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2016年10月

2016年10月23日 (日)

和歌山訴訟控訴審判決を読め!

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 本年6月27日に言い渡された所謂和歌山訴訟の最高裁判決は、司法書士法3条1項7号に定める裁判外の和解の代理業務の範囲について、債権者が主張している債権額を基準に考えるべきだと判示した。

 上記の判決は司法書士法3条1項7号の解釈についてのみ取り上げ、そのほかに双方が上告受理申立てをした部分については審理の対象にしなかった。そのため、上記の判決の異議としては「債権者主張額説に確定した」という捉え方が一般的であると思われる。

 しかし、双方が上告受理申し立てをしていた部分は広範に及んでいた。ところが、最高裁が「裁判外の和解の代理業務の範囲」のみを審理の対象としたことから、その余の部分は、最高裁が審理の対象としなかった時点で高裁判決が確定していることに注意しなければならない。

 そこで、高裁判決を読んでみると極めて興味深い判断がなされている。特に司法書士の裁判書類作成関係業務(いわゆる本人訴訟支援)とはどのようなものかを明確に定義づけ、その業務の進め方について法律専門職としての善管注意義務を、「司法書士としての説明・助言」、「処理方針」、「引き直し計算の選択」、「過払金の回収額」、「報酬の考え方」等について具体的に説明している。

 判決の中で、当事者となった司法書士が行った裁判書類作成業務(当該業務は弁護士法72条違反と判断されているので「裁判書類作成業務」と言うのは間違っているかもしれないが)について時系列で事実認定している行がある。まずそれを読むと、過払事件の裁判書類作成業務であれば、まあ、このような方法で行っている司法書士が多いだろうな、という印象を抱く方が多いと思われる(判断としては弁護士法72条違反とされているのだが)。

 ところが、その後に出てくる善管注意義務についての判断を読んでからもう一度上記業務の事実経過を読むと、当該司法書士の行った業務がいかに善管注意義務を満たしていないかが浮き彫りになるのである。

 大阪高裁判決は、司法書士を法律専門職と位置づけて高度な善管注意義務を求めている。逆に言えば、それだけ司法書士の職責を重く見ているのであり、そういう意味では司法書士業界では有名な高松高裁判決より一歩前進しているのではなかろうか。

そういう視点を持って大阪高裁判決を読むと、実に興味深いのである。

だから、「和歌山訴訟控訴審判決を読め!」なのである。

ホテルロコアナハ(沖縄)にて

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2016年10月 6日 (木)

いわゆる期限付きの解散決議による登記に申請について

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司法書士の古橋清二です。

登記関係者が実務の参考にしている雑誌で「登記研究」というものがあります。その「登記研究」755号に、いわゆる期限付きの解散決議による登記に申請について、株主総会決議から2週間以上先の日を解散日として決議され、株主総会の決議により解散した旨の登記が申請された場合は受理すべきではない旨の記載があります。

その場合には、当該決議は「存続期間の設定」を決議したものとみなし、存続期間の設定登記を申請させて解散し登記を受理すべきであると書かれています。

しかしながら、この取り扱いは疑問です。

まず、条件付き又は期限付き決議は有効になし得ます。もっとも、1年以上先の日付の場合には、その間に定時株主総会が開催されればそこで決議すけばいいため、そんな先の日付を期限とする決議はできないと考える余地もあると思います。

また、実務的にも、「解散」を除き、2週間を超える先の期限で効力を発生させる決議・登記は一般的にされています。ですから、「解散」の場合のみ「存続期間の設定」を決議したものとみなすのはおおいに疑問です。

株主総会を開催するためには多大なコストと精神的も大きな負担を強いられるため、臨時総会を開かずに定時株主総会でいろいろな決議をしてしまおうと考えるのは無理からぬことですので、今回の記事の内容は大いに疑問があるわけです。

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2016年10月 5日 (水)

時効取得完成後に所有者が相続登記をしている場合に時効取得による所有権移転登記を申請する際の登記義務者

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司法書士の古橋清二です。今日の登記相談馮です。

相談の要旨

 
 

 

 

Y1が所有していた農地について、平成5年にXが所有の意思をもって占有を開始し、平成25年に20年の取得時効の期間が満了した。

 

Y1はその後死亡し、相続人であるY2、Y3、Y4は遺産分割協議を行ってY2がこの農地を取得し、相続登記も完了している。

 

この土地について、Xが時効取得を原因とする所有権移転登記を申請する場合は、Y2の相続登記が時効完成の前であった場合も後であった場合も、いずれも、平成5年〇月〇日時効取得を原因として、登記権利者をX、登記義務者をY2として申請すればよいと考えられるが如何か。

 

 

 

 

相談者の意見

 
 

 

 

Y2の相続登記が時効完成後である場合は登記義務者をY2として申請する旨の質疑応答が存在する(登記研究401号)。これは、Y2はY1の登記義務を承継しており、加えてY2の所有権登記を抹消する実益がないからであると思われる。

 

では、Y2の相続登記が時効完成前である場合はどうか。この場合にも、上記と同じ理由により登記義務者をY2として申請することができると思われる。

 

 なお、時効完成による所有権移転登記義務はY2、Y3、Y4全員が負っているから全員が登記義務者となるべきであり、そうであるならば一旦Y2の所有権登記を抹消したうえで時効取得による所有権移転登記を申請すべきであるという考え方も成り立ち得る。

 

 しかしながら、上記質疑応答の根底には、遺産分割によって当該物件の所有権を取得した者は当該物件についての処分権限(時効取得による所有権移転登記義務を含む)を単独で承継しているものと解して無益な手続きを極力排除するという考え方があると思われるので、Y3、Y4を登記手続に関与させるまでもないと考えられる。

 

 

 

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