カテゴリー「おまとめローン問題」の記事

2006年6月20日 (火)

8 平成15年司法書士法改正と登記代理権論の再考

 平成15年司法書士法改正は、能力担保措置を講じた上で、司法書士の業務として簡裁訴訟代理関係業務を認めるに至った。立法関係当局の法解釈から言えば、司法書士制度が始まって以来初めて、司法書士が他人の法律実体関係に対し、権利の発生、消滅、変更等についての代理人として関与することを認めたこととなろう。

 翻ってみれば、おまとめローンの担保設定時において債務者に対して実質的な助言をすべしということは、登記代理という業務の傍らで、債務者の債務整理に関して実体関係に立ち入ることに他ならず、そのいずれの業務も同一の司法書士が行おうとするならば、改めて双方代理の問題を考察する必要性があると言えよう。

 そして、おまとめローンにおいて指摘したような種々の問題が内在する登記業務に関しては双方代理を回避すべきことも検討しなければならないであろう。ここに、古くて新しい問題として登記代理権論を再度考察すべき必要性を見いだすことができるのである。

「司法書士の登記事務が質的に変化・高度化しつつある現状では、訴訟事務における執務の在り方とも関連して、司法書士は一方当事者の受託者として不動産登記事務を執り行うことを原則的形態とすべきではあるまいか。<中略>結局のところ、法律専門家としての弁護士と司法書士との違いは、その執務態様にあるのではなく、業務の範囲にある、と考える」

 これは、双方代理における「同意」の実質化を説かれた田中克志教授が「不実登記責任論・入門」20)の末尾に書かれた一文である。まことに示唆に富む一節である。

20)前掲(16)参照

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2006年6月19日 (月)

7 登記代理権論概念の進化と法との乖離(双方代理に関して)

 登記申請行為自体が民法108条で禁止されている双方代理形式でなされた場合、当該申請を受理するという結論は、判例、学説、実務先例間で一致している。これは、かつては、登記申請行為の代理の実質は代理というよりもむしろ「代行」であり、「代行」という限りは双方代理禁止の法理が働かないという考え方が根底にあったものと考えられる。

 しかしながら、司法書士が社会的に信認された立会人として市民相互の経済取引に参加し、職業人固有の技能を発揮して不動産の物権の得喪や変更の事実を聴取して心証を得て確認し、確認した事実を登記申請という形で公簿に登載するという公証登記主義理論10)が司法書士の基礎事実の確認義務を呈示したことをきっかけとして、昭和53年には登記代理を「前段の事務」、「後段の事務」に分類することにより事務の前段の重要性(実体関係に対する助言等)を重視する考え方が示され11)、司法書士間の議論は、司法書士が登記代理を契機として何らかのかたちで実体関係に関与するという方向性に向かった。

 また、研究者の間においても、登記代理に関して「純私法説」、「公法寄り折衷説」、「純公法説」の三説に分類し12)、そのうち「純私法説」の立場に立っても「登記申請は当事者間に対立を欠くから、一〇八条但書に該当する」と端的に説く学説13)もあった。さらに、登記の出頭申請行為の代理のみならずいわゆる「前段の事務」についても両者の代理人となるというのであれば、実質的内容の部分では登記権利者の代理人と解するのが合理的であるという「登記権利者代理人説」が示されるに至った14)

 さらに、民法108条の趣旨に立ち返って、広く利害の衝突のない場合には双方代理は許容されるし、予め本人が双方代理をなすことにつき同意している場合には公序良俗に反するというのでもなき限り双方代理も有効な代理行為として扱われるという考え方も示されている15)。ただし、司法書士が実体関係にかかわってしまい、双方代理をするについてのとりわけ登記義務者の事前の同意のワクを越えてしまってはいないか注意が必要である旨を、同時に指摘している。また、双方代理についての「同意」についても、登記代理委任契約により司法書士が負うべき義務の内容が委任者に周知され、他方当事者との特別な関係などが開示されるなどの「同意」の実質化が欠けているのではないかという指摘も行われている16)

 以上のように、登記代理をめぐる法概念が徐々に進化していく一方で、立法関係当局は、登記代理の内容は、昭和42年の司法書士法改正17)においても、昭和53年の司法書士法改正18)においても司法書士の業務の範囲が拡張されたわけではないと説明するにとどまり19)、司法書士が登記に関連して実体関係に関わることについて肯定的な態度を見せていなかった。また、司法書士は、従前から裁判所に提出する書類の作成業務をも業務範囲としているが、当該業務に関する司法書士の業務に対する立法関係当局の考え方は、高松高判(昭和54年6月11日判決 判時946号129頁)に示されるように、法律常識的な知識に基づく整序的な事項に限って行われるべきものであり、代理その他の方法で他人間の法律関係に立ち入るが如きは司法書士の業務範囲を超えると考えているようである。

 したがって、こうした立法関係当局における考え方から言えば、登記代理といえども実体関係に関与するという行為は司法書士の業務範囲として捉えていないものと思われる。

10)「不動産登記の原理」木茂鉄・木茂隆雄 昭和48年 法律文化社

11)「司法書士制度の現状」前沢六雄 昭和54年 「土地問題双書」(日本土地法学会)所収

12)「代理人による登記申請と民法一〇八条」椿寿夫 不動産登記先例百選(別冊ジュリスト30号)12頁 昭和45年 有斐閣

13)「注釈民法(4)」86頁 於保不二雄編

14)「不動産登記と司法書士職能」住吉博 昭和61年 テイハン

15)「登記代理委任契約論」37頁 山崎敏彦 昭和63年 一粒社

16)「不実登記責任論・入門」192頁 田中克志 平成4年 信山社

17)昭和42年の司法書士法改正によって職務規定として「登記に関する手続を代わってすること」が定められた。それまでは「書類を代わって作成すること」が職務として定められていたにすぎない。

18)昭和53年の司法書士法改正により初めて「代理」の用語が使用され、「登記に関する手続について代理すること」とされた。

19)昭和42年改正に関しては「これによって司法書士の業務の範囲が従前以上に拡張されることになったわけではない」(「日司連だより」昭和421020日 内野芳富法務省民事局第三課係長発言)と説明されているし、昭和53年改正に関しては「表現を整理」したものであることが説明されている(ジュリスト669号)。

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2006年6月18日 (日)

6 おまとめローンと司法書士業務

  ところで、「おまとめローン」に関する別の側面の問題関心として、司法書士が登記代理人として関与している実態がある。すなわち、おまとめローンの融資に際し、司法書士が、債務者の自宅等に対する根抵当権設定等の登記申請手続きの代理業務を受任しているのである。

  そこで、まず、登記代理人としてどのような責務(義務と倫理)が要請させているのか、おまとめローンに関連して検討してみることとする。

(1)受任の可否

   まず、司法書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならないとされており(司法書士法2条)、その制度趣旨は、登記、供託及び訴訟等に関する手続の適正かつ円滑な実施に資し、もって国民の権利の保護に寄与することを目的としている(同法1条)。さらに、司法書士は、その使命が、国民の権利の擁護と公正な社会の実現にあることを自覚し、その達成に努めるものとされ(司法書士倫理1条)、信義に基づき、公正かつ誠実に職務を行わなければならない(同2条)。

   したがって、おまとめローンに関する登記手続きの依頼があった場合には、司法書士は、公正な立場で、究極的には国民の権利を保護することを目的として行動することが要請されている。

   さらに、司法書士は、依頼の趣旨を実現するために、的確な法律判断に基づき、説明及び助言をしなければならず(同9条)、違法若しくは不正な行為を助長してはならない(同15条)。加えて、司法書士は、依頼の趣旨が、その目的又は手段若しくは方法において不正の疑いがある場合には、事件を受任してはならないものとされ(同25条)、受任した事件に関し、相手方に代理人がないときは、その無知又は誤解に乗じて不当に不利益に陥れてはならないものとされている(同40条1項)。

   そのため、おまとめローンに関する担保設定の被担保債権が、利息制限法所定の利率を超過する高利のものである場合には、司法書士は、当該被担保債権が違法であり、法の保護に値しないものであること、当該債務を担保するための登記手続は不正なものであり、債務者を不利益に陥らせるおそれのあるものであることから、当該登記手続を受任してはならないのである。

   なお、特別法により定められている利息が利息制限法所定の率を超える場合においては、当該利率を利息の定めとして、抵当権設定の登記をすることができる旨の登記先例(8)があるが、これは、登記実行の可否について回答されたものであり、司法書士の受任の可否について回答されたものではないことに留意すべきである。むしろ、利息制限法を超過する利率を利息制限法の上限利率に置き換えて登記を申請する行為は、事実と異なる登記原因証明情報を提供することに他ならず、当該所為は、不動産登記法61条(登記原因証明情報の提供)の趣旨に反し、また、司法書士法2条、司法書士倫理54条にも反することとなる。

   また、根抵当権の登記に関しては、個々の被担保債権の内容そのものは登記に反映されることはないが、「おまとめローン」に関する根抵当権設定の登記は特定の司法書士が反復継続して受任しているという実態があり、そうであるならば、当該債権者の融資条件が利息制限法を超過したものであるか否かは、当該司法書士が経験則として周知している筈である。したがって、当事者の意思の確認の一環として、被担保債権に、法の保護に値しない利息制限法の上限利率を超過した債権が含まれることがあるのかを確認すべき義務があるものと考えられる。そして、上記のような債権が被担保債権に含まれるということであれば、やはり、当該登記手続を受任してはならないと考えられる。

(2)債務者に対する助言の義務

   司法書士は、登記手続を受任した場合には、依頼者の意思を尊重し、権利の保護を図るとともに、紛争の発生の防止に努めなければならず(司法書士倫理52条)、登記手続を受任し又は相談に応じる場合には、当事者間の公平を確保するように努めなければならない(同53条1項)。また、司法書士は、前述の場合においては、必要な情報を開示し、助言する等、後見的な役割を果たすように努めなければならないとされている(同53条2項)。

   おまとめローンの融資自体は、利息制限法の上限利率を超過するものとそうではないものがあるが、おまとめの対象となる個別の既存債務の圧倒的多数は消費者金融の違法な高金利が付されたものである。おまとめローンは、銀行、貸金業者ともに様々なネーミングで商品化しているが、こうしたおまとめローンの担保設定を反復継続して受任している司法書士は、当該商品がどのような目的の融資であるのか容易に判別できる筈である。つまり、債務者が「おまとめローン」の融資を受ける目的が既存の債務を一本化して利息についても低減化を図るものであることについて司法書士は了知していると言える。さらに、債務者は、常に債務の減少を望んでいるものであるが、既存の消費者金融等の債務が違法な利息が付されたものであり、本来、支払う必要のない金額も含まれていることを知らない。一方、法律専門職である司法書士は、既存の消費者金融の債務が、利息制限法で引直計算をすれば大幅に減少し、場合によっては何ら支払う必要性もないことを知っている。

   そうすると、おまとめローンの登記手続を受任した司法書士は、債務者が知らないであろう上記の情報を債務者に開示し、助言するなど、後見的な役割を負っていると言えるのではないか。そして、これは、登記手続に関する当事者の「意思の確認」に当然に含まれるものとも考えられ、司法書士の職責であるとも考えられる。

   上記の理が登記手続に関する司法書士の直接の義務ではないとしても、本来支払う必要のない債務を債務者に支払わせることにより過払金が発生することが明らかであり、そこで新たな法律紛争を惹起させることになる。司法書士制度が紛争の発生を未然に防止し、国民の利益を保護するものであることに鑑みれば、上記のように、債務者が漫然と約定利息を支払う行為を黙認することは、司法書士制度に著しく反するものとならないか、という疑問に突き当たる。

   仮に、おまとめローンを被担保債権とする根抵当権設定の登記を登記権利者と登記義務者双方から受任する際に、前述のような実質的な意思確認をすることを想定すると、登記を委任しようとする債務者に対し、「今まさに返済しようとしている債務は法的保護に値するものではないから利息制限法で引直計算をする必要がある」ということを説明することになる。しかも、その説明は債務者がその本質を理解できるようにしなければならず、一応の説明だけでは登記代理の委任契約上の債務不履行となる可能性も考えられる9)。しかし、債務者がこれに応諾し、取引履歴の調査及び利息制限法引直計算を行うこととなった場合には、即日の融資の実行は不可能となり、司法書士の債務者に対する説明・助言が、一方でおまとめローン債権者に対する背任行為になるとも考えられる。

   そもそも、一人の司法書士が、おまとめローンの担保設定のような法律問題を内在する取引に関し、登記権利者と登記義務者の双方から登記を受任すること自体、再考されなければならないと考えられる。

9)大阪地判昭和63525日判決(判時1316107頁)では、法律上、取引上の常識を説明し、そのままの成行きで権利関係を確定することについての危険性を説明、助言しなかったことについて債務不履行があったと認定している。なお、この事案において、被告司法書士は一応の説明はしているが、裁判所は、その意味が理解できるように説明すべきであるとしている。

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2006年6月17日 (土)

5 求められる法改正の内容

5 求められる法改正の内容

(1)過剰融資の規制

 おまとめローンが蔓延した背景には、貸金業規制法13条が定める過剰貸付禁止規定の実効性が極めて乏しいという現実が存在する。このことは、同条違反行為が取締法規違反にすぎず、直ちに民事効を生じるものではないとの理由で、債務者側の主張を排斥する裁判例が圧倒的多数である現実が物語っている。

過剰貸付を行った貸金業者の責任を肯定した判例は、過剰貸付をした業者が債権全額の回収を図るのは信義則から容認できず権利濫用であると指摘した数例にすぎない7)

一方、前述のように、アメリカでは、有担保融資による債務の一本化により借主が最終的に返済を滞って住宅を失うことが多い実態に鑑み、明確な基準により過剰融資を規制している。

本来、分割弁済による債務の完済を想定した融資であれば、自宅等の担保は「返済能力」を補完することにはならない。そうすると、貸金業規制法13条の趣旨は、おまとめローンの場合であっても貫徹されるべきである。

しかしながら、これまで、訓示規定的な位置づけがなされてきた同条の規制だけでは実効性が極めて乏しいことは否めない。

そこで、次のような措置を早急に立法化する必要がなる。

  ① 融資限度額の規制

    収入、職業、家族構成、他の債務、その他の状況などから、利用者に応じて一定の融資限度額(不動産を換価することなく、収入による返済可能額を基準に算出された限度額)を定めるとともに、実効性を確保するために、これを効力規定として位置づける必要がある。なお、この具体的な限度額に関しては、早急に研究を進める必要がある。

  ② 日本版バルーンペイントメントの禁止

    我が国の貸金業界では、高額な融資や商工ローンなどにおいて、月々の支払額は利息のみ(若干の元本が含まれる場合もある)を弁済し、最終支払いで元本総額を返済するという方式が多く行われている。しかしながら、本来、法的救済が必要な状態に至った者が、その段階でおまとめローンを利用することにより、救済がされることなく自宅を担保に取られてますます窮地に追い込まれる一因には、実態はこうした融資形態にもかかわらず、「とりあえず支払いが楽になる」と錯誤に陥っている実情がある。

    住宅ローンにおいてさえ、「ステップ償還」、「ゆとり償還」などにより返済額が変動し、支払いが困難となった債務者が急増したという我が国の歴史的事実をも踏まえ、返済期間中に返済額が一定程度(率については早急に検討する必要がある)増加する場合や、最終支払いで多額の残元本を支払わなければならないという融資形態を禁止する必要がある。

  ③ 開示義務

    不動産を担保に取って融資をする場合、貸金業者は「返済を怠った場合には不動産を換価して債権を回収する」という意思が明確であるにもかかわらず、利用者は「とりあえず返済が楽になれば、不動産を担保に取られても支払いを続けることができるであろう」という意識を持ちがちであり、既にその時点で認識に大きなズレが生じている。

    そこで、融資に際し不動産を担保を取る場合には、貸金業者に対し、当該貸金業者の融資を完済した者の比率、延滞等により不動産を処分した者の比率を示すことを義務付けるとともに、誰しも、失業、疾病、経済情勢の変動等により延滞が生じることがあること、その場合には不動産の換価が必要となることがあること、換価後の生活について自ら予測しておくことについて具体的な説明義務を課し、利用者がこれらを具体的に認識したことを弁護士、司法書士又は公証人の面前で宣誓したことを供述した記録を残し、担保設定登記の添付書類とすることなどの措置を講ずる必要がある。

  ④ 民事効並びに刑事罰の立法化

    前各号に指摘した過剰与信規制の実効性を担保するためには、過剰与信をした業者が司法の場で契約責任を負担させられる法整備が不可欠であり、そのためにも、違反行為に対する民事効の立法化が必要となる。

    加えて、確信犯的に過剰与信を繰り返す貸金業者は市場からの撤退を強いられるべきであり、そのための刑事罰の立法化も必要である。

(2)利息制限法に関する説明義務

   また、貸金業者に対する様々な規制は、貸金業者の適正な活動を促進して、最終的には資金需要者等の利益の保護を図るとともに、国民経済の適切な運営に資することを目的とされているところ(貸金業規制法1条)、貸金業者が、他の利息制限法を超過する利息等が付された債務を清算する目的で融資を行う場合には、上記の目的に鑑み、貸金業者に対し、当該債務を利息制限法に基づいて元本充当計算ができることの説明を義務付ける必要がある。なぜなら、この場合、利用者は、よもや自らの債務が約定残高よりも減少することなど想定していないのが通常であるから、貸金業者に教示義務を課すことにより当事者の公平を図ることができるからである。また、当該教示により、債務のおまとめに最低限必要な資金のみが融資されることになり、貸金業制度の目的にも適うこととなるのである。

   上記の義務づけを実効性あるものにするための方策として、既存債務の借入先、並びに返済日及び返済額を、貸金業規制法17条書面の記載事項とすべきである。

 以上に加え、先進諸国の過剰融資規制を研究して必要な措置を講じ、これらを実効性あるものとして効力規定として位置づけるための法改正が必要である。

7)釧路簡判平成6年3月16日 判例タイムズ842号、札幌簡判平成7年3月17日 判例時報1555号

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2006年6月16日 (金)

4 アメリカにおける法規制

 アメリカでは、低所得者・多重債務者に対して債務を一本化する際に住宅を担保にとる貸付において、消費者の理解不足に乗じて借換・一本化を勧誘し、その結果借主が最終的に住宅を失うことが多いことに着目し、一定金利以上の住宅担保貸付に対して、連邦法(住宅所得者とその融資枠を保護する法律(Home Ownership and Equity Protection Act 略称HOEPA))により各種の規制がなされている。また、各州法においても、同様又はさらに強化した規制が設けられている6)。以下、その主なものを引用する。

(1)バルーンペイントメントの禁止

   5年未満の期間において、月々の支払額を金利相当額のみ払うことにより低額にして、最後の支払いで元本をまとめて支払うなど極めて高額な支払いをする方法(バルーンペイントメント)の禁止

(2)ネガティブ・アモータイゼーションの禁止

   月々の返済額が、元本はもちろんのこと、月々の金利相当額にも満たなく残債務(残元本と金利相当額の支払残額)が増加していく支払い方式を禁止する。

(3)貸付に際して、消費者の返済能力を考慮することの義務化

   借主の支払い能力に関係なく担保物件に基づき消費者にローンを提供することの禁止

  (例として、ノースカロライナ州では、貸付契約に際して消費者の返済能力を考慮し、また収入の50%を超えない範囲での返済計画を示さなければならないとされている)

(4)(3)に関する違反行為推定規定

   貸主が借主の支払い能力を文書で証明しない限り貸主の違反行為が推定される。

(5)期限前の弁済に対するペナルティの規制

(6)合理的でないローンの借換の禁止

   借換が債務者にとって最善の利益でなければ短期間のうちにたびたび借換をすることは禁止し、借換の度に高額な手数料を取る実態に着目した規定を置いている。

(7)開示義務

   債務を履行しないと住宅を失うことになる旨を開示すること、金利その他の支払い義務について開示することを義務づけている。

(8)その他

   債務者がローンについてのカウンセリングを受けたことを貸主が立証しないとローンを提供することができない(ノースカロライナ州)。誤解させるような広告の禁止(マサチューセッツ州)。非良心的な金利、不相当な手数料などの禁止(マサチューセッツ州)。

 以上のように、アメリカにおいては、住宅担保貸付等に関し、過剰融資を規制するための実効性のある措置が講じられている。なお、こうした規制がありながらもアメリカにおける破産件数は我が国の10倍に及んでいるが、このような規制の存在しない我が国にとっては極めて示唆に富むものである。

6)「アメリカ・イギリスの消費者金融事情についての調査報告 上・下」森雅子 月刊消費者信用20062月号35頁、同4月号42頁等、「貸金業の実態についての英米調査報告及び日本への示唆」森雅子 「国民生活研究」第45巻第4号所収

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2006年6月15日 (木)

3 判例の動向

 おまとめローン関する裁判所の姿勢は必ずしも明らかではないが、名古屋地判平成17年5月24日(消費者法ニュース64号92頁)は、興味深い判断を示しているので以下紹介する5)この事件の概要は次のとおりである。

(1)月収約16万円で長期間にわたって多数のサラ金業者等からの借入、返済を繰り返してきた原告Xは、被告会社Yの「融資一本化」「無保証人」等と記載のある看板を見て、その融資を受けようと架電した。

(2)の担当者は、保証人を付することが融資の条件であると応答したので、Xは、そのあてもなく諦めた。

   ところが、後日、からXあてに電話があり、保証人をつけて融資を受けるように勧誘された。そこで、Xは、知人に保証人になってくれるよう依頼し、から融資を受けることにし、配偶者に内緒で金350万円を利息年28パーセントで借り入れた。なお、Xは、350万円全額を手にすることができると思っていた。

(3)Xは、当時、配偶者には内緒で以外の13業者に対して約定残高で約288万円の債務があったが、によって13業者への支払がなされることを知って、契約を取り止める旨をに伝えたが、従業員が取り合わなかった為、結局、契約を受け入れることにした。

(4)は、Xに代わってXの名において、貸付金350万円からこれらの業者に約定残高どおりの債務額を振込によって弁済した。

(5)その後、Xの弁済が十分になされなかったことから、は、Xに対し、連日、夜間にまで支払請求するとともに、配偶者を保証人に付するよう執拗に要求した。

(6)Xは自殺を図ったが未遂に終わり、入院した。

(7)Xの、13業者に対する債務は、利息制限法所定利率で引直し計算をすると過払いが発生しており、うち9社から366万円余の返還を受けるに至った。

 以上の事実に対し、裁判所は、①本件金銭消費貸借契約は公序良俗に違反するものとして無効である、②の不当利得返還請求は不法原因給付として認められない、③の違法な貸付行為及び執拗な支払請求・保証人要求は不法行為を構成する、と認定した。

 このうち、①の公序良俗違反について、一般に公序良俗違反として無効と言いうるためには単に客観的要件である強行法規違反の存在だけではなく、暴利行為であったり相手方の無知・窮迫につけ込むなどの主観的な事情が必要であるところ、本件については、まず、客観的要件として貸金業規制法13条で禁止されている過剰融資であったことを認定した。

 そのうえで、主観的要件として次のように認定した。すなわち、①が高利の消費者金融業を営み、従前から多重債務者を対象に貸付を行ってきているのであるから、多重債務者が借入を申し込んできた際には、既に他の業者に対して過払い状況になっている可能性が高いことは容易に認識しえたものと推認される、②しかるに、はXに貸付けるに際して、Xが過払い状況にある可能性が高いことを認識しながらもそれをXに一切説明することなく、他の業者の残債務額を確認してこれをXに対する貸付金から返済し、他の業者との取引は終了させ自社のみとの貸借関係とするという債務一本化の手続きを進めた、③Xはが直接各業者に振り込むことを知って借入を取りやめようとしたこと、それにもかかわらず、はその意向を押し切って被告の方針を貫徹したことなどから本件の債務一本化は違法性が強度である、また、①少なくとも多重債務者に対する貸付に関する限り「無保証人」との広告は虚偽であったこと、②は無保証人という虚偽の広告を掲げ、多重債務者からの申込を受けると、保証人を付して借入れることを執拗に勧誘するという方法を取って営業していたと推認されることから、Xの無知を利用して虚偽の広告で誘い出し、保証人を確保した上で自らだけが債権者となり確実に高利の利益を得ようとして貸付を行ったものであり、違法性の程度が強度であり、以上の事実を総合的に勘案して暴利行為であると認定している。

 以上見てきたように、おまとめローンは様々な問題を内包しているにも関わらず、訴訟において公序良俗違反による無効にまで持ち込むためには詳細な事実認定が不可欠な状況にあり、しかも、おまとめローン被害の終結点は破産手続となることが多いため、本判例のような事実認定まで行われるのは希有な例であるとも言える。したがって、おまとめローンはついては早急に規制を設けるなどの立法的解決が望まれる。

5)このほか、類似の判例として東京高判平成14年10月3日判決(判タ1127号152項)がある。

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2006年6月13日 (火)

2 おまとめローンの問題点

(1)利息制限法に基づく元本充当計算の機会の喪失

  ① おまとめローンによって清算される既存債務の多くは利息制限法を超過する貸金業者からの借入れであるが、おまとめローン債権者は、融資を希望する者から提出された伝票等により既存債務の約定残高を把握したうえで、これをそのまま清算する目的で融資額を決定するようである。つまり、おまとめローン債権者は、融資金が約定利率のまま既存債務の返済に充てられることを知り得る立場にありながら、利息制限法による再計算の機会を奪っていることになる。

    この結果、約定利率のままで既存債務の返済を受けた貸金業者のもとには不当な利益が残されることとなるが、理論上はともかく、現実には、後日に至って当該不当利得の返還を受けることには多くの支障が生ずる3)

(2)過剰貸付の横行

  貸金業規制法13条は「返済能力を超えると認められる貸付」を禁止している。一般に「返済能力」とは、単に現在の可処分所得だけではなく将来の収入や信用等も考慮されると思料するが、借主が消費者である場合には収入から生活費を控除した可処分所得を指すものと考えられる。

  ところが、おまとめローンの貸付は可処分所得のみならず担保不動産の換価予想額や保証人の支払能力に依拠した融資であり、貸金業規制法13条の趣旨に反する融資形態ということができる。

  また、金融庁事務ガイドライン3-2-1(2)は「顧客に対し、必要とする以上の金額の借入れを勧誘したり、借入意欲をそそるような勧誘をしてはならないこと」と規定しているが、おまとめローンは、既存債務を減縮することができること、既存債務の返済に窮していることを知りながら行われる貸付であって、上記規定に抵触する貸付形態であると言うことができる4)

(3)保証人被害・不動産処分の原因

 おまとめローンでは、保証人を求められたり、債務者・保証人の所有不動産に対する担保設定を求められたりするケースが多い。ところが、おまとめローンの勧誘をされる債務者は、既に破綻あるいは破綻寸前の状態にあることが多く、おまとめローンで借り換えをしたとしても、近い将来、再び返済に行き詰まる蓋然性が極めて高いため、保証人被害や不動産処分に追い込まれること必至である。

 かつて商工ローンが社会問題化した際、「利息は債務者から、元本は保証人から返済を受ける」商法であると非難を受けたことは記憶に新しいが、おまとめローンでは、商工ローンの問題とまったく同様の融資が横行しているのである。

     (3)たとえば、取引終了後3年を経過したので台帳を廃棄した理由で貸金業者に取引明細の開示を拒絶されると、不当利得額を算出することができない。

4)年金生活者に対し不動産を担保を設定してする融資やバルーンペイントメントによる融資はその典型である

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2006年6月12日 (月)

1 おまとめローンとは

 本稿において、おまとめローンとは、広義では、無担保融資の債務者が借入額、借入件数ともに増加して多重債務となった際に既存債務を一本化する融資をいうが、狭義では、既存債務を利息制限法に引直しをすれば債務額が軽減されて任意整理が可能な案件であっても、債務者やその親族等の不動産に担保を設定して、既存債務の利息制限法引直しをせずにその全額に対する返済原資を融資することをいうこととする。そして、以後、特に断りのない限り狭義のおまとめローンをいうこととする。

 おまとめローンは、一部の大手貸金業者が行っているほか、各地域の貸金業者も多く取り扱っているようである。また、近年は一部の銀行においても、まさに「おまとめローン」等の商品名で多重債務の一本化を謳い文句に積極的に営業展開している。

 こうしたおまとめローンにおける融資金の利率は、貸金業者においては無担保小口の消費者金融の利率(年利20パーセント代)よりも若干低めに設定されていることが多いようであり、銀行においては利息制限法の上限利率以下となっている。そのため、それまで消費者金融から複数の借り入れをしていた債務者にとっては利息の負担が軽減され、返済窓口も一カ所となり、一見メリットが大きいように見える。

 しかし、おまとめローンについては、次のような問題を指摘することができる。

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おまとめローンの問題点と登記代理概念の再考

 最高裁において貸金業者の「みなし弁済」が次々と否定されており1)、このことは多重債務者の救済実務において大きな意義を有している。こうした中、複数の債務を一括して返済するための融資、いわゆる「おまとめローン」の問題が俄に注目を集めている。

 また、おまとめローンについては債務者等の不動産に担保設定がなされることが多いことから、単におまとめローンの是非だけではなく、その場面における司法書士の役割や職責についても検討する必要があると思われる。

 本稿は、筆者も発表者として参加した「おまとめローンと調停の問題を考える集会in 静岡」2)の資料を参考にしながら、これらの問題について検討を加えるものである。

1)平成171215日最高裁判所第一小法廷判決、平成18113日最高裁判所第二小法廷判決、平成18124日最高裁判所第三小法廷判決参照

2平成18年4月22日、静岡市民文化会館で開催された。主催はアイフル被害対策全国会議、後援は静岡県弁護士会及び静岡県司法書士会。おまとめローンの問題については静岡県浜松市を中心とする弁護士、司法書士が発表した。

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