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2013年4月

2013年4月30日 (火)

破産手続開始の申立書の審査・補正命令・却下等

破産手続開始の申立書に法定の記載事項が記載されていない場合には、裁判所書記官は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命ずる処分をしなければならならず、この処分は、これを記載した書面を作成し、その書面に処分をした裁判所書記官が記名押印してしなければならない。そして、この処分は、相当と認める方法で告知することによって効力を生ずる。民事訴訟費用等に関する法律の規定に従い破産手続開始の申立ての手数料を納付しない場合も、同様である(法21条①②)。  
 この補正命令に対し、破産手続開始の申立人が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、破産手続開始の申立書を却下しなければならず(法21条⑥)、一方、この却下については即時抗告をすることができる(法21条⑦)。
なお、裁判所は、相当と認めるときは、破産手続開始の原因となる事実又は法30条1項各号に掲げる事由に係る事実の調査を裁判所書記官に命じて行わせることができる(規則17)。
破産申立書の中には、①負債総額が比較的高額であるにもかかわらず、単に生活費の不足としか説明がされない例、②債務者自身は低収入であっても、世帯全体では相応の収入があったり、若年者で実家暮らしのため住居費等がかからない等により、借入れをする必要性が乏しいにもかかわらず、借入れをした理由が判然としない例、③生活費の不足を理由としつつも、そもそも借入れ当時の世帯収入額が明らかでない例や、債権者一覧表にクレジットカードを使用した物品購入が多く記載されていたり、家計表で収入に見合わない過大な支出(住居費、食費、電話代、被服費、交際費、娯楽費等) が計上されている例が見受けられる(管財手引 40頁)。
申立代理人が法律家として裁判所や破産管財人に提供する情報として十分と判断する内容が記載された陳述書を作成して提出することが不可欠であり(マニュアル201頁)、「申立代理人による調査の状況」が最も重要である(到達点と課題60頁)。そのために必要なのは、申立代理人の誠実義務・真実義務を前提とした意識・実務能力の向上である(到達点と課題60頁)。
 また、陳述書は申立書を補完する重要な機能を有する書面である(マニュアル200頁)。
 事業譲渡が行われている場合には、対価の正当性を明らかにする必要がある。このためには、できるだけ客観的な資料によるべきで、たとえば、公認会計士に依頼していわゆるデューデリジェンスを行い、「事業価値算定報告書」を作成させ、あらかじめ各金融機関に配布し、内諾を得る等の手続を経たうえで、事業譲渡から破産の申立手続と進むなどの手法が考えられる(マニュアル62頁)。
 さらに、申立書の記載にあたっては、まず破産管財人の立場に立って、管財業務をやりやすくするということが重要である。特に破産管財人の主要な業務は資産の換価であり、資産の換価を効率的に進められるように配慮することが重要である(マニュアル207頁)。破産申立書、または破産手続開始後の破産管財人に対する財産引継書のなかで、破産者による否認対象行為の存在について言及し、当該行為に至った経過報告と当該行為の存在を基礎づける証拠資料等を添付して、これを破産管財人に引き継ぐのが望ましい(マニュアル89頁)
破産申立を却下した事例として、次のようなものがある。
自己破産申立後、申立人が所在不明になったことを理由に、申立自体を不適法として却下した事例(仙台地決昭和59.9.3判タ537号247頁)
2度にわたって裁判所に提出した書面(破産申立ての関係書類及び同時廃止に関する上申書)において、退職金で購入したフィリピン所在の不動産を全く説明せず、退職金の使途についても審問時の供述とは重要部分で異なる説明をしていたばかりか、審問によって実情を把握し当裁判所が前記財産の実質価値等につき釈明を命じたにもかかわらず、期限経過後も何ら釈明をしない。また、本件で債務者が主張する負債及びその発生原因のうち、債務者の現妻による浪費分が約400万円にも及ぶとされているため、その経緯等についても釈明を命じたが、債務者は前同様に全く釈明をせず、同時廃止を求めるばかりで、破産手続上重要な事実関係につき誠実に説明を尽くそうとする姿勢が見受けられず、真摯に申立てを維持する意思があるとは認められないとして破産申立てを不適法として却下した事例(東京地決平成13年10月24日。金融・商事判例1132号41頁)

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2013年4月28日 (日)

Nさんへ 支部長就任挨拶

 Nさん、こんにちは。いつもNさんのお話は楽しく聞かせていただいています。

 実は、司法書士会には浜松支部という団体がありまして、今後2年間、私がその団体の支部長を務めさせていただくことになりました。
 浜松支部の役員はどのように決まるかと申しますと、役員選考委員会という委員会がありまして、そこで、次期役員候補者を選考するのですが、それとは別に立候補をすることもできます。しかしながら、実際には立候補する人などいませんので、役員選考委員会の選考結果のとおりに次期役員が決まるという仕組みになっています。

 私は、副支部長をやっておりましたし、もう一人の副支部長の体調を考えますと、役員選考委員会で私が次期支部長候補者に選任されるであろうことは容易に想像できました。ですから、次期支部長候補者に選任された場合にはどうやって断ろうかと、あれこれ理由を考えていました。

 なぜなら、私は二十数年浜松支部に所属していますが、支部の行事は毎年ほとんど同じであり、いかに「順番」とはいえ、支部長を引き受ける魅力を全く感じていなかったからです。
 それに加え、私は、現場でいろいろと試行錯誤をしながら仕事をするのは好きですが、人を束ねて組織を動かしていくのは不得手です。これまでも、いろいろな役のお誘いがありましたが、その多くを「私は職人ですから。棟梁はできませんので」とお断りしてきました。

 役員選考委員長の杉山さんからお話をいただいたとき、意地悪に、「私が選ばれた理由は何ですか」と聞いてみたのですが、答えはやはり、「順番!」の一言でした。ここではっきり断ればよかったのですが、一方で、「時間の無駄だけど、支部長ぐらいどうってことない」という嘗めた考えがありました。それが、私に隙を生んだのだと思います。

 私は、「役員選考委員会というのは、浜松支部に何が足らないとか、こうあるべきだ、というような議論をして、そのうえで、「では、誰々に役員をしてもらうのが一番いい」ということを考えるのが役目ではないのですか?」と聞いてみました。

 しかし、私よりちょっとだけ人生経験豊かな杉山さんは、私の心の隙を見透かしたように、私の話に耳を傾けもせず、「それで、他の役員は誰にする?」と一瞬の隙も見せず機械的な質問を浴びせかけてきました。それに対し、私は、迂闊にも、「誰にしようかな?」と、内諾を前提とする言葉を発してしまったのです。後の祭りでした。

 でも、Nさんの言葉を思い出したのです。

「なにをぐちゃぐちゃ言うてんねん。返事は0.2秒。自分の都合を考えたらあかん。頼まれ事は試され事。予測を上回る仕事をして驚かしたらええんや。うまくいくかどうかなんかどうでもええ。要は、「やるか、やらんか」だけや」

 どうせやるなら楽しくやる方がいいに決まってます。Nさんの言葉を思い出して、心を入れ替えて支部長を引き受け、予測を上回る仕事をやる決心がつきました。

 考えてみれば、県内最大の約140人の会員を擁する支部ですから、地方の小さな単位会と同じ規模です。しかも、政令指定都市を中心とした支部です。ひょっとしたら、他の支部ではできないような、新しいことができるかもしれません。

 何をやるか、頭の中にはいろいろな考えがありますが、他の執行部と議論して進めていきたいと思います。また、お便りしますので、Nさんも、応援をお願いいたします。

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2013年4月26日 (金)

(5) 破産手続開始申立書の添付書類

破産手続開始の申立書には、次に掲げる書類を添付する必要がある。
① 債務者が個人であるときは、その住民票の写しであって、本籍(本籍のない者及び本籍の明らかでない者については、その旨)の記載が省略されていないもの(規則14条3項1号)
② 債務者が法人であるときは、その登記事項証明書(規則14条3項2号)
③ 限定責任信託に係る信託財産について破産手続開始の申立てをするときは、限定責任信託の登記に係る登記事項証明書(規則14条3項3号)
④ 破産手続開始の申立ての日の直近において法令の規定に基づき作成された債務者の貸借対照表及び損益計算書(規則14条3項4号)
⑤ 債務者が個人であるときは、次のイ及びロに掲げる書面(規則14条3項5号)
イ 破産手続開始の申立ての日前一月間の債務者の収入及び支出を記載した書面
ロ 確定申告書の写し、源泉徴収票の写しその他の債務者の収入の額を明らかにする書面
⑥ 債務者の財産目録(規則14条3項6号)
裁判所は、破産手続開始の申立てをした者又はしようとする者に対し、破産手続開始の申立書及び破産法又は破産規則の規定により当該破産手続開始の申立書に添付し又は提出すべき書類のほか、破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権となるべき債権及び破産財団に属すべき財産の状況に関する資料その他破産手続の円滑な進行を図るために必要な資料の提出を求めることができる(規則15条)。
在庫商品は、その目録を作成し、申立書に添付することを要する。倒産前は棚卸をする余裕がなく、かなり前の在庫目録しか添付できないため、実在庫との齟齬が大きい場合がよく見受けられます。後日それを不正な処分や否認すべき売買があったと疑われないよう、棚卸台帳、納品書・請求書綴り、注文伝票綴り等の確保をきちんとしておくよう債務者に指示する必要がある(150問16頁)。
明渡しを実現するために必要な事柄の詳細が不明である場合は、写真撮影報告書を作成して破産管財人に提出するのも1つの方法である(マニュアル107頁)。
 その他基本的な資料としては固定資産評価証明書があり、その他公図、各種の建物図面、不動産取得関係書類、不動産権利証など破産管財業務に資する書類をなるべく揃えておくことが望ましい(マニュアル109頁)。所有不動産がマンションの場合、管理費等の滞納の有無などを調査しておき破産管財人に引き継ぐことも必要である(マニュアル109頁)。
 不動産の買受希望者等の情報は当然引き継ぐ必要がある(マニュアル109頁)。

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2013年4月25日 (木)

(4)債権者一覧表の提出と記載事項

債権者以外の者が破産手続開始の申立てをするときは、次に掲げる債権を有する者の氏名又は名称及び住所並びにその有する債権及び担保権の内容を記載した債権者一覧表を裁判所に提出しなければならない。ただし、当該申立てと同時に債権者一覧表を提出することができないときは、当該申立ての後遅滞なくこれを提出すれば足りるものとされている(法20条2項)。
債権者が破産手続開始の申立てをするときも上記の債権者一覧表を裁判所に提出することを要するが、当該債権者においてこれを作成することが著しく困難である場合は、この限りでない(規則14条2項)。
① 破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権となるべき債権であって、②及び③に掲げる請求権に該当しないもの(規則14条1項1号)
② 租税等の請求権(法97条4号、規則14条1項2号)
③ 債務者の使用人の給料の請求権及び退職手当の請求権(規則14条1項3号)
④ 民事再生法252条6項、会社更生法254条6項又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第158条の10第6/六項若しくは第331条の10第6項に規定する共益債権
大阪地裁では、利息制限法違反の取引がほぼ7年間(正確には8年前の12月31日以前から。 「は い6民です お答えします vol.134-1」月刊大阪弁護士会2009年3月号、『はい6民45頁)継続している場合は、取引履歴の調査と引直し計算が必要とされている。札幌地裁など、5年以上の取引がある場合は調査の必要があるとする裁判所もある。これに対し、具体的な基準は設けず、必要に応じて資料の追完を求める裁判所も多い(到達点と課題29頁)。
 代位弁済等により債権者が変わっている場合には、「債権者名」、「債権者住所(送達先)」欄には新債権者の名称、住所を記載した上で、「借入始期及び終期」、「原因使途」、「最終返済日」欄には 原債権者から借入れをしたときの事情を記載し、「備考」欄に原債権者名及び代位弁済日を記載しておいた方がよい(管財手引 74頁)。
 破産法人の代表者などの旧経営陣、親会社、支配株主等の届出債権については、破綻に至る経営責任や公私混同が認められることも少なくなく、また、これら関係者に対し責任追及をしなければならない場合もあることから、これらの債権をほかの届出債権と形式的に平等に扱うと、破産債権者からみて道義的に釈然としないものが残ることがある。そこで、破産管財人が、債権届出の取下げを勧告し、これに応じないときには、信義則又は権利濫用の法理(民1条2項、3項) に照らして異議を述べることもある(広島地福山支別平10.3.6判時1660号112頁、管財手引 272頁)。

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2013年4月24日 (水)

(3)破産手続開始の申立ての方式及び記載事項

破産手続開始の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない(法20条)。
① 申立人の氏名又は名称及び住所並びに法定代理人の氏名及び住所(規則13条1項1号)
② 債務者の氏名又は名称及び住所並びに法定代理人の氏名及び住所(規則13条1項2号)
③ 申立ての趣旨(規則13条1項3号)
④ 破産手続開始の原因となる事実(規則13条1項4号)
⑤ 債務者の収入及び支出の状況並びに資産及び負債(債権者の数を含む。)の状況(規則13条2項1号)
⑥ 破産手続開始の原因となる事実が生ずるに至った事情(規則13条2項2号)⑦ 債務者の財産に関してされている他の手続又は処分で申立人に知れているもの(規則13条2項3号)
⑧ 債務者について現に係属する破産事件、再生事件又は更生事件があるときは、当該事件が係属する裁判所及び当該事件の表示(規則13条2項4号)
⑨ 管轄の特例(法5③から⑦)までに規定する破産事件等があるときは、当該破産事件等が係属する裁判所、当該破産事件等の表示及び当該破産事件等における破産者若しくは債務者、再生債務者又は更生会社若しくは開始前会社の氏名又は名称(規則13条2項5号)
⑩ 債務者について外国倒産処理手続があるときは、当該外国倒産処理手続の概要(規則13条2項6号)
⑪ 債務者について次のイ又はロに掲げる者があるときは、それぞれ当該イ又はロに定める事項(規則13条2項7号)
イ 債務者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合 当該労働組合の名称、主たる事務所の所在地、組合員の数及び代表者の氏名
ロ 債務者の使用人その他の従業者の過半数を代表する者 当該者の氏名及び住所
⑫ 債務者について第九条第一項の規定による通知をすべき機関があるときは、その機関の名称及び所在地(規則13条2項8号)
⑬ 申立人又は代理人の郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)(規則13条2項9号)
破産手続開始の申立てに至る経緯などは、どの時点で支払不能となったかは非常に重要であるが、この点が明確であればその余は簡潔でも足りると思われる(マニュアル208頁)。
 また、裁判所によっては、偏頗弁済との関係で受任通知日の記載をさせている例がある。その場合、任意整理が先行している場合は任意整理の際の受任通知日を記載する必要があり、また、申立代理人や申立書類を作成した司法書士以外の弁護士又は司法書士が以前に受任通知を発している場合には、その日を記載する必要がある(管財手引 75頁)。
提出されている通帳の写しに、給料の振込み、家賃や公共料金の支払など、債務者の生活状況から一般的に想定される出入金がない場合や、債務者名義の他の口座への振込みの記載がある場合は、他に口座があるのではないか疑義が生じることがある。債権者の中にクレジットカ一ド業者がいる場合は、その支払を口座引落しとしていることが通例であり、当該引落し口座に係る通帳があるか否かも確認する必要がある(管財手引 41頁)。

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2013年4月23日 (火)

(2)法人の破産手続開始の申立権者

次に掲げる法人については、それぞれに定める者は、破産手続開始の申立てをすることができるとされている(法19条1項)。ただし、 これらの法人が解散し、残余財産の引渡し又は分配が終了した後は破産手続開始の申立てをすることはできない(法19条5項)。
① 一般社団法人又は一般財団法人   理事、清算人(法19条1項1号、同条2項)
② 株式会社又は相互会社       取締役、清算人(法19条1項2号、同条2項)
③ 合名会社、合資会社又は合同会社  業務執行社員、清算人(法19条1項3号、同条2項)
④ ①~③以外の法人         ①~③を準用(法19条4項、同条2項)
これらの法人について破産手続開始の申立てをする場合には、理事、取締役、業務を執行する社員又は清算人の全員が破産手続開始の申立てをするときを除き、破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない(法19条3項)。

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2013年4月22日 (月)

破産手続開始の申立権者 (1)債権者・債務者

債権者は、破産手続開始の申立てをすることができる(法18条)。
 ただし、債権者といえども、当該債権が質権の目的とされている場合には、質権設定者たる債権者は、質権者の同意があるなどの特段の事情のない限り、当該債権に基づき当該債権の債務者に対して破産の申立てをすることができない(最高裁平成11年4月16日決定。最高裁判所民事判例集53巻4号740頁、裁判所時報1241号3頁、判例時報1680号84頁、判例タイムズ1006号143頁他)。
 これは、質権の目的とされた債権については、原則として、質権設定者はこれを取立てることができず、質権者が専ら取立権を有すると解され(民367条参照)、当該債権の債務者の破産は、質権者に対し、破産手続による以外当該債権の取立てができなくなるという制約を負わせることになるからである。また、当該債権の債務者が株式会社である場合には破産手続の開始が会社の解散事由となっているため(会社法471条Ⅴ)、破産手続きによって満足を受けられなかった残額については通常その履行を求めることができなくなるという事態をもたらすなど、質権者の取立権の行使に重大な影響を及ぼすものであるからであると説明されている。
 また、債権者の破産手続開始の申立てであっても、破産手続によって債権者が利益を受けることよりも他の目的で債務者に優位な地位に立つことを目的とする場合には権利濫用として許されない。たとえば、債務者を威嚇して自己の債権を回収する手段として債権者が破産を申し立てたケースについて申立権の濫用として申立を却下している(東京地決昭和38.9.4判タ151号166頁、昭和39.4.3判時371号45頁)。また、債務者の営業自体は破綻していないにもかかわらず、債権者が破産手続開始の申立てをされた代表者と相続をめぐり紛争が生じており、破産申立てが相続をめぐる紛争で優位に立つことを目的としてなしたものと認められる場合には、破産の申立ては濫用というべきであって不適法であるとしている(大阪地決平成4年6月8日。判例時報1435号137頁、判例タイムズ798号266頁)。
このほか、広島高裁岡山支部平成14年9月20日決定(判例時報1905号90頁)は、破産手続は、総債権者に対する債務を完済することができない状態にある場合に、強制的に債務者の全財産を換価し、総債権者に公平な金銭的満足を与えることを目的とする裁判上の手続であるため、債務者の清算すべての債権者が同意しており、債権全額の回収を得ることができない唯一の債権者でさえ残債権を免除することにも同意しているような場合には破産宣告の必要性に乏しく、単に、このようなスキームに基づいて清算することに反対であるとして破産申立をすることは申立権の濫用というべきであるとしている。
債権者が破産手続開始の申立てをするときは、その有する債権の存在及び破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならないとされている(法18条2項)。
一方、債務者自ら破産手続開始の申立てをすることがする場合には(法18条①)、このような疎明は必要ないとされている。これは、債務者が破産申立すること自体が破産手続開始の原因を事実上推定させるからであるといわれている(大阪高決昭和59年11月9日(判タ524号230頁))。

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2013年4月19日 (金)

(4)その他

債務者についての外国で開始された手続で破産手続に相当するものがある場合には、当該債務者に破産手続開始の原因となる事実があるものと推定することとされている(法17条)。

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2013年4月18日 (木)

(3)債務超過

 債務者が法人である場合には、債務者が支払不能能又は債務超過にあるときは、裁判所は、決定で、破産手続を開始することを規定しており(法16条1項)、法人である場合には債務超過も破産手続開始の原因であることを明らかにしている。そして、「債務超過」とは、債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいうとしている(法16条1項括弧書き)。
なお、存立中の合名会社及び合資会社には、この規定は適用されない(法16条2項)。

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2013年4月17日 (水)

(2)支払停止

債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する(法15条2項)。
支払停止の典型例は手形の不渡りである。東京高判平成元年10月19日(最高裁判所裁判集民事171号445頁、裁判所ウェブサイト)は、資金不足を理由にする一回目の手形不渡り発生し、その金額が多額であって支払不能の状態にある時点で生じたときは、その後に、少額の手形について不渡りが回避されたとしても、一回目の手形不渡り支払停止」に当たるとしている。

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2013年4月16日 (火)

破産手続開始の原因 (1)支払不能

債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、申立てにより、決定で、破産手続を開始する(法15条1項)。ここで「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう(法2条11項)。
債務者が支払不能にあることは債務者一般の破産手続開始の原因であるとされており、債務者が個人であると法人であるとを問わないと解されている。
どのような場合が支払不能といえるかは、具体的な事例に応じて判断されることになるが、判断要素としては、弁済期にある債務がどのくらい存在するかと、その弁済できない状況が一般的かつ継続的なものであるかという点に着目することになる。
旧法の事案ではあるが、福岡高決平成14年7月18日(訟務月報49巻4号1143頁)は、「破産宣告の要件として破産法126条1項が定める支払い不能の状態とは,債務者が即時に弁済すべき債務を弁済能力に欠けるため弁済することができない状態をいうものであり,法的には弁済期の到来した多額の債務を負担していたとしても,債権者が債務者の弁済能力を考慮して支払い可能な限度で支払えばよいとの意向を示し,債権者と債務者との間の交渉によりなお支払方法につき解決の余地が残されていると解される場合には,債務者は未だ法定の破産原因である支払不能の状態にあるとはいえないものと解するのが相当である」と判示している。
また、福岡高決平成9年4月22日(判例タイムズ956号291頁)も、債務者が銀行に対する期限の利益を喪失しながらも、銀行から事実上の弁済期の猶予を得たうえ、同銀行に対し、毎月弁済をして、これを元本に充当してもらうことにより元本額を逐次減少させつつあり、その他の債権者らに対しても適宜支払を続けていることなどから、債務者が支払不能又は支払停止の状態にあると認めることはできないとしている。
同様に、「債権者が履行期の到来を理由に支払を請求している場合であっても,債務者の資力に応じた分割弁済の方法を提案しており,交渉によって和解による解決の可能性があるようなときは,債務者は,即時に弁済すべき債務を弁済することができない場合には当たらないから,破産原因としての支払不能とはいえない」としている(東京高決平成16年4月7日(訟務月報51巻1号1頁))。この事例は、唯一の債権者が,債務者の生活状況等を配慮した即決和解の提案をしており、交渉によって債権者と債務者との間において和解が成立する可能性があるものと認められる状況であったため、支払不能とは認定されなかった事例である。
債務者が法人である場合に手形の不渡りと支払不能との関係がいかなるものであるかについては、名古屋高決平成7年9月6日(判例タイムズ945号306頁)は、「債務者は、破産宣告を受けるまで一回も手形等の不渡りを出したことがなかったとしても、現時点において、支払不能すなわち弁済手段の融通がつかないため一般的継続的に弁済期にある債務を順調に弁済できない状態にあるものと推認せざるを得」ないとして、不渡りを出しているか否かは必ずしも支払不能の判断に直結するものではないとしている。

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2013年4月15日 (月)

審理方式・不服申立・公告

破産手続等に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる(法8①)。裁判所は、職権で、破産手続等に係る事件に関して必要な調査をすることができる(法8②)。
 破産手続等に関する裁判につき利害関係を有する者は、この法律に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し即時抗告をすることができ、裁判の公告があった場合には、その公告が効力を生じた日から起算して二週間が抗告期間である(法9)。
「破産法9条は、破産手続の円滑な進行を図る趣旨で定められた、民事再生法9条及び会社更生法9条と同趣旨の規定であり、即時抗告ができる裁判を限定したものであって、特別の定めがない限り破産手続に関する破産裁判所の判断を終局的なものと定めたものと解される」とした東京高決平成22年10月21日(金融法務事情1917号118頁)がある。
 公告は官報に掲載してするものとされ、掲載があった日の翌日に、公告の効力を生ずる。破産法の規定により送達をしなければならない場合には、公告をもって、これに代えることができるが、破産法の規定により公告及び送達をしなければならない場合は、特別の定めがない限り、公告をもって送達に代えることができない。 なお、破産法の規定により裁判の公告がされたときは、一切の関係人に対して当該裁判の告知があったものとみなされる(法10)。

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2013年4月12日 (金)

Ⅹ 破産事件の管轄

破産事件は、債務者が、営業者であるときはその主たる営業所の所在地、営業者で外国に主たる営業所を有するものであるときは日本におけるその主たる営業所の所在地、営業者でないとき又は営業者であっても営業所を有しないときはその普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄裁判所となる(法5①)。 この管轄裁判所がないときは、破産事件は、債務者の財産の所在地(債権については、裁判上の請求をすることができる地)を管轄する地方裁判所が管轄裁判所となる(法5②)。
法人が株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合には、親法人について破産事件、再生事件又は更生事件が係属しているときにおける子株式会社についての破産手続開始の申立ては、親法人の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができ、子株式会社について破産事件等が係属しているときにおける親法人についての破産手続開始の申立ては、子株式会社の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができる(法5③)。
法人について破産事件等が係属している場合における当該法人の代表者についての破産手続開始の申立ては、当該法人の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができ、法人の代表者について破産事件又は再生事件が係属している場合における当該法人についての破産手続開始の申立ては、当該法人の代表者の破産事件又は再生事件が係属している地方裁判所にもすることができる(法5⑥)。
また、次の各号に掲げる者のうちいずれか一人について破産事件が係属しているときは、それぞれ当該各号に掲げる他の者についての破産手続開始の申立ては、当該破産事件が係属している地方裁判所にもすることができる(法5⑥)。
一  相互に連帯債務者の関係にある個人
二  相互に主たる債務者と保証人の関係にある個人
三  夫婦
このほか、破産債権となるべき債権を有する債権者の数が五百人以上であるときは高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所、債権者の数が千人以上であるときは、東京地方裁判所又は大阪地方裁判所にも、破産手続開始の申立てをすることができる(法5⑧⑨)。
 これらの規定にもかかわらず、東京地裁では管轄の規定を緩やかに解して営業所や住所が東京地裁の管轄区域内にない場合も破産手続開始申立を受け付けていたが、平成22年2月からは、運用が厳しくなり、営業者でない個人債務者については、東京都、 千葉県、神奈川県、埼玉県に住所がない場合には、破産手続開始申立を受け付けないこととされるようになった(到達点と課題2頁)。

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2013年4月11日 (木)

Ⅸ 申立の方式

破産手続等に関する申立て、届出、申出及び裁判所に対する報告は、特別の定めがある場合を除き、書面でしなければならない(規則1①)。ただし、破産管財人が期日においてする申立てについては、特別の定めがある場合等を除き、口頭ですることができる(規則1②)。
破産手続等に関する申立書には、当事者の氏名又は名称及び住所並びに法定代理人の氏名及び住所、申立ての趣旨、申立てを理由づける具体的な事実、立証を要する事由ごとの証拠、申立人又は代理人の郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)を記載しなければならない(規則2。ただし、破産手続開始の申立書については規則13に定めがある)。
なお、立証を要する事由についての証拠書類の写しを添付する必要がある(規則1③)。
また、通常は、破産手続開始の申立てその他の破産手続等に関する申立てをしたは、債務者の財産又は破産財団に属する財産に関する権利で登記又は登録がされたものについての登記事項証明書又は登録原簿に記載されている事項を証明した書面を提出することになるが、破産裁判所は、必要があると認めるときは、これらの書面を提出させることができる(規則1⑤)。

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2013年4月10日 (水)

Ⅷ 債務者の経済的再生

「債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ること」が破産手続きの目的として明記されているが(法1)、これは、主に免責手続の制度目的を念頭に置いたものであると思われる(大コメ16頁)。免責制度は個人の債務者についてのみ適用されるものであるから(法248①)、「経済生活の再生」とは、免責許可制度とみならず、個人債務者が種々の資格制限から解放されて経済活動に従事することを容易にする復権制度も射程に入れた理念であると考えられる。
免責許可の要件として債務者の誠実性を要するか否かは議論の対立があるが、免責制度が債務者の経済的再生に有効なものであることは異論なかろう。

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2013年4月 9日 (火)

Ⅶ 公正な手続保障

債務者と法律実務家の責務の3番目は、債務者にとっても債権者にとっても公正な手続を保障するということであるが、破産手続開始決定後は裁判所の監督下で手続が遂行されるのであるから、とりわけ、誰の監督下にもない受任から破産手続開始決定までの間で公正な手続保障を意識して執務する必要がある。そして、その最大のポイントは、迅速に破産手続開始の申立てをすべきということである。仮に破産手続きの準備中に混乱等のおそれがない場合であっても、申立てを内部的に決定してから数週間から遅くても1カ月以内には申立てをすべきであろう(マニュアル208頁)
時折、債権者からの督促が止まったことで安心してしまうのか、その後の具体的な債務整理手続に進まず、受任通知から破産手続開始の申立てまでかなり時間が経過している事案も見受けられる(マニュアル53頁)。しかしながら、債権者に対して受任通知を発している場合には、債権者も何らかの債務整理手続が進行することを期待して個別の権利行使を差し控えるのが通常であろうから、早期の申立てが求められる。
また、従業員に対する給料が未払いであった場合には、未払いになって3か月以上経過してから破産手続開始の申立てをすると、「破産手続開始前3月間」より前の給料になり、未払給料は財団債権ではなく優先的破産債権となってしまう(法149条1項・2項参照)。さらに、労働者健康福祉機構による賃金立替払制度の利用は、退職時期が破産手続開始の申立てから遡って6か月以内である必要があるから(賃金の支払の確保等に関する法律7条、同法施行令3条2号)、申立ての遅延によって労働債権者が不利益を受けることがないようにする必要がある。
このほか、手形不渡りが迫っているという状況であれば、不渡りに伴う混乱を防ぐ必要があるが、可能な限り手形が不渡りとなる日より前に申立日を設定するなど、取引債権者自身の金策等の時間を確保できるような配慮が可能かどうかについて、検討すべきである(マニュアル137頁)。

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2013年4月 8日 (月)

Ⅵ 債権者間の公平性・平等性

 債務者と法律実務家の責務の2番目は、債権者間の公平性・平等性である。破産手続は、債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整することによって、債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図ることを目的とする手続であるから(法1条)、債権者間の公平性・平等性は極めて重要である。
したがって、破産管財人により否認されることが予想されること行為があった場合には、可能であれば原状回復を促すことも必要である。しかしながら、一般的には、破産手続の代理権を満たない司法書士が是正を促しても、任意に原状回復されることは少ないと考えられるので、速やかに破産申立をして破産管財人に委ねることを優先すべきである。
また、司法書士が書類作成業務を受任した後においても、受任から申立てまでの時間が長くなればなるほど、その間に債務者が偏頗弁済等の否認対象行為を行ってしまうリスクが高くなるので(マニュアル173頁)、特段の事情もなく破産手続開始の申立てを遅延させることは、権者間の公平性・平等性を害するおそれが高くなると考えるべきである。
また、破産申立てにあたっては、破産管財人が当該事件について着目する点はどこかということを踏まえ、管財人が管財業務に速やかに着手するためにはいかなる事項を準備し、引継ぎのためにどのような資料を用意しておくかということにもむ思いを巡らせる必要がある(管財手引 17頁)。
 一方で、債権者間の公平性・平等性を追及するために、すべての事案において債権調査を正確に行う必要はない。特に、個人破産の場合であっても消費者ではなく事業者で、破産管財人が選任されることが見込まれたり、法人破産の場合には、原則として、受任通知や債権調査票を債権者に発送すべきではない。なぜなら、これらの債務者の場合には、行政監督下にある金融機関等と異なる一般債権者が多く、受任通知等を受領した倒産処理に不慣れな債権者が抜け駆けを図ろうとするあまり、公平性が害されてしまうことがあるからである。もっとも、事業廃止から数年を経過しているなどして債権者の状況が把握できず、なおかつ、債権者も既に損金処理をしていることが予想されるため秩序が乱されるおそれのある場合には、例外的に受任通知等を発送して債権調査に正確を期すことも例外的には考えられる。

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2013年4月 5日 (金)

Ⅴ 債権者全体の満足の最大化

 債務者と法律実務家の責務のひとつは、債権者全体の満足を最大化することである。司法書士が多く受任する同時廃止を予定した個人破産の場合はあまり意識することはないが、個人破産でも管財事件が見込まれる場合や法人破産の場合には債権者全体の満足の最大化を意識する必要がある。
申立代理人には、受任後破産管財人に引き継がれるまで債務者の財産が散逸することがないよう 措置を講ずる法的義務があるが(前掲東京地判平成21年2月13日) 、これは、破産申立書類の作成を受任した司法書士にも同様のことが言えるし、管財事件となることが見込まれる場合にはその要請は顕著である。これは、単に金銭の費消を防止することだけではなく、たとえば、在庫商品等の資産の内容によっては、時間の経過により著しい資産価値の劣化が生じたり、また売掛金等の換価業務を困難にさせるものがあるので相応の措置を執る必要がある(マニュアル173頁)。
しかしながら、債権者全体の満足の最大化と、一方では迅速性の要請があり、さらに言えば、十分な準備・調査をも意識する必要がある。
したがって、不動産、動産、売掛金等債権の換価業務を行うか否かという点についても、破産手続開始の申立てを決断した以上は、迅速に申立てを行って破産手続開始決定を受ける必要があるから、破産管財人に資産の保全回収を着手してもらい、債権者の個別的な権利行使を中断させる必要がある(マニュアル206頁)。
たとえば、貸金業者に対し過払金返還請求権がある場合であっても、過払金請求訴訟にはある程度の期間を要することは否定できず、時間経過による財産散逸を防ぐべく迅速な破産手続開始の申立てを行うべきとの要請と対立することとなる。特に管財事件となることが見込まれる場合はその要請は顕著である。そこで、仮にかかる財産散逸防止等の危険があるなど、破産管財人の管理に速やかに委ねたほうがよい事情があれば、取引履歴の開示請求の途上でも早期申立てを優先することを考慮すべきである(マニュアル131頁)。
 同様に、法人破産の場合にも、申立代理人が破産手続開始の申立前に債務者の財産の換価回収を行うのは、開始決定を待っていては、資産価値が急速に劣化したり、債権回収が困難になったりするなどの事情が認められるので、売掛金等を回収するのは限定的なケースに限るべきである(マニュアル92頁)。
限定的なケースの典型例は、破産申立費用(裁判所への予納金)を調達するために換価業務を行ったというケースが考えられる。なぜなら、破産手続による債権処理という債権者全体の利益にかなう手続にのせるために必要な換価業務であるからである。
このほか、過払金等を回収した一部が債務者の生活費に充てられることも許容されるものと思われるが、いたずらに破産手続開始の申立てを遅延させて過払金等の財産を著しく費消させてしまうのは行き過ぎである。
また、債権者全体の満足の最大化という観点からは、無駄な支出を抑制する必要もある。たとえば、事務所等を賃借している場合には、破産手続開始後も占有を継続すると賃料ないし賃料相当損害金の負担が生じ続け、それらは財団債権として破産財団の負担となるのであるから、当該負担の発生を防止するために、早期に賃貸借契約を解除させて賃貸人に明渡すことを検討すべき場合もある。もしも、賃貸借契約の解除が困難で破産管財人に委ねることが相当な事案であれば、日々発生する賃料を抑制するために早期の破産申立を優先することとなる。

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2013年4月 4日 (木)

Ⅳ 債務者と法律実務家の責務

 破産手続開始の申立ての多くは債務者が申し立てる自己破産であるが、破産手続きを利用する以上、債務者といえども破産法の目的と指導理念を正確に理解して手続を遂行する必要がある。すなわち、債権者全体の満足を最大化させ、債権者間の公平性・平等性を図り、債権者の権利実現のために公正な手続保障をし、債務者の経済的再生を図る(ただし債務者が個人の場合に限る)ことが必要である(マニュアル3頁)。
 このように破産手続が適正に処理されるためには、破産手続が開始する前の、債務者が経済的に破綻した段階から適正な処理がなされていることが前提となる(マニュアル2頁)。
 しかしながら、経済的に窮境の状況にある申立人たる債務者自身に上記の理を期待するのは酷である。なぜなら、債務者は法律の素人であることが多く、破産制度の趣旨や指導理念を理解して行動することに慣れていないからである。したがって、申立書類作成業務を受任した司法書士は、単に書類の作成に留まらず、破産法の制度趣旨や目的を充分理解して申立人たる債務者を指導していく必要がある。
ところが、残念ながら、広く全国から消費者破産事件の受任を勧誘し、債務者本人に面接することなく、充分な調査や準備を行わずいわゆる少額管財事件を提起する、あるいは受任してから長期間が経過して裁判所に手続を申し立てるような問題のある事例が発生している旨が報告されている(マニュアル24頁)。また、一部に散見されるような不十分な準備や粗雑な処理による申立てや手続遂行は、公正、適正を旨とする倒産処理手続の趣旨に照らしてきわめて問題である(マニュアル25頁)。
申立代理人である弁護士が法的義務に基づいた職務を遂行しない場合、債権者の信頼を裏切るだけでなく、破産手続の目的を阻害することになり、債権者や破産管財人に対する関係で損害賠償責任を負うことになりかねない(管財手引 15頁)。
実際に、東京地判平成21年2月13日(判時2036号43頁)は、自己破産の申立てを受任して債権者に受任通知を出したにもかかわらず、破産申立てまでに2年を要し、その間に会社の財産を保全するような措置を何も講じないで財産が消失してしまったという事案について、「破産申立てを受任し,その旨を債権者に通知した弁護士は,可及的速やかに破産申立てを行うことが求められ,また,破産管財人に引き継がれるまで債務者の財産が散逸することのないよう措置することが求められる。これらは,法令上明文の規定に基づく要請ではないが,上述の破産制度の趣旨から当然に求められる法的義務というべきであり,道義的な期待にとどまるものではないというべきである。そして,破産申立てを受任した弁護士が故意又は過失によりこれらの義務に違反して破産財団を構成すべき財産を減少・消失させたときには,破産管財人に対する不法行為を構成するものとして,破産管財人に対し,その減少・消失した財産の相当額につき損害賠償の責めを負うべきものと解する」と判示している。
破産手続開始の申立てについて代理権を持たず、書類作成として債務者を支援する司法書士に上記の判旨がそのまま当てはまることはないであろうが、法律実務家の責務を考えるうえで参考となる。

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2013年4月 3日 (水)

Ⅲ 利用状況

 破産手続開始の申立件数は減少傾向にあり、平成21年の申立件数は約13万 8000件と平成15年のピーク時と比べると約54.7%となっている。また、平成15年ころには9割以上を占めていた同時廃止事件は減少傾向にあり、管財事件が増加傾向となり、平成21 年は約3割の事件で破産管財人が選任されている。
 個人再生事件については、全国的には、平成13年の施行以来、申立件数は増加していたが、平成19年をピークに減少傾向となっており、平成21年の申立件数は約2万700件となっている。また、小規模個人再生事件が9割以上を占め、原則的な手続となっている。
以上のように、破産事件、個人再生事件ともに申立件数は減少傾向にあり、債務整理の普及、政府による多重債務対策、貸金業法の改正などの多重債務問題に対する取組みは一定の成果を挙げていると思われる。
日本弁護士連合会消費者問題対策委員会が行った『2008年破産事件及び個人再生事件記録調査』により1997年調査からの傾向を見ると、生活苦・低所得者(45%→64%)、失業・転職 (10%→15%)、給料の減少(6%→11%)、住宅購入(5%→10%)が増加しており、「不況による生活苦型破産」が増加しているとされ、他方、浪費・遊興費(7%)、投資(1%)、ギャンブル(4%)の比率は一貫して低いとされている(到達点と課題7頁)。
また、同調査によれば、低所得、給料の減少などを原因とする「生活苦型破産」の破産事件が増加する傾向にあり、少ない負債額、債権者数でも破産をする傾向が強くなっているとされる。また、個人再生事件においても、再生債務者における非正規労働者の割合は増加しており、また、少ない負債額、債権者数でも個人再生を行う傾向にあり、長引く不況の影響はここでも見られるとしている。そして、同調査は、「『一定割合の人が不可避的に倒産に追い込まれてしまっている』という社会構造上の間題点が指摘される。」とも指摘している。
そして、多重債務者の実情においては、生活苦などによる破綻が増加していることから、多重債務問題の背景にある貧困問題の解決に向けた取組みが必要と言えるとしている(到達点と課題11頁)。

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2013年4月 2日 (火)

Ⅱ 改正破産法の要旨

 平成16年改正破産法(平成16年法律第75号)が平成17年1月1日に施行されているが、改正破産法は前述の目的を達するために、大正11年に制定された破産法(大正11年法律第71号)を全面的に見直しこれに代わるものとして制定され、これにより、平成8年以来の倒産法制の全体的な見直し作業が完結した。
 この改正作業において、消費者破産について旧法の主な問題的は次のようなものであった。
 ① 破産法が主として事業者の破産を想定しているため、消費者破産に対する手続的な手当が十分でないこと
 ② 自由財産の範囲が限定的であり、破産者の経済生活の再生に不十分であること
 ③ 免責手続中の個別執行が可能であり、破産者の経済生活の再生に支障を来すことがあること
 そこで、改正破産法は、消費者破産について、主に次のとおりの改正を行った。
 ① 自由財産の範囲の拡張
 破産者の生活保障や経済生活の再生を図るため、標準的な世帯の必要生計費の3か月分の金銭を自由財産とするとともに、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた自由財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる制度を導入した。
 ② 破産手続と免責手続の一体化
 消費者の破産手続開始の申立ては、免責を得ることを主たる目的としているという実態から、個人が破産手続開始の申立てをした場合には、原則として、同時に免責許可の申立をしたものとみなすものとした(法248④)。
 ③ 免責手続中の強制執行の禁止
  破産者の経済生活の再生を図るため、免責許可の申立てがあったときは、破産手続の終了後であっても免責許可の申立てについての裁判が確定するまでの間は破産債権にもとづく強制執行等を禁止した(法249①)。
 ④ 免責不許可事由等の調査に対する破産者の協力義務
 免責不許可事由等についての調査を有効かつ効率的に行うとともに、手続の公正さを確保するため、破産者に裁判所または破産管財人が行う免責不許可事由についての調査に協力する義務を課した(法250②)。
 ⑤ 非免責債権の範囲の拡張
 免責により破産者が得る利益と債権者が被る不利益との調整を図るため、破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権、破産者の扶養義務等に係る請求権を新たに非免責債権とした。

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2013年4月 1日 (月)

Ⅰ 破産制度の目的

 破産手続は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続であり、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的としている(法1)。破産手続開始の申立は債権者又は債務者等がすることができ(法18①)、債務者自らが申し立てる場合は自己破産と呼ばれている。
 破産手続を開始するには債務者が支払不能にあることが必要である(法15①)。債務者が法人である場合には、存立中の合名会社及び合資会社を除き、当該法人が、「支払不能又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)」であることが必要である(法16①②)。また、債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定される(法15②)。

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