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2012年8月 9日 (木)

金融機関における被相続人名義の預金口座の取引履歴開示義務

 共同相続人の一人が金融機関の取引履歴の調査をするのは、被相続人の生前に、他の相続人に預金が流出していないかなどを調査する目的があると思われる。したがって、金融機関として、当該請求に応じることにより、他の相続人から「なぜ履歴を開示した」とのクレームを受けることが予想されるため、履歴の開示に消極的であるかもしれない。

 しかし、預金者が死亡した場合、その共同相続人の一人は預金債権の一部を相続により取得するとともに、共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位にもとづき被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる。したがって、金融機関としては開示請求に応じる義務がある。

 もっとも、逆に言えば、最高裁判決の取扱いにしたがった対応をすれば、このような請求に応じたことによって他の相続人から守秘義務違反に問われるおそれもないと言うことができる。
 
最高裁判所第一小法廷 平成21年1月22日
預金者が死亡した場合,その共同相続人の一人は,預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが,これとは別に,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる(同法264条,252条ただし書)というべきであり,他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない。
 上告人は、共同相続人の一人に被相続人名義の預金口座の取引経過を開示することが預金者のプライバシーを侵害し,金融機関の守秘義務に違反すると主張するが,開示の相手方が共同相続人にとどまる限り,そのような問題が生ずる余地はないというべきである。なお,開示請求の態様,開示を求める対象ないし範囲等によっては,預金口座の取引経過の開示請求が権利の濫用に当たり許されない場合があると考えられるが,被上告人の本訴請求について権利の濫用に当たるような事情はうかがわれない。

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コメント

遺産分割調停で家裁を通してほしい。といいますね。

投稿: みうら | 2012年8月 9日 (木) 19時08分

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