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2012年6月 4日 (月)

司法書士の本人確認・意思確認の程度について判断した判例

福岡高等裁判所宮崎支部平成22年10月29日は、司法書士である控訴人が、被控訴人から抵当権設定登記手続の依頼を受け、その登記申請手続を行ったが、控訴人の抵当権設定者(身代わり)についての本人確認行為等に重大な落ち度があったため、被控訴人が訴外Cらに500万円を詐取されたとして、被控訴人が控訴人に対し、登記委任契約の債務不履行あるいは、不法行為に基づき、損害賠償を求めた事案の控訴審であった。
Dsc_0206

 判決は、抵当権設定登記を依頼された司法書士が、登記義務者が身代わりであることに気づかなかったとしても、登記義務者の本人性や登記意思の存否について、印鑑登録証明書や保険証の提示を受け、氏名、生年月日を直接口頭で回答させるなど、会則で定めている本人確認方法に則って行われていたことから、一応の確認をしていたと認定。そして、特に依頼者からその旨の確認を委託されたという事情は認められず、また依頼の経緯や業務を遂行する過程で知り得た情報と司法書士が有すべき専門的知見に照らして、登記義務者である当事者の本人性や登記意思を疑うべき相当の理由があったとは認められないので、司法書士はそれ以上の調査確認義務を負わないから、善管注意義務違反による債務不履行責任ないし不法行為責任を負わないとした。

 この事案において、本来であれば当事者の本人性や登記意思の確認は、取引の相手方である被控訴人がすべきである。もちろん、司法書士も、登記の委任を受ける以上本人確認をすべきであるが、司法書士は取引当事者ではないから、取引当事者がすべき本人確認とは意味合いが異なると考えられる。では、司法書士が行うべき本人確認の水準はどこで定まるのかということであるが、これは会則に本人確認の水準が定められているのであれば、それが水準となろう。
 もちろん、本判決の示しているとおり、当該水準を超える本人確認を依頼されていたり、当時者の本人性や登記意思を疑うべき事由があるのであれば、その点について調査確認を行うべき義務があると言えよう。

 近年、司法書士の本人確認について非常に厳しい方向に流れつつあるが、本判決は一定の限度を示すものとして価値があると思われる。

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