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2012年6月 8日 (金)

単純承認後の相続放棄 高松高裁 平成20年3月5日決定

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない(民法915条第1項本文)

 この3ヶ月の熟慮期間の起算点は、相続人が相続開始の原因たる事実及びこれにより、自己が相続人となったことを自覚した時からであり、一度、単純又は限定承認した後に相続放棄することは認められないのが原則である。

 標記判例は、熟慮期間内に、相続人が単純承認した後であっても、遺産の構成に重要な錯誤があった場合、錯誤に陥っていることを認識した後、改めて民法915条の1項の所定の期間内に、錯誤を理由として単純承認の効果を否定して限定承認又は放棄の申述受理の申立をすることができると判示している。

概要は以下の通りである。

1 前提事実
 被相続人
 相続人C(被相続人の妻)
 相続人 抗告人(相続放棄申述人、被相続人の長男)
 相続人D(被相続人の次男、跡取りで被相続人の遺産を引き継ぐ予定)

2 事実 
(1)被相続人死亡後間もない、平成18年6月頃、Dは、被相続人が生前出資、貯金、共済に加入するなど取引きしていた金融機関を訪れ、被相続人の債務を存否を尋ねたところ、債務はないとの回答を得た。
(2)そこで、C、D、抗告人は、当該金融機関の貯金解約、出資払い戻しの手続とともに、共済契約の名義人をCにする変更手続を行った。
(3)しかしながら、被相続人は、平成3年ないし平成8年頃、当該金融機関を貸主とする3口の消費貸借契約(元金合計3億円)につき連帯保証人となっていた(うち一億円については連帯債務者)。
(4)このうち、被相続人が連帯債務者となっている1億円の貸付の担保不動産を競売することになり、C、D、抗告人は被相続人の債務の存在を初めて知った。
(5)これにより、抗告人は、平成19年11月頃、相続放棄の申述受理の申立をした。

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3 判旨
 Dは被相続人死亡後、当該金融機関を訪れて被相続人の当該金融機関に対する債務の存在を尋ね、同債務は存在しない旨の回答を得、そこで、抗告人らは、当該金融機関における被相続人名義の普通貯金の解約や出資証券の払戻しの手続を執るなどしたものであるが、それは抗告人らにおいて、同債務が存在しないものと信じたことによるものであり、それゆえに、抗告人らは被相続人死亡時から3ヶ月以内に限定承認又は放棄の申述受理の申立をすることもなかったものと認められるれ、抗告人は,錯誤を理由として上記財産処分及び熟慮期間経過による法定単純承認の効果を否定して改めて相続放棄の申述受理の申立てをすることができるというべきである。

 被相続人の死亡後、単純承認してしまって、その後、被相続人に債務があることがわかったという相談は少なからずある。このような場合、依頼者の利益のために事実関係をしっかりと調査して、相続放棄が申述できるかを確認することが重要である。 

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コメント

金融法務事情6.10号71ページ電子記録債権は大企業限定なので根抵当権の範囲とする必要性はないだろうが法改正漏れである。

投稿: みうら | 2012年6月 8日 (金) 18時35分

年月日手形貸付年月日設定
というのをはじめてみましたが、金銭消費貸借に統一されているのではないのですか。
同月何日設定とかにしないで年月をすべて記載する方式になったのですか。
申請人が書いた通りなのですか。
受付年月日と同じでも、現在は同日金銭消費貸借同日設定。とはしませんが。

投稿: みうら | 2012年6月 8日 (金) 20時42分

「電子記録債権は大企業限定なので根抵当権の範囲とする必要性はないだろうが法改正漏れである」・・・ですよね

投稿: 古橋清二 | 2012年6月 9日 (土) 08時47分

そうです。
下請けなどの裏書を担保する必要はないという見解ですね。

投稿: みうら | 2012年6月11日 (月) 18時17分

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