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2012年6月

2012年6月29日 (金)

取締役会を廃止する際、定款で取締役の決定により、代表取締役を選定する互選規定を設けた場合の代表取締役の地位(野々垣バージョン)

取締役会設置会社で、取締役A、B、C、代表取締役Aというケースにおいて、取締役会を廃止し、代表取締役の選定を「取締役の互選による」と定款に定めた場合、A,B,Cの代表権はどうなるか?

結論:取締役の退任事由に該当せず、A,B、Cの取締役たる地位が潜在的各自代表権を持った取締役たる地位に変質する。

Dsc_0245 登記実務では、一種の組織変更と捉え、改めて定款の定めに基づき代表取締役を選定する必要があるとしているが、Aが引き続き代表取締役となる場合、登記申請としては、「取締役会廃止」の登記を行うことで足りるとしている。
 もちろん、司法書士としては、代表取締役が選定されたことを証する取締役の互選書を確認する必要がある。

 ここで、上記ケースに役員改選が絡むと、もちろん、取締役、代表取締役の改選に関する登記が絡んでくる。役員変更登記を一つをとっても、登記実務は奥が深い。

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2012年6月28日 (木)

他に相続人がいない場合の証明方法

1 除籍簿廃棄のため、これにより相続関係の証明が不能の場合、その旨の市区町村長の証明書と過去帳に基づき、当該相続人が死亡し、かつ、その者に子がなかつたことを認定することができる寺の証明書があれば、相続人の証明書の提出を要しない。
2 相続人において他に相続人がいないことを証明する場合には、相続人全員によるその旨の証明書(印鑑証明書付)の提出を要する。
(昭55.2.14、民三第867号民事局第三課長回答)

 戸籍が廃棄されていたり戦災で消失している場合など、相続人を確定できる戸籍謄本を全て揃えられない場合、上記の通達にしたがって、相続人全員から「他に相続人はいない」旨の証明書(印鑑証明書付)を添付して相続登記を申請する旨の実務が行われている。しかし、数次相続や再転相続のような場合などに、例えば、被相続人の20歳以前の戸籍謄本を取得することができないが、相続人がその当時出生しておらず、とても「被相続人には他に相続人がいない」旨の証明を書くことができない、というような事態が起こりうる。

名古屋地裁平成22年1月21日判決は、相続人17名のうち、「他に相続人はない」旨の証明書が相続人の一部からしか提出されておらず、登記申請を却下した処分を適法と判断した。

原告は、相続人全員にその証明を求めると、「そんな昔の事情は知らないから証明書は書けない」とか、一定の金銭の支払いを要求されるきっかけになる、というような理由で、一部の者からの証明を提出し、残りの者については証明書をあればいいのではないか、という主張をしていたようである。しかし、裁判所は、本件登記に関して原告から提供された登記原因証明情報では、他に相続人がいない事実を証明したことにならないから、却下は適法であると判断した。

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ちなみに、判決の中では、この証明書の性質について、「事柄の性質上、当該申述書は、申述者において「他に相続人はない」という事実を確定的に認識した上で作成するまでの必要はなく、申述者の認識が「他に相続人がいるという事実を認識していない」という限度にとどまるものであつても足りる」と判示している。それならば、今後は、証明書の文言もそのように変えていく方向で考えることにしたい。

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2012年6月27日 (水)

貸金庫内の動産を差し押さえる方法

「貸金庫に遺言書をしまっておいてはいけない」という記事を書いている過程で、おもしろい判例を見つけた。

仮に、依頼者が債権者の立場にあるとして、債務者が契約している銀行内の貸金庫内にあるものを差し押さえて債権回収したいと考えた場合、どのように考えるか。
まず考えるのは、動産執行であろう。しかし、以前は、銀行には動産の占有権限がないと考えられていたため、銀行に貸金庫を開けることを拒否され(通常、銀行と貸金庫利用者の両方の鍵がないと貸金庫は開けられない)、その結果、強制執行は困難な状況にあった。

しかし、最高裁平成11年11月29日は、貸金庫の内容物については、貸金庫利用者と銀行の双方が占有権を有するとして、銀行は強制執行を拒否することができないと判断した(現在、銀行の現実の取扱いがどうなっているかは知らない)。

さて、本件の場合、着目したいのは、債権者のとった手法が動産執行ではなく債権執行だったということだ。債権者は、銀行を第三債務者として、債務者が銀行に対して有する貸金庫内容物の引き渡し請求権を差し押さえたのだ。

通常、債権執行をするためには、執行の対象となる債権を特定しなければならない。したがって、仮に貸金庫の中に宝石が入っているのであれば、どんな宝石であるのかを特定したうえで引渡請求権を特定する必要がある。しかし、貸金庫に何が入っているのかは、通常はわからない。
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しかし、この判例では、銀行は、貸金庫契約の定めるところにより、利用者が内容物を取り出すことのできる状態にするよう請求する利用者の権利は、内容物の引渡しを求める権利にほかならないとした上で、「この引渡請求権は、貸金庫の内容物全体を一括して引き渡すことを請求する権利という性質を有するものというべきである。」とした。つまり、貸金庫利用者は、1個1個の動産の引渡請求権ではなく、包括して引き渡せという1個の請求権が存在していると認定した。そのため、内容物を特定しなくても債権執行が可能であると判示した。

この判例では、貸金庫利用者と銀行の双方が占有権を有するとして銀行は強制執行を拒否することができないとしているところから、動産執行もできるのではないかと思われるが、この事案のおもしろいところは、動産を換価する手法として、動産そのものではなく、動産の引き渡し請求権を執行対象としているところだ。

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2012年6月26日 (火)

取締役の任期短縮と登記の方法

取締役の任期を短縮する場合、どのように登記をするか。
例えば、任期を「選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時」から「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時」に変更する場合を考えてみたい。

まず、総会の議案の順序としては、定款変更議案を審議し、現任取締役が選任後2年以上経過しているのであれば、その次に取締役選任議案を審議することになるだろう。なお、現任取締役が選任後1年しか経過していない場合は、定款変更決議が承認されたとしても総会時点では取締役の任期は到来しないから取締役選任議案を上程する必要はない。一方、現任取締役が選任後2年以上経過している場合は、定款変更によって現任取締役の任期が到来することになるから取締役選任議案を上程する必要がある。

さて、現任取締役選任後2年が経過している場合は、その前の議案で変更された任期が現任取締役に適用されることから、現任取締役の任期は、本総会終結の時をもって満了する。一方、現任取締役選任後2年超、例えば5年が経過している場合は、その前の議案で変更された任期が現任取締役に適用されると、定款変更議案が可決された瞬間に任期満了になる。
そのため、厳密に考えると、前者の場合は「重任」、後者の場合は「退任+就任」となるとも言える。

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もっとも、そこまで厳格に考える必要があるかは疑問である。つまり、後者の場合であっても、株主総会の意思としては「重任」として選任するのが通常であると考えられる。

このような解釈の相違を避けるためには、変更定款に付則をもうけて現任取締役の任期については本総会終結の時までとするというような定めを設ける方法が考えられる。

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2012年6月25日 (月)

剰余金の配当を取締役会の権限とする場合の取締役の任期

近年、取締役の任期を「選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日」に変更する上場会社が増えている。これは、もちろん、1年で信任されるという緊張感を取締役に持ってもらうという意味が大きいのだろうが、当該変更をすることによって、別の意味で柔軟な企業経営をすることができることになる。条文は、会社法459条。

第四百五十九条  会計監査人設置会社(取締役の任期の末日が選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるもの及び監査役設置会社であって監査役会設置会社でないものを除く。)は、次に掲げる事項を取締役会(第二号に掲げる事項については第四百三十六条第三項の取締役会に限る。)が定めることができる旨を定款で定めることができる。
一  第百六十条第一項の規定による決定をする場合以外の場合における第百五十六条第一項各号に掲げる事項
二  第四百四十九条第一項第二号に該当する場合における第四百四十八条第一項第一号及び第三号に掲げる事項
三  第四百五十二条後段の事項
四  第四百五十四条第一項各号及び同条第四項各号に掲げる事項。ただし、配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して金銭分配請求権を与えないこととする場合を除く。

つまり、会計監査人設置会社であり、監査役会設置会社(解釈上、監査役会設置会社でなくても委員会設置会社であればよいと思われる)であって、取締役の任期の末日が選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日までの間に終了する定めのある会社は、自己株式の有償取得、準備金による欠損処理、剰余金を構成する各科目間の変更、剰余金の配当については取締役会で定めることができる。

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株主としては、毎年取締役の選任をすることになるので、お手盛りでこれらの決議をしている場合には次期は選任しないという選択もできるわけだ。

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2012年6月22日 (金)

民法501条1号の「あらかじめ」の意味(野々垣バージョン)

第五百一条  前二条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。この場合においては、次の各号の定めるところに従わなければならない。
一  保証人は、あらかじめ先取特権、不動産質権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、その先取特権、不動産質権又は抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない。
二  第三取得者は、保証人に対して債権者に代位しない。
三  第三取得者の一人は、各不動産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
四  物上保証人の一人は、各財産の価格に応じて、他の物上保証人に対して債権者に代位する。
五  保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
六  前号の場合において、その財産が不動産であるときは、第一号の規定を準用する。

同法1号に記載された「あらかじめ」の時期について、最判昭和41年11月18日判決は、代位弁済後、第三取得者の取得前に、担保権の代位の付記登記を要求することによって、代位弁済者は、第三取得者に対抗することが出来ることを示している。
この規定は、第三取得者が、代位弁済者の代位権行使の有無を確知するためであると言われている。
翻って考えると、第三取得者の取得後、代位弁済する場合の代位弁済者は、同号による付記登記を要しないことになる。

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 そういえば、以前、代位弁済を原因とする抵当権移転登記の付記の前提として、年月日保証を原因とする抵当権移転の仮登記が、代位弁済者から登記されていたことを思い出した。
 その当時、なぜ、この仮登記がされたのか意味がよく理解できなかったが、この判例を読み、代位弁済者が代位弁済後、第三取得者が出現した場合に備え、「あらかじめ」、順位保全効として対抗要件具備の為に仮登記をしていたことを理解できた。

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2012年6月21日 (木)

事実実験公正証書

事実実験公正証書とは、公証人が、直接見聞・体験した事実を基に作成された公正証書をいい、権利義務や地位に関係する重要な事実について、公証人が実験、すなわち五官の作用で認識し、その結果を記述する公正証書である。

事実実験公正証書は多くは、銀行の貸金庫の開庫に際して作成されるらしい。つまり、相続人が貸金庫を開ける際、後日になって、内容物の認識が相続人によって異なってしまうことを防止するために、公証人が立会って、その場の状況、中身の明細など目撃した事実を記録した公正証書を作成するという使われ方が多いようだ。

そのほか、特許関係の発明や使用の先後関係を証明する物品や書類・記録などの存在を明確にしたり、建物の原状回復に問題があるという場合などに、その現況がどうなっているかを公証人が現地におもむき確認した結果などを公正証書として作成するという使われ方もあるらしい。

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一種の証拠保全方法として知っておくとよい。

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2012年6月20日 (水)

監査役の権限の見分け方

 株式会社の監査役は、原則として、会計に関する監査権限と取締役の業務執行に関する監査権限とを有している。しかし、非公開会社の場合、定款で、監査役の権限を会計に関する権限に限定することができる。このような監査役を俗に「限定監査役」と呼んでいるが、限定監査役である旨は登記簿には記載されない。

 限定監査役は、原則として取締役会への出席義務がないが、限定監査役であるかを判断する一助として、次の知識を有している必要がある。

 会社法施行時の整備法では、資本金1億円以下の旧小会社の監査役の権限については「旧株式会社がこの法律の施行の際現に旧商法特例法第一条の二第二項に規定する小会社(以下「旧小会社」という。)である場合又は第六十六条第一項後段に規定する株式会社が旧商法特例法の適用があるとするならば旧小会社に該当する場合における新株式会社の定款には、会社法第三百八十九条第一項の規定による定めがあるものとみなす」旨の経過規定が設けられている。

 したがって、会社法施行時に資本金1億円以下の会社の監査役は、原則として限定監査役である。しかし、会社法389①の規定による定めは公開会社でない株式会社においてのみ置くことのできるものであることから、旧小会社のうち公開会社に相当する会社についてはこの経過規定は適用されず、会社法施行によって通常の権限の監査役を置く会社とみなされる。

 ちなみに、公開会社である旧小会社は、法施行と同時に監査役の権限が職務執行監査権限に拡大するため、既存の監査役の任期は会社法の施行と同時に満了することとなり、実際にそのような処理をした。

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整理すると、次のとおり。

旧株式会社            旧権限            新株式会社  整備法
非公開会社  小      会計監査          非公開会社 会計監査
非公開会社  中大   会計・業務監査  非公開会社  職務監査
公開会社     小      会計監査          公開会社      -(職務監査)
公開会社    中大    会計・業務監査  公開会社      -

もっとも、会社法施行後に定款変更している会社は現在の定款を見て判断することは言うまでもない。

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2012年6月19日 (火)

監査役は株主総会に出席する義務はあるか

先日、次のような相談を受けた。
株主総会に監査役が出席できないため、事務局が監査結果を報告した。ところが、当該議事録を作成したところ、「監査役の監査の範囲を会計監査に限定している場合は、株主総会に書類等の調査の結果を報告しなければならない。したがって、法務局で「監査役の報告事項の記載がない。」と指摘を受け、補正になる可能性がある」と指摘された。この指摘は本当でしょうか。

というものである。

この点について、条文は次のとおりとなっている。

(株主総会に対する報告義務)
第三百八十四条  監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものを調査しなければならない。この場合において、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を株主総会に報告しなければならない。

つまり、監査役が総会に報告しなければならないのは、「株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものが法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるとき」に限られている。また、限定監査役の場合には384条は適用除外されていますので(389条7項)、384条の調査義務及び報告義務もない。そういう意味からすると、監査役が株主総会に欠席していても瑕疵はない。

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一方、監査役には説明義務があるので(会社法314)、質問に備えて総会に出席するのがベターと言うことはできるが、これは、瑕疵の問題ではない。

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2012年6月18日 (月)

遺言書を貸金庫で保管するとどういうことになるか

貸金庫の契約とは、貸金庫の利用者が手数料を支払って金庫を借りるという賃貸借契約であると言われている。したがって、賃借人の地位は相続人に承継される。そのため、貸金庫契約を解約するためには、相続人全員の合意が必要となる。実際には、金融機関では、原則として相続人全員の合意により解約手続を行っているようだ。

そうすると、貸金庫の中に遺言書を保管しておくと、相続人全員が貸金庫の解約を合意して、貸金庫を開けて、はじめて遺言書を発見することになる。そもそも、相続人間のトラブルを防止したり、一部の相続人を厚遇したいために作成される遺言であるが、その遺言が、相続人全員の合意がなければ開けられないというのは皮肉だ。したがって、特に、自筆証書遺言は、貸金庫に保管してはならないということになる。

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2012年6月15日 (金)

民法改正 ~金銭債務の特則についての議論~(野々垣バージョン)

民法419条3項は、金銭債務を不可抗力をもって抗弁とすることができない旨定めている。

(金銭債務の特則)
第四百十九条  金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2  前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3  第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

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しかし、金銭債務についてだけ免責を認めないのはいかがか、という議論があり、民法改正のうえでも議論されている。これに関連して、「利息超過損害の賠償」という考え方がある。つまり、法定等の利息を超えた損害についても賠償すべきという考え方だ(賛成意見は少ないようだ)。

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2012年6月14日 (木)

再転相続人が第1の相続について承認又は放棄をすることができない場合とはどんな場合か

再転相続人は、第1の相続に関する承認、放棄等の選択を第2の相続によりも先に行うときには、第1の相続、第2の相続のいずれも承認又は放棄をすることができる。

最判昭和63年6月21日
「甲の相続につきその法定相続人である乙が承認又は放棄をしないで死亡した場合において、乙の法定相続人である丙が乙の相続につき放棄をしていないときは、甲の相続につき放棄をすることができ、また、その後に丙が乙の相続につき放棄をしても、丙が先に再転相続人たる地位に基づいて甲の相続につきした放棄の効力がさかのぼって無効になることはないものと解するのが相当である。」

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一方、第2の相続に関する選択を先にするときは、承認をした場合のみ第1の相続についての選択をすることができ、第2の相続について放棄をした場合には、それによって第1の相続についての選択権を失うこととなり、もはや第1の相続について承認又は放棄をすることができない。

以上を前提として、「登記研究」771号の「カウンター相談」を読んでみよう。

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2012年6月13日 (水)

預金口座名義人が死亡した場合、公共料金の自動引き落としはどうなるか

公共料金の自動引き落としは預金者と金融機関との間の委任契約と考えられる。
そうすると、委任者である預金者が死亡したことにより委任契約は終了するため、金融機関が預金者の死亡を知った以上、公共料金と雖も自動引き落としは停止されるべきである。もっとも、実際には、公共料金の引き落としを止めると遺族の生活に支障をきたすことも考えられるので、金融機関は柔軟に対応しているという話も聞く。

(委任の終了事由)
第六百五十三条  委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一  委任者又は受任者の死亡
二  委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
三  受任者が後見開始の審判を受けたこと。

住宅ローンなどのローンの引き落としについては、委任契約という考え方と、ローン契約に附帯した特約という考え方があるらしい。特約という考え方をすると、自動引落が継続することになる。

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いずれにしても、相続放棄を検討する場合などは、単純承認と解釈されることを避けるために、これらの自動引き落としがなされないように配慮する必要がある。

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2012年6月12日 (火)

外国人を住民票に登録する新制度と実務上の注意点

出入国管理及び難民認定法が改正され、新しい在留管理制度がスタートする。
新しい在留管理制度は,外国人の適正な在留の確保に資するため,法務大臣が,我が国に在留資格をもって中長期間在留する外国人を対象として,その在留状況を継続的に把握する制度と言われている。この制度の対象者には,氏名等の基本的身分事項や在留資格,在留期間が記載され,顔写真が貼付された在留カードが交付される。

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また,新しい在留管理制度の導入に伴って外国人登録制度は、平成24年7月9日から廃止となり、外国人住民の方も住民票に登録される新制度が開始される。

さて、司法書士の実務としていくつかの注意が必要である。

まず、本人確認については「顔写真が貼付された在留カード」で行うことが多くなるであろう。

問題は、住所変更登記などに必要な住所の変遷の調査である。
 新制度の開始に伴い、外国人登録の情報を記載してある「外国人登録原票」は区から国へ送付することになっている。そのため、登録原票記載事項証明書は交付されなくなる。
 一方、住民票に登録された外国人住民の方は、住所・氏名・性別・生年月日等を公証する住民票の写しの交付を受けることができるが、住民票の写しには、平成24年7月6日以前の居住歴、氏名・国籍の変更履歴、父母や配偶者の氏名、上陸許可年月日などは記載されない。
 そこで、平成24年7月9日以降は、それ以前の居住歴、氏名の変更履歴についての情報が必要な場合には、本人が直接法務省に開示請求しなければならなくなる。
 《開示請求の窓口》
 法務省大臣官房秘書課 個人情報保護係
 電話:03-3580-4111

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2012年6月11日 (月)

AB共有の不動産につき、同一日にAが甲に対し売渡証書を作成して売り渡し、Bが乙に対して売渡証書を作成して売り渡した場合、登記権利者を甲乙、義務者をABとして登記申請できるか

いわゆる一括申請について、不動産登記令では次のように定めている。

第四条  申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。

本件の場合、登記の原因は両方とも形式的には「年月日売買」であるが、実質的には「年月日Aと甲の売買」、「年月日Bと乙の売買」であるため、登記原因が同一とは言えないと思われる。また、登記の目的も「A持分全部移転」、「B持分全部移転」である、そのため、不動産登記令4条に照らす限り、一括申請はできないと思われる。

もっとも、上記のように不動産登記令4条に照らすと一括申請はできないと思われる事例について、先例は一括申請を認めていることが多いため、先例に照らして今一度判断する必要がある。

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昭39.9.4、民事甲第2,914号民事局長回答
 甲乙共有の不動産についての所有権移転請求権の仮登記または賃借権設定の仮登記は、甲または乙の持分につき第三者の権利に関する登記(処分の制限の登記及び予告登記を含む。)が存しない場合に限り、1個の登記として申請してさしつかえない。
※所有権移転に関する契約、賃借権設定の契約の個数がそれぞれ1個という前提で出された先例だと思われる。

昭42.10.30、民事三発第655号民事局第三課長回答
共有不動産上の各共有者の持分の全部又は一部が同一の契約により数人に移転した場合の登記の申請は、同一の申請書ですることができる。
※これも、所有権移転に関する契約が同一の契約であるから首肯できる。

登研437号
問 甲が4分の1、乙が4分の1、丙が4分の2を共有している物件につき、乙が持分全部を、丙が持分4分の1を甲に移転する場合、次の例のいずれによるべきか。
(1) 登記の目的
   乙持分全部移転
   丙持分一部移転
(2) 登記の目的
   乙持分四分の一移転
   丙持分四分の一移転
(3) 右記の例では一括申請できないので、2件に分けて申請する。
答 登記の目的を、「乙持分全部、丙持分四分の壱移転」として、一括申請できるものと考えます。
※これも、所有権移転に関する契約が同一の契約であるという前提であろう。

登研408号
問 甲・乙2名共有の不動産について、甲から第三者である5名の者へ、その持分全部を同日付けをもって各人ごとに売り渡しそれぞれ売渡証を作成した場合には、その売渡証を全部添付して持分全部移転の登記を同一申請書で申請することができるでしょうか。もしできるとした場合、同一受付番号の登記済証が5通作成されることとなりますがよろしいでしょうか。
答 前段 同一申請書により申請できるものと考えます。
後段 前段の場合の登記済証は、各個の当該契約書を合綴した上、1つの登記済証が作成されるものと考えます。
※これは、契約は5つ存在していても一括申請を認めている。もっとも、標題の事例と異なるのは、義務者が同一人であるということ。

登研342号
問 売買日付、売主、買主が同一である不動産売渡証書2通(一方はA物件のみ、他方はB物件のみ表示されている。)を登記原因証書とする所有権移転登記を、1件の申請書で一括申請することが可能であると考えますが、いかがでしょうか。
答 御意見のとおりと考えます。
※これも、異なる売買契約であるにもかかわらず、一括申請を認めている。

以上を見ると、本件においても一括申請を認めてもよいという意見があってもいいのではないかと思われる。

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2012年6月 8日 (金)

単純承認後の相続放棄 高松高裁 平成20年3月5日決定

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない(民法915条第1項本文)

 この3ヶ月の熟慮期間の起算点は、相続人が相続開始の原因たる事実及びこれにより、自己が相続人となったことを自覚した時からであり、一度、単純又は限定承認した後に相続放棄することは認められないのが原則である。

 標記判例は、熟慮期間内に、相続人が単純承認した後であっても、遺産の構成に重要な錯誤があった場合、錯誤に陥っていることを認識した後、改めて民法915条の1項の所定の期間内に、錯誤を理由として単純承認の効果を否定して限定承認又は放棄の申述受理の申立をすることができると判示している。

概要は以下の通りである。

1 前提事実
 被相続人
 相続人C(被相続人の妻)
 相続人 抗告人(相続放棄申述人、被相続人の長男)
 相続人D(被相続人の次男、跡取りで被相続人の遺産を引き継ぐ予定)

2 事実 
(1)被相続人死亡後間もない、平成18年6月頃、Dは、被相続人が生前出資、貯金、共済に加入するなど取引きしていた金融機関を訪れ、被相続人の債務を存否を尋ねたところ、債務はないとの回答を得た。
(2)そこで、C、D、抗告人は、当該金融機関の貯金解約、出資払い戻しの手続とともに、共済契約の名義人をCにする変更手続を行った。
(3)しかしながら、被相続人は、平成3年ないし平成8年頃、当該金融機関を貸主とする3口の消費貸借契約(元金合計3億円)につき連帯保証人となっていた(うち一億円については連帯債務者)。
(4)このうち、被相続人が連帯債務者となっている1億円の貸付の担保不動産を競売することになり、C、D、抗告人は被相続人の債務の存在を初めて知った。
(5)これにより、抗告人は、平成19年11月頃、相続放棄の申述受理の申立をした。

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3 判旨
 Dは被相続人死亡後、当該金融機関を訪れて被相続人の当該金融機関に対する債務の存在を尋ね、同債務は存在しない旨の回答を得、そこで、抗告人らは、当該金融機関における被相続人名義の普通貯金の解約や出資証券の払戻しの手続を執るなどしたものであるが、それは抗告人らにおいて、同債務が存在しないものと信じたことによるものであり、それゆえに、抗告人らは被相続人死亡時から3ヶ月以内に限定承認又は放棄の申述受理の申立をすることもなかったものと認められるれ、抗告人は,錯誤を理由として上記財産処分及び熟慮期間経過による法定単純承認の効果を否定して改めて相続放棄の申述受理の申立てをすることができるというべきである。

 被相続人の死亡後、単純承認してしまって、その後、被相続人に債務があることがわかったという相談は少なからずある。このような場合、依頼者の利益のために事実関係をしっかりと調査して、相続放棄が申述できるかを確認することが重要である。 

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2012年6月 7日 (木)

遺言執行者がある場合の相続させる旨の遺言による所有権移転登記の申請人

相続させる旨の遺言が効力を生じた場合、遺言執行者が選任されていたとしても、当該登記は相続人が単独で登記申請をすることができるので、遺言執行者には登記をする権限も義務もないとするのが判例である(最判平成7年1月24日)。
その理由は、相続開始と同時に相続人は遺言された不動産の所有権を取得しているので、遺言執行者が遺言を執行する余地がない、とするものである。

一方、相続人の一部が遺言と異なる登記をした事案(遺言が複数あり、撤回された遺言によつて登記がされた事案)において、遺言どおりの登記を実現することは遺言執行者の職務権限に属するという解釈も示されている(最判平成11年12月16日)。

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これら整理すると次のようになる。

相続不動産の名義が被相続人の場合には、遺言執行者の登記権限はないが、被相続人以外の名義になっている場合には遺言執行者の執行行為が必要であるから登記権限がある。

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2012年6月 6日 (水)

第三者に相続分譲渡され、遺産分割された場合の登記の方法

(平4.3.18、民三第1,404号)
 被相続人甲が死亡し乙、丙及び戊(丁の代襲相続人)が相続した甲名義の不動産につき、相続登記未了のうちに乙の死亡によりA、B、Cが、丙の死亡によりX(Dの代襲相続人)が相続し、さらにその後、戊、A及びXが各自の相続分をそれぞれBに2分の1、Cに2分の1ずつ譲渡した場合において、B及びC名義への移転登記をするには、①相続を原因とする乙、丙及び戊名義への所有権移転の登記、②乙持分について相続を原因とするB及びC名義への持分全部移転の登記(Aの印鑑証明書付相続分譲渡証書添付)、③丙持分について相続を原因とするX名義への持分全部移転の登記、④戊及びX持分について相続分の売買又は相続分の贈与等を原因とするB及びC名義への持分全部移転の登記を順次申請するのが相当である。

つまり、共同相続人のうち一人に相続分が譲渡された場合には、直接譲受人に相続登記をすることができるが、相続人以外の者に対して相続分の譲渡が行われた場合は、まず共同相続による登記をしたうえで「相続分の売買」「相続分の贈与」などを原因として持分移転登記をすることになる。

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相続人以外の者に対して相続分の譲渡が行われた場合に、①遺産分割により相続人のうち一人が相続することとなった場合、②相続人以外の者が相続することとなった場合は、どのように登記するのであうか。①の場合は単純に相続登記をすればいいであろう。②はどうするのであろうか。
相続分の譲渡には遡及効はないと言われているから、時系列と公示を明確にするためには、①共同相続人への相続を原因とする移転登記、②「相続分の贈与」などを原因とする第三者への移転登記、③遺産分割を原因とする他の持分移転登記ということになるのだろうか?

なお、遺産分割手続きにおける当事者適格については、相続分の譲渡により譲渡人は遺産分割手続の当事者適格を失うとともに、譲受人は遺産分割手続に必ず関与させられなければならない地位を取得するとする判例がある。(大阪高決S54.7.6)。

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2012年6月 5日 (火)

相続分譲渡があった場合の登記の方法

民法
(相続分の取戻権)
第九百五条  共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
2  前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない

この規定は、相続人が、遺産分割前に自己の相続分を譲渡できることを前提としている。これは「相続分譲渡」と呼ばれているが、共同相続人のうちの一人が、遺産分割協議を自分に有利に進めるため、他の共同相続人から相続分を譲り受ける場合などがある。特に調停を申し立てる場合には、調停に関わりたくない相続人から相続分譲渡を受けて分数的割合で優位な立場に立とうとするような場合に相続分譲渡が行われる。
このほか、バブルの時代は、共同相続人のうちの一人が遺産分割を待たずに相続分を現金化するために、相続分を不動産業者に譲渡し、不動産業者は他の共同相続人に立ち退きを迫るというようなことも行われたケースもあったようだ。

相続分の譲渡とは、遺産全体に対する分数割合の譲渡であり、いわば相続人の地位の譲渡であると言われている。したがって、相続分が他の共同相続人に譲渡された場合は、譲受人となる共同相続人の相続分は、本来自分の持っていた相続分に相続分の譲渡により譲り受けた相続分の合計になる。また、相続分の譲渡が、他の相続人以外の第三者に対してなされると、譲渡した相続人の相続分が消滅し、その分が譲受人に移転する。

相続分の譲渡があった場合の登記の方法については、相続分の譲渡が他の共同相続人に対して行われた場合と、他の相続人以外の第三者に対して行われた場合とで異なる。

(昭59.10.15、民三第5,196号)
 被相続人Aの共同相続人B・C・D・E・F(法定相続分各5分の1)のうち、C・D・Eがその相続分をBに譲渡した場合には、被相続人名義の不動産につき、B持分5分の4、F持分5分の1とする相続登記をすることができる。

Dsc_0216 これに対し、平4.3.18、民三第1,404号は、相続分の売買又は相続分の贈与等を原因として登記する旨通知しているので、明日、その詳細を見てみたい。

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2012年6月 4日 (月)

司法書士の本人確認・意思確認の程度について判断した判例

福岡高等裁判所宮崎支部平成22年10月29日は、司法書士である控訴人が、被控訴人から抵当権設定登記手続の依頼を受け、その登記申請手続を行ったが、控訴人の抵当権設定者(身代わり)についての本人確認行為等に重大な落ち度があったため、被控訴人が訴外Cらに500万円を詐取されたとして、被控訴人が控訴人に対し、登記委任契約の債務不履行あるいは、不法行為に基づき、損害賠償を求めた事案の控訴審であった。
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 判決は、抵当権設定登記を依頼された司法書士が、登記義務者が身代わりであることに気づかなかったとしても、登記義務者の本人性や登記意思の存否について、印鑑登録証明書や保険証の提示を受け、氏名、生年月日を直接口頭で回答させるなど、会則で定めている本人確認方法に則って行われていたことから、一応の確認をしていたと認定。そして、特に依頼者からその旨の確認を委託されたという事情は認められず、また依頼の経緯や業務を遂行する過程で知り得た情報と司法書士が有すべき専門的知見に照らして、登記義務者である当事者の本人性や登記意思を疑うべき相当の理由があったとは認められないので、司法書士はそれ以上の調査確認義務を負わないから、善管注意義務違反による債務不履行責任ないし不法行為責任を負わないとした。

 この事案において、本来であれば当事者の本人性や登記意思の確認は、取引の相手方である被控訴人がすべきである。もちろん、司法書士も、登記の委任を受ける以上本人確認をすべきであるが、司法書士は取引当事者ではないから、取引当事者がすべき本人確認とは意味合いが異なると考えられる。では、司法書士が行うべき本人確認の水準はどこで定まるのかということであるが、これは会則に本人確認の水準が定められているのであれば、それが水準となろう。
 もちろん、本判決の示しているとおり、当該水準を超える本人確認を依頼されていたり、当時者の本人性や登記意思を疑うべき事由があるのであれば、その点について調査確認を行うべき義務があると言えよう。

 近年、司法書士の本人確認について非常に厳しい方向に流れつつあるが、本判決は一定の限度を示すものとして価値があると思われる。

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2012年6月 1日 (金)

公示送達と郵便に付する送達(野々垣バージョン)

両方とも相手方受け取らない場合に行う送達方法だが、公示送達は行方不明の場合、郵便に付する送達は居留守を使っているような場合に行う。
これらの効力の違いについて説明があった。

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公示送達については犠牲自白にならないので立証必要、送達は初回は掲示から2週間後、以降は掲示の日。
郵便に付する送達は被告欠席は犠牲自白となり、送達は発信主義。

送達日が異なるため訴訟等で意思表示をしている場合に、意思表示の効力発生日が異なるので注意。

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