カテゴリー「不動産取引」の記事

2015年12月10日 (木)

再会

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 ある上場企業の会議室。本社を移転するための不動産の決済である。地権者である売主が多数集まり、会社側の関係者が部屋に来るのをいまかいまかと待ち受けている。それはそうだろう。今日は大きなお金が動く。土地の売買代金の最終金が地権者へ振り込まれるのだ。

 程なくしておそろいの制服を着た会社の担当者が時間どおりに入ってきた。私は、一人一人と名刺を交わし、あいさつをする。もちろん、事前に電話やメールで詳細な打合せをして今日の取引に臨んでいるが、ほとんどの担当者とは今日初めてお会いする。

 ただ、そのうち一人だけは、しばらく前からずっと気になっていた。そして、今日、初めてその顔を見て確信した。やはり、あいつだ。

 私は、名刺交換をして、「Nさんですね。メールではいろいろとありがとうございました」とつきなみな挨拶をしたうえで、テストしてみた。

「N」

Nさんを呼び捨てにしてみたのだ。

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2015年6月20日 (土)

その時、会議室は凍り付いた!

「司法書士の古橋と申します。早速ですが、抹消書類を確認させてください」
 今日は何度この言葉を口にしただろうか。抵当権者である金融機関が8行。集合時間である午前10時を待たずして次々と応接室に入ってくる。

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 部屋の一番奥には、一時は3店舗のスーパーマーケットを展開してきた社長がうつむき加減で腰掛けている。2年ほど前にお会いした時は、スーパーマーケットの裏方で白い長靴を履いて快活に笑っていたが、今は見る影もない。

 ここは、地元で最も有力な地方銀行の会議室であり、歴史を感じさせる重厚な建物の造りは緊張感を増幅させるのに十分である。

 会議室には、社長、社長が依頼した弁護士、債権者である8箇所の金融機関の職員、滞納処分で差押をした市の職員2名、スーパーマーケットの跡地を購入するディベロッパーの社員2名、不動産仲介業者2名という物々しい面々が集まった。そして、8箇所の金融機関の職員の手を通じて次々に提示される抵当権抹消書類をチェックする私に注目が集まっている。私は、いやでも強烈な視線を感じながら、「では、次の債権者さん、えー、〇〇銀行さん、お願いします」と平静を装いながらチェックを続ける・・・・・・。

 どうしてスーパーマーケットが倒産に追い込まれたのか私は知らないし、ここで誰も社長を責めるような事は言わない。とにかく、今日は、社長名義の不動産をディベロッパーに売却して、その代金で8件の銀行と市に支払いをするためだけに集まっているのだ。

 普通の不動産取引であれば、私が行うべき登記必要書類の説明と確認は、せいぜい10分ぐらいあれば終わる。しかし、今日は、売買の対象となっている不動産の数も多いため、どうしても確認作業に時間がかかる。ふと時計を見ると、10時15分を回っていた。10時10分前から確認作業をしているので、25分もかかっていることになる。

「抵当権の抹消書類は全て揃いましたので、所有権移転の書類を確認させてください」

 私は、社長と弁護士に向かって所有権移転登記に必要な書類の提示を求めた。もっとも、今日のような複雑な取引は書類確認に時間がかかることはわかっていたので、社長に署名してもらうべき書類は事前に弁護士に渡していた。

「では、これをお願いします」

 弁護士は、黒革の鞄の中からひとつのビニールファイルを取り出し、そのまま私に手渡した。

 確認すると、登記に必要な不動産の権利証や社長の印鑑証明書などの書類はすべてビニールファイルに入っており、事前に弁護士に渡してあった書類も、署名すべきところに署名がされ、ビニールファイルに収まっていた。ただ、印鑑はまだ押されていなかった。

「社長さん、実印はお持ちですか」と聞くと、社長はポーチのような小さなバッグから印鑑を取り出し、「先生、押してください。最近、手が震えるもんで」と私の目の前に置いた。

「そうね、プロに押してもらった方がいいよ」と弁護士も社長に同調する。

 司法書士は印鑑を押すプロではありませんよ。そういう訓練は受けていませんよ。と腹の中では言っているのだが、どういうわけか世間では「司法書士は印鑑を押すプロ」になっているようだから、サービス精神旺盛な私としては、印鑑押しのプロのような振る舞いをすることになる。

「そうですか、それでは印鑑をお借りします」

 さすがに実印を拝借して押すのだから、印鑑を手に取るときは一言断りを入れるのが礼儀というものだ。しかし、実は、いつもここである悩みが頭を駆け巡るのだ。

 民事訴訟法という法律の228条4項は、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」と規定している。「私文書」とは公文書でない文書のことで、登記手続のために作成され、売主が署名押印する書類は「私文書」である。この私文書について、本人又はその代理人の意思に基づく署名又は押印があるときは,その文書全体について間違いなく作成されたものと推定されるわけである。

 印鑑を預けられた私は代理人なのか? いや、そうではないだろう。印鑑を押すことを頼まれただけだ。言ってみれば、本人の意思にもとづいて機械的に動いているロボットのようなものじゃないか。

 だから、「印鑑をお借りします」とか「〇〇の書類にハンコを押しますね」などと言いながら、ひとつひとつ本人の意思を確認しながら押すようにしている。

 もっと言えば、最高裁の判例では、印影が本人の印章によって顕出されたものであるときは、反証のない限り、本人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定されるとしている。あとで「知らなかった」「古橋が勝手に押した」なんて冗談でも言わないでくださいよ、社長さん。さあ、押しますよ!

 こんなことが頭の中をぐるぐる駆け巡る。が、こうした晴れ渡らない私の気持ちを果たして何人の人が理解しているだろう・・・・・・。

 そんなことを考えつつも、不動産取引の決済という緊張感のある場面であるので余分なことは言わない方がいいと決め込み、私は、頼まれたとおり、「印鑑を押すプロ」の形相になりきり、儀式を遂行するのだ。

 「印鑑を押すプロ」としては、まず、押印する前に実印かどうか確認の儀式を行う。まず、印鑑証明書に写し出された印影を眼球の奥の方のスクリーンに焼き付ける。そして、実際の印鑑の紋様をおもむろに見る。左右が反対になっているので、イマジネーションを膨らませて紋様の天地を確認するのと同時に同一性を確認する。

 「天」の側に人差し指の腹を当て、親指と中指で「地」側を支えると3本の指の間にハンコがスッポリと収まる。多くの場合、人差し指の付け根に印面の反対側が当たり、程よい力加減を印鑑に伝導するポジションを取ることができる。

 印鑑証明書に印刷されている印影と印鑑の紋様との同一性に疑問があったり、同一がどうか自信がない場合は、「試し印」を押してみる。「試し印」は、極力、何か印刷された紙の隅っこに押す。決して何も印刷されていないコピー用紙には押さない。「後から何か書き込んで悪用するんじゃないか」と思われるのは厭だ。

 幸い、社長のハンコは特徴的な紋様であるので、おそらく印鑑証明書の印影と同一であると思われる。試し印はしないこととした。

 そして、朱肉に印鑑を押し当てる。朱肉に朱の油がどの程度しみこんでいるのか目視で観察し、押し当てる力具合を変える。押し当ては1回のみ。ポン、ポン、ポンと、3回ぐらい押し当てる人が多いが、朱の油が紋様の隙間に入り込んで印影がつぶれるのを防ぐために、押し当ては1回がいいだろう。

 押し当てる場所は、朱肉の真ん中。朱肉の隅の方は割合と朱の油が多く染みこんでいて、これもまた、印影がつぶれる原因となる。

 そして、署名の右横に印面を当てる。印面と紙を平行にして、印面を垂直に落とす。印面を見ながら印影の上下を目で確認しながら印鑑を斜めにして印面の縁を紙に押し当て、その状態から印鑑を垂直にして押印する人もいるが、これは印影がひずむ原因となるのでやめた方がいい。

 印面を垂直に落としたら、印鑑を時計回りに回すようにして紙に押しつけるが、傾斜の角度はせいぜい5度ぐらいがいい。あまり入念に押しつけると、印鑑証明書の印影には出ていない影が出てしまうことが稀にあるのでほどほどでやめる。

 印鑑が欠けて一部の印影が出ないことはよくある。特に縁の部分が欠けていることが多い。しかし、印鑑証明書の印影が一部欠けているのに、押してみたらつながっていたということになると、「違うハンコ」と疑わざるを得ない。欠けているところはちゃんと欠けていなければいけないのだ。

 そして、印鑑を紙から離すと印影がきれいに出ている筈だ。この印影を確認し、私が「OKです」と言うと、一気にお金が精算される。

 買主のディベロッパーは本社の経理に電話して振込を指示する。売主は振り込まれた代金から抵当権者に借入金を返済したり、市へ滞納税金を支払う。仲介の不動産業者がそのための送金伝票を既に取りまとめており、私がOKを出したら銀行の担当者に詳細を伝えようと身構えている。だから、私が印鑑を紙から離した後にどんな印影が残っているのか、全員が固唾をのんで待っているわけだ。

 私は、セオリーどおり、社長から借りた印鑑を5度ぐらいの角度で時計回りに回すようにして紙に押しつけた。いろいろ頭では考えているのだが、この間は1秒程度にすぎない。音は全くしない。高校球児がバッターボックスでは歓声が全く聞こえなくなるのと同じ現象だ。

 会議室のほぼ全員が見守る中、私はそっと印鑑を紙から離し、宙に浮かせた。静寂を破ったのは私の声だった。「OKです」の「オ」の形で準備していた口は、一瞬にして反射的に「ア」を出す形に変化したが、すでに声帯から「オ」の音が口に送り出されていた。

「おあぁっ・・・・・・」

 そこには、丸く塗りつぶされた日の丸のような印影が残っていた。印鑑が上下逆だった。

 

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2015年6月 3日 (水)

精算をしてください

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「これで登記に必要な書類は全て整いましたので、売買代金の精算をしてください」
 不動産の売買取引の最終局面は、司法書士のこうした宣言によって諸々の費用が一斉に精算される。 典型的なケースは、この宣言によって金融機関が買主に融資を実行し、買主はそのお金で売買代金を売主に支払う。 売主は受け取った売買代金から自分が融資を受けていた金融機関に返済を行う、というようなパターンである。 もちろん、これらにあわせて固定資産税、不動産仲介手数料、登記費用の精算なども行う。

 こうして、通常であれば1時間ほどで不動産取引の最終局面が終了するのである。 もしも、「必要な書類が整った」と宣言している一方で登記関係書類が一部でも不足していれば、売買代金が精算されているにもかかわらず所有権移転登記ができなかったり、金融機関の担保設定登記ができなくなることもあるわけである。

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2015年3月 6日 (金)

中古住宅取得時のリフォーム資金借り入れと租税特別措置(司法書士の実務的な話ですけど)

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 居住用の中古住宅や中古マンション購入時の融資に対して抵当権を設定する場合は、建築年次等の一定の要件を満たせば、登録免許税を減額することができる(通常は設定額に対し1000分の4の登録免許税が1000分の1に減額される)。

 これは、住宅の取得や増築を推進するために租税の特別措置がとられているからである。

 金融機関によっては、中古物件購入代金とは別に入居時のリフォーム代金について別個の抵当権を設定することがある。その際、抵当権設定契約書の「使途」に「リフォーム資金」とだけ記載されている場合がある。

 この場合、当該抵当権設定登記については、法務局の形式審査により、租税特別措置が受けられない可能性がある。これは、中古住宅に関する租税特別措置は、あくまでも「取得又は増築」に対してのものであり、リフォームには適用されないという見解による。

 
 しかしながら、中古住宅を購入時にリフォームするのは「取得」の一環である。もしも、抵当権設定契約書に使途を記載するのであれば、注意が必要である。

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2014年9月10日 (水)

全日本不動産協会静岡県本部・浜松相談会

私が顧問(?)をさせていただいている全日本不動産協会静岡県本部の定例相談会@浜松市役所。

今日もいろいろな相談がありました。定番の相続から、賃貸借のトラブル(明渡請求)、財産分与による所有権移転登記手続請求、遺言など。

同じく顧問(?)の弁護士さん、税理士さん等と忙しい一日でした。

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2013年1月18日 (金)

一時使用の賃貸借であるか否かの判断(野々垣バージョン)

不動産の賃貸借契約が、一時使用目的の賃貸借である場合は、契約期間の終了により、当該契約は終了する。
一時使用の賃貸借契約でない場合に、賃貸人が賃借に対し、当該契約の解除の申入れをする際には、立退料の支払いが必要となる場合がある。
借地借家法には「一時使用のために賃貸借契約をしたことが明らかな場合」と記載されているのみで、明確は定義されていない。
  このため、下記の判例を参考に一時使用の可否を判断する事になる。

最判昭和36年10月10日
「一時使用目的とは、賃貸借の目的、動機その他諸般の事情から、その賃貸借を短期間に限り存続させる趣旨のものであることが客観的に判断されるものであればよい。必ずしもその期間の長短だけを標準として決せられるものではなく、期間が1年未満でなければならないものでもない。」

これらをもとに判断すると、一定期間、展示場として使用する場合や住居新築のため、一定期間仮住まいとして使用する場合等は「賃貸借の目的、動機その他諸般の事情」が、展示場、仮住まいとして賃貸する期間が、一定期間に明確に定められていれば、「短期間に限り」に存続させることが客観的に明確であるため、一時使用の賃貸借であることが判断できる。

これに対し、賃貸人が、転勤等により賃貸人の所有する長期間使用しないため、転勤等が終了した場合に賃貸借契約が終了する定めは、存続期間が明確に定められておらず、「短期間に限り」存続させる趣旨が明確でないため、一時使用貸借とは認められない。
類似した判例は下記の通りですので、ご参照ください。
東京地裁昭和56年1月30日判決 昭和53年(ワ)12568号

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2012年10月12日 (金)

定期建物賃貸借契約の説明書面は契約書とは別個独立の書面であることを要する

最高裁平成24年9月13日の事案である。
原審は、本件定期借家契約に先立って本件定期借家条項と同内容の記載をした本件契約書の原案を送付した事例で、本件賃貸借は定期建物賃貸借であり,期間の満了により終了したとして被上告人の請求を認容すべきものとしたが、最高裁は次のように判示した。

期間の定めがある建物の賃貸借につき契約の更新がないこととする旨の定めは、公正証書による等書面によって契約をする場合に限りすることができ(法38条1項)、そのような賃貸借をしようとするときは,賃貸人は,あらかじめ,賃借人に対し,当該賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて,その旨を記載した書面を交付して説明しなければならず(同条2項),賃貸人が当該説明をしなかったときは,契約の更新がないこととする旨の定めは無効となる(同条3項)。
法38条1項の規定に加えて同条2項の規定が置かれた趣旨は,定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って,賃借人になろうとする者に対し,定期建物賃貸借は契約の更新がなく期間の満了により終了することを理解させ,当該契約を締結するか否かの意思決定のために十分な情報を提供することのみならず,説明においても更に書面の交付を要求することで契約の更新の有無に関する紛争の発生を未然に防止することにあるものと解される。
以上のような法38条の規定の構造及び趣旨に照らすと,同条2項は,定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って,賃貸人において,契約書とは別個に,定期建物賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了することについて記載した書面を交付した上,その旨を説明すべきものとしたことが明らかである。

そして,紛争の発生を未然に防止しようとする同項の趣旨を考慮すると,上記書面の交付を要するか否かについては,当該契約の締結に至る経緯,当該契約の内容についての賃借人の認識の有無及び程度等といった個別具体的事情を考慮することなく,形式的,画一的に取り扱うのが相当である。

したがって,法38条2項所定の書面は,賃借人が,当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず,契約書とは別個独立の書面であることを要するというべきである。

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2012年8月27日 (月)

民事執行法82条2項の申出

久々に、民事執行法82条2項の申し出を行う抵当権設定登記の依頼があった。

競売物件を買い受ける場合、代金納付により裁判所から法務局に所有権移転と抵当権等の抹消登記の嘱託がなされる。新所有権の登記識別情報は法務局から裁判所を経由して買受人の手元に届くことになる。

しかし、この方法によると、金融機関が納付代金を融資をする場合、金融機関及び買受人が落札不動産を担保に取る場合、所有権移転と抵当権設定登記を連件申請することができないため、金融機関としてはリスクがある。そのため、金融機関としては融資に逡巡する。

この問題点を解消するため、平成10年に民事執行法が改正され、民事執行法82条2項により連件処理で担保権設定登記を行うことができるようになったのだ。

この方法は、買受人及び金融機関から、裁判所に対し、担保権設定登記を競売による所有権移転登記と連件で申請したいので指定する司法書士に対して所有権移転登記嘱託書を交付して欲しいとの申出をする。

これに対し、裁判所は、所有権移転登記嘱託書を指定を受けた司法書士に渡し、司法書士が所有権移転登記嘱託書と担保権設定登記申請書を連件で法務局に申請することができることとなる。

(代金納付による登記の嘱託)
第八十二条  買受人が代金を納付したときは、裁判所書記官は、次に掲げる登記及び登記の抹消を嘱託しなければならない。
一  買受人の取得した権利の移転の登記
二  売却により消滅した権利又は売却により効力を失つた権利の取得若しくは仮処分に係る登記の抹消
三  差押え又は仮差押えの登記の抹消
2  買受人及び買受人から不動産の上に抵当権の設定を受けようとする者が、最高裁判所規則で定めるところにより、代金の納付の時までに申出をしたときは、前項の規定による嘱託は、登記の申請の代理を業とすることができる者で申出人の指定するものに嘱託情報を提供して登記所に提供させる方法によつてしなければならない。この場合において、申出人の指定する者は、遅滞なく、その嘱託情報を登記所に提供しなければならない。
3  第一項の規定による嘱託をするには、その嘱託情報と併せて売却許可決定があつたことを証する情報を提供しなければならない。
4  第一項の規定による嘱託に要する登録免許税その他の費用は、買受人の負担とする。

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2012年8月14日 (火)

媒介業者が調査確認をしないまま、買主が残代金を支払って、売主業者がその後倒産し、買主が根抵当権の極度額の損害を受けた場合において、媒介業者に登記簿閲覧等の調査義務違反が認定され、買主にも5割の過失相殺が認められた事例

 東京地裁平成8年7月12日判決は、土地売買契約締結後、引渡前に売主業者が目的物件に根抵当権登記をしていたにもかかわらず、媒介業者が調査確認をしないまま、買主が残代金を支払ってしまった事例である。

 その後、売主業者が倒産したが、買主ものんびりしていて、当該不動産購入後5年ほど経過してから根抵当権が設定されているのに気付き、自らの費用で根抵当権を抹消した。そこで、根抵当権の極度額の金額の損害を受けたとして、媒介業者に登記簿閲覧等の調査義務違反があると認定した。しかしながら、買主にも過失があるとして5割を相殺した事例である。

 このケースで、仮に、司法書士に対しても損害賠償請求されていたら、果たして、媒介業者と司法書士の負担割合がどのようになっていたか興味があるところである。このケースでは、媒介業者の報酬は約60万円であった。
 司法書士の報酬は不明であるが、取引された不動産の売買代金等から推測すると、数万円程度ではないかと思われる。根抵当権の登記を存置したまま取引を行ってしまったという内容からすると、受領した報酬の金額とは関係なく、司法書士に重い責任が課されても不思議ではない。

本件の買主が一般消費者なのか、業者なのかは不明であるが、5割の過失相殺はなかなか重い感じがする。

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2012年7月19日 (木)

ノンバンクからの融資を拒否しローン条項に基づく契約解除が認められた事例

東京地裁判決平成16年7月30日は、不動産売買契約についてローン特約がある場合があるが、「都市銀行他」から融資を受けるというローン特約があつた場合、「都市銀行他」にノンバンクが含まれるのかが争われた。

 買主Xは、平成13年4月、業者Y2の媒介で、売主Y1から土地付建物を代金6,100万円で購入し、手付金250万円を支払った。
 本件売買契約には、①買主は、契約後速やかに「都市銀行他」に「4,000万円」の融資申込みをしなければならない、②5月末までに融資の全額または一部について承認が得られない場合は、本件売買契約は自動的に解除となる、③買主が4月末までに、金融機関等に対して必要な書類を提出せず、売主が催告をした後に5月末日を経過した場合、または買主が故意に虚偽の証明書等を提出した結果、融資の全部または一部について承認が得られなかった場合には、②の規定は適用しない等とするローン条項があった。

 Xは、売買契約締結後、都市銀行や信用金庫に融資を申し込んだ。また、Y2に勧められたノンバンクであるA社に対しては、申込みはしたものの、銀行などに比べ金利が高いという理由で、申込みの翌日にそれを撤回し、1か月後には提出書類の返却を受けた。結局、都市銀行や信用金庫からは、4000万円の融資希望額の一部につき承認が得られなかったため、Xは、Y1に対して本件売買契約の解除の意思表示をし、手付金の返還を求めて提訴した。

 Y1及びY2は、Xが融資の承認を得られなかったのは、X自らが融資を得るのに必要な手続きを採らなかったからである等として反訴した。

判決は、Xが本件売買契約以前にノンバンクから融資を受けるほかないことを了承していたことはない、さらに「都市銀行他」という文言は、都市銀行及びそれに類する金融機関を意味するものと解するのが自然であることを併せ考慮すると、ノンバンクであるA社は、「都市銀行他」に含まれないと認めるのが相当と判示した。

本件は住宅の売買契約であると思われるが、住宅を購入するにあたって銀行以外のノンバンクからのみ融資を受けることはほとんどないであう。したがって、「都市銀行他」という文言にはノンバンクは含まないと判断したのは妥当であろう。

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