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2012年5月29日 (火)

最判平成16年6月8日はなぜ司法書士の不法行為責任を認めたか(公売又は競売による所有権移転登記後、真正なる登記名義の回復を原因として所有権移転登記ができるかの論点を含め)

真正なる登記名義の回復登記(登研367号)
 問 税務署の公売又は裁判所の競落を登記原因として所有権移転の登記がしてある物件について、真正なる登記名義の回復を登記原因として所有権移転の登記の申請は、できないと考えますがいかがでしょうか。
 答 御意見のとおりと考えます。
 なお、判決による場合は差し支えないものと考えます。

公売や競売は公法上の処分であり、真実に所有権を取得した者に所有権移転登記がなされるので、公売又は競売による所有権移転登記後、当該登記名義人を義務者として真正なる登記名義の回復を原因として所有権移転登記をすることはでできないという趣旨であると思われる。

これに対し、市町村が所有する財産を払い下げによって売り払う行為は行政処分ではなく私法上の売買と解すべきである(最判裁昭和35年7月12日 論旨は要するに、物納土地の払下は行政処分である旨を主張するのであるが、国有普通財産の払下を私法上の売買と解すべきことは原判決の説明するとおりであつて、右払下が売渡申請書の提出、これに対する払下許可の形式をとつているからといつて、右払下行為の法律上の性質に影響を及ぼすものではない。」

そうすると、払い下げによって所有権移転の登記がしてある物件について、真正なる登記名義の回復を登記原因として所有権移転がなされることはあり得ることだと考えられる。

端的に言って、「払下」によって所有権移転された不動産が「真正な登記名義の回復」を原因としてさらに所有権移転しているのが不自然と判断したところの判断ミスである。もっとも、一般に、司法書士が「払下」が行政処分ではなく私法上の契約であるということを理解しているかといえば、そうではないと考えられるが、「不自然」と感じた以上、専門職としては、慎重に調べるべきであったという落ち度があるであろう。

 そして、決済当日に、事前の予告もなく「本件土地については、その実体的所有関係を確定することができず、本件売買契約によって本件土地の所有権が移るとは限らないという問題があるので本件嘱託を受けることはできない」と依頼を拒否しているが、決済当日にそのような発言を突然すれば事態が混乱することは目に見えている。判断ミスがあったとしても、もっと事前に依頼を拒否していれば、依頼者としても他の司法書士に依頼するなどの対策を講ずることができたのであるから、判断ミスに加え、司法書士の対応にも問題があったと考えられる。

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 なお、司法書士法施行規則27条1項は、「司法書士は、依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く。)を拒んだ場合において、依頼者の請求があるときは、その理由書を交付しなければならない。 」としている。

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コメント

甲所有建物を乙所有建物だとして競売しても甲の所有権はなんらの影響を受けないから、真正な登記名義の回復を求めることが可能です。
公売の場合は代金返還の前提として抹消が必要なので問題ですが。
金融法務事情5.25号74ページに電子記録債権の差し押さえが掲載されましたよ。

投稿: みうら | 2012年5月29日 (火) 19時00分

国有地だとして登記されていたから払い下げたけれど、実は民有地だったら、その人の所有権はなんら影響を受けないから、真正な登記名義の回復を求められる。

投稿: みうら | 2012年5月29日 (火) 19時22分

金融法務事情見てみますね。

投稿: 古橋清二 | 2012年5月30日 (水) 07時40分

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