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2012年6月11日 (月)

AB共有の不動産につき、同一日にAが甲に対し売渡証書を作成して売り渡し、Bが乙に対して売渡証書を作成して売り渡した場合、登記権利者を甲乙、義務者をABとして登記申請できるか

いわゆる一括申請について、不動産登記令では次のように定めている。

第四条  申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。

本件の場合、登記の原因は両方とも形式的には「年月日売買」であるが、実質的には「年月日Aと甲の売買」、「年月日Bと乙の売買」であるため、登記原因が同一とは言えないと思われる。また、登記の目的も「A持分全部移転」、「B持分全部移転」である、そのため、不動産登記令4条に照らす限り、一括申請はできないと思われる。

もっとも、上記のように不動産登記令4条に照らすと一括申請はできないと思われる事例について、先例は一括申請を認めていることが多いため、先例に照らして今一度判断する必要がある。

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昭39.9.4、民事甲第2,914号民事局長回答
 甲乙共有の不動産についての所有権移転請求権の仮登記または賃借権設定の仮登記は、甲または乙の持分につき第三者の権利に関する登記(処分の制限の登記及び予告登記を含む。)が存しない場合に限り、1個の登記として申請してさしつかえない。
※所有権移転に関する契約、賃借権設定の契約の個数がそれぞれ1個という前提で出された先例だと思われる。

昭42.10.30、民事三発第655号民事局第三課長回答
共有不動産上の各共有者の持分の全部又は一部が同一の契約により数人に移転した場合の登記の申請は、同一の申請書ですることができる。
※これも、所有権移転に関する契約が同一の契約であるから首肯できる。

登研437号
問 甲が4分の1、乙が4分の1、丙が4分の2を共有している物件につき、乙が持分全部を、丙が持分4分の1を甲に移転する場合、次の例のいずれによるべきか。
(1) 登記の目的
   乙持分全部移転
   丙持分一部移転
(2) 登記の目的
   乙持分四分の一移転
   丙持分四分の一移転
(3) 右記の例では一括申請できないので、2件に分けて申請する。
答 登記の目的を、「乙持分全部、丙持分四分の壱移転」として、一括申請できるものと考えます。
※これも、所有権移転に関する契約が同一の契約であるという前提であろう。

登研408号
問 甲・乙2名共有の不動産について、甲から第三者である5名の者へ、その持分全部を同日付けをもって各人ごとに売り渡しそれぞれ売渡証を作成した場合には、その売渡証を全部添付して持分全部移転の登記を同一申請書で申請することができるでしょうか。もしできるとした場合、同一受付番号の登記済証が5通作成されることとなりますがよろしいでしょうか。
答 前段 同一申請書により申請できるものと考えます。
後段 前段の場合の登記済証は、各個の当該契約書を合綴した上、1つの登記済証が作成されるものと考えます。
※これは、契約は5つ存在していても一括申請を認めている。もっとも、標題の事例と異なるのは、義務者が同一人であるということ。

登研342号
問 売買日付、売主、買主が同一である不動産売渡証書2通(一方はA物件のみ、他方はB物件のみ表示されている。)を登記原因証書とする所有権移転登記を、1件の申請書で一括申請することが可能であると考えますが、いかがでしょうか。
答 御意見のとおりと考えます。
※これも、異なる売買契約であるにもかかわらず、一括申請を認めている。

以上を見ると、本件においても一括申請を認めてもよいという意見があってもいいのではないかと思われる。

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コメント

100万円の連帯債務者甲のみの抵当権と乙のみの抵当権があり、甲の債権のみ譲渡し、次に乙の債権譲渡すれば、別の原因であるが一括申請可能。
ですよね。

投稿: みうら | 2012年6月11日 (月) 20時55分

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