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2015年1月29日 (木)

預金はどのように相続されるか

Af0100028091 銀行などの預貯金は口座名義人の相続の発生により凍結され、実務では、相続人全員の同意書の提出により預金を解約して現金化する取扱いが多くみられます。ですから、相続人全員の同意がもらえる場合は問題ないのですが、相続人のうち、手続きに協力しない方がいる場合は預金を解約することができなくなってしまいます。

この点について、法律的に考えてみました。

 最判平成16年4月20日は、預貯金などの金銭債権は、相続開始と同時に当然に分割され、各相続人に法定相続分に応じて帰属すると判示しています。したがって、遺産分割を待つまでもなく法定相続分に応じた払戻し請求をすることが法的には可能です。
 しかし、銀行実務では、この判決が出された後も、相続人全員の同意書の提出がなければ相続人1人からの払戻請求には応じていないようです。銀行が相続紛争に巻き込まれたくないと考えるのは仕方ないかもしれないが、最高裁判例が出ているのであるから判例にしたがった取扱いをする方が紛争に巻き込まれる可能性は低いと考えられますが、銀行の取扱いは変わっていません。

 しかし、預貯金の相続は例外があります。最判平成22.10.8は次のように判示しています。

「郵便貯金法は,定額郵便貯金につき,一定の据置期間を定め,分割払戻しをしないとの条件で一定の金額を一時に預入するものと定め(7条1項3号),預入 金額も一定の金額に限定している(同条2項,郵便貯金規則83条の11)。同法が定額郵便貯金を上記のような制限の下に預け入れられる貯金として定める趣旨は,多数の預金者を対象とした大量の事務処理を迅速かつ画一的に処理する必要上,預入金額を一定額に限定し,貯金の管理を容易にして,定額郵便貯金に係 る事務の定型化,簡素化を図ることにある。ところが,定額郵便貯金債権が相続により分割されると解すると,それに応じた利子を含めた債権額の計算が必要に なる事態を生じかねず,定額郵便貯金に係る事務の定型化,簡素化を図るという趣旨に反する。他方,同債権が相続により分割されると解したとしても,同債権 には上記条件が付されている以上,共同相続人は共同して全額の払戻しを求めざるを得ず,単独でこれを行使する余地はないのであるから,そのように解する意 義は乏しい。これらの点にかんがみれば,同法は同債権の分割を許容するものではなく,同債権は,その預金者が死亡したからといって,相続開始と同時に当然 に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。そうであれば,同債権の最終的な帰属は,遺産分割の手続において決せられるべきことになるの であるから,遺産分割の前提問題として,民事訴訟の手続において,同債権が遺産に属するか否かを決する必要性も認められるというべきである。
 そうすると,共同相続人間において,定額郵便貯金債権が現に被相続人の遺産に属することの確認を求める訴えについては,その帰属に争いがある限り,確認の利益があるというべきである。」

 ところで、相続財産のうち、現金も相続開始と同時に法定相続分で分割されるのでしょうか。
 これについては、最判平成4年4月10日は、相続人の一人が相続財産たる現金を相続人名義で預金していたケースで、「現金は、被相続人の死亡により他の動産、不動産とともに相続人らの共有財産となるから、遺産分割をせずに法定相続分に応じた金員の引き渡しを求めることはできない」という趣旨の判断をしま した。

 この結果、預貯金のような債権は相続と同時に分割され、現金は分割されないということになりますが、この違いの根拠は、債権と動産の違いということでしょう。

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