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2012年9月20日 (木)

相続による所有権の移転がされている農地について、真正な登記名義の回復を原因として他の相続人に所有権移転をする場合は農地法の許可は不要である

平成24年7月25日民二第1905号の先例は次のとおりである。

相続による所有権の移転がされている農地について、真正な登記名義の回復を原因として他の相続人に所有権移転をする場合は農地法所定の許可書の提供の要否については、不動産登記法においては、登記原因証明情報の内容として事実関係(相続登記が誤っていること、申請人が相続により取得した真実の所有者であること等)又は法律行為(遺産分割等)が記録されていれば、当該許可書を提供する事を要しないものと考えますが、いささか疑義がありますので、照会いたします・・・・・。

貴見のとおりと考えます。

さて、従来の先例は次のとおり。

 農地につき「真正な登記名義の回復」を原因とする移転登記をするには、前の名義人に回復する場合を除いてその申請書に農地法の許可書の添付を要する。(昭40.9.24、民事甲第2,824号民事局長回答)

 農地について、「真正な登記名義の回復」を原因として、従前の所有権登記名義人でない者のための所有権移転の登記を申請するには、従前の所有権登記名義人の1名から、その者への所有権移転についての農地法の規定による知事の許可書の添付を要する。(昭40.12.9、民事甲第3,435号民事局長通達)

したがって、従来の先例と抵触する部分は変更されたことになる。

そもそも、相続による農地の承継であるから農地法の許可が必要となるという法的根拠は存在しないため、今回の先例は、実質的には妥当な先例である。そして、今回の通達のような場合に、昭和40代に出されたふたつの先例が邪魔をしていた。したがって、これらの先例を整理したものと理解できるが、別の問題点はないだろうか。

 ひとつは、中間省略登記になるのではないかという懸念、そして、もうひとつは、他の相続人がこの手続に関与する必要はないのか、という点である。

 まず、最初の問題的は、本来であれば、誤った相続登記を抹消して正しい相続登記を行うことになるところ、抹消登記をせずに移転登記をしてしまうことは、中間省略登記になるのではないかという点である。この点については、そもそも、「真正な登記名義の回復」を原因とする移転登記というのは、実体関係をそのまま反映する登記ではないといえるのであるから、従来の「真正な登記名義の回復」を原因とする移転登記の延長線上の運用だと割り切って考えればいいのかもしれない。

 次に、誤った相続登記を抹消して正しい相続登記を行うことになると、仮に遺産分割協議書の記載が誤っていたとしたら、相続人全員が新たな遺産分割協議書の作成に関与しなければならないが、「真正な登記名義の回復」を原因とする移転登記の場合には、どうも、権利者及び義務者だけが関与すれば登記は可能であると考えられ、その結果、他の相続人の関与は不要であるということになりそうである。
 しかしながら、「遺産分割協議書の記載が誤っていたとしたら、相続人全員が新たな遺産分割協議書の作成に関与しなければならない」という考え方はすぐれて実務的な感覚であって、「誤って登記された」というのは、遺産分割協議は正しく行われたにもかかわらずあくまでも登記申請がなされ、それが受理されてしまった、という状態をいうのかもしれない。
 もしもそうであるとするならば、他の相続人を関与させる必要はないということになる。また、登記の審査が形式的審査であることからすると、登記申請人でもない他の相続人のことを考慮する必要はないのかもしれない。

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コメント

許可を要しない旨の証明書
を不要とした。という趣旨ですよね。

投稿: みうら | 2012年9月20日 (木) 19時23分

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