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2012年6月27日 (水)

貸金庫内の動産を差し押さえる方法

「貸金庫に遺言書をしまっておいてはいけない」という記事を書いている過程で、おもしろい判例を見つけた。

仮に、依頼者が債権者の立場にあるとして、債務者が契約している銀行内の貸金庫内にあるものを差し押さえて債権回収したいと考えた場合、どのように考えるか。
まず考えるのは、動産執行であろう。しかし、以前は、銀行には動産の占有権限がないと考えられていたため、銀行に貸金庫を開けることを拒否され(通常、銀行と貸金庫利用者の両方の鍵がないと貸金庫は開けられない)、その結果、強制執行は困難な状況にあった。

しかし、最高裁平成11年11月29日は、貸金庫の内容物については、貸金庫利用者と銀行の双方が占有権を有するとして、銀行は強制執行を拒否することができないと判断した(現在、銀行の現実の取扱いがどうなっているかは知らない)。

さて、本件の場合、着目したいのは、債権者のとった手法が動産執行ではなく債権執行だったということだ。債権者は、銀行を第三債務者として、債務者が銀行に対して有する貸金庫内容物の引き渡し請求権を差し押さえたのだ。

通常、債権執行をするためには、執行の対象となる債権を特定しなければならない。したがって、仮に貸金庫の中に宝石が入っているのであれば、どんな宝石であるのかを特定したうえで引渡請求権を特定する必要がある。しかし、貸金庫に何が入っているのかは、通常はわからない。
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しかし、この判例では、銀行は、貸金庫契約の定めるところにより、利用者が内容物を取り出すことのできる状態にするよう請求する利用者の権利は、内容物の引渡しを求める権利にほかならないとした上で、「この引渡請求権は、貸金庫の内容物全体を一括して引き渡すことを請求する権利という性質を有するものというべきである。」とした。つまり、貸金庫利用者は、1個1個の動産の引渡請求権ではなく、包括して引き渡せという1個の請求権が存在していると認定した。そのため、内容物を特定しなくても債権執行が可能であると判示した。

この判例では、貸金庫利用者と銀行の双方が占有権を有するとして銀行は強制執行を拒否することができないとしているところから、動産執行もできるのではないかと思われるが、この事案のおもしろいところは、動産を換価する手法として、動産そのものではなく、動産の引き渡し請求権を執行対象としているところだ。

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コメント

中国株式・外国投信執行で動産引渡し請求権の売却というものが。一部のゴルフ場経営会社株式でも株券発行請求権の売却がある。
貸金庫内容物は現実に引渡しを受ける方法でするのよね。

投稿: みうら | 2012年6月27日 (水) 18時38分

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