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2012年4月10日 (火)

複数の債権者の債務整理と司法書士の代理権

過払金返還請求訴訟の被告となった消費者金融業者が、本案前の答弁として、原告訴訟代理人司法書士は原告のほか複数の債権者の債務整理をしているのだから、代理連の範囲としては全債権者の債権総額を合算して140万円を超えているか否かを判断すべきであり、原告訴訟代理人は代理権がないとして、訴訟の却下を求めた。この事件は、当事務所で研修を受けた司法書士が原告訴訟代理人となっており、僕としてはしっかり支援していきたい。

被告の主張は、総額で司法書士法3条1項7号規定の範囲を超える債務整理の受任は司法書士法・弁護士法違反であり、原告訴訟代理人は原告から総額で司法書士法3条1項7号規定の範囲を超える債務整理を受任していると推認されるから司法書士法・弁護士法違反であり同条1項6号イの規定により本件訴訟を原告訴訟代理人が遂行することも司法書士法・弁護士法違反であると主張しているようである。

しかしながら、被告の主張は何ら法的根拠のないものである。
認定司法書士は、業として、「訴訟の目的の価額」が140万円を超えない簡易裁判所における民事訴訟手続について代理することができる(司法書士法3条2項、同条1項6号イ)。また、認定司法書士は、業として、「紛争の目的の価額」が140万円を超えない民事に関する紛争について、相談に応じ、裁判外の和解について代理することができる(司法書士法3条2項、同条1項7号)。

この「訴訟の目的の価額」は「訴えで主張する利益」(民事訴訟法8条)をいい、原告として全部勝訴の判決を受けたとすればその判決によって直接受ける利益を客観的かつ金銭的に評価して得られる額である。

また、司法書士法が、認定司法書士に民事訴訟の代理だけでなく、民事紛争の相談に応じることや裁判外の和解の代理まで許容したのは、これらが訴訟の前段階で行われる手続であるところ、認定司法書士が訴訟で代理できる紛争においては、その前段階の手続についても、代理するのが便宜であるためである。
したがって、上記の「紛争の目的の価額」とは、当該民事紛争において裁判外の和解が成立しなかった場合に、相談を受けた認定司法書士が「通常想定する訴訟」における「訴えで主張する利益」と解することになる。

被告の主張する根拠は不明なところが多いが、推測するに、多重債務者の債務整理事件に関する相談は司法書士法3条1項7号の業務であり、複数の債権債務を抱える相談者の相談は、その総額が140万円を超えるかどうかで認定司法書士の代理権を判断すべきであり、同条1項6号イの代理権の有無も上記当該判断基準をもって決するべき、というようなものであろう。

しかし、相談者が複数の債権者に対し債務を負担していたり過払金返還請求権を有している場合、債務不存在確認訴訟ごと、過払金請求訴訟ごと等、複数の当事者に対して一つの訴えを併合提起することが不可能なわけではないが、個々の債務ごとに訴えを提起するのが基本であり、民事訴訟法38条後段の場合に、訴訟経済を考慮して訴えを併合提起することができるにすぎない。

したがって、「通常想定する訴訟」は、個々の相談者の債務ごとに考えるべきである。
このように、訴訟の前段階で行われる手続の「紛争の目的の価額」は個々の債務ごとに定まるものであり、相談者の複数の債権者等の債権債務の総額で定まるものではなく、被告の主張は失当である。

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コメント

1つの調停などで複数の債権者を相手にする場合は合算ですか。
調停の併合がされた場合はどうですか。

投稿: みうら | 2012年4月10日 (火) 21時10分

1つの調停などで複数の債権者を相手にする場合は合算でしょうね。ただ、「通常想定される訴訟」は債権者ごとの別個の手続でしょうね。
調停の併合がされた場合も合算ですね。ただ、裁判外の和解業務においては「併合」という概念自体発生しないと思います。

投稿: 古橋清二 | 2012年4月11日 (水) 07時56分

裁判外で譲渡人と譲受人に半額づつ請求するとかありませんでしょうか。

投稿: みうら | 2012年4月11日 (水) 18時59分

半額ずつということではなく、それぞれに対しそれぞれの過払いを請求するということはありますね。そのような場合は訴訟を提起する場合も主観的に併合して両社を共同被告にすることが多いと思います。その場合は合算ですね。

投稿: 古橋清二 | 2012年4月12日 (木) 07時35分

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