« 会社が消えた? | トップページ | 自筆証書遺言を貸金庫にしまってはならない理由 »

2015年1月 6日 (火)

自筆証書遺言と公正証書遺言の効力は同列か

Af9980011802 法律上、公正証書遺言も自筆証書遺言も、立派な遺言であり、効力としては優劣がないことになっています。

 しかし、実際に、遺言者が死亡したことにより預金を解約するために遺言を金融機関に持ち込んでみると、自筆証書遺言の場合、金融機関によっては、遺言が存在しているにもかかわらず、相続人全員の同意書(印鑑証明書付)を求められることがあります。

 これは、たとえ検認を受けた自筆証書遺言であっても、検認によって有効・無効が確定したわけではないため、無効である可能性を秘めた自筆証書遺言で預金の解約に応じるわけにはいかないという理由によるものと思われます。

 ところで、遺言が有効であるのか無効であるのかが争われるケースの多くは、遺言が遺言者本人の意思によって作成されたものであるのかどうかという点が問題とされています。

 例えば、高齢者が遺言を作成した場合には、「遺言作成当時、遺言者は認知症により判断能力が低下していたのであるから、こんな複雑な内容の遺言を作成できる状態ではなかった筈だ」などという理由で、「本人の意思に基づかずに作成されたものである」という争い方をするわけです。

 もっとも、このような争いが生じるのは遺言が効力を生じた後、つまり、遺言者が死亡した後ですから、遺言作成当時に本人にどの程度の判断能力があったのかは再現することが困難です。

 そこで、本人の意思にもとづいて作成されたものか否かを裁判所がどのような観点で見ているか考えてみますと、自筆証書遺言については識字能力、つまり、本人が書いた文字にどの程度誤字があるのか、意味が通る文章になっているのか、ということが中心のようです。

 その点、公正証書遺言は公証人に遺言の趣旨を話して伝えるということが要件となっていますので、識字能力という観点とは異なるようです。 それに加え、遺言の内容が、遺言者が当時話していたことや当時の行動と合致するものであるか矛盾するものであるか、遺言作成当時、遺言の内容に影響を及ぼすような者がどのように関与していたか(例えば、遺言により大部分の財産を相続する者が同席している場所で作成されたような場合)、というような事情も判断材料のひとつになるようです。

 これらの点について、公正証書遺言は公証人の面前で遺言内容を公証人に話し、それを公証人が書面にして遺言者に読み聴かせ、しかも、証人2人以上が立ち会わなければならないのに対し、自筆証書遺言は密室でも作成することができることから、自筆証書遺言については公正証書遺言よりも信頼性が低いと考えている金融機関があるのです。

 もちろん、こうした自筆証書遺言では預金の解約に応じない金融機関の取扱いに対しては、訴訟を起こしてあくまでも解約を請求するという選択肢もないわけではありませんが、時間も費用もかかってしまいます。そんなことが予想されるのであれば、最初から公正証書遺言を作っておけばいいだけの話です。

 このように、実際の取引社会においては、自筆証書遺言に比較して、公正証書遺言の信頼性の高さが厳然としているのです。

(写真は筆者ではありません)

|

« 会社が消えた? | トップページ | 自筆証書遺言を貸金庫にしまってはならない理由 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/109222/58494443

この記事へのトラックバック一覧です: 自筆証書遺言と公正証書遺言の効力は同列か:

« 会社が消えた? | トップページ | 自筆証書遺言を貸金庫にしまってはならない理由 »