« 2014年8月 | トップページ | 2014年10月 »

2014年9月

2014年9月10日 (水)

否認権の対象となる行為 ~詐害行為否認(法160条1項)~

 破産者を害する行為として、次のものが規定されている。

(1)財産減少行為(担保の供与または債務の消滅に関する行為を除く) (法160条1項)

  具体的には、次の行為である。
① 破産者が破産債権者を害することを知ってした行為(法160条1項1号)。
 ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
 このように、破産者の主観的な詐害意思が必要となるため、「故意否認」とも呼ばれている。
 善意の立証責任は利益を受けた者にある。
 たとえば、既に借受金について期限の利益を喪失して一括弁済を求められていたり、主債務者が破産申立をして保証債務の履行を求められている保証人が、その直後に財産減少行為に値する贈与を行っていた場合、破産管財人は、破産者が破産債権者を害することを知っていたことについて、当該贈与を否認する場合には、贈与時に既に期限の利益を喪失していたり、主債務者が破産申立てをしていたという客観的な状況を主張立証するものと考えられる。
 一方、受益者は、破産債権者を害する事実を知らなかったことを主張立証する必要があるが、受益者が破産者の親族であったり、商取引上の親密な関係にある場合は、善意の立証に困難を伴うと想像される。
 なお、本号の行為については支払停止の時期の前後を問わない(同号ただし書。なお、法176条の制限がある)。
 「支払の停止」とは、債務者が資力欠乏のため債務の支払いをすることができないと考えてその旨を明示的または黙示的に外部に表示する行為をいうものと解されている。
 債務者が債務整理の方法等について債務者から相談を受けた弁護士との間で破産申立ての方針を決めただけでは、他に特段の事情のない限り、いまだ内部的に支払停止の方針を決めたにとどまり、債務の支払いをすることができない旨を外部に表示する行為をしたとすることはできないものというべきである(最判昭和60年2月14日(集民144号109頁、判時1149号159頁、判タ553号150頁))。
 店舗を閉鎖して退去した行為(東京高判昭和36年6月30日(判時272号19頁))、退職金をもって債務整理をする意図で退職願いを提出する行為(大阪高判昭和57年7月27日(判タ487号166頁))、債務者の代理人である弁護士が債権者一般に対して債務整理開始通知を送付した行為(最判平成24年10月19日(集民241号199頁、判時2169号9頁))はいずれも「支払の停止」と認定されている。

② 破産者が支払いの停止または破産手続開始の申立てがあった後にした破産債権者を害する行為(同項2号)。
 ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、支払いの停止等があったことおよび破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない(同号ただし書)。

 善意の立証責任は利益を受けた者にある。  このように、「支払の停止又は破産手続開始の申立てがあった」後は、破産者が債権者を害することにつき善意であることは考えられないため、破産者の詐害意思の要件を不要としている。

 ところで、破産法160条1項柱書では、同項で定める上記①、②の詐害行為否認の対象となる行為から「担保の供与又は債務の消滅に関する行為」を除外し、これらの行為は原則として偏頗行為(法162条)の対象としている。しかしながら、「担保の供与又は債務の消滅に関する行為」は破産法160条2項、3項から除外されていないと読むべきである。したがって、2項では債務消滅行為をして行われた過大な代物弁済を詐害行為否認の対象とし、3項では無償行為の否認の対象として担保提供もその範疇に含めていると解される。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

全日本不動産協会静岡県本部・浜松相談会

私が顧問(?)をさせていただいている全日本不動産協会静岡県本部の定例相談会@浜松市役所。

今日もいろいろな相談がありました。定番の相続から、賃貸借のトラブル(明渡請求)、財産分与による所有権移転登記手続請求、遺言など。

同じく顧問(?)の弁護士さん、税理士さん等と忙しい一日でした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年9月 4日 (木)

大家さんのための賃料回収相談会事前勉強会

Photo午後6時から、浜松支部が全日本不動産協会静岡県本部と共催で10月4日に開催する「大家さんのための賃料回収相談会」の事前勉強会。約30人参加。

まだ経験の少ないHくんの事例発表を皮切りに、雑ぱくな勉強会。本音でいろいろな意見が出て、初学者には参考になったと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年9月 2日 (火)

否認の類型

 破産法は、詐害行為否認(法160条)と偏頗行為否認(法162条)の二つの類型の否認を定めている。なお、破産法161条の「相当の対価を得てした財産の処分行為の否認」は詐害行為否認の特則と位置づけられる。また、同法164条の「権利変動の対抗要件の否認」は権利変動の原因となる法律行為とは別に、対抗要件具備行為について独立して否認することができることを定めたものである。

 対抗要件具備行為を否認の対象としている趣旨は、最判昭和45年8月20日(民集24巻9号1339頁、判時606号32頁、判タ253号160頁)では次のように説明されている。

「本来、不動産の物権変動は、対抗要件を具備しない以上第三者に対抗しえないものであるから、これを具備しない不動産の物権変動はこれをもつて破産財団にその効力を及ぼしえないものである。したがつて、この要件を具備することは、破産財団の増減という観点からは、権利変動の原因たる法律行為と同様破産債権者を害する結果を生じうべきものであり、かかる要件の充足行為も、元来同法(筆者注・旧法)72条の一般規定によつて否認の対象となしうべきものである。しかし、対抗要件なるものが、すでに着手された権利変動を完成する行為であることを考えれば、原因行為そのものに否認の理由がないかぎり、できるだけこれを具備させることによつて当事者に所期の目的を達せしめるのが相当である。それゆえ、破産法は74条において、一定の要件を充たす場合にのみ、とくにこれを否認しうることとしたのである。破産法が、72条のほかにとくに74条をおいて対抗要件の否認について規定したのも、その趣旨は以上のように解せられるのである。そうであれば、一般に、破産管財人が同法72条に基づいて当該物権変動を否認し、これを原因とする登記の抹消を訴求している場合において、同人の主張および弁論の全趣旨のうちに同法74条の要件を充たす事情があらわれているならば、もし、同法72条に基づく原因行為の否認が認容されないときは、原告たる破産管財人において、さらに同法74条に基づきその対抗要件をも否認せんとするものであることは、ほとんど疑いを容れる余地がないのである」。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2014年9月 1日 (月)

否認権行使の様態

 否認権とは、破産手続開始より前に、破産者が不当に財産を減少させるなどの破産債権者を害する行為を行っていたり、破産債権者間の公平を害する行為を行っていた場合に、破産管財人がその行為の効力を否定し、破産財団の回復を図るために認められた破産管財人の権利である。

 否認権は、訴え、否認の請求又は抗弁によって、破産管財人が行使する(法173条1項)。 破産管財人が否認該当行為を発見した場合には、まず、受益者または転得者に財産の返還等を求めて交渉するのが通例であると思われるが、それによっても破産財団の回復をすることができない場合には、否認権の行使をすることとなる。

 否認権の行使の様態には次の3つがある。

(1)訴え
 訴えによる否認権の行使は、破産管財人を原告、受益者または転得者を被告として提起される。この管轄裁判所は破産裁判所である(法173条2項)。

(2)否認の請求
 訴えよりも簡易な手続による否認権行使の方法として、否認の請求を申し立てる方法を認めている(法174条、175条)。 否認の請求をするときは、破産管財人は、その原因となる事実を疎明しなければならない(法174条1項)。 否認の請求を認容し、またはこれを棄却する裁判は、理由を付した決定でしなければならず、この場合、裁判所は、相手方又は転得者を審尋しなければならない(法174条2項、3項)。  否認の請求を認容する決定に不服がある者は、その送達を受けた日から一月の不変期間内に、異議の訴えを提起することができる(法175条1項)。 このため、異議の訴えの提起が予想されるほど相手方が争っている場合には、否認の請求ではなくて、否認の訴えを提起すべきである、と言われている。

(3)抗弁
 否認権の行使は抗弁によってもすることができる(法173条1項)。たとえば、破産手続開始前に破産者が不動産を売却したが買受人に引き渡しをしなかったような場合において、その後、破産手続開始決定があり、買受人が、破産管財人を被告として不動産の引き渡しを請求してきたときに、破産管財人が売買契約の否認を抗弁として主張するような場合が考えられる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2014年8月 | トップページ | 2014年10月 »