効・取消事由がない場合は、原則として有効と考えざるを得ない。

無効とした判例
・「証明書」に本人の署名・捺印があるが、これは単独で遺産を承継する相続人や他の周囲の者の圧力によって生じたもので、必ずしも本人の真意に基づくものとはいい難い(大阪高決昭40.4.22)。
・「証明書」への署名・捺印が他の共同相続人ないしは第三者の偽造文書であるとき(東京高判昭56.5.18)
・単独で遺産を承継する相続人名義にしたのは、遺産を他に売却し、もしくは他からの侵害から守るための方便に過ぎず、右相続人の単独所有に帰せしめる合意に基づくものではない(大阪家審昭40.6.28)。

有効とした判例
・相続分なきことの証明書による単独相続登記の方法が分割協議の便法として登記実務上多用されている現状を考えると、仮に右証明書の記載どおりの生前贈与がなくとも、相続人間に全遺産を一相続人の単独所有に帰せしめる旨の意思の合致があった以上、これにより実質的な遺産分割協議がなされ、その過程で遺産に対する共有持分権の放棄又は贈与がなされたとみ得るから「相続分なきことの証明」による単独相続登記を無効とする必要はない(福島家審昭53.8.16)
・持分権の贈与と解した事例(大阪高判昭49.8.5、京都地判昭45.10.5、大阪高判昭53.7.20)
・相続分不存在証明書及び印鑑登録証明書を交付したころまでに遺産を単独取得する旨の遺産分割協議が成立したものと認め、相続分不存在証明書は遺産分割協議に基づく登記手続上協議書の提出に代えてこれを用いたものと解した事例(東京高判昭59.9.25)

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