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2012年5月 2日 (水)

長男Aに全ての財産を相続させる旨の遺言の予防法務

昨日は、遺産額が少ないからといって相続紛争が少ないとは限らないこと、その原因は、自宅のように、事実上分割できない財産が主な財産であることなどを学習した。

では、こうした現状を踏まえて、遺言者、妻は既に死亡、子供3人(A、B、C)、相続財産は自宅(本人と長男が居住。価額2000万円)、預金100万円のケースで、紛争予防の観点から、次の遺言の問題点はどのようなところにあるのか。

遺言書

財産のすべてを長男Aに相続させる。

平成○年○月○日
           ●●●● 印

 当然ながら、B、Cは遺留分を請求してくる可能性がある。それぞれの遺留分は350万円であり、相続財産のうち預金は100万円であるから、Aが自宅を自己名義にしたければ、自己の預貯金から代償金を支出するなどして話し合いをしなければならなくなる。
 いずれにしても、BCが遺留分を請求すると、Aは700万円(相続財産である預金100万円を使えば残り600万円)の出費を余儀なくされる。どうせそういうことになるのであれば、遺言者も、もう少し考えた方がよさそうだ。

 次に、この遺言を見たBCはどう思うだろうか。財産の分け前はともかく、父の遺言書に自分の名前が出てこない寂しさをどれほどのものだろうか。BCに対して感謝の気持ちを伝えてはどうだろうか。

 さらに、なぜ「長男Aに相続させる」ことにしたのか、遺言の中でその理由も説明して欲しいところだ。その理由が納得できれば紛争にはならない。

 また、長男は家賃もローンもなく自宅に暮らしてきた一方、BやCは家賃やローンを支払っているかもしれない。遺言者は、そのあたりも考えてあげた方がいいかもしれない。

Dsc_0235

そうすると、こんな遺言になるかもしれない。

遺言書

財産のすべてを長男Aに相続させる。

付言事項
 最後に伝えておきたいことがあります。
 私が現在持っている財産は、自宅の土地と建物、○○銀行の預金100万円程度です。本当は、ABC3人に均等に分けてあげたいのですが、自宅を3つにわけることもできません。

 さいわい、長男Aが家業を継いでくれていますので、家業のためにも必要な自宅は長男Aに相続させることにしました。また、私の葬儀やお祀りごとにもいろいろとお金がかかると思いますので、わずかな預金ですが、これも長男Aに相続させることにしました。

 Aには全ての財産を相続させることにしましたが、BやCがそれぞれ住宅ローンを払っていたり家賃を支払っていたりしていることを考えれば、金銭的には余裕があるかもしれません。しかし、亡くなったお母さんの介護に続き、私の老後の世話を見てくれて、大変助かっています。一口に介護と言っても、毎日毎日、昼も夜もなく面倒をみてくれました。この苦労は、実際に経験した者でなければわからないと思います。BもCも、そのあたりは理解してあげてください。

 Bは若くして結婚し、私も心配で心配でなりませんでしたが、今では子供3人を立派に育て上げ、頼りがいのある母親になりましたね。何も遺してあげることはできませんが、亡くなったお母さんの着物と指輪などが和箪笥にたくさんありますので、形見分けとして気に入ったものを貰ってください。

 Cは、小さい頃は本当におとなしい子でしたので、まさか、会社を辞めて自分で商売を始めるとは思いませんでした。特に、生き馬の目を抜くような厳しい業界だと聞いていますが、何か困ったときは、必ずお兄さんに相談しなさい。きっと、力になってくれると思います。
 Cにも何も遺してあげることはできませんが、私が結婚した時にお母さんに買ってもらった腕時計を形見分けにもらってください。手動式で、時間も時々狂いますが、そんなところが私に似ていると思って使ってもらえると大変嬉しく思います。
みなさんには本当に感謝しています。これまで、いろいろなことがありましたが、しあわせな人生をおくることができました。
本当にありがとう。

平成○年○月○日
           ●●●● 印

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コメント

24.4.27民2-1106根抵当権の範囲に電子記録債権と記載できる。

投稿: みうら | 2012年5月 3日 (木) 19時08分

みうらさん、情報早いですね。

投稿: 古橋清二 | 2012年5月 7日 (月) 07時53分

裁判で無効になるリスクがありますよね。

投稿: みうら | 2012年5月 7日 (月) 19時09分

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