カテゴリー「民法分野」の記事

2013年3月14日 (木)

養育費を離婚時に遡って請求できるか

昨日の相談である。離婚して十数年経過。離婚時に、養育費については何の合意もなく、実際に養育費が支払われたことがない。現在、親権変更で紛争になっているが、親権で揉めるぐらいだったら遡って養育費を請求したいというもの。

家庭裁判所のホームページには次のようなQ&Aがある。

Q. 離婚したときに,養育費を取り決めなかったのですが・・・

A. 離婚した後でも,養育費を取り決めることができます。
もしも,離婚の際に,父母の間で「養育費を支払わない。受け取らない。」といった約束をしていても,このような父母の約束によって,子どもが養育費の支払を受ける権利を失うものではありませんので,事情に応じて,あらためて養育費を取り決めることができます。

では、遡って請求できるか。

最高裁昭和42年2月17日は次のように判示している。
「民法八七八条・八七九条によれば、扶養義務者が複数である場合に各人の扶養義務の分担の割合は、協議が整わないかぎり、家庭裁判所が審判によつて定めるべきである。扶養義務者の一人のみが扶養権利者を扶養してきた場合に、過去の扶養料を他の扶養義務者に求償する場合においても同様であつて、各自の分担額は、協議が整わないかぎり、家庭裁判所が、各自の資力その他一切の事情を考慮して審判で決定すべきであつて、通常裁判所が判決手続で判定すべきではないと解するのが相当である。」

判旨は、家庭裁判所の審判事項であり通常裁判所の判決事項ではないというものであるが、その前提として、過去の扶養料を他の扶養義務者に求償できることを前提としている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年2月22日 (金)

売買における売主の瑕疵担保責任(野々垣バージョン)

売買における売主の瑕疵担保責任は、強制競売においては適用がありません(民法570条)。

民法(債権関係)改正審議において、限定的なものであるが、売主の瑕疵担保責任を負う内容とすべきかが検討されています。

 競売手続は、ある程度の隠れた損傷等があることを見込んで、買主は物件を購入する実情もあり、任意売却に比べ売買代金が低額であることが多いです。

 仮に、改正によって、競売手続においても、売主の瑕疵担保責任が認められることとなると、現状実務に変化が見られると考えられます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年2月 8日 (金)

訴えの提起による債権者代位権の行使の場合の訴訟告知

民法(債権関係)の改正に関する中間試案のたたき台(2)

第8

8 債権者は,訴えの提起によって債権者代位行使をしたときは,遅滞なく,債務者に対し,訴訟告知をしなければならないものとする。

【部会資料35・36頁,44頁】

(概要)

債権者代位訴訟を提起した代位債権者は債務者に対する訴訟告知をしなければならないとするものであり,株主代表訴訟に関する会社法第849条第3項を参考として,合理的な規律を補うものである。債権者代位訴訟における代位債権者の地位は,株主代表訴訟における株主と同じく法定訴訟担当と解されており,その判決の効力は被担当者である債務者にも及ぶとされているにもかかわらず(民事訴訟法第115条第1項第2号),現在は債務者に対する訴訟告知を要する旨の規定がないため,その手続保障の観点から問題があるとの指摘がされている。

私見

 仮に上記の案が改正されると新しく創設される制度です。

 債権者代位権は、本来債務者が処分権を有する債権を、債権者が債権保全のために行使し、その効果は訴提起の有無に関わらず債務者に及びます。そう考えると、訴え提起の有無に関わらず、債権者代位権を行使を、債権者は債務者に告知すべきと考えてもよろしいのではないでしょうか?

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2013年2月 1日 (金)

民法95条 錯誤

 現行民法95条において、法律行為の要素に錯誤があった場合は、その意思表示は無効とされていますが、この無効の主張権者は表意者に限定されると判例(最判昭和40年9月10日民集19巻6号1512頁)は示しており、相手方からの無効主張ができない点を考慮すると、錯誤無効は、取消に近似していると考えられます。

 このような観点から、法務省法制審議会 - 民法(債権関係)部会は、民法改正に関する中間試案のたたき台(1)において、錯誤の効果を取消とする案を提示しています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年11月12日 (月)

保証についての日司連意見書 ~野々垣バージョン~

日司連が保証に関しての意見書を公表しました。

そのうちの一部を抜粋します。

1 保証人の要件について
【意見の趣旨】
保証人となる者は、保証債務を履行する資力がなければならないとの規定を設けるべきである。
具体的には、現民法第450条を次のように改正し、強行規定とすべきである。
第○条(保証人の要件)
保証人は保証債務を弁済する資力を有する者でなければならない。
(現民法の第2項、第3項は削除する。)
【意見の理由】
保証人は、人的担保としての機能を有する者であるから、弁済する資力を有する者でなければならないのは当然である。
しかし、「情義性」、「未必性」、「軽率性」等の特性を持つため、自己に資力がないにも関わらず、主たる債務者の懇願を断りきれずに、「まさか自分に請求されることはないだろう」という安易な期待のもとに保証契約を締結してしまい、主たる債務の履行が遅滞し、債権者から資力以上の弁済を求められ生活が破たんしたという相談が数多く寄せられている。
債権者に対して契約締結時や契約締結後に一定の義務を課したとしても、主たる債務者に懇願された者は保証人となることを拒否できないといった事態が生じる可能性があるので、このような被害を根絶するためには、保証人に、保証債務を弁済する資力を有すること、という要件を課し、強行規定とする必要がある。つまり、現民法第450条を債権者保護という視点から保証人保護という視点に大きく趣旨変更することにより、保証債務を弁済する資力がないにも関わらず、情義によって軽率に保証人となってしまうという事態を防止しようという提案である。
資力については、フランスの比例原則に関する裁判例等を参考に判断することを念頭に置いている。
なお、本提案は保証契約締結時点での保証人の資力に関するものであり、保証契約締結後については保証人の意思で資力を減少させることもあり得るため、考慮していない。

 債権者の権利保全という意味合いが強かった保証制度が、保証人保護という制度に変わりつつあると思います。

詳細は、日司連HPに記載されています。

http://www.shiho-shoshi.or.jp/association/info_disclosure/opinion/opinion_detail.php?article_id=103

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年10月19日 (金)

民法改正 ~保証制度の見直し~  野々垣バージョン

法務省法制審議会では、民法(債権関係) 改正の審議が進行しており、そのなかで、保証についての論点が取り上げられています。

 保証は、不動産等の物的担保を持たない債務者が自己の信用を補う手段として、実務上重要な意義を有しています。

 しかし、個人が、債権者と保証契約を締結し保証人となる場合、親族から連帯保証人になってほしいと頼まれることにより、義理や人情から断ることができず、情義性により保証人となってしまうことが大半です。

 そして、保証債務を負っていることを忘れてしまった頃に、保証債務の履行請求がされ、保証人が経済的に破綻に追い込まれる被害事例も多く。個人保証については、保証人保護の改正が必要です。

 また、保証債務は、片務契約であり、保証人が何らかの対価を得ることはないと思われます。

 同じ片務契約となる贈与は、贈与者の自らの意思により契約締結がされることがあるが、保証人が自らの意思により保証人となることはまずありません。

 法務省が、昨年夏頃募集した第一次パブリックコメントでは、個人保証を廃止すべきであるという意見も多数よせられており、来年以降に法務省が発表予定の中間試案では、どのような案が提示されるか注目されます。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2012年8月16日 (木)

離婚による財産分与は詐害行為取消権の対象となるか

民法424条は、詐害行為取消権について次のように規定している。

(詐害行為取消権)
第424条  債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2  前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

つまり、「財産権を目的としない法律行為」は詐害行為取消権の対象にはならないこととされており、離婚による財産分与も財産権を目的としない法律行為であるという考え方が有力である。少し観点が異なるが、次の判例がある。

最高裁昭和58年12月19日判決
 倒産した夫が、協議離婚の際に財産分与として、妻が家業としておこなってきたクリーニング業の基盤となる夫名義の不動産を譲渡したことに対し、夫の債権者が、同譲渡が詐害行為に当たるとしてその取消しを求めた事案の上告審。
 分与者が債務超過であるという一事によって、相手方に対する財産分与をすべて否定するのは相当でなく、相手方は、分与者が債務超過である場合であってもなお、相当な財産分与を受けることを妨げられないと解すべきである。
 分与者が既に債務超過の状態にあって当該財産分与によって一般債権者に対する共同担保を減少させる結果になるとしても、それが民法768条の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為として、債権者による取消しの対象となりえない。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2012年8月 6日 (月)

 清算中の会社が他人の債務のためにその所有不動産に抵当権を設定する行為は無効であるから、登記原因証書によりこのことが判明するときは、法25条9号の規定により受理できない(野々垣バージョン)

清算の目的の範囲ないで会社は存続する(会社法476条)ため、清算中の会社の能力は限定され、その職務は、現務の完了、債権の取立及び債務の弁済、残余財産の分配に限られる(会社法481)。

 では、他人の債務の為に会社所有の不動産を物上担保とすることが、清算の目的の範囲内に該当するのか?  他人の債務のために抵当権を設定した場合に、その他人が債務を弁済しない限り、当該抵当権が消滅することはあり得ず、いつまでも、清算結了ができない。  

 上記によると、実務の取扱いとしては、他人の債務の為に当該清算会社の所有する不動産に抵当権を設定する行為は、清算の趣旨に反し、無効であると解すとされた。

 これに対し、清算中の会社を登記義務者とする抵当権設定登記の申請については、自己の債務に限らず、第三者の債務についても、受理して差し支えないとの回答もある(昭和41年11月7日付民事甲第3252号民事局長回答、同誌497号141頁)。

 清算の目的の範囲内であるか否かの判断は、慎重にする必要がある。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2012年7月24日 (火)

抵当権設定の登記をした●日後に金銭を授受するという消費貸借契約はいつ成立するのか

次の質疑応答がある。

登研138号
「抵当権設定の登記をした5日後に、金銭を授受する。」旨の消費貸借契約及びこれに基づく抵当権設定の契約は、有効と思われますが、右の契約書を登記原因を証する書面として、抵当権設定の登記申請があった場合、右の「金銭は何月何日に授受する。」旨の約定は、特約事項として登記することはできないと思いますが、反対説もありますので、いかがでしょうか。
御意見のとおりと考えます。

おそらく、登記の原因としては「年月日金銭消費貸借同日設定」となるのであろうが、実際に金銭が交付されるのは抵当権設定の登記をした5日後ということであろう。以前、野々垣バージョンでも指摘していたが、消費貸借契約の要物性が緩和されている一例であろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年7月10日 (火)

預金の払い戻しについて、金融機関の注意の程度を示した判例

昨日、債権の準占有者に対する預金払い戻しの話をしたが、それに関し、相続とは関係ないが、金融機関の過失の有無を判断した判例があるので紹介しておく。なお、いずれも、預金の約款に照らして判断しているようだ。

Dsc_0252

印鑑照合の程度
最高裁判所第二小法廷 平成10年3月27日
【事件番号】 平成10年(オ)第226号
「銀行の印鑑照合を担当する者が、払戻請求書に使用された印影と届出印の印影又は預金通帳に届出印により顕出された印影(副印鑑)とを照合するにあたっては、特段の事情のない限り、折り重ねによる照合や拡大鏡による照合までの必要はなく、肉眼による平面照合の方法をもってすれば足りるものと解される。この場合、担当者は、銀行の印鑑照合を担当する者として、社会通念上一般に期待される業務上の相当の注意をもって照合を行うことが要求され、そのような事務に習熟している銀行員が、通常の事務処理の過程で、限られた時間内にではあるが、相当の注意を払って照合するならば、肉眼をもって別異の印章による印影であることが発見し得るのに、そのような印影の相違を看過した場合には、銀行には過失があり、民法四七八条はもとより、本件免責条項の適用もできないこととなるのである。」

キャッシュカードの利用と免責約款の効力
最高裁判所第二小法廷平成5年7月19日
「銀行の設置した現金自動支払機を利用して預金者以外の者が預金の払戻しを受けたとしても、銀行が預金者に交付していた真正なキャッシュカードが使用され、正しい暗証番号が入力されていた場合には,銀行による暗証番号の管理が不十分であったなど特段の事情がない限り、銀行は、現金自動支払機によりキャッシュカードと暗証番号を確認して預金の払戻しをした場合には責任を負わない旨の免責約款により免責されるものと解するのが相当である」

| | コメント (1) | トラックバック (0)