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2013年7月 9日 (火)

他の手続の失効 1

 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行又は企業担保権の実行で、破産債権若しくは財団債権に基づくもの又は破産債権若しくは財団債権を被担保債権とするものは、することができない(法42①)。
また、破産財団に属する財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行及び企業担保権の実行の手続で、既にされているものは、破産財団に対してはその効力を失う。ただし、強制執行又は一般の先取特権の実行の手続については、破産管財人において破産財団のためにその手続を続行することを妨げない(法42②)。
このほか、破産手続開始の決定があったときは、破産債権又は財団債権に基づく財産開示手続(民事執行法第196条)の申立てはすることができず、破産債権又は財団債権に基づく財産開示手続はその効力を失う(法42⑥)。

東京高裁平成21年1月8日(金融法務事情1868号59頁、判例タイムズ1302号290頁)
破産手続開始決定がされた場合に、当然に債権差押命令を取り消すべきであるとはいえないものの、破産管財人が執行手続の取消しを上申した場合に限っては、債権差押命令の取消しによる差押債権者の不利益が限りなく小さいのに比べ、その取消しの必要性が事実上のものであるとはいえ存在することにかんがみ、債権差押命令を取り消すという原審の取扱いも是認し得るものと解される等として、抗告を棄却した事例。
「債務者に対して破産手続開始決定がされ、その結果、抗告人の債務者に対する上記請求債権は破産債権となり、債務者の第三債務者に対する敷金返還請求権は破産財団に属する財産となったから、破産法42条2項により、本件差押命令は破産財団に対して効力を失ったものであるが,これは、破産財団に対してのみ、その効力を失うに止まり、絶対的に無効となるものではなく、破産手続開始決定が取り消されたり、破産手続が廃止されるなどして、破産財団が消滅した場合には、その効力を当然に回復するものと解され、同項ただし書きは、破産管財人が、強制執行を続行することを妨げないとして、破産財団に対して無効となった強制執行手続を回復して続行することを予定しているものといえる。また、民事執行法上、破産手続開始決定がされた場合に、強制執行等の手続を取消し得る旨の明文の規定は存在していないことに照らせば、破産手続開始決定がされたことにより、既に発令されている債権差押命令を当然に取り消すべきであるとはいえず、民事執行法40条の適用はないと解される。
 他方、破産手続開始決定がされた場合に、形式的には強制執行手続と破産手続とが併存していることから、特に、債権差押命令では第三債務者において権利関係が必ずしも簡明であるとは言い難く、破産管財人が差押債権を自由に処分することができるとはいえ、その権利行使に事実上の障害があることは容易に推測されるところであり、その執行手続の取消しに対する事実上の必要性があることは否定できない。 
 また、破産管財人が、執行裁判所に対し債権差押命令について執行手続の取消しを上申するのは、当該破産手続が廃止あるいは取消しなどにより終了する可能性はなく、かつ、強制執行手続の続行も必要ではないと判断した上、差押債権につき換価あるいは取立てなどの具体的な処分をすることを予定している場合であると考えられる。破産手続開始決定がされたことにより、債権差押命令を取り消すとすれば、差押債権者は、破産手続が廃止されるなどして破産財団が消滅した場合に効力を回復し得たはずの強制執行手続がなくなるため、再度の強制執行の申立てをしなければならない不利益を被ることになるが、破産管財人が執行手続の取消しを上申するのは、上記のとおり、破産財団が消滅して強制執行手続の効力が回復することがほとんど想定し得ない場合に限られるから、差押債権者が不利益を被る可能性もまた限りなく小さいものといえる。
 したがって、破産手続開始決定がされた場合に、当然に債権差押命令を取り消すべきであるとはいえないものの、破産管財人が執行手続の取消しを上申した場合に限っては、債権差押命令の取消しによる差押債権者の不利益が限りなく小さいのに比べ、その取消しの必要性が事実上のものであるとはいえ存在することにかんがみ、債権差押命令を取り消すという原審の取扱いも是認し得るものと解される。」

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